後藤弘茂のWeekly海外ニュース

AMD Athlon Brand Manager マーク・デ・フレール氏インタビュー
~次世代コア、Palomino、Thoroughbred、Appaloosaについて語る~


 3月末に米アナハイムで開催されたMicrosoftのハードウェア開発者向けカンファレンス「WinHEC 2001」で、のMark de Frere(マーク・デ・フレール)氏(Athlon Brand Manager)に、第2四半期に正式発表される予定の「Palomino(パロミノ:次世代Athlonコア)」についてうかがった。

[Q] ワークステーション版の「Palomino(パロミノ:次世代Athlonコア)」もデスクトップPC版と同様にSocket A対応パッケージのはずだ。では、デスクトップPC版と何か違いがあるのか。

[A] 違いはある。マルチプロセッサ構成のための新しいデザインが含まれている。発表時には詳細を説明しよう。

[Q] それは、「Thunderbird(サンダーバード:現在のAthlonコア)」を760MPマザーボードに挿すと動作しないということなのか。昨年の説明では、AMDのマルチプロセッサ構成のための新プロトコル(MOESI)はすでにどのAthlonコアにも入っているから、マルチプロセッサに対応できるという話だったが。

[A] 言えるのは、AMDがマルチプロセッサ対応チップセットでサポートするのはPalominoだけということだ。つまり、Palomino以外のコアは、AMD 760MPチップセットではサポートされない。

[Q] では、ユーザーがThunderbirdを760MPに挿した場合にはどうなるのか。トライする(PC Watchの)読者は必ずいると思うが。

[A] ユーザーがやる分には構わない……、というより、正確に言えば、あなたがトライしようとしたらAMDがそれを止めることはできない。ただし、AMDはサポートはしない。それは、あなたの問題だ(That's your deal)。

[Q] Palominoは昨年の説明ではデスクトップ版も今年前半の予定だった。どうしてモバイルとワークステーションが先行することになったのか。その理由を明確にして欲しい。

[A] これは技術的な問題ではない。ポイントの1つは財政上の問題だった。AMDの財政から見ると、もっとも重要なのは新マーケットの開拓だ。今現在、我々は、パフォーマンスモバイル市場にはいないし、ワークステーション市場にもいない。この新市場に入れば、より利益を上げることができる。

 それに対して、デスクトップではベンチマークを見てもわかる通り、我々はIntelに負けていない。競争をするのに、Palominoを急いで投入しなければならない理由はない。それなら、リソースをまずモバイルとワークステーションに集中した方がいいという話になった。当社のリソースは限られているので、一度に多くのことはできない。だから、デスクトップはしばらく安定した今のコアで続けて行くことにした。

[Q] Thunderbirdコアでも、昨年発表したクロックロードマップの通りに高速化できるメドが立ったということか。

[A] その通りだ。去年のCOMDEXの時と比べると、ThunderbirdとSpitfire(スピットファイア:現在のDuron)でより高いクロックを達成できる見通しになっている。あの時はThunderbirdで1.2GHzかその程度までのクロックの予定になっていたはずだ。

[Q] 1月のPlatform Conferenceでは、AMDはThunderbirdコアの1.5GHzまでの熱設計の説明を行なった。これは、1.5GHzまではThunderbirdで行くと受け止めていいのか。

[A] Palominoは1.5GHz以上で登場する。私は、それ以上のプレアナウンスはできない。しかし、1.33GHzと1.5GHzの間にはブランクがあるわけで、あなた達がそのブランクを埋める(推測する)ことはできるだろう。

[Q] 0.13μm世代の「Thoroughbred(サラブレッド:0.13μm版Athlon)」と「Appaloosa(アパルーサ:0.13μm版Duron)」もSocket Aになるのか。

[A] そうだ。すべての第7世代CPUは、Socket Aになる。我々は、2002年もSocket Aインフラを継続する。Socket Aは安定したインフラであり、長期間に渡ってアップグレードを約束できる。これは、OEMメーカーにとっても、また自作ユーザーにとっても、グッドニュースだろう。

[Q] ThoroughbredとAppaloosaは新チップセットを必要としないのか。

[A] ノー、ちょっと考えさせてくれ……まだアナウンスはしていないが、そういう指示はなかったと思う。Thoroughbredもダイ(半導体本体)は小さくなるが、機能的にはPalominoと同等のはずだ。

