新iBookファーストインプレッション


5月25日 発売

価格:158,000円~

 5月1日に米国で新iBookが発表されてからおよそ一週間が経過。本日ようやく日本のプレス関係者を対象とする記者発表会が開催され、新iBookをまのあたりにし、実際に手に取ることができるようになった。それはわずかな時間ではあったものの、その第一印象を細部の写真とともにお知らせする。


●iBookはそつのない控えめな優等生!?

 別途お伝えしている記者発表会ののち、20台程度のiBookが用意されているレセプションエリアが解放された。昼食時とあって会場には軽食や飲み物も用意されてはいたが、一同は取るものもとりあえず、展示されているiBookへと向かう。今回は撮影専用のエリアが設けられなかったこともあり、実際に手に触れてみたい人と、撮影セットを組んで本格的な製品撮影を始めるメディアとが混じり、大変な混雑となった。

 発表されているスペックから感じていたことは、これまでのアップルらしからぬ(失礼!)そつのなさで、控えめな優等生といったイメージ。実際に手にとってもそのイメージは変わらなかった。ほぼA4版で2.2kgというサイズは、国産のモバイルノートを知るものにとって決してコンパクトとはいいがたいが、従来のiBookとはそのサイズにおいて明かな方向性の違いを見せている。

 従来のiBookはたびたびパソコン誌の表紙を飾ってはいたが、小柄なアイドルタレントがiBookを抱えて微笑む構図は、iBookが細いウエストをすべて覆い隠し、その対比において明かなミスマッチ感を醸し出すケースも少なくなかったように思う。しかし、今度はそんなイメージを持つことはなさそうだ。

 PowerBook G4から採用されているマグネット式でラッチがない液晶パネルを開くと、思いのほか液晶パネルまでの奥行きを感じる。パームレスト部分が広く大きめのトラックパッドは、米国でのメインターゲットとなる教育市場で低学年層の利用を考慮したものだろう。一貫してこだわりを見せるフルサイズ、フルピッチのキーボードは、PowerBook G4に比べクリック感は少ないが、ストロークは同程度確保されている。キーボードの操作感は従来のiBookとよく似たものだ。

 ポリカーボネートの外装は、天面と底面がポリッシュされた白。これらにサンドイッチされた中央部分は、白にシルバーを加えたような色合いでややざらつきを残して仕上げてある。内部のフレーム部分はマグネシウムが採用されている。実際に試したわけではないが、アップルの発表によれば衝撃などへの耐久性は、従来モデルの2倍にあたるという。

 今回は、内部構造へのアクセスが許可されなかったが、メモリとAirMacカードは、いずれもキーボードを外して増設する仕組み。PowerBook G4のように底面パネルのネジを取り外す必要がないのはありがたい。

 搭載されているOSは、Mac OS 9.1。もちろん、Mac OS Xをインストールすることもできる。デスクトップピクチャにも、新しいデザインが用意されている。液晶のサイズは従来モデルと同じ12.1インチだが、画面の解像度は800×600ドットから、1,024×768ドットへ精細化している。そのため、従来のiBookを知っていると、表示されるアイコンや文字が小さく感じることもあるだろう。液晶パネルの明るさについては、展示されている環境が複雑なカクテル光であるため、現時点では判断が難しい。

 その他、細部については写真とそのキャプションを参照してほしい。

縦横比こそ異なるが、本体のデザインは1月に発表されたPowerBook G4によく似た印象。製品紹介のビデオにも、PowerBook G4からiBookへのモーフィングが使われている 写真の手前が、実際は背面にあたる。従来のようなハンドルはない。ヒンジの部分は、排気口も兼ねている。天面のアップルロゴが使用中に光る仕組みは、PowerBook G4と同様

本体に向かって左側に集中しているインターフェース部分。左奥から順に56Kモデム、10/100Base Ethernet、FireWire(IEEE1394)、USB×2、RGBビデオ、AV(コンポジット/ヘッドフォン)となる。カバーがないのは、小学校などで多少乱暴に扱われた際に、カバーが取れたり、壊れたりするのをあらかじめ避けるため 本体背面のヒンジ部分。スリットは排気口になる。ファンは本体に内蔵されているが、説明するスタッフによれば、ファンが回転するようなケースは極めて少ないとのこと

