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Athlon/Duron用統合チップセット
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ECSのK7SEM。AGP×1、PCIスロット×2、CNRとAMRの両方のライザーカード用スロットが用意されている。フォームファクタはmicroATX |
以前のこのコーナーではAMDのAthlonやDuron用の統合型チップセットであるVIA TechnologiesのProSavage KM133を取り上げたことがあったが、その後SiS(Silicon Integrated systems)のSiS730Sというチップセットに関してもASUSTeK ComputerやECSなどから搭載マザーボードがリリースされており、元々安価なDuronに統合型チップセットを組み合わせて作ることができることが可能になっている。今回はこうしたSiS730S搭載マザーボードを取り上げ、ProSavage KM133とSiS730Sを比較してみよう。
●統合性が非常に高くコストパフォーマンスが高いSiS730S
SiS730Sの特徴は、ほかの統合型チップセットに比べて統合性が高いことだろう。ほかの統合型チップセットが、ノースブリッジ+ビデオチップという統合であるのに対して、SiS730Sはさらにサウスブリッジまでもが統合されている。つまり、通常のPCが「CPU+ノースブリッジ+ビデオチップ+サウスブリッジ」という4チップ構成になっているのに対して、SiS730Sでは「CPU+チップセット」という2チップ構成が可能で、チップ数を減らすことによるコストダウンが可能になっている。しかも、ハードウェアオーディオ、モデム、Ethernetなどの機能も内蔵しており、これだけでPCを構成する要素はほとんど揃っていると言ってよい。
少々話は脱線するが、現在大手PCメーカーにはPentium III/Celeron用の統合型チップセットであるSiS630/630Sの採用例が非常に多い。大手PCメーカーがSiSチップセットを採用する理由はこの統合性が高いことを評価しているといわれており、確かに4チップ必要なところが2チップでいいとなればコスト面からもメリットは決して小さくない。ちなみに、ソニーのVAIOシリーズのデスクトップPCとしては最もローエンドとなるVAIO Jシリーズは、CPUとしてDuronを採用しているが、チップセットは今回紹介するSiS730Sが採用されている。
SiS730Sに統合されているビデオチップは、SiSが自社開発したSiS300だ。SiS300は2Dのみならず、3Dアクセラレーション機能を有している。ただ、SiS300には現在のビデオチップであれば必ずと言ってよいほど持っているハードウェアT&Lなどジオメトリ演算を行なうエンジンは搭載されていない。SiS300が登場したのは'99年の春で、SiSでは3Dの処理能力としてはNVIDIAのRIVA TNT程度だと説明している。なお、SiSはSiS300の後継としてハードウェアT&L機能を搭載したSiS315を既にリリースしており、今後登場する統合型チップセットにはこのSiS315ベースのグラフィックス機能が統合されると見られている。さらに、Intel 815やProSavage KM133と同じように外部AGPスロットにAGPのビデオカードを挿すことも可能になっている。
●ビデオ周りのパフォーマンスはKM133と大差はない
今回はSiS730Sのパフォーマンスを計測するためにProSavage KM133、Intel 815を用意して比較することにした。CPUはDuron 800MHz、Celeron 800MHzで、メモリは133MHzのSDRAM(PC133 SDRAM、128MB、CL=3)で、SiS730Sに関しては内蔵ビデオメモリの容量を8MB、16MBを切り替えてテストすることにした。ベンチマークに利用したのはBAPCO(http://www.bapco.com/)のSYSmark2000とMadOnion.com(http://www.madonion.com/)の3DMark2000 Version 1.1で、それぞれオフィスアプリケーションにおける処理能力を計測するアプリケーションベンチマーク、3D環境における処理能力を計測するアプリケーションベンチマークだ。
結論からいえばSiS730Sのパフォーマンスは、ほとんどKM133と変わらなかった。SYSmark2000も、3DMark2000もほとんど数値は変わらない。しかし、KM133との大きな違いは、KM133が32bitカラーモードではベンチマークが途中で落ちてしまって完走しなかったのに対して、SiS730Sは32bitカラーモードでもきっちりと完走した。SiS730Sは既に登場してから2年以上がたつSiS630と同じグラフィックスコアを採用しているため、ドライバも何度もバージョンアップされており、枯れているのだろう。こうした点がSiS730SのKM133に対するアドバンテージと言えるだろう。
Celeron+Intel 815(内蔵グラフィックス)との比較では、Celeronに遅れをとる結果となった。一般的にDuron 800MHzはCeleron 800MHzを上回ることのほうが多いので、これは純粋にチップセットが足を引っ張っていると考えることが可能だろう。スタンドアローンのビデオカードとの比較では、KM133+GeForce2 GTS、Intel 815+GeForce2 GTSの両方に、全く歯が立たなかった。
【動作環境】
CPU | Duron 800MHz | Duron 800MHz | Duron 800MHz | Duron 800MHz | Celeron 800MHz | Celeron 800MHz |
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マザーボード | ECS K7SEM | ECS K7SEM | MSI KM133M Pro | MSI KM133M Pro | Intel D815EEA | Intel D815EEA |
チップセット | SiS730S | SiS730S | ProSavage KM133 | ProSavage KM133 | Intel815 | Intel815 |
メモリ | PC133 SDRAM | PC100 SDRAM | ||||
メモリ容量 | 128MB | |||||
ビデオカード | 内蔵(8MB SMA) | 内蔵(16MB SMA) | 内蔵(8MB SMA) | GeForce2 GTS(64MB) | 内蔵(10MB SMA) | GeForce2 GTS(64MB) |
ハードディスク | IBM DTLA-307030(30GB) | |||||
OS | Windows 98 Second Edition(英語版)+DirectX 8.0a |
【SYSmark2000】
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Duron 800+SiS730S(8MB) Duron 800+SiS730S(16MB) Duron 800+KM133(Int,8MB) Duron 800+KM133+GeForce2 GTS Celeron 800+Intel815(内蔵) Celeron 800+Intel815+GeForce2 GTS |
【3DMark2000】
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Duron 800+SiS730S(8MB) Duron 800+SiS730S(16MB) Duron 800+KM133(Int,8MB) Duron 800+KM133+GeForce2 GTS Celeron 800+Intel815(内蔵) Celeron 800+Intel815+GeForce2 GTS |
●将来AGPビデオカードを増設しようと思っているDuronユーザーにお薦め
以上のように、処理能力でいえばSiS730SはProSavage KM133と同等、Intel 815よりは劣ると言える。パフォーマンスを重視するのであれば、Apollo KT133やAMD-760などスタンドアローンのチップセットとAGPビデオカードの組み合わせがベストだろう。しかし、今回取り上げたECSのSiS730S搭載マザーボードの価格は1万円強と比較的安価で、これがビデオカード込みの価格と考えるとコストパフォーマンスは高いと言える。とりあえずはDuronを搭載したマシンを安価に作りたいが、近い将来のアップグレードパスは用意しておきたいというユーザーであれば検討に値する製品であることは間違いないだろう。
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(2001年4月17日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]