第107回:不便になった米国ホテルインターネット事情



 弱り目に祟り目ではないが、今年からAT&T Worldnetの米国インターネット接続料金プランが変更になったと思ったら(筆者の周りでは、この影響でISPをSo-netに乗り換えた人が非常に多い)、米国にあるホテルからの通信事情もどんどん悪くなってきた。

 そもそもの原因は、おそらく我々ユーザーの側にありそうだが、それにしてもインターネットの環境がここ数年で大幅に改善してきたことを思うと、まさか“不便な世の中になったものだ”と、感じるようになるとは思いもよらなかった。さて、どうしたものだろうか。


●20分以上お使いの方からは超過料金をいただきます

 この連載を始めたころ、米国ホテルからの通信事情がなかなか快適だと書いた覚えがある。米国の固定電話は市内通話が基本料金に含まれた契約になっているのが通常で、ホテルから電話をかける際も電話施設を利用する手数料(といっても手数がかかるわけではないので、施設使用料といったところか)を除けば、1コール25セントほどで時間は無制限である。

 手数料が25セントから1ドルほどなので、1コールあたり50セントから1ドル25セント。ほとんどのホテルでは、75セントから1ドルの間に収まる。ちょこっと電話をかけるにはお高い料金だが、時間無制限となればインターネットユーザーにはうれしい設定だ。さらにビジネスユーザー向けのホテルチェーンなら、有料会員になると市内電話がすべて無料で利用できるというサービスもある。

 時間無制限のインターネット接続サービスプロバイダ(ISP)と組み合わせれば、ずっと繋ぎっぱなしでインターネットを使っても、追加料金は取られないわけだ。

 しかし、同じホテル内で同じように繋ぎっぱなしにするユーザーが増えると、今度はホテルの回線がパンクしてしまうという問題が出てきた。最近はあまり経験していないが、コンピュータ系のカンファレンス会場近くのホテルに滞在中、夜中に全く電話がかからなくなってしまうのだ。ホテルが引き込んでいる電話回線の数は、ホテルの部屋数よりも少ないため、みんながインターネットに繋ぎっぱなしで仕事を始めると、とたんに電話が使えなくなるのである。

 そこで2~3年ほど前から、一部のホテルで「1時間まではxxセントの接続料。1時間を超えた分については1分あたり10セントいただきます」と注意書きを出すようになった。

 僕が初めてその話を耳にしたのは、ニューヨークのヒルトンホテルだったが、その時点ではまだ、この脅し文句(?)は実行に移されていなかった。実際に1時間以上使っても、ホテルのチャージには上がってこなかったのだ。

 ところが、ほどなくしてあちこちのホテルで、超過料金を取るようになってきてしまった。特にヒルトン系はひどい。比較的新しく部屋数もそこそこで、電話回線数の問題はあまりなさそうなところでも、1時間以上の超過料金をきっちり請求される。おかげでホテルにチェックインすると、すぐに電話料金体系をチェックする癖が付いてきた。

 予約時には電話料金体系をチェックできないことも少なくないからだ(チェックできたとしても、その情報が正しいとは限らない)。先週、宿泊していたニューヨークグランドセントラル駅横のルーズベルトホテルは、なんと20分を超えると超過料金がかかってしまうのだが、予約時にはそんなことは全くわからなかった。

 今のところ「○○系ホテルは全部そうなっている」ということはなく、たとえばヒルトンでもサンノゼヒルトン(今年2月に利用)では大丈夫だった。また、高級ホテルではなく中級以下のクラス(ヒルトン系ならハンプトンイン、マリオット系ならコートヤードなど)の方が、超過料金を設定していないことが多い。

 自分たちの使いかたが原因とは言え、なんとも不便な話だ。


●広がりつつはあるが浸透はしていないブロードバンド接続サービス

 もっとも、ブロードバンドのこの時代、何も電話線でそれほど騒ぐ必要はないじゃないかと思う人もいることだろう。実際、ブロードバンドアクセスが可能なホテルは、米国でかなり増えている。そして、ブロードバンドアクセスサービスに関しては、予約時に部屋の設備としてしっかり明記されていることが多いため、ホテルを選べるならば、あらかじめそうした設備のある部屋を予約しておくこともできる(もっとも設備あり、と書かれているので予約したら、実際には導入前だったということもあるのだが)。都市部であれば(予算や場所などの条件に合わないことを承知なら)ブロードバンド接続が使える部屋を取ることは難しくない。

 筆者もすべてのホテルを泊まり歩いているわけではないが、ブロードバンド接続の導入率が圧倒的に高いのがマリオットホテル。次にW(ダブリュー)ホテル、クラウンプラザあたりが続く。ヒルトンやウェイティン、シェラトンにも入りつつあるが、まだあちこちにあるという状況ではない。