ヒンジ部分の工夫で液晶パネルは奥に開く。これでパームレスト部分の広さを確保している。ただし、液晶パネルを水平に近い位置まで開くことはできない 本体右側のドライブ部分。ドライブの開閉は、キーボード最上段の右端にあるイジェクトボタンを利用する。ドライブ側には開閉ボタンが用意されていない

フルサイズ、フルピッチのキーボード。国内モデルはJIS配列で、米国仕様にあるスペースバー右側のコマンドキーは存在しない。PowerBookシリーズで提供されているUSキーボードへの交換サービスの実施は検討中とのこと 大きめのトラックパッド。米国で最大のターゲットとなる教育機関における利用で、低年齢のユーザーの使い勝手を向上するため大きめにしてあるのだろう

背面のバッテリ部分。充電状況とバッテリ残量を知らせるグリーンのLEDが見える。バッテリはコインなどを使って回せるネジでロックされている。どちらかと言えば、複数のバッテリを交換しながら使うような用途には不適 スリープランプは液晶パネルを開くボタンの左横に位置する。スリープ時は白色LEDがゆっくりと点滅する


●新iBookは、ライトユーザー層の掘り起こしができるか?

 従来モデルもそうだが、米国ではiBookには「教育市場」という明確なターゲットとなる市場が存在する。しかし、日本においてはそうした市場は存在せず、それがiBookの位置づけを曖昧なものにさせていた部分がある。

 つまりiBookが日本で成功するためには、米国とはまったく異なる市場を独自に掘り起こす必要があるといえる。コアなMacユーザーは早速Apple Storeなどに殺到しているが、残念ながら彼らがそのカギを握るわけではない。かつてiMacがなしえたような、ライトユーザー層をふたたび掘り当てることができるかどうかがカギとなる。もちろん女性の支持も欠かせないであろう。

 ここ数年、アップルコンピュータのテレビCMなどの広告材料は、米国のものをそっくりそのまま持ってくるだけのケースがほとんどだった。成功したものもあっただろうが、思わず首を傾げてしまうようなものも少なくない(CMの善し悪しではなく、日本での文化に合うかどうかという点で)。ターゲット層の違いを考えれば、今回そうした方法をとることは果たして正しいと言えるのだろうか? まだ明かされていないiBookのプロモーションや販促展開にアップルコンピュータがどのような対応を見せるか期待したい。ちなみに、今日の発表会では、こうしたイベントでは恒例となった外来CMの披露はなかった。

 今日の天候は、曇天に雨が混じるものだった。過去の記事と、その日の天候をチェックしてもらうと気が付くかも知れないが、実は日本国内で開催されるアップルの発表会や、新製品の発売日には意外なほどに雨が多い。社内によほど強烈な雨男(女)でも…と冗談混じりに勘ぐることもある。実は3年前、初代iMacの発売日に開催された記者発表当日も、こうした曇天のなかで時折雨の混じるものだったのだが……。

左側面。下にあるのがPowerBook G4。スペック上はiBookのほうが、0.6インチ厚い。こうしてみると、その違いが液晶パネル面と底面のポリカーボネート層によることが明確になる チタン外装のためAirMacのアンテナ用に用意されているPowerBook G4のデザインパーツが、ポリカーボネート外装のiBookには存在しない

iBookとPowerBook G4を重ねてみた。奥行きはほとんど変わらないが、横幅はこれだけ違う。液晶サイズは異なるが、縦方向の表示ドット数はいずれも768ドット

外部ディスプレイに接続するRGBコネクタは特殊な形状であるが、付属の変換アダプターで一般的なVGAコネクタに変換可能。また、以前のモデルで同梱されていた、AVケーブルは別売されることになる これまで本体の写真だけがシンプルに使われていた化粧箱も一新。iBookの発売日となる5月25日には、販売店の店頭にこの箱が並ぶことになる

【お詫びと訂正】外部ディスプレイに接続するためのRGBコネクタは別売としておりましたが、正しくは製品に同梱されます。お詫びして訂正いたします

□iBook製品情報
http://www.apple.co.jp/ibook/index.html
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【5月9】アップル、新型iBookを国内発表。発売は5月25日
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010509/apple.htm

(2001年5月9日)

[Text by 矢作 晃]


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