[Q] ただし、駆動電圧などは変わるだろう。

[A] もちろん、BIOSなどが対応しないとならないのは確かだ。しかし、同じインフラでPalominoとThunderbirdの両方に対応できるはずだ。

[Q] 次世代CPUの「Hammer(ハマー)」ファミリはどうなのか。バスとチップセットは異なるのか。

[A] 第8世代プロセッサに関しては、まだ何も言えない。同じかもしれないし、違うかもしれない。

[Q] WinHECの展示会場のAMDブースの係員は、モバイルPalominoの駆動電圧は1.4Vだと説明していたが、これは本当か。

[A] 詳細なスペックは今持っていない。まだ発表していないはずだ。

[Q] 同じ係員は、モバイルPalomino 1GHz版の熱設計電力(TDP:Thermal Design Power)が22~24Wになると説明していたが。

[A] 我々は、CPUをOEMメーカーの熱設計枠(Power envelop)に合わせて作る。そして、フルサイズノートの熱設計枠は、現在は24Wだ。Palominoがその枠を目指しているのは確かだ。

[Q] どうやってそこまで消費電力を抑えることができたのか。

[A] 正式発表の時に詳細は説明しよう。言えるのは、Palominoの特徴は低消費電力で、モバイルを実現できることということだ。消費電力に大きなインパクトを与えるのは、もちろんトランジスタテクノロジだ。だから、24Wの熱設計枠に納めようと思ったら、トランジスタテクノロジを改良して、その枠の中でできる限り性能を上げる必要があり、それをしたということだ。

[Q] 薄型軽量ノートPC向けのプロセッサ(TDP 11W以下)は考えないのか。

[A] すでに、ワンスピンドル(HDDのみ)の薄型ノートPCはカバーしている。しかし、Transmetaタイプの超薄型軽量となると、今のところ計画はない。今は、どんどん大きくなりつつあるデスクトップ代替のノートPCの市場に注力する。つまり、フルサイズで大型液晶ディスプレイ、高速なCPUを備え、デスクトップと比べて犠牲になるものがないノートPCだ。この市場へは、Palominoを投入する。

[Q] ThoroughbredとAppaloosaでは、超薄型軽量ノートPCも対応できるのではないのか。

[A] もちろん、(超薄型軽量を)絶対やらないとは言っていない。状況はどんどん変わりつつある。

[Q] DDR SDRAMインフラの現状をどう見ているのか。

[A] DDR SDRAMチップセットは、すでに4種類が市場に出ている。マザーボードについては、50のプロジェクトが進行中だ。大手PCベンダーも強い関心を示している。それは当然だ、コストアップなしで性能をアップできるのだから。Micron Technologyは、DDR SDRAMをSDRAMと同じ価格で提供すると言っている。第2四半期には、PC2100をPC133と同じ価格でOEMメーカーが調達できるようになるだろう。

 これをIntelプラットフォームと比べると、インフラのコストの違いは歴然だ。Athlon+DDR SDRAM対Pentium 4+RDRAMでは、大きなコスト差がある。その上、パフォーマンスも高い。また、DDR SDRAMはモバイルでも魅力的だ。それはDDR SDRAMの方がSDRAMよりも消費電力が少なくなるからだ。高いパフォーマンスと低い消費電力というわけだ。

[Q] AMDによるDDR SDRAMのバリデーションが十分ではないという声もあったが、今はどうなのか。

[A] DDRのバリデーションについては、我々は初期の段階からJEDECにAMD 760チップセットの仕様を渡し、サンプルもDRAMベンダー全てに渡してきた。DRAMベンダーとは'99年から協力してきた。しかし、このアプローチでは、第3者の目で厳密な互換性認証を行なうことはできなかった。そこで、現在はサードパーティであるSmart Modular Technologiesがメモリモジュールの互換性検証を始めている。これは、完全に独立した組織で、公正に検証を行なっている。その結果、今のところDDR SDRAMに関して互換性問題は発見されていない。こうした業界一丸となっての協力は、これまでになかったことだ。

[Q] 日本のNECは、Athlonのスモールフォームファクタ向けバージョンを搭載したPCを発売している。これは駆動電圧が違うだけなのか。

[A] そうだ。駆動電圧は違うが、それ以外のフィーチャは通常版のデスクトップAthlonとまったく同じだ。単に、OEMの熱設計枠(Power envelop)に合わせただけだ。

[Q] このスモールフォームファクタ版Athlonを、正式に発表してもっと広く提供する計画はないのか。

[A] 今、市場を見ているところだ。正直な話、日本はスモールフォームファクタの先進マーケットで、90%のデスクトップがそうだと聞いている。そして、我々は、こうした風潮が米国にも波及し始めると考えている。実際、米国のPCベンダーは企業向け市場(Commercial Market)ではすでにスモールフォームファクタへ動き始めている。だから、スモールフォームファクタ向けのソリューションを用意することは重要だと考えており、準備をしている。

[Q] AMDは2つのFabを持っている。製造態勢について説明して欲しい

[A] 現在、全てのDuronはFab25で製造している。MorganもFab25での製造になる。Athlonは、Fab25とFab30の両方で製造していたが、GHz以上の製品ではFab25版は非常に少ないはずだ。基本的にGHzプロセッサはFab30で製造している。PalominoもFab30でスタートする。


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(2001年4月23日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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