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GeForce2 MXファミリーに新たに加わった
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2001年3月6日(現地時間)にNVIDIAは、新たにGeForce2 MX400とGeForce2 MX200という製品を発表した。型番からもわかるように、全く新しい製品というよりは、GeForce2 MXのバリエーション的な製品である。その両製品を搭載したビデオカードを入手したので、従来のGeForce2 MXと何が違うのか、検証してみよう。
●GeForce2 MX400/MX200とGeForce2 MXの違い
NVIDIAが同社のWebサイトで公開している資料( http://www.nvidia.com/products/geforce2mx.nsf/ )によると、GeForce2 MX400/MX200とGeForce2 MXの違いは、ビデオメモリのインターフェイスまわりだけで、基本機能はほぼ同一である。
GeForce2 MXでは、ビデオメモリとして、SDR SDRAMとDDR SDRAMをサポートしており、SDR SDRAMを利用する場合は64bit幅と128bit幅でメモリにアクセスできるが、DDR SDRAMを利用する場合はメモリアクセス幅は64bit幅になるという制限があった。つまり、オリジナルのGeForce2 MXでは、ビデオメモリの構成として、128bit SDR SDRAM、64bit DDR SDRAM、64bit SDR SDRAMという3つのパターンを利用できることになる。しかし、GeForce2 MX400では、サポートするビデオメモリの構成は、128bit SDR SDRAMと64bit DDR SDRAMの2種類、GeForce2 MX200では、サポートするビデオメモリの構成は64bit SDR SDRAMの1種類のみとなっている。要するに、GeForce2 MXがサポートしていた3種類の構成のうち、性能の高い組み合わせ(128bit SDR SDRAMと64bit DDR SDRAMでは、メモリクロックが同じならほぼ同じ性能になる)をGeForce2 MX400がサポートし、よりローコストな構成をGeForce2 MX200がサポートしたというわけだ。
NVIDIAは、GeForce2 MX400/MX200のコアクロックやメモリクロックを明らかにしていないが、先ほどの資料で、フィルレートの値とメモリバンド幅が公開されているので、そこから推測することができる。フィルレートの値は、コアクロックによって決まり、メモリバンド幅はメモリアクセス幅とメモリクロックによって決まるからだ。
オリジナルのGeForce2 MXは、コアクロック175MHzで動作し、1クロックあたり2個のピクセルを描画できるため、ピクセルフィルレートの値は、175MHz×2=350Mpixels/secになる(テクセルフィルレートの値はさらにその2倍になる)。また、メモリクロックは166MHzなので、メモリバンド幅は128bit×166MHz÷8=2,656MB/sec=約2.7GB/secとなる。公開されているフィルレートの値とメモリバンド幅から、GeForce2 MX400/MX200のコアクロックやメモリクロックの値を逆算すると、GeForce2 MX400のコアクロックは200MHz、メモリクロックは166MHz、GeForce2 MX200のコアクロックは175MHz、メモリクロックは166MHzとなる。以上をまとめたのが次の表である。
【GeForce2ファミリのスペック一覧】
コアクロック | メモリクロック | ピクセルフィルレート | テクセルフィルレート | メモリバンド幅 | サポートするメモリ | |
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GeForce2 MX400 | 200MHz | 166MHz | 400Mpixels/sec | 800Mtexles/sec | 2.7GB/sec | 128bit SDR SDRAM、64bit DDR SDRAM |
GeForce2 MX | 175MHz | 166MHz | 350Mpixels/sec | 700Mtexles/sec | 2.7GB/sec | 128bit SDR SDRAM、64bit DDR SDRAM、64bit SDR SDRAM |
GeForce2 MX200 | 175MHz | 166MHz | 350Mpixels/sec | 700Mtexles/sec | 1.3GB/sec | 64bit SDR SDRAM |
この表を見る限り、GeForce2 MX400はオリジナルのGeForce2 MXの上位にあたる製品で、GeForce2 MX200はGeForce2 MXの下位にあたる製品だということがわかる。
●PCI版も登場したGeForce2 MX400搭載ビデオカード
GeForce2 MX400/MX200が発表されてからわずか10日ほどで、GeForce2 MX400/MX200搭載製品が店頭に登場した。その最初の製品は、InnoVision Multimediaの「Tornado GeForce2 MX200」と「Tornado GeForce2 MX400」である。前者は、現在のところビデオメモリを32MB搭載したAGP版(セカンダリディスプレイ出力なし)の1種類だけが販売されているが、後者は、AGP版とPCI版、ビデオメモリ32MB版と64MB版、セカンダリディスプレイ出力あり/TV出力あり/DVI出力ありなど、さまざまな製品が登場している。また、GeForce2 MX400搭載製品は、TORICA(東海理化販売)ブランドでも2製品(TV出力なしモデルとTV出力ありモデル、ともにAGP対応ビデオメモリ32MB)が販売されている。
