西川和久の
「日本語版Windows XP Beta2ファーストインプレッション」


Windows XP Beta2

 今日2001年4月24日、日本語版Windows XP Beta2が開発者などにむけて公開された。これまで英語版のBeta2をベースにいろいろ記事が掲載されたので、もう読み飽きているかも知れないが、日本語版ということで改めてファーストインプレッションをお届けする。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●Windows XPってどんなOS!?

 Windows XPはMicrosoftにとってある意味記念すべきWindows。これまでWindows 9x/Me(32/16bit混在)、Windows NT/2000(32bit)と二系統にわかれていたWindowsをついに一本化する見通しが立ったのだ。長年亡霊のようにつきまとっていたDOSや16bitWindowsと決別し、マシン本来が持っているパワーを100%引き出すことが可能になる。また、開発者から見てもWindowsが一本化するメリットは大きい。ソフトウェアの作動確認やドライバの二重開発をせずにすみ楽になるからだ。


 ラインナップは、Windows XP Home EditionWindows XP Professionalと、この二種類。違いは前者がDual CPU非対応、後述するリモートデスクトップのサーバー機能などサーバー系がない、Administratorの廃止など、基本的にProfessionalのサブセット版という位置付け。Windows Me → Windows XP Home Edition(つまりPCへのプリロードはこちら)、Windows 2000 Professional → Windows XP Professionalという流れとなる。サーバー関連については現在まだコードネームのWhistlerのままであり、Windows XPと呼ぶかどうかは不明だ。


 チェックに使ったマシンは以下の通り。ある程度新旧入り混じったマシン構成にした。以前Windows 2000の記事を書いたときと違うのは、全てメモリが128MB以上、MMX Pentium CPUは除外となっていることだろう。サウンドやネットワークカードの記述はないが、メジャーなものばかりなので問題なく動いている。また今回試したのはProfessionalの方であり、特に記述がない限りProfessional版のことだと思ってほしい。

  IBM ThinkPad 600 Intel CA810E SuperMicro P6DBE Aopen AX6B
CPU Mobile Pentium II
233MHz
Celeron 733MHz Pentium II 400MHz
Dual
Celeron 450A
(300MHz Overclock)
Memory 128MB 256MB 256MB 128MB
HDD(I/O) 6GB(ATA/33) 10GB(ATA/66) 10GB(ATA/33) 10GB(ATA/33)
Video MagicGraph128/2MB
PCI
on chip ATI RAGE 128
AGP
ATI RAGE Pro/8MB
AGP
ACPI Function Yes Yes No*1 No*2

*1 Dual CPUマシンにISAインターフェースのPC Card I/Oを付けた場合、MPSマルチプロセッサにしないとISAのインターフェース自体を認識しなくなる。これはWindows 2000でも同じ。
*2 原因不明。BIOSではACPIはONになっている。ただ、Pentium III 600MHz(旧コア)も認識しないので、マザーボードのリビジョンがかなり古いのかも知れない。もちろんBIOSは最新版にUpdate済みだ。


 まず、気になるのは動きが非常に重いこと。まだBeta2なのでチューニングの余地は残っていると思われるものの、以前Windows 2000のチェックをしたMMX Pentium+Memory 64MBマシンや東芝DynaBook SS3010+Memory 96MBのNotePCでは動かす気になれないほど。特に新しいUIであるLunaを使っているときその現象は如実に表れ、古いマシンではメニューなどを描画しているのが見えてしまう。

 この原因はメモリ容量なのか? CPUパワーなのか? 軽く調べたところ、Windows 2000に対して起動直後約15MBメモリを多く消費。CPUパワーは今回調べた4機種でかなり差があるがどれも似通ったスピードという雰囲気で何処が悪いのか!? よくわからない結果となった。メニューオペレーション中頻繁に引っかかったり、固まったり……と、まだ不安定な部分があるため、バグやデバッグコードが一杯残っているのだろう。加えて起動直後、Internet ExplorerとOutlook Expressを立ち上げただけで110MB以上のメモリを消費している。この点は明らかにWindows 2000と比較してメモリイーターであり、当面メモリを128MB標準搭載するであろうメーカー製PCや、既に64MB~128MB程度のメモリで運用しているWindows 2000マシンにとって厳しい作動条件となる。