 これらブロードバンド接続サービスは、部屋内の端末に付いているEthernetケーブルをPCに接続することで使えるようになる。DHCPでIPアドレスを設定するようにしておき、Webブラウザを起動すれば自動的に課金を承諾するページが表示される。

 料金は1日あたり9.95ドルから19.95ドル。1週間の割引レートを設定している場合もある。正直言ってあまり安くはないため、ちょっとメールを見たりWebをチェックするといった用途には向かない。しかし、本当にビジネスで宿泊するならば、決して高い料金ではないと思う。ちょっとWebで調べものをするだけでも、それにかかる時間が大きく異なるからだ。本当に忙しいとき、わずかな時間でもそれが睡眠時間の延長に繋がると思えば、10ドルぐらい安いものと思える。

 LAN内蔵ではない機種をお持ちの方は、忘れずにLANカードを。そして無線LANカードをお持ちなら、それも一緒に鞄に入れておくといい。無線LANによるブロードバンド接続を行なっているホテルもある上、米スターバックスが店内での無線LANアクセスサービスを発表したからだ。さらに一部の空港でも利用できる。かさばらないものだけに使わなかったとしても損をするわけではない。


●意外に安い米国の携帯電話

 米国ネタが続いたので、米国の携帯電話についても簡単に触れておこう。僕は今まで、米国の携帯電話をレンタルをしたことはなかった。なぜなら、日本で借りる米国の携帯電話はあまりに値段が高すぎると思ったからだ。

 たとえばある業者は「業界最安値」を謳っているが、レンタル7日間で60分通話料金込みのプランで19,800円。1分あたり225円で、超過料金も毎分230円かかる。

 毎回使っている成田の駐車場業者が扱っている米国の携帯電話レンタルはかなり安価なのだが、それでも1日あたり500円で1分180円の料金設定だ。前述のパッケージに当てはめると14,300円でかなりお得だ。

 ただ、いずれにしても高いことに変わりはない。米国の携帯電話は日本と異なり、着信時にも同じ料金がかかる。それでも必要なら使うしかないのだが、それだけのお金を支払うぐらいなら、プリペイド携帯電話を使った方がよっぽど安く済む。(というのは、実はPC Watchにも記事を寄稿している塩田紳二氏に教えてもらったのだが)

 米国のプリペイド携帯電話はAT&Tワイヤレスやベライゾンがサービスしているが、僕が購入したのはAT&Tワイヤレスのプリペイド携帯電話サービス( http://www.attws.com/personal/prepaid/epw_index.jhtml )。モトローラ製プリペイド端末Free2Go Wireless V2397を入手した。米国のプリペイド携帯電話は住所が米国外でも入手可能で、料金の再充填もインターネットで行なうことができる。

 購入した端末は99.99ドルで、25ドルのプリペイドカードが含まれている。全米統一料金で契約した場合、25ドルで利用できる時間は約38分となる。12,000円で38分なら、前述のレンタルでも悪くなさそうだが、使う頻度が高くなればなるほど、プリペイドの方が安くなる。

 プリペイド携帯電話の料金体系は、購入するプリペイドカードの金額によって異なる。25ドルのカードは(全米統一料金の場合)1分65セントだが、100ドルのカードでは35セント、200ドルのカードなら25セントまで下がる。1週間以上旅をする場合や、年に数回米国に行くなら、プリペイド携帯電話はかなりお得だ。この程度の料金なら割と気軽に利用できる。

 ホテルから電話をかける場合を考えると、市外電話をかける場合には、固定電話を使うよりも携帯電話を使った方が遙かに安く上がることや、自分専用の電話番号が持てる点は大きな利点だと思う。

 ただし、いくつか気をつけなければならない点もある。

 まず、最後にプリペイドカードを端末に登録した日から90日以上経過すると、チャージしてあるクレジットが期限切れで無効になること。つまり、3カ月以上間が空く場合は、あらかじめそのつもりで安価な25ドル程度のチャージにしておくのが無難である。

 次にいったん無効になった端末にクレジットを登録するためには、実物のプリペイドカードを購入しなければならないこと。インターネットで再充填する場合は、端末が無効になる前に行なわなければならない(いったん、再充填を行なうと日付はリセットされるため、期限切れ前にインターネットで再充填して期限を延ばすという手もある)。

 プリペイドカードは全米にあるAT&Tワイヤレスの店で購入できるとのことだ。おそらく、直営店ならどこでも購入可能とは思うが、まだ一度も無効にしたことがないため、すべての店に置いてあるのかは確認できていない。

[Text by 本田雅一]


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