AGP対応のTornado GeForce2 MX200 | PCI対応のTornado GeForce2 MX400 | AGP対応のVMX400-32A |
Tornado GeForce2 MX200のパッケージ | Tornado GeForce2 MX400のパッケージ。このパッケージはGeForce2 MX搭載製品と同じだが、新パッケージではMX400という表記になっている | VMX400-32Aのパッケージ |
今回は、GeForce2 MX200を搭載したTornado GeForce2 MX200(AGP対応、ビデオメモリ32MB、セカンダリディスプレイ出力なし)とGeForce2 MX400を搭載したTornado GeForce2 MX400(PCI対応、ビデオメモリ32MB、セカンダリディスプレイ出力なし)、同じくGeForce2 MX400を搭載したTORICAブランドのVMX400-32A(AGP対応、ビデオメモリ32MB、TV出力なし)を入手した。なお、東海理化販売のWebサイトには、GeForce2 MX200やGeForce2 MX400搭載ビデオカードの仕様が公開されているが( http://www.torica.com/products/torica-original/graphic/GeForce2%20MX.htm )、そこに記述されているコアクロックやメモリクロックの値は先ほど推測したものと同じだ。
●本来の仕様通りに動作していない!?コアクロック、メモリクロックの謎
まず、2D描画性能を計測してみることにした。比較対照用に、GeForce2 MXを搭載したSUMA SYSTEMのPLATINUM GF2 MX TwinViewとATI TechnologiesのRADEON VEを用意した。テスト環境は以下の通りである。
【テスト環境】
CPU:Pentium III 866MHz
マザーボード:ASUSTeK CUSL2(Intel 815Eチップセット)
メモリ:PC133 SDRAM 128MB(CL=2)
HDD:Seagate Barracuda ATA ST313620A(13.6GB)
OS:Windows 98 SE+DirectX 8.0
(1)2D描画性能
2D描画性能の計測には、いつもと同様にZiff-Davis,Inc.( http://www.ziffdavis.com/ )のWinBench99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を用いた。計測は、1,024×768ドット16bitカラー(65,536色)で行なった。
【WinBench 99 Version 1.1】
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GeForce2 MX400/AGP 175/150MHz GeForce2 MX400/AGP 200/166MHz GeForce2 MX400/PCI 175/166MHz GeForce2 MX400/PCI 200/166MHz GeForce2 MX200/AGP 175/166MHz GeForce2 MX 175/166MHz RADEON VE 183/366MHz |
2D描画性能は、どの製品もほぼ横並びである。なお、GeForce2 MX400を搭載した2製品については、コアクロック/メモリクロックを変更して計測も行なっているが、これについては後述する。PCI版のGeForce2 MX400搭載カードでも、メモリバンド幅が半分になっているGeForce2 MX200でも、2D描画性能に関しては特に見劣りはしないことがわかる。
(2)DirectX環境での3D描画性能
DirectX環境での3D描画性能の計測には、MadOnion.com( http://www.madonion.com/ )の3DMark2000 Version 1.1を用いた。3DMark2000は、ハードウェアT&Lエンジンに対応したベンチマークプログラムである。
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GeForce2 MX400/AGP 175/150MHz GeForce2 MX400/AGP 200/166MHz GeForce2 MX400/PCI 175/166MHz GeForce2 MX400/PCI 200/166MHz GeForce2 MX200/AGP 175/166MHz GeForce2 MX 175/166MHz RADEON VE 183/366MHz |
3DMark2000の結果を見ればおわかりのように、今回テストしたTORICAブランドのGeForce2 MX400搭載ビデオカード「VMX400-32A」は、本来予想されるパフォーマンスが出ていない。前述したように、GeForce2 MX400は本来コアクロック200MHzで動作するはずなので、コアクロック175MHzで動作するGeForce2 MXよりも高いパフォーマンスになると予想されるのだが、結果は逆に低い値となっている。そこで、PowerStrip( http://www.entechtaiwan.com/ps.htm )を用いて、コアクロックとメモリクロックを調べてみたところ、VMX400-32Aのコアクロックは175MHz、メモリクロックは150MHzという結果になった。コアクロックはGeForce2 MXと同じで、メモリクロックはGeForce2 MXよりも低くなっている。フォーマットし直してOSから再インストールしてみたが、結果は同じであった。また、InnoVisionのTornado GeForce2 MX400(PCI版)のコアクロックとメモリクロックも同様に調べてみたが、こちらもコアクロック175MHz/メモリクロック166MHzで動作しており、GeForce2 MXと全く同じという結果になった。なお、Tornado GeForce2 MX200(AGP版)は、正しくコアクロック175MHz/メモリクロック166MHzで動作していた。