 NotePCのサスペンド/復帰は噂通り速い。試したマシンが一機種だけなので、全てに当てはまるか? は不明であるが、少なくともThinkPad 600は5~6秒でその処理を終える。この点はWindows 2000と比較して明らかにアドバンテージだ。PC Cardなどプラグ&プレイの認識/開放も若干速くなっている。ただし、Lunaを使う場合、クラシックUIよりタイトルバーなど画面を構成するパーツが少しづつ大きくなっているため、画面解像度800×600ピクセルでは使い難い。最低ラインは1,024×768ピクセルとなるだろう。富士通LOOX、SONY VAIO C1など、縦ラインが短い特殊な機種でも同様なことがいえる。いずれにしてもLunaに関してはデザインや色使いが美しくない、表示が重い、縦ライン768ピクセル必要など、筆者としては気に入らない点が満載だ。先のメモリ容量の件も含めぜひとも更なるチューニングを希望する。


 違法コピー防止のため搭載されたWindowsアクティベーションは、社内のProxy(WinProxy)経由でも問題なく登録できた。パネル上に名前や住所などを書き込む項目が表示されるものの、基本的にユーザー登録とは別なので省略してもOKだ。ただし、Beta2に関しては同時に複数のマシンで動かしても何も警告は出ず、多分、登録シーケンスのチェックだけで実際は機能していないと思われる。*3 このWindowsアクティベーションに関してはいろいろ疑問点があるものの、機能しないのではチェックできずRC1以降で再度確認することになりそうだ。


 このほか、どうやらUSB2.0は滑り込みセーフ、Windows Media Player 8、Internet Explorer 6搭載など、新機能を組み込んでいるが、これらはほかのWindowsでもWindows Updateを使い公開されると思われ、特にWindows XPにおけるアドバンテージにはならない。Windows 9.x/Me/NT/2000との違いはここをご覧頂きたいが、基本的に見栄え以外は細かい改良に留まっていると見て間違いない。

*3 実際ここで使用したマシンは全て同じCD-ROMから同じCD Keyを使いインストールしたが、何もそれらしい現象は発生していない。ただし、登録しないとワーニングは頻繁に表示される。話によると、このバージョンは50台までインストールできるそうだ。筆者一人ではチェックしきれない台数である。


 以上、Windows XPの使用感などを簡単に書いたが、Windows好きといわれている筆者でさえメリットよりデメリットが目立つ格好となった。「ベースのほとんどがWindows 2000であればこれほど重くならないのでは!?」というのが正直な感想だ。どの部分で処理が重くなっているのかをもう一度分析して、出荷までに可能な限り対処する必要があるだろう。


 さて、あまり暗い(?)話ばかり書いても面白くない。以降その代表的な画面キャプチャを並べたので新しいWindowsの雰囲気を見てほしい。(画面はクリックすると拡大します)

Desktop1
 新しいUIの通称Luna。デスクトップからマイ ドキュメントなどがなくなり、スタートメニューの中に取り込まれた。最近使ったアプリケーションは左側に表示され、頻繁に立ち上げるものについては即座に起動できる。マイ ドキュメント、マイ ミュージックがあって、マイ ムービーがないはちょっと不思議。

Desktop2
 新しいスタートメニューとクラシックUIの混在型の設定。あの趣味の悪い(?)配色やデザインは嫌いだけど、新しいスタートメニューは使いたいという人向け。こちらもデスクトップはごみ箱だけのシンプルな構成だ。マイ ネットワークなども、タスクバーのプロパティで表示/非表示の選択が可能。

Desktop3
 Windows 2000のクラシック形式にこだわる人向けの設定。アイコンなどが若干綺麗になった程度の変更なので、これなら違和感なく操作できる。筆者は通常これでオペレーションしているものの、この設定だと何のためのWindows XPか!? という疑問が残る。その変更点の多くがUIに注がれているからだ。

login
 新しいログイン画面。クラシック形式のログイン画面にすることもできる。
 各自のアイコンはアカウントの設定で変更でき、Home版では家族の写真などに変えることが予想されるが、Professional版に必要なのだろうか? この「ようこそ」という表現は昔から嫌い。

ControlPanel
 コントロールパネルは、Windows Meから採用された細かい部分を見せない表示方法が標準だ。もちろん、左上にある“クラシック表示に切り替える”を選択すれば、見慣れた表示になる。この画面ではわからないが、まだ全てのアイコンが新しい仕様になっていないため、旧仕様のものはジャギが出て汚い。

New Taskbar Function
 “同様のタスクバーボタンをグループ化する”にチェックすると、例えばIEを複数開いている場合、1つのタスクバーボタンへまとめることができ便利だ。

テーマの変更
 旧Windows族(?)にとって、唯一の救いがあるとすれば、ほかのテーマをWebなどからダウンロードし、その見栄えを変更できることだろう。クールなテーマがほしいところだ。

フォルダ表示
 フォルダにおいて、アイコンをカテゴリー別に表示することが可能になった。
 また、そのシーンにおいて、よく使われるだろうアクションが左側に並べられ、マウスの右ボタンをできるだけ使わなくても済むようになっている。

Windows Update
 Windows XP用のWindows Update。LunaのUIと整合性をとっているようだ。もちろんWindows XP自体がまだBeta2なので、このWebデザインも出荷版では変更される可能性がある。余談であるが、英語版はスタートボタンの下は詰まっているのに日本語版で空いているのは何故?

