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会期:7月17日~20日
会場:New York Jacob K. Javits Convention Center
18日の午前9時。ニューヨーク、マンハッタンの34丁目の西の端に位置する、「NYの幕張メッセ」的存在、「ジャビッツセンター」の大ホールでは、直前まで流れていた、ビーチボーイズの音楽(何故か気がつけばいつもコレ)が消え、舞台上にお決まりのファッションの黒の丸首Tシャツにジーンズ姿の、Apple CEO スティーブ・ジョブズ氏がさっそうと登場した。
彼の笑顔に会場から大歓声と拍手が沸き起こった。「Good morning ! Very happy to be here in New York」というジョブズの第一声からキーノートスピーチは始まった。
全体を通して感じたことは、ひそかに期待したわりには、意外と落ち着きモードであったこと。彼の興奮度も85%ぐらいだろうか。しかしながら、それぞれのプロダクトへの思いを噛み砕くように、穏やかに、丁寧に説明するようすは好印象だった。
ニューヨークタイムズなどでは、今回ジョブズがフラットスクリーンのiMacを発表するのではという予測もあったが、これははずれた。
派手なパフォーマンスではなかったものの、Mac OS Xのソフト開発の充実度と、Mac OS Xに使われる新しいアプリケーションなどの発展の経過報告など、将来へのアップルのビジョンを優しくわかりやすい形で、語りかける、内容の充実にポイントを置いた有意義なスピーチであったことは言うまでもない。
■New Power Mac G4ラインを発表
新しいG4モデルは、シルバーカラーを基調とし、アメリカ人がよく使う表現の“KOOL”にぴったりの外見。新モデルは3機種。Super Drive (DVD-R/CD-RW両用ドライブ)搭載のデュアル800MHzモデル(3,499ドル)。 Super Drive 搭載シングル867MHz(2,499ドル)、CD-RWドライブ搭載シングル733MHzモデル(1,699ドル)。Power Mac G4にプリインストールされているのは、Mac OS 9.2と、Mac OS X。
新型Power Mac G4ラインは、光るシルバーで、3モデル登場 | 新Power Mac G4シリーズのスペック | こうしてアップルの新製品のマトリックが更新された |
■Mac OS X v10.1をプレビュー
3月24日に発売した、Mac OS Xはいろいろとサポートされていない機能があったが、このMac OS X v10.1ではかなりの面で改善されているという。この発表には、会場の拍手喝采が巻き起こった。
全米では、9月に出荷される予定。Mac OS X v10.1のCDの販売予定価格は、129ドル(US)。CDのアップグレード版を買うなら、19.95ドル((US)だ。
Mac OS X v10.1の改善点 | ボリュームも、おしゃれな半透明で、画面に浮かび上がってくる | 3月24日にMac OS Xを売り出した時に、仕上げに12ヶ月(1年)かかると宣言されていたが、4ヶ月だって、ここまで来たという報告 |
■新iMacを発表。あまり盛り上がらない会場
3つの新iMacについては、ジョブズもさらりと流す程度に留めた。500MHzモデルはIndigoとSnowがある(999ドル)。600MHzモデルはGraphiteとSnow(1,299ドル)。700MHzモデルはGraphiteとSnow(1,499ドル)。
会場の雰囲気も静かであまり反応がなかった。液晶とはいかなくても、G4搭載の期待もあっただけに、発表の後、「なんだやっぱりG3か」と、がっかりした人も多かったのかもしれない。また、新iMACの外見が、シンプルな一色のカラーになったことで、ブルーダルメシアンや、フラワーシリーズなどのセールスが上手くいかなかったことを窺わせた。
■10のソフトメーカーがデモンストレーション
「10 on X」と題して、MacOS Xに対応する10のソフトについて各社のゲストスピーカーがデモンストレーションを見せながらそれぞれの機能の紹介をした。
まずは、Microsoftの「Office 10」からスタート。Microsoftのジェネラルマネージャー ケビン・ブラウン氏が壇上に上がった。続いてAdobeの「Illustrator]。これもプロ使用をターゲットに焦点を絞っている。
QuarkのDTPソフト「Quark Xpress」は、現在まだβバージョンだが、近々、5.xバージョンを出す予定。また、HTMLへの変換も一瞬で可能にしている。
Filemakerの「FileMaker pro」はMac OS 9対応だが、Mac OS Xで動かすと、さらにスピードアップ。FileMaker pro 5.5バージョンからMac OS Xに対応する。
Connectixの「Virtual PC」。秋に出荷予定の最新OS Windows XPにも対応する。
Microsoftは、ジェネラルマネージャーのケビン・ブラウン氏が5分間の熱弁を振るった | Aliesの「MAYA」。写真はデモンストレーションで、CGのロボットが転んで破壊されちゃったところ |
従来のアップルにはなかった「Auto CAD」。エンジニアリングソフトなど、建築や車のデザインに必要不可欠なエンジニアリングソフトもスムーズに使えるようになった。
IBMの「Via Voice」のデモンストレーションでは、普通の速度でEメールの文章を読み上げたり、メールの操作などを音声でトライしても失敗がなかったため、会場は結構盛り上がりを見せた。
WorldBookの「WorldBook」は、教育用百科事典のようなソフト。CDおよびWeb上の約25,000件の記事や映像が簡単にサーチ出来る。教育に力をいれているアップルらしい学生向けのソフトだ。
Blizzardのゲームソフト「War Craft」やAspyer社のゲームソフト「Tony Hawks's pro Skater」も紹介された。これは、アメリカのゲームで最も売れているソフト。
Aliesの「MAYA」は、3D(3次元)のCGの制作ソフトで、デモンストレーションでは、可愛い3Dのロボットの動きで、会場を笑わせた。
いずれにしても、ターゲットは個人ユーザーではなく、デザイナーやエンジニア向けのプロ使用の色が濃いセレクションだ。最後に、エンドユーザー向けに、2種類のゲームへのアプローチを忘れなかったのは、アップルらしい気配りかもしれない。
■マックのビューティフルな理想とは?“Shop Different”
スピーチの冒頭で、ジョブズが上機嫌で紹介したのが、アメリカで5月の中旬にオープンした、アップルのリテールストア(直営店)に関してだった。場所は、ワシントンD.Cエリアの一番大きなショッピングモールの中と、ロサンゼルスのグランデールの2ヵ所だ。
そして、ロサンジェルスのストアのようすを、ジョブズ自身がリポートするビデオが放映された。
映像から受ける印象としては、日本語では「直営店」と訳しているが、「ショップ」や「ストア」という言葉のイメージとは少し違い、オープンなスペースに、アップルの新製品がずらりと並び、デジタルビデオ、デジタルカメラや、MP3プレイヤーなどが設置されており、客は自由にいろいろ試して見ることができる。
■会場でのPower Mac G4 867MHz対Intel Pentium 4スピード合戦
Power Mac G4 867MHz対Intel Pentium 4の速さを競うデモの結果はG4の圧勝に。これにはジョブスもご満悦だ |
Power Mac G4 867MHzが、どれだけスピードが速いかという証明のデモンストレーションで、ビデオを出しながら、1.7GHzのIntel Pentium 4との対決を試みた。
アップル社の副社長の、フィル・シラー氏がこの対決を試みるために、ステージに呼び出された。2つのユニットは同じメモリーサイズとビデオカードを搭載したもので、ビデオの編集やエンコードで、この2つを比較してみた。これによると、G4は45秒で、Intel Pentium 4は、82秒かかった。G4の方がこの場合、80%速いという結果に至ったが、このソフト自体がたまたまG4の方が有利に働くものであったというイジワルな見方もある。
ジョブズが「一番好きな映画」と自信を持って薦めた新作映画「Monsters,Inc.」の一部を使ったPhotoshopのベンチマークでは、Power Mac G4の圧勝に終わった。
■ジョブズのちょっとしたハプニングについて
デジタルカメラを繋げようとして、失敗 |
Mac OS X v10.1の説明の中で、ジョブズがOSで直接ダウンロードを試みて、デジタルカメラをつなごうとしたが、まずは、失敗。会場も苦笑の波が……。機嫌をそこねたジョブズのもとへ、デジタルカメラを受け取ろうとしてやってきたアップル関係者に投げて渡したつもりが、一瞬にしてバタっと床に落ちてしまった。機種はコダックのDC3400だった。
一旦中断して、次の話題へ切り替え、何事もなかったように進んだが、スピーチの最後にジョブズがもう一度デモをトライし、またまた失敗。しかし、3度目の正直で、今度は、すぐ立ち直り、ようやくデモを完結した。
■最後はiDVD 2の紹介
iDVDの画面でのデモンストレーション中。会場もじっ~と画面に食い入る一瞬 |
SuperDrive(DVD-R/CD-RW両用ドライブ)が搭載されている、Power Mac G4は20万円台後半から用意されている。これには、DVDを編集・製作できるソフト、iDVDが付属する。
ジョブズはマーケットリサーチで、今年の終わりまでに、25%のアメリカの家庭が、ベーシックなDVDプレイヤーを所有するという予想を念頭において、DVDの機能をパソコンに導入することを重要視している。
ここで、iDVD 2が紹介された。9月に出荷する予定。「iDVD2はハリウッドの映画界で使われているものよりも優れているんだ」と、ジョブズの自信満々のプロダクトだ。
デモンストレーションでは、iTunesとiBookのTVコマーシャルを見せてくれた。iDVDのプロモーションのTVCMで、新婚さんが、どこかの島での結婚式の様子を、すぐにパッケージ付きで、CDに焼いて、その映像を新郎の親に送っているという設定の、ちょっとコミカルなものだ。
最後にジョブズは、今年になってから発表された、新しいテクノロジーやイニシアチブの融合による、アップルストア、Power Book G4、Mac OS X、新しいiBook、新しいPower Mac G4、iTunes、iDVDなどの成功を讃えて、アップルチームに感謝の気持ちをあらわしながら、ステージを降りて行った。
終了後、プレス用に写真を撮らせてくれるフリータイムで見た彼の横顔は満足そうに微笑んでいた。
□Macworld Conference&Expoのホームページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□Apple Computerのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□スティーブジョブズ氏による基調講演に関するページ(英文)
http://www.apple.com/quicktime/qtv/mwny01/
□関連記事
【7月19日】Macworld Conference&Expo / New York開幕速報
基調講演とAppleブースの第一報
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010719/macw01.htm
【7月19日】アップル、シルバーの新筐体を採用したPower Mac G4
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010719/apple1.htm
【7月19日】アップル、新iMac発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010719/apple2.htm
(2001年7月19日)
[Reported by 川口雅代]