元麻布春男の週刊PCホットライン

Windows XP β2のハードウェアサポート状況をテスト
9x/2000から乗り換える意義は……


●Windows XP β2のハードウェアサポート状況をチェック

 このコラムでもすでに書いたとおり、Windows XPのβ2がWinHECで配布された。2日目の午後に配布されたのは、Windows XP Home EditionとProfessional Edition、“Whistler”Advanced Server、そしてDDKのβ2、計4枚のCD-ROMだ。その時点で開発中のOSの最新β版(WinHEC Editionと呼ばれる)を配布する、というのはWinHECでは恒例のことだが、2日目に配布するというのは異例のこと。例年は、最終日(3日目)までひっぱることが多かった。今回は3日目にキーノートがなかった(これまではMicro Processor ReportのMichael Slater氏がキーノートを行なうのがこれまた恒例)ことと合わせ、3日目は出なくていいよ、と言われているようで、不思議な気がしたものだ。

 それはともかく、今回配布されたβ2は、広範なベータテストが行なわれる最初のリリースとなる。4月中には、日本語版によるテストもスタートする予定だ。日本のユーザーが実際に使うことになるのはこの日本語版だが、ハードウェアサポートなどは英語版と日本語版で大差ないはず。ここでは一足先に、英語版のβ2で、Windows XPのハードウェアサポートを調べてみることにした。というのも、Windows XPのハードウェア仕様については、明確に記したドキュメントがほとんどなく、不明な部分が多い。ならば、実際に動くもので調べてみよう、というわけだ。特に、筆者がWindows NT/2000系へ移行できない原因となっている、AV系のハードウェアサポートは、果たしてWindows XPで向上しているのか、気になるところだ。


●Windows XPでAll In Wonder 128Proは動くのか

 今回Windows XP β2のテストに用いたのは、筆者の標準テストシステムであるD850GBベースのPentium 4システム。ビデオカードとしてLeadtekのWinFast GeForce2 GTSとAll In Wonder 128Pro(AIW128Pro)の2枚、ハードディスクに UltraDMA/100対応のDTLA-307030とUltra DMA/66対応のDPTA-372050の2種類を用意した。All In Wonderシリーズは、TVチューナ/ビデオキャプチャデバイスとしては、最もポピュラーなもの。この種のデバイスがサポートされるなら、まずこれではないか、と思ったのである。2種類のハードディスクは、Windows 2000がUltra DMA/100をサポートできていないことを意識してのものだ。このほか、サウンドカードとしてYMF744ベースのX-Wave6000あるいは、Sound Blaster Live! Valueのどちらかを加えている。

AIW128Proを組みこんだシステムをデバイスマネージャで表示
 まずビデオカードのサポートだが、GeForce2 GTS、Rage 128 Proともに、Windows XPは標準でサポートしている。INFファイルを調べた限りでは、GeForce2 UltraやRADEONの世代まではサポートされているようだ(GeForce 3のサポートは見当たらなかった)。ただ、Rage 128 Proがサポートされていることと、AIW128Proがサポートされていることは同じではない。AIW128Proを利用するには、搭載するRage Theater(ビデオエンコーダ/デコーダチップ)とTVチューナユニットのサポートが不可欠だ。

 結論を言えば、残念ながら今回のテストで、AIW128ProでTVを表示することはできなかった。画面1はAIW128Proを組みこんだシステムをデバイスマネージャで表示したものだが、ビデオキャプチャデバイスであるRage Theatre Videoと、Unknownデバイス(TV Audio Crossbarではないかと思われる)の2つに、デバイスが正しく動作していないことを示す「!」マークがついている。ビデオキャプチャデバイスが存在しないため、TVアプリケーションはエラーを出して異常終了してしまう。


TVアプリケーションがエラーを出して異常終了

 念のため、Windows 98 SE(英語版)にAIW128Proをインストールし、すべて動作することを確認した上で、Windows XP Professionalへのアップデートを行なってみた。このテストを行なったのは、いったんWindows 98 SEで動作するWDMドライバをすべて組み込んだ状態を作った上でアップデートすれば、ドライバを流用してくれるかもしれない、と考えたからだ。しかし、Windows 98 SE用のWDMドライバは、Windows XPと互換性を持たないらしく、結果は変わらなかった。

atividin.inf
 そこで、もう少し調べてみると、面白いことがわかった。Windows XPのINFディレクトリには、All In Wonderシリーズ用のINFファイル(atividin.inf)が用意されていたのである。

