西川和久の「Windows 2000 英語版β3」特別レポート


Windows2000 Professional

恐るべし!! Windows 2000 Professional

 世の中既に正式出荷前からWindows 2000の話で盛り上がっている。ただLinuxが注目されている関係かいつもとは少しパターンが違い、Windows 2000に対して賛否両論。「本当はどうなのか!?」を、今回はちょっと違った角度からレポートしてお届けする。ただし、今回のレポートは“Windows 2000 Professional”だけであり、“Windows 2000 Server”などサーバー関連には全く触れていないので予めご了承頂きたい。また、試したバージョンは英語版β3(Build2031)。たぶん近々これをベースにした日本語版β3も出てくると思われるが、日本語版固有の何かがあれば追ってレポートする予定である。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●Windows 2000 Professional巷の評判

 例えば否定的な意見として、ここに『Windows 2000の「隠れた失敗」』という話が載っている。詳細はリンク先をご覧いただきたいが、要点は「コンシューマーには重過ぎ/複雑過ぎる」、「企業には能力不足」この2点だ。他にも色々同じような意見が掲載されているものの、大筋は似たような感じで、肯定的な意見はあまり見かけないのも事実。

 確かにWindows 98やLinuxと比較したばあいWindows 2000にとって旗色の悪いケースもある。ただ後者に関してはサーバーの話。コンシューマー(および企業)におけるデスクトップ環境に限って考えると、少なくとも複雑過ぎる件はWindows 2000、Windows 9x、Linuxとどれも同じでもう十分複雑だ。DOSやWindows 2.x/Windows 3.xの時のように、何かトラブルが発生した時、数分以内で解決できることなどまずありえない。どのファイルがどこにあってどのような機能になっているかを100%一人で把握することなど、もはや不可能だからである。逆にWindows 2000で搭載したSFP(System File Protection)*1がうまく機能すれば少なくともシステム関連のファイルでトラブルが発生するケースは激減する(はず)。システムに含まれるDLLのバージョンが違うことによる不都合が単一化によりなくなるからだ。

 β3を見る限りセットアップに関しては、対応しているハードウェアだけならどのOSよりもキーボード入力するシーンも少なく、ほぼ全自動でWindows 2000 Professionalはインストールされる。PnPの認識率もLinuxやWindows 9xよりも高い。更に標準ドライバはdriver.cabへまとめて入っており、デバイスを追加する毎にいちいちOSのCD-ROMを探してセットアップする必要はなくなった。もちろんcab(β3で約50MB)になった分、ディスク容量と展開時にCPUパワーを必要とするが、OSを全てハードディスクへ保管するよりはるかにディスク効率は良い。

 このように、Windows 2000だけが特別複雑過ぎるというわけではなく、逆に管理上楽になった部分もある。製品に向け更なるブラッシュアップを期待したい。

*1 OSファイル(ドライバや共有コンポーネントなど)の同一性を保証する機能で、OS以外のセットアップ・プログラムがシステムファイルを書き換えようとしたばあい、もとの状態へ復旧する仕掛け。


●本当に重過ぎるか!?

 さて次はいつもOSが出る度に問題になる“重さ”についてちょっとした実験を行なった。ただ筆者的には128MBのDIMMが9,000円を割り、300MHzを超えるCPUが10,000円未満で買えるこのご時世、もうどうでもいい話のような気もするが、比較的古いリソースを抱えている企業にとっては重大な問題となるのだろう。

 用意したマシンはノートPCも含め計4台。

  Intel Advanced/EV Toshiba DynaBook
SS3010
IBM ThinkPad 600
2645-41J
GIGABYTE GA-BXD
CPU MMX ODP
166MHz(Socket5)
Mobile MMX Pentium
266MHz
Mobile Pentium II
233MHz
Dual Celeron
300A(450MHz)
Memory 64MB(SIMM) 96MB 128MB 384MB
HDD 2.0GB(SCSI) 4.3GB 3.2GB 10.0GB
HD I/O Buslogic/FlashPoint E-IDE Ultra ATA33 Ultra ATA33
Video Mach64/4MB
PCI
MagicGraph128/2MB
PCI
MagicGraph128/2MB
PCI
3D RAGE Pro/8MB
AGP
USB N/A Yes Yes Yes
ACPI N/A(APM) Yes Yes Yes

 ご覧のように、新旧入り乱れてのテストとなった。まずノートPCの2台はどちらも購入時Windows 95プリインストールモデル。USBもACPIもまともに機能しなかった時代である(といっても去年なのだが……)。更にMMX ODP 166MHzマシンは、Tritonチップセットが出て直ぐの歴史的なマザーボード。BIOSの最終更新日でさえも'96年9月27日である。DaynaBook SS3010は日本のサイトを見るとHDDはUltra ATA33となっているものの、USのサイトでは“E-IDE/PIO Mode 4”とスペックシートに書かれている。実際Windows 2000もE-IDE/PIOモードで動いているので上記の記述とした。