写真表示
 画像ファイルの表示は、縮小表示に加えて、このような表示も可能になった。また、プロパティでは、Exifの情報も見れる。

写真プリントウィザード
 インターネットを経由した写真プリントを注文するウィザード。現時点では米国仕様のままであるが、最終的には国内各社のサービスが入ってくるだろう。

Webへデータ転送
 写真データに限らず、プロバイダなどのWebスペースへデータ転送するウィザード。もちろんそのプロバイダのアカウントを持っていることが前提になる。

IMEの設定
 複数のDBCS圏用IMEを選択して使えるようになった。
 Windows 2000では、複数のSBCS圏+1つのDBCS圏用IMEだったので、この点については進歩している。

ファイアウォールの設定1
 ファイアウォールの設定。xDSLやFTTHにより常時接続が一般化している中、そのセキュリティが心配されてる。OSに標準搭載されるのは当然だろう。別途購入する必要がなくユーザーとしては助かる。

ファイアウォールの設定2
 ファイアウォールの詳細設定。ただし、標準はOFFになっている。PCを買ってすぐの初心者がここを意識的に触るとは考えにくく、ある程度設定済みにした方がいいのではと思われる。

PPPoE
 LAN接続、PPP接続に加えて、“広帯域の接続”、つまりPPPoEも標準搭載となった。現在使われているPPPoEモジュールは、たまにネットワークカードなどと相性問題がでているため、OS標準搭載によって安定するのではないだろうか!?

PPPoEのプロパティ
 “広帯域の接続”プロパティ。オペレーション上はPPPと変わりなく、インターネット接続ウィザードで簡単にセットアップできる。

リムーバブルディスクの内容自動認識
 リムーバブルディスクを認識すると、中に入っているデータを調べ、処理に適切なウィザードが起動する。この例ではデジカメの画像が入っているメディアを認識したところ。“画像の取得”にすると、写真が縮小表示され取り込む画像を選択できる。先の画像表示形式やインターネットを利用した写真プリントなど、かなりデジカメを意識した機能強化を施している。

リモートデスクトップ1
 本田氏のコラムで出てきたリモートデスクトップのサーバー側設定画面。ただし、Home版では非搭載。DesktopPCとNotePC間でのやり取りが便利になるので、ぜひともHome Editionでも搭載してほしい機能だ。

リモートデスクトップ2
 リモートデスクトップの最新版クライアントモジュールは、Windows XPのCD-ROMに入っている。Windows 9.x、Windows NT/2000、にも対応し、表示は速く画面も綺麗だ。これまでのWindows Terminal Serviceから明らかに進化している。

リモートデスクトップ3
 Windows 2000から接続したリモートデスクトップ。フルスクリーン表示はもちろん、このようにWindow表示も可能だ。また、双方のデスクトップからのドラッグアンドドロップにも対応している。ただし、リモートデスクトップを使った場合、そのサーバーとなるマシンで操作するとコネクションは切断される。


●総論

 Windows XPはWindows 2000で抜けていた(もしくは間に合わなかった)部分を機能強化し、確かに便利になったものの、今のままでは筆者はWindows XPを好きになれない。基本的にLunaと呼ばれる新しいUIが肌に合わないのだろう。クラシック・インタフェースへ戻せばほぼWindows 2000と同じになるが「では何のためのXP?」という素朴な疑問も持ち上がる。

 同様の意見は(ライター仲間や各誌の編集担当など)パソコン歴が長いユーザーに多く聞かれ、更に追い討ちをかけるWindowsアクティベーション。元麻布氏の記事にあるように、Windows 2000とWindows XPの差はたった10%程度であるのなら、Windows 2000を使い続けるパワーユーザーも多いと思われる。少なくともWindows XP Professional(以上)に限っては、見掛けでごまかすのでなく、その道のプロに好まれる魅力的なファンクションを満載すべきではないだろうか!?

 Windows XP Home Editionに関しては、メモリ容量とデバイスドライバの問題以外特に気になる部分はない。見栄えの好き嫌いはともかく、Windows MeやWindows 2000と比較してもずいぶん使い易いという評価になるだろう。NotePCユーザーにとってはメモリ容量と画面の狭さが×、サスペンドやプラグ&プレイが早い点では○となる。


 いずれにしてもまだBeta2。出荷版では改良される可能性も残っている。期待半分不安半分で筆者はその日が来るのを待ちたいと思う。

[Text by 西川和久]


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