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NEW PRODUCTS TESTREPORT

キヤノン
BJ S630
静粛性と高品位印刷を両立させた史上最速のインクジェットプリンタ
TEXT:本間 文 Bun Honma


完全双方向印刷を実現した本機のエンジン部。動作音もわずか39dBという静粛なものとなっている
 PCの低価格化が進むにつれ、ユーザーの周辺機器に対するコスト意識もシビアになっている。とくに、最近は写真画質を追求した各社のフラグシップモデルは、出荷台数が伸び悩み、売れるのは低価格プリンタばかりという状況だ。そうした状況にあっても堅調な売り上げを見せているのが、キヤノンのBJ S600だ。

 同製品はこれまでは敬遠されがちだったCMYKの4色モデルで、とくにモノクロやカラーのビジネスプリントを得意とする。今回紹介するキヤノンのBJ S630は、このBJ S600をベースに高速化を図ったA4判プリンタだ。とはいえ、ビジネスユースばかりではなく、家庭での利用も想定しているため、ボディカラーはこれまでのややベージュがかった色から、最近のメーカー製PCに多いシルバーグレー系の色へと変更されている。


インターフェースはUSBとパラレルポートという一般的な組み合わせのため、接続側のPCを選ばない ボタン類は電源ボタンと、リセットボタンのみとなる。写真中央は電源ランプ

 BJ S630最大の特徴は、印字速度がカタログスペックでモノクロ17ppm、カラー12ppmを実現したことだ。このスペックは現時点では史上最速とも言えるもので、カラー印刷で待たされるイライラはすっかり解消してくれる。その高速印字を支えるのは、シンメトリックなインクノズル配置によって、完全双方向印刷を実現したことにある。双方向印字自体はすでに数年前から一般に取り入れられてきた技術であるが、実はCMYの単方向配列では、同じ色を打ち出しても往路と復路で色が異なってしまう。これは、インクの着弾順が異なると、メディアへの定着時に色が微妙に変わってしまうためだ。


さすがに、フォトプリンタに比べれば粒状感は残るが、自然な階調表現は4色インクならではと言える
 このため、既存のインクジェットプリンタでは、印字ヘッド幅分を印刷するのに1.5往復をかけて往路、復路ともにインクを重ね打ちすることで色ムラを抑えるモデルも多い。つまりは、双方向印刷とは言っても、単方向印刷の倍速を実現できるわけではないのだ。これに対し、BJ S630では、往路用と復路用に専用ノズルを設け、インクの着弾順を変えずに往復印刷ができるようになっている。もちろん、高速印刷に対応すべく、印字ヘッドや紙送りなどの走行系も強化されており、高速印刷でも文字のかすれや縞状のノイズが発生しないように工夫されている。しかも、静粛性も高解像度印刷時に39dBと、自宅で使っていても給紙時の音を除けば苦にならないレベル。また、顔料系インクを採用したモノクロ印字のクオリティはレーザープリンタ並みだ。

 さらに、BJ S600シリーズ用に開発された新型ヘッドのインク吐出サイズは5pl(ピコリットル)と細かく、薄色インクを採用したフォトプリンタにはおよばないものの、専用紙を使えば写真印刷でも十分に使えるレベルのクオリティを実現している。確かに、近付いて見ればハイライト部などのドットがクッキリと見えてしまうが、薄色インクとレギュラーインクの切り換えをしなくてよいCMYインクモデルの特性を活かし、自然な階調表現を実現している。これならば、ビジネス文書はもとより、2,400×1,200dpiの高解像度出力と耐光性25年を実現したプロフェッショナルフォトペーパーを組み合わせ、写真を活かしたカレンダー作りなどでも十分に楽しめるはずだ。

 BJ S600用に開発されたプリンタドライバには大きな変更はなく、設定項目が少ないシンプルなユーザーインターフェースは、初心者でも違和感なく使いこなせるように配慮されたものだ。しかも、このドライバはNECやコンパックコンピュータ、ソニー、日本IBM、富士通のPC主要モデルにプリインストールされているほか、この夏の新製品では、新たに東芝と松下電器産業のノートPCにもドライバがプリインストールされることが決まっている。

 さらに、オプションとしてAXIS製のBluetoothアダプタ(BT-850:19,800円)も用意されており、Bluetooth対応PCをなどを組み合わせれば、ワイヤレスのプリントアウト環境を構築することもできる。PDFドキュメントなどの大量印刷をする機会が多いユーザーには、初心者、上級者の区別なく、安心してオススメできる製品に仕上がっている。


  • 製品名:BJ S630
  • 標準価格:54,800円
  • メーカー:キヤノン販売株式会社
  • 問い合わせ先:0570-01-9000
  • URL:http://www.canon-sales.co.jp/
  • 最大解像度:2,400×1,200dpi
  • 印刷方式:ノンインパクト・シリアルカラーバブルジェット
  • 用紙サイズ:A4~A5、レター、リーガル、ハガキ、封筒、バナー紙
  • 給紙枚数:普通紙100枚、ハガキ40枚、BJ専用バナー紙2~6枚
  • インターフェース:USB×1、双方向パラレル×1
  • 本体サイズ(W×D×H):430×294×177mm
  • 重量:約5kg

    ■写真撮影
    若林直樹(STUDIO海童)

    □キヤノン販売のホームページ
    http://www.canon-sales.co.jp/
    □製品情報
    http://www.canon-sales.co.jp/Product/BJ/s630.html
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    http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010511/canon.htm


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