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富士写真フイルム株式会社から、第二世代の330万画素スーパーCCDハニカムを搭載した、光学6倍ズーム機「FinePix6900Z」が国内向けに正式発表された。このモデルは既報( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010326/yamada.htm )のように、3月にドイツで開催された「CeBIT2001」で先行発表されたニューモデルだ。
本機の概要を簡単にいえば、昨年発売された240万画素ハニカムCCD搭載機の「FinePix4900Z」のボディーに、今春発売の「FinePix6800Z」に搭載された第二世代となる1/1.7インチ330万画素のスーパーCCDハニカムを搭載した進化モデルといえる。
また、FinePixシリーズのレンズ一体型タイプのハイエンドモデルであり、パーソナル用途はもちろん、カメラ店での証明写真のような業務用途までも視野に入れたモデルである。そのため、ズームレンズ一体型モデルながらも、一眼レフタイプに近いフルマニュアル撮影や外部ストロボでの撮影まで広く対応できる多機能なものに仕上がっている。
●数多い細部の改良点
先代「FinePix4900Z」との外観上の違いは、ブラックボディーになった点くらいで、見た目は、それ以上の差異がないように見える。もちろん、手にした感じも従来の「FinePix4900Z」そのものという感じだ。
だが、細部をよく見てみるとかなり細かな改良が施されている。
まず、従来機で操作しにくかった「AE-L」ボタンやMF時の画像拡大表示ボタンなどが押しやすくなり、ダイヤル類のクリック感が明らかに向上、価格相応の高級感を備えている。さらに、カスタムホワイトバランスが2種類登録できるようになるなど、従来機よりもさらに本格的な撮影に対応できるモデルへと進化した。
新採用の第二世代となるスーパーCCDハニカムは、基本的に「FinePix6800Z」と同じもの。実効感度はCCDの高密度化により、ISO感度が100/200/400の切り替え式になっている。
とくに本機の場合、外部ストロボ撮影で使われるケースが多いわけだが、大半のものは、ISO感度が100/200/400の切り替え式になっている。先代モデルは最低感度がISO125だったため、やや使いにくい部分もあったが、本機はISO100になったことで、ISO125の設定がない外部ストロボでも使いやすくなった。
ISO100 | ISO200 | ISO400 |
【お詫びと訂正】初出時にISO感度の表示が誤っておりました、左から100/200/400が正しい感度です。お詫びして訂正いたします
●起動3秒、撮影間隔1秒の軽快さ
撮影感覚は先代モデル同様、とても軽快で、沈胴式の6倍ズーム機ながらも、起動時間は約3秒と高速。また、撮影間隔も約1秒と快適だ。
ホールド感も35mm一眼レフに近い感覚で、安定した撮影が可能。また、液晶ビューファインダー使用時は、ファインダーを顔につけることで、両手を含めた三点支持になるため、ブレが少なくなる点も大きなメリットといえる。
撮影してまず感じるのは、液晶ビューファインダーの品質。これは、先代モデルに比べて見え味が向上しており、表示の粗さが軽減されているため、より心地よく撮影できる。この見え味のよさは、同じ液晶ビューファインダー搭載機でも「オリンパス C-700UltraZoom」に比べると、明らかにワンランク上の実力といえる。
また先代モデルでは、AF測距中にファインダー画像が止まってしまったが、今回のモデルでは、測距中でも画像が静止することなくそのまま表示される。このため、ピントを合わせる過程がファインダーでも確認できるようになった。液晶ビューファインダーを覗いていると被写体の変化が確認しにくいため、画像が静止してしまうと非常に使いにくいが、本機ではその点が大きく改善されたわけだ。
さらに、ボディー背面にある画像拡大ボタンの機能も変わっており、従来は押している間だけ画面中央部が画面の真ん中の枠内で拡大表示されたが、新機種では一度押すと拡大表示され、もう一度押すまでその状態が維持できるようになった。
MF時はもちろん、AF時でも測距後であれば拡大表示できるため、なかなか便利な機能だ。液晶ビューファインダーは表示が粗めで、ピントの確認が困難なのが欠点だが、この機能によりピントの山も掴みやすく安心して撮影できる。
このほか、従来機では撮影結果をチェックしながら撮影するには、プレビュー表示で確認し、OKボタンを押していちいち記録する必要があったが、本機では通常モデルのように、撮影直後に自動再生され記録されるモードも追加された。
意外に便利だったのが、本機で新設された「ワンプッシュAF機能」。これは、マニュアルフォーカス時に「ホワイトバランス」ボタンを押すと、一度だけAFが働くというもの。これを使えば、マニュアルフォーカスモードでも最初にこのボタンを押してAFで測距し、その後、マニュアルフォーカスリングでピントを微調整することができるため、よりスピーディーな撮影ができる。
このように、外観は先代モデルと変わらないが、使用感は大幅に向上している。
ただし、少々残念だったのは、ピントの測距時間がやや長い点。とくに、暗めのシーンを望遠側で撮影すると結構待たされる感がある。速度よりもピント精度を重視したためだと思われるが、この点はさらなる高速化を望みたい。
また、バッテリの持ちは液晶ビューファインダーメインで、ストロボを多用しなければ、ほぼ100枚以上の撮影が可能。だが、もともと軽快なモデルであり、128MBスマートメディアが使えるので、できれば電池の持ちをもう少し改良して欲しいところだ。
●レンズ一体型モデルでトップレベルの高画質
先に発売された「FinePix6800Z」と同じ、第二世代の330万画素スーパーCCDハニカムを搭載したモデルだけに、その画質には目を見張るものがある。
解像度の高さはパーソナル機のなかでもトップレベル。さらに、色再現性も良好で階調の再現性も優れている。
ただし、本機の場合通常のコンシューマー向けモデルと違い、見た目の印象は比較的おとなしく、クセのないものに仕上がっている。本機は業務用途までを視野に入れていることもあって、素材として素性のいい画像データを得ることを第一目標にしているようだ。
もちろん、大型CCDを搭載しているデジタル一眼レフほどのポテンシャルはないが、1/1.7インチCCDとしては、なかなかの実力といえる。
また、輪郭強調も標準設定では、後処理がしやすいよう弱めの設定になっている。見た目の切れ味はさほど鋭く感じないが、解像度は十分にあるので、後処理で最適なシャープ処理を施すことにより、十分にシャープな画像が得られる。
もちろん、シャープネス(輪郭強調)をカメラ内で高めることもでき、後処理をせずにシャープ感が欲しい人は、設定を「ハード」に変更すると良いだろう。
本機のライバルとなる、この春の1/1.8インチ334万画素機は、昨年春よりも画質が向上しているとはいえ、実効感度、解像度、階調性、色再現性といった総合性能では、本機が一歩リードしていると感じる。画質面でのライバルは当面のところ、2/3インチ400万画素CCDを搭載した「オリンパス E-10」といえそうだ。
しかし、ベータ版のためか細部を見ると、斜め線の描写がやや不自然な感もある。このあたりがもう少し滑らかになり、ハニカム特有のノイズ感がさらに軽減されると、より自然な描写になるのだが、この点は今後の展開に期待したいところだ。
●高い完成度の実用機
今回は短時間での実写だったため、その実力をフルに発揮することができなかったが、感覚的には、本格的な作品作りにも十分に耐えるポテンシャルを備えたモデルに仕上がっている印象だ。
もちろん軽量、コンパクトで多機能なモデルであり、道具としての完成度は、現行機種のなかでもトップレベルといえる。
ただし、カメラとしての基本性能は高いがどこか実用本位なイメージが強く、使っていてワクワクしたり、面白味を感じる部類のモデルではない。つまり、性能はいいが、どこかビジネスライクで愛着が沸かない感じなのだ。
やはりパーソナルユーザーにとって、実売10万円を超えるモデルであれば、実用性+αの楽しさが欲しい部分もある。
先代モデルに比べ、ブラックボディーになり、細部の操作感が改良されるなど、質感は向上しているが、モノとしての魅力をもうワンランク高めたいところ。このあたりの微妙な味付けは、なかなか難しい部分であり、今後のFinePixシリーズが抱える大きな課題ともいえそうだ。
富士フイルムも「FinePix6800Z」でのポルシェデザインなど、新たなチャレンジをしている時期だけに、今後の展開に大いに期待したい。
□富士写真フイルム
http://www.fujifilm.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj769.html
□関連記事
【4月24日】プロカメラマン山田久美夫の富士フイルム「FinePix6900Z」β機実写画像
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010424/yamada1.htm
【4月24日】富士フイルム、光学6倍ズーム/330万画素ハニカムCCD搭載の「FinePix6900Z」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010424/fujifilm.htm
(2001年4月27日)
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[Reported by 山田久美夫]