 ただ残念なことにatividin.infでサポートされているのは、AIWおよびAIWProの2種で、AIW128Proはサポートされていない。現時点でRage Theatreに対応したWindows XP互換のWDMドライバが存在しないようだ(Bt829のドライバがあることからすると、All In Wonder 128は動く可能性がある)。WDMは、Windows 9x系とWindows NT系で共通のドライバを利用するフレームワークとして登場したが、WDMドライバも実際はOS依存(OSが内蔵するWDMマネージャのバージョン依存)である、ということを痛感させられる(Microsoftによると、WDMに準拠することで、共通したドライバが書けなくはないようではあるのだが)。


usbport.inf
EHCIのエントリが用意されている
 INFを調べたついでに、もう1つ気になる部分を調べてみた。それはUSB 2.0のサポートだ。WinHEC前に東京で開催されたプレス向けの説明会では、最初に出荷されるWindows XPでは、USB 2.0のサポートが行なわれないという説明があった。

 確かにUSBコントローラを定義するINFファイル(usb.inf)には、USB 2.0に対応したコントローラが見当たらない。しかし、USB Portを定義したusbport.infには、USB 2.0のHigh Speedモードに対応するEHCIのエントリがすでに用意されている。Windows XPでUSB 2.0をサポートするべく、努力した跡がうかがえる。



●Ultra DMA/100対応などWindows 2000から改善も

 さて、ここまではあまり良い話がなかったが、Windows XPにはWindows 2000から明らかに改善された部分もある。DTLA-307030を接続した状態でプライマリIDEチャネルのプロパティを開いてみると、2つの点でWindows 2000から進歩している。

プライマリIDEチャネルのプロパティ
 1つは、Ultra DMA Mode 5(Ultra DMA/100)のサポートが加わっていること、もう1つはハッキリと動作モードが明示されるようになっていることだ。また、筆者はセカンダリIDEチャネルのスレーブに第2世代SuperDiskドライブを接続しているが、これをインストールデフォルトのPIOモードからMultiWord DMA Mode1に、システムを再起動することなく切り替えることが可能だった。ほかにもCD-R/RWドライブへの書き込みの標準サポート(今回筆者は試していない)、最大200dpiまでの高密度ディスプレイのサポート(Windowsの標準は96dpi)、Windows MeでサポートされたSystem Restoreに加えデバイスドライバのロールバックサポート(新しいドライバが不調の場合、Safe Modeから以前のドライバへ戻すことができる)など、改善された点は少なくない。

 確かに全体として大きく変わったが、Microsoftが言うようにWindows NTの新バージョンではなく全く新しいWindowsと呼べるかというと、疑問も残る。AIW128Proの問題だけでなく、たとえば相変わらずサウンドカードのS/PDIFサポートがないことなど、Windows 2000の弱点が十分克服されているとは言えない部分もある(Sound Blaster Live!をサポートするINFのミキサーのセクションにはS/PDIFのエントリがあるため期待したのだが、実際に利用することはできなかった)。

 実は今回のWinHECのあるセッションで、以下のような説明があった。

 「現在Windows 2000の導入を検討している企業は、Windows XPのリリースを待たず、どんどん導入して構わない。なぜならWindows 2000とWindows XP Professionalは、90%は同じものであるからだ。」

 おそらくこの発言は、かなり本音に近いものだろう。

 すでに述べた通り、Windows 9xからのアップグレードには、AV系ハードウェアのサポートという点で、まだ不安が残る。TV表示機能を備えたWindows MeプリインストールPCなどのユーザーは、ベンダがサポートを表明するまで(あるいはベンダがサポートモジュールを提供するまで)Windows XPへの移行は控えた方が無難だと思われる。

 逆にすでにWindows 2000を搭載したPCのユーザーにとっては、Windows XPがどれくらいの価値を持つか(アップデート版の価格がいくらなら妥当か)は、かなり微妙なところだ。Ultra DMA/100のサポートがWindows 2000のService Pack2で行なわれる予定であること、USB 2.0のサポートが先送りされたことを考えると、ユーザーインターフェイス以外に目新しさはあまりないかもしれない。

 英語版には、eBookに採用されたClearTypeが搭載されるが、日本語版にはこの機能がないと思われるのもマイナスだ。果たして、Windows XPにActivationという不便を踏まえても移行する価値があるのか、いまだ明らかにされない価格情報、日本語版β2の様子、そして何より最終製品版の仕上がりを慎重に見守る必要があるだろう。


□間連記事
【3月28日】元麻布春男の週刊PCホットライン
VGAに代わる新規格“UGA”が登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010329/hot138.htm

(2001年4月4日)

[Text by 元麻布春男]


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