1)DaynaBook SS3010編

DaynaBookSS3010  まず一番はじめにインストールしたのはDynaBook SS3010。これには理由があり、あるとき暇つぶしにInternet Explorer 5.0を入れたところ、恐怖のブルーバックが頻繁に出るようになってしまった。「どうせWindows 98を入れるなら試しにWindows 2000を……」と思ったのがきっかけだ。

 手順は最新版BIOS(7.80)をUSサイトのDownloadからゲット&更新、後はそのままWindows 95から新規インストールした。驚くことにVideo、Sound、USB、Infrared、そしてWindows 95ではお目にかかったことがなかったACPIまでも完全に認識し起動。PIAFS64K用に使っていたパルディオ611Sもinfファイルだけをコピーし、認識させればOKだ。その後何週間も使っているが、ブルーバックは一度も出ず、極めて安定作動している。

Power Opton  更にACPIイネーブルになったこともあり、サスペンド/レジューム、ハイバネーションが高速に作動、バッテリー駆動時間までも若干伸びた。気になる速度も全体的にWindows 95で使っていた頃より気持ち速くなっている。これは非常に驚きであり、つい最近まで「そろそろ最新のB5ノートPCを買わないと駄目だな」と思っていた筆者であるが、当面その必要性がなくなってしまった。

 β2のときレポートしたように、US版とはいえRegional OptionでJapaneseを指定すれば、日本語フォントとIME 2000がインストールされ、ディスプレイのプロパティで表示フォントを全てMS UIゴシック/9ptへ変更すると、文字化けもなくOffice 2000を含め日本語&日本語アプリケーションが問題なく作動し通常業務がそのままこなせる環境となる。とにかく何もかもがプリインストールされたWindows 95より快適になり上機嫌の筆者である。

 余談になるが、USBの作動確認で試しに! とプラグインしたSmartMediaリーダー、ハギワラシスコムのFlashGateは、何とWindows 2000に標準でドライバーが入っており即Ready。まだまだWindows 2000には気づかない細かい仕掛けがありそうだ。

2)クラシックなマシン編

MMX-ODP/166MHz  DynaBook SS3010で気を良くしたが、「ここまで古いと駄目だろうな……」と思いつつインストールを開始した。今となってはWindows 95でさえ使いたくないクラシックなマシンである。もともとこのマシンはLinuxが入っていたのだが、流石にLinuxといえどもX-Window+GNOME+Netscapeの環境はちょっと重く、Pentium II ODP 333MHzマシンへ移行し休眠状態になっていたのだ。インストールにはフロッピーディスクを使いフォーマットからはじめる完全な新規インストール。もしこれで動けば、Windows 2000のほぼ最低ラインに相当する構成となる。

 結果はトラブルも発生せずあっさりインストール完了。トラブることを期待していただけにちょっと拍子抜けである。そしてその使用感は……嘘のように(このマシンとしては)速い。少なくとも、もともとあったLinux環境でNetscapeを使うより快適だ。更にこれは辛いか!? と思いながらセットアップしたOffice 2000さえ、複雑なことさえしなければ、十分実用的な速度で動く。丁度先日、DOS/V Power Reportの取材で編集長が事務所に来ていたのだが、そのときこのマシンを触って「俺のマシンより速い!!」と嘆いたほどだ。「そんなことは絶対にありえない!!」と思っているLinux派の方は、筆者の事務所で実際に触って頂いてもOK。恐るべし!! Windows 2000。どこがコンシューマーで使うには重過ぎるのか!? 今時、このクラスのマシンを探す方が大変だろう。重いのは3DゲームやMP3エンコードなど実際CPUパワーを必要とするアプリケーションであって、OS本体ではない。

 ただここで筆者的にズルをしているのはE-IDEではなくSCSIでHDDを接続、その昔高速で有名だったQuantum XP32150を使っているところ。CPUパワーよりI/O周りを速くした方が体感速度は向上するからだ。それでも今時のUltra ATA33/66と比較すれば格段に遅いのだが……。

3)その他編

 ここまで読めば結論は見えているので、残り2機種に関しては要点だけを書く。ThinkPad 600はWindows 95プリインストールマシン。Windows 98が出たときに対応BIOSやモジュールが出たものの、安定作動しないと友人のF氏やT氏から聞いている。筆者はそれを聞いていたこともあり、つい最近までWindows 95の状態で使っていたが、DynaBook SS3010のように調子よくなるかも!? と思いインストールした。US IBMでは既にWindows 2000β3に対応したモジュールが登録されWindows 2000 Readyになっている。ここから対応BIOSへ更新した後に、新規インストール。無事起動したのを確認してTrackPointドライバとThinkPad Utilityをセットアップすれば完了だ。何時もOSの入れ替えで鬼門になるMwave関係も問題なく作動し、やはりDynaBook SS3010同様、Windows 95で使っていた頃より全ての面で勝っている。いずれにしてもこういったOSの入れ替え時期は大手USベンダーの方がいち早く対応するのでそういった安心感はある。

