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デスクトップ版Palominoは1.53GHzで3DNow! Proをサポート


●Palominoは新ブランドで登場?

 いよいよAMDの次期Athlon「Palomino(パロミノ)」が秒読み態勢に入った。ゴールデンウイーク前に開催した「2001 Annual Shareholder Meeting」で、AMDは3月末から出荷を開始しているモバイル版Palominoは5月に(市場で)流通するとアナウンスした。少なくともモバイル版Palominoは、ごく近いうちにお披露目になりそうだ。ここで、現状でわかっているPalominoの動向を整理しておこう。

 まず、AMDはPalominoで新しいブランド名の導入を検討している(いた?)らしい。実際、4月には一部のOEMメーカーに対して、「Athlon-H」というサブブランドを名つけると説明したという。ただし、同時期にこうした説明を受けていないメーカーも複数ある上に、サブブランドはなくなったという情報もある。まだAMD内部でも錯綜しているようだ。そのため、実際の登場時にどんなブランド名になるのか、あるいは新ブランド名をつけないのか、現段階でもまだわからない。AMDの場合、ドタンバで変わることも多いので、発表までは情報は信用できない。

 しかし、もしブランディングするとしたら、それは、AMDがPalominoを新チップとして強力に推進する可能性を意味している。以前このコラムでは、AMDがそれほどPalominoを強く打ち出さないのではと予想したが、それは間違えていたことになる。これは、Palominoのフィーチャがそれだけ強力であることを意味しているのかもしれない。

●予想より高いPalominoのクロック

 1つの要素は、SIMDアーキテクチャの拡張だ。AMDは「3DNow! Pro」と呼ばれる新SIMD命令とユニットをPalominoに加えるつもりだと、あるOEMメーカーは伝える。ただし、現段階では、これがウワサされているようなSSE互換のものなのかどうかはわかっていない。ただ、技術的には、3DNow!とSSEの両対応にすることは、レジスタが異なるため難しいはずだ。

 Palominoのクロックも、ある程度見えてきた。複数の情報源によると、AMDはデスクトップ版のPalominoを1.5GHzと1.533GHzで投入する予定でいるらしい。PalominoのFSB(フロントサイドバス)は、当初は266MHz(133MHzのDDR)オンリーで200MHz FSBはないとOEMには伝えられていたが、どうやら200MHz FSB版も1.5GHzまではあるらしい。

 また、AMDのOEMメーカーによると、AMDはデスクトップで1.4GHzと1.33GHz、1.3GHzのPalominoも出す見込みだという。この情報が本当だとすると、Palominoのプロダクトミックス(製品ミックス)はローエンドが1.3GHzということになる。つまり、Palominoは良品チップのほとんど全てが1.3GHzを超えるわけだ。じつは、これは予想をかなり上回る数字だ。Thunderbirdと同程度だとすれば、今年中盤時点でのローエンドは1.1~1.2GHz程度のはずだからだ。そうなると、Palominoは高クロック化に向けても相当チューンされている可能性がある。

 一方、現行Athlon(Thunderbird:サンダーバード)は、1.4GHzで打ち止めになるらしい。そのため、第3四半期には1.3~1.4GHzで、ThunderbirdとPalominoがオーバーラップすることになる。また、AMDは年内中はThunderbirdと200MHz FSBは残すとあるOEMには伝えたという。現段階では、AMDがThunderbirdを残す理由はまだわかっていない。同じ製造プロセスなら、1四半期程度でThunderbirdからPalominoに切り替えてしまっても問題ないはずだからだ。

●Palomino対応のチップセットとマザーボードが必要

 もっとも、ThunderbirdからPalominoへのデスクトップでの移行は、若干注意が必要だ。というのは、Palominoは現行のSocket Aマザーボードやチップセットで対応ができないケースが出てくるからだ。少なくとも、チップセットベンダーやマザーボードベンダーはそう言っている。

 「Palominoをサポートするためには、マザーボードデザインをいくつかモディファイする必要がある。だから、Palominoには新マザーボードが必要になる」と語るのは、GIGA-BYTE TECHNOLOGYのBrian Chen氏(Project Manager, Marketing Division)。GIGA-BYTEはすでにPalomino向けのデザインガイドに沿ってマザーボード開発を行なっているという。また、あるベンダーはPalominoでは電源電圧が1.75Vから1.8Vに上がるため、対応が必要だと言っている。

 チップセットも対応が必要だ。VIAのManuela Mercandelli氏(VIA Technologies、Specialist International Marketing)は次のように説明する。

 「PalominoとMorganは次のチップセットでサポートする。と言っても、チップセットに大きな変更を加えるわけではない。コアロジックサイドで要求されているマイナーな改良をいくつか加えるだけだ。Slot AからSocket Aへの移行の時と同じような感じだ」。

 ただし、ベンダーによってはPalominoに特別な対応は必要ないと言っているところもあるのでややこしい。SiS(Silicon Integrated Sytems)のNelson Lee氏(Sr. Technical Marketing Manager, Integrated Product Division)は、次のように説明する。

 「当社のSiS735チップセットはPalominoと現行のThunderbirdの両方をサポートできる。Palominoが新CPUと言っても、Athlonと基本的なビヘイビアは同じで、ただ消費電力を下げただけだ。チップセットもマザーボードも同じもので大丈夫だ。少なくとも、AMDのプロダクトスペックを見る限り、我々の製品には変更の必要はないはずだ」。

 VIAとは食い違っているが、これは、SiSの方がチップセット量産時期がVIAより少し後ろへずれていることと関係している可能性もある。また、SiSのLee氏は次のような推測も語っている。

 「これは憶測だが、それは当社のチップセットがモバイルも同じ製品でサポートしているからかもしれない。おそらく、彼らの製品は電力制御関係で何らかの機能が欠けていたのではないだろうか。PalominoではPowerNOW!など、電力制御で新機能が加わっているからだ」。

 いずれにせよ、Palomino登場時には、チップセットとマザーボードの対応をチェックする必要が出てきそうだ。ちなみに、これは次世代Duronである「Morgan(モルガン)」についても同様だ。

●760MPのThunderbirdサポートは

 また、PalominoではCPUパッケージも若干変わるらしい。これはまだ確証が取れていないが、現行のCPGA(ceramic pin grid array)パッケージ版と、電気特性を高めたOrganic素材のPGAパッケージ版があると、ある情報筋は伝える。高クロック版が新パッケージになるらしい。もっとも、これは納得できる話だ。というのは、高クロックになればなるほど、電気特性のいいパッケージが必要になるからだ。だが、新パッケージでも、ピン配列は同じで、Socket A互換だという。

 AMDは、サーバー&ワークステーション用のPalominoも、第2四半期中に発表する予定だ。これは、AMD760MPチップセットとペアになる。ただ、760MP自体がまだエンジニアリングサンプル状態なので、実際に量産チップの760MPマザーボードが出てくるのは6~7月以降になりそうだ。

 以前伝えたように、AMDは760MPではPalominoしかサポートしないとしている。ただし、これはAMDの見解で、マザーボードベンダーの対応はどうやら違うらしい。例えば、GIGA-BYTE TECHNOLOGYのChen氏は「760MPマザーボードでThunderbirdもサポートする。問題があるとは聞いていない。おそらく、760MPマザーボードが出た時点でPalominoは市場でまだ入手できないだろうから、Thunderbirdをサポートしないのは現実的ではない」と語っていた。

 また、AMDはShareholder Meetingで今後のロードマップも示した。すでに報じられているが、AMDはHammerファミリのリリースを2002年前半から2002年後半へ遅らせた。これは、また、Athlonは、0.13μm版でSOIテクノロジを使わない「Thoroughbred(サラブレッド)」のほかに、Hammerと同様にSOIを使った0.13μm版「Barton(バートン)」を用意する。これは、SOI(Silicon On Insulator)の現実的な導入時期が来年後半であることを意味している。また、AthlonでもSOIを使うということは、それだけSOIのコスト低減のメドが立ってきたということになる。

 Shareholder Meetingでは、0.13μm版Palomino、つまりThoroughbredと見られる次世代Athlonのダイサイズ(半導体本体の面積)も明らかにされた。80平方mmだという。現行のThunderbirdは約120平方mmで、PalominoはCebitでライターの笠原氏が撮影したダイを見る限り、それよりやや大きい程度だ。1世代で約60%程度にシュリンクすると考えると、80平方mmというのは穏当なサイズということになる。

□関連記事
【3月24日】速報:AMDがPalominoコアのAthlonを公開モバイルAthlon 1GHzもデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010324/cebit03.htm


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(2001年5月11日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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