そこで、VMX400-32AとTornado GeForce2 MX400(PCI版)に関しては、PowerStirpを使って、本来の動作クロックであるコアクロック200MHz/メモリクロック166MHzに設定して、再びベンチマークテストを行なってみた。やはりコアクロック200MHz/メモリクロック166MHzにすると、GeForce2 MXよりもややパフォーマンスが向上している。また、PCI版ではAGP版に比べると、かなり性能は落ちるが、32bitカラーモードではあまり差は開いていない。PCI版でも、Intel 810/810Eの内蔵ビデオ機能に比べればはるかに高い3D描画性能を持つので、AGPスロットがないマシンのアップグレード用としては意味があるだろう。GeForce2 MX200は、メモリバンド幅が半分になったことで、性能は大きく低下している。特に、高解像度・多色環境になるほど、性能低下は顕著であり、1,024×768ドット32bitカラーモード以上では、PCI版のTornado GeForce2 MXにも負けている。
(3)OpenGL環境での3D描画性能
OpenGL環境での3D描画性能の計測にqは、id Software( http://www.idsoftware.com/ )の3DゲームQuake III Arenaを利用した。Quake III Arenaは3Dシューティングゲームだが、フレームレート(1秒間に何フレーム表示できたか)を計測するテストとしても利用することが可能である。
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GeForce2 MX400/AGP 175/150MHz GeForce2 MX400/AGP 200/166MHz GeForce2 MX400/PCI 175/166MHz GeForce2 MX400/PCI 200/166MHz GeForce2 MX200/AGP 175/166MHz GeForce2 MX 175/166MHz RADEON VE 183/366MHz |
こちらも、3DMark2000の結果と同様に出荷時の設定ではGeForce2 MXよりも低いパフォーマンスしか出ていなかったので、GeForce2 MX400を搭載した2製品については、PowerStripを用いて、コアクロック200MHz/メモリクロック166MHzにした状態でも計測を行なった。基本的には3DMark2000の結果と似ているが、3DMark2000の結果よりもPCI版の性能低下の度合いが小さい。
●定格で動作する製品が登場するまで様子をみるべきか?
VMX400-32Aの箱の裏面には「200MHz core Speed」という記述がある |
今回テストしたGeForce2 MX400搭載ビデオカードは、2製品とも、本来の定格と思われるクロックで動作していないことがわかった。もちろん、初期ロットのみの問題である可能性もあるが(Tornado GeForce2 MX400に実装されていたチップは、マーキングもGeForce2 MXのままである)、TORICAブランドのVMX400-32Aは、箱の裏面に「200MHz core Speed」という記述があるにもかかわらず、実際は175MHzでしか動作していないというのは、やはり問題であろう。
PowerStripなどでクロックを変更すれば、一応安定動作はするのだが、再起動すると、再び元のクロックに戻ってしまう。また、今回テストした3製品は、全て同一のバージョンのドライバが付属しており、クロック変更ユーティリティは付属していない。VMX400-32Aについては、Webサイトと箱にコアクロック200MHz、メモリクロック166MHzという表記があるので(Tornadoに関しては、特にそういう表記は見あたらない)、東海理化販売( http://www.torica.com/ )に問い合わせて、その結果がわかり次第、再度報告したいと思っている。
GeForce2 MX400は、GeForce2 MXの後継と思ってもよいだろう。また、GeForce2 MX200は、TNT2 M64やVantaのラインを置き換えていく製品になるのであろう。GeForce2 MX400でも、描画性能はGeForce2 MXとそれほど変わらないので、GeForce2 MX搭載ビデオカードを利用しているユーザーの買い換え対象となる製品ではないが、コストパフォーマンスは高いので、TNT2やG200、Voodoo3あたりを使っているユーザーが、ビデオカードをアップグレードにはふさわしい製品である。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【3月17日】見た目ではMXと変わらず?GeForce2 MX400/MX200搭載カード登場
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010317/etc_mx24.html
【3月24日】InnoVisionがGeForce2 MX400搭載カード計8モデルを一挙発売
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010324/etc.html#mx400
(2001年4月2日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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