 Dual Celeronマシンはオーバークロックも含め、もともと正式対応しているものではない。またβ3のセットアップ・プログラム自体ACPI関連に問題があり、CUIセットアップ画面時にそのままハングアップしてしまうマシンも多くある。これを回避するには“DOSまたはWindowsで再起動し、$win_nt$.~btフォルダのtxtsetup.sif中にある[ACPIOptions] ACPIEnable = 2をACPIEnable = 0へ書き換え、再起動”すればほどんどのケースでうまくいく。筆者のDual Celeronマシンもこの方法でOKだった。もちろんマシンのスペックがスペックなので激速。思いっきり快適な環境となる。


●Windows 2000β3の問題点

 さて、あまり誉めてばかりでも面白くないので、筆者の直面した問題点を挙げてみる。

1)ドライバ不足

 基本的にWindows 2000はNTなので、Windows NT用とWindows 98 WDMドライバは全て使える。ただディスプレイドライバに関しては既存のものを使うとせっかくのDirectX 7.0が動かなくなってしまうので注意が必要。またこれまでWindows NT 4.0で標準対応していたドライバでも、例えば3Com Fast EtherLink PCIのように入っていないものがあり、「エッ!?」と思うケースもしばしば。これはβ3なので間に合わなかったケースもあるらしく、出荷版に向け標準対応ドライバの数を増やす作業もしているらしい。

2)Adobe Gamma Controlが動かない

Adobe Gamma Control  せっかくWindows 2000でICM 2.0へ対応したにもかかわらず、標準のディスプレイドライバはWindows 98のGamma APIに対応していない。もともとWindows 98でも標準ドライバは対応せず、ベンダー製ドライバが必要であったが、今回はちょっと事情が違う。APIの口だけあり、中身が実装されていないのだ。左のパネルはWindows 2000でAdobe Gamma Controlを開いたところであり、一見動くように見えるものの、何を動かしても全く画面上に変化が現れない。Windows NT 4.0やWindows 98で、Windows 98 Gamma APIを実装していないディスプレイドライバを使うと、Photoshop内だけで有効になるエミュレーション・モードで作動し、この時は左のパネルにあるほど細かいコントロールはできない状態になっている。

 この問題はβ3の制限事項なのか、Winodws 2000の仕様なのか、どちらが正解かはわからないが、もし、後者であればPhotoshop 5.02ユーザーにとって結構痛い。

3)AOL 4.0 for Windowsからダイアルアップできない

 もともとAOL 4.0 for WinodwsがWindows NTに対応していないので文句をいう筋合いではないが、これだけノートPCで調子がいいと海外出張用のThinkPad 560ZへもWindows 2000を入れたくなるのは人情だ。AOL for Windowsは、AOLダイアルアップ・アダプタという特殊なPPPアダプタをネットワークへ組み込み、AOL内の無料コーナーなどではInternet接続できないようにしている。そしてこのAOLダイアルアップ・アダプタがNTに対応していない関係でモデムを使ったダイアルアップが不可能になってしまうのだ。筆者は海外でAOLを使いインターネットへアクセスしているため、この問題がクリアされない限り、海外出張用のThinkPad 560ZへはWinodws 2000をインストールすることはできない。MicrosoftでもAOLでもいいので早くこの問題は解決して欲しい。


●結論

 これまで書いたように、少なくともCPUパワーやメモリ容量は既にかなり昔のマシンも実用レベルで動いている関係上「重過ぎる」なんてことは絶対になく、今時32MB程度のメモリではWindows 95さえもスワップの嵐となる。更にノートPCではWindows 2000の方が快適になるケースまであり、比較的ノートPCの普及率が高い日本では有効なOSとなるだろう。パフォーマンスや安定性に関しては正に「恐るべし!! Windows 2000 Professional」。だてに開発時間を費やしていない。

 次にアプリケーションの互換性の問題は、例えば今回My Documentsの物理的な位置が、\winnt\Profiles\[user name]\Personalから、\Documents and Settings\[user name]\My Documentsへ移動している関係で、ハードコーディングしているものは問題が出るなど、基本的にWindows NTの作法にのっとっていないアプリケーションは駄目である。しかしこの問題はWindows 3.1からWindows 95へはもちろん、Windows 98へなったときでさえも些細な問題は発生した。Linuxの世界でもRedHat 5.xから6.0ではglibcのバージョンが違うため互換性の問題が出ているほどだ。ある意味、OSが変わるタイミングでは必ずついてまわる問題であり、完璧なものなど世の中に存在しない。ソフトウェアメーカーの立場になれば、バージョンアップで稼ぎ時という話すらある。

 最後に残った問題点はドライバの数となるが、これは時間が解決する。少なくともWindows 2000の出荷時期になれば、各ベンダーから対応ドライバが出ると思われる。それまで待てずにどうしてもβ3を使いたいのであれば、β3の時点で対応しているハードウェアを用意するしかない。

 結局、Windows 98 2nd Editionの次もWindows 9xアーキテクチャになったのは、絶対的なドライバの量と、もともと行儀が悪いアプリケーション、そして本体のバグ出しなどを最大限考慮してソフトランディングさせる作戦ではないだろうか!? Windows NT 4.0 SP5を見ても、本体を出荷して随分年数が経っている。とはいえ、もう少し開発ペースの向上を望みたい。筆者が40歳になるのが早いか? Windows 2000 Personalが早いか? なんて洒落にもならない。

[Text by 西川和久]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp