CeBIT 2001 Hannoverレポート PCパーツ編

~正式デビュー間近のSamuel2コアのCyrix IIIやPC2700などが展示される

会期:3月22~28日
会場:Hannover Messe


 CeBIT 2001 Hannoverには多くのPCパーツ系メーカーが参加しており、自作PCユーザーにとって気になる製品もいくつか展示されている。今回は、PCパーツ関連の話題をお伝えしていく。



●VIA TechnologiesはCyrix III/700A MHzを展示

VIAのブースに展示されていたSamuel2ベースのCyrix III 700A MHz

 台湾のチップセットベンダーであるVIA Technologiesは、CeBITにブースを出しており、同社のチップセットやCPUなどを展示している。チップセットに関してはApollo Pro266(Pentium III/Celeron用)、Apollo KT266(Athlon/Duron用)など、既に発表済みの製品がほとんどで、特に目新しいものはない。

 しかし、ブース内のそこかしこに展示されているApollo Pro266のPGA370ソケットにはCyrix IIIが挿さっている。このCyrix IIIは、従来のSamuel1をベースにしたL2キャッシュがないバージョンではなく、64KBのL2キャッシュが搭載されているSamuel2ベースになっている。その証拠にクロック表記は「Cyrix III 700A MHz」となっており、Samuel1ではなくSamuel2ベースであることが確認できる。


 この原稿を書いている時点ではSamuel2ベースのCyrix IIIは正式には発表されていない。しかし、会場では「VIA Cyrix III Processor with 64KB Level2 Cache」というカタログが配布されており、そこには立ち上げ時に733MHz、750MHzのクロックを実現と記載されている。以下そのカタログよりのスペックの抜粋だ。

【VIA Cyrix III Processor with 64KB Level2 Cache】
・クロック:750/733MHz
・キャッシュ:L1(128KB)、L2(64KB)
・システムバス:100/133MHz
・CPUソケット:PGA370(Socket 370)
・拡張命令セット:3DNow!テクノロジ/MMXテクノロジ
・製造プロセスルール:0.15μm

 となっており、基本的にPlatform Conferenceなどで明らかになった内容と大差はない。既にPC WatchではSamuel2コアの新Cyrix IIIのベンチマーク結果をお伝えしている( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010205/hotrev94.htm )が、その中でもふれたようにSamuel2コアのCyrix IIIはビジネスアプリケーションで同クロックCeleronと同等のパフォーマンスを発揮することもあり、バリューPC市場で十分注目に値する製品となりうると見られている。なお、VIA関係者によれば、日曜日にVIAが何らかのアナウンスメントを行なうそうで、おそらくこれがSamuel2コアのCyrix IIIの発表ということになるのだろう。

会場にはLinuxベースの1Uラックマウントサーバーが展示されていた。マザーボードはデュアルで、Cyrix IIIが刺さっていたため、デュアルで動作するのか? と展示員に聞いてみたところ、「Cyrix IIIはユニプロセッサであるので動作しない。単にVIAブースで展示しているのでCyrix IIIを挿しているだけ」とのこと。Pentium III利用時のみデュアルになるということだった Cyrix III 800MHzのデモンストレーション。チップセットはApollo Pro266で、メインメモリにはDDR SDRAMが利用されている


●VIAが新しいフォームファクタ「ITX」を提案し、対応マザーボードを公開

ITXフォームファクタのリファレンスマザーボードであるVT6909
 また、VIAは「ITX」というマザーボードの新しいフォームファクタを提案し、それに対応したマザーボードがブースで展示されていた。

 ITXはVIAが昨年の9月に台湾で行なわれたVTF(VIA Technology Forum)で同社のウェン・シー・チャン社長兼CEOが語ったValue Internet Architectureと呼ばれるインフォメーションPC(バリューPCのさらに下のセグメント向けのPC)を実現するための、ビルディングブロック(構成要素)の1つとして提案された。ITXのフォームファクタ自体は、既にIntelが提案しているFlexATXのマザーボードをさらに小さくしたものになる。


【フォームファクタ別のサイズ(数値はいずれも最大時)】
ITX215×191mm
FlexATX229×191mm
microATX244×244mm
ATX305×244mm

 ITXはFlexATXに比べて幅が若干小さくなっており、このため、より小さなケースなどにも使えるようになっている(若干小さくなっているだけであまりかわらないとも言えるが……)。

 電源コネクタは基本的にATXで利用されているものと同じものが使用されるが、サイズはATXのものに比べて若干小さめとなっている。

【電源のサイズ(長さ×幅×高さ)】
ITX174×73×55mm
ATX140×150×86mm



 こうした特徴を持っていることなどからVIAではセットトップボックスやインフォメーションPCに利用されるフォームファクタとして最適であるとしている。なお、今回VIAブースに展示されていたITXフォームファクタのマザーボードはVT6909と呼ばれるリファレンスマザーボードで、チップセットにはVIAの統合型チップセットApollo PLE133を搭載しており、CPUソケットとしてはPGA370(いわゆるSocket 370)が搭載されているものだ。スロットはPCI×1とAMR×1となっており、若干拡張性などにも配慮がされている。

 サイズはさほどFlexATXと変わらないため、基本的にはFlexATXのVIAバージョンだと言える。既に実際に存在しているFlexATXを置き換えるほど魅力的なのかと言われれば疑問の残るところであり、実際にITX規格が立ち上がるのか、VIAのお手並み拝見といったところだ。


●SiS633、SiS733を搭載したマザーボードも登場

 サードパーティのチップセットとしては、既に、VIA、ALi、SiSともに手持ちの製品をほとんど発表し終わっているため、あとは計画段階のPentium 4用チップセットだけとなっており、今回のCeBITでは特に新しい内容はない。

 唯一今回初めて公開になったのは、SiSのスタンドアローンSDRAM対応チップセットであるSiS633、SiS733で、これらを搭載したマザーボードがGIGABYTE Technologyなどマザーボードベンダーに展示されていた。

 SiS633、SiS733は昨年発表されたDDR SDRAM対応チップセットであるSiS635(Pentium III/Celeron用)、SiS735(Athlon/Duron用)のSDRAMバージョンで、メインメモリとしてSDRAMに対応する以外はそれらと仕様は同じとなっている。SiS633に関しては既に先日プレスリリースで発表されているが、SiS733の存在が公式に確認されたのは今回が初めてといえる。

 特に注目の製品というわけではないが、SiS633、SiS733はノースとサウスが1チップになっているためローコストであり、GeForce2などスタンドアローンのビデオチップを搭載したビデオカードは使いたいが、マザーボードにはあまりコストを掛けたくないというユーザーにはよい選択となる可能性がある。

SiSのSDRAMサポートチップセットであるSiS633。Pentium III/Celeron用 GIGABYTE TechnologyのGA-6SDX。SiS633搭載
SiSのSDRAMサポートチップセットのSiS733、Athlon/Duron用 GIGABYTE TechnologyのGA-7SDX。SiS733搭載


●PC2700、PC166、PC183? など様々なメモリモジュールが登場

ApacerのPC2700。333MHzのDDR SDRAMを搭載し、ピーク時バンド幅は2.7GB/secとなる
 CeBITには台湾のメモリモジュールメーカーなども多数参加しており、注目のメモリモジュールなどがいくつか展示されていた。

 台湾のエイサーグループのApacer Technologyは、いちはやく333MHzのDDR SDRAMを搭載したPC2700のメモリモジュールを展示していた。PC2700は、現在のDDR SDRAMのメモリモジュールではPC2100/1600の後継と目されている規格で、現在JEDECなどで規格の策定が進んでおり、VIAも2002年に予定しているチップセットでサポートを表明している。クロックで分類すると以下のようになる。



メモリデバイス実クロックバンド幅
PC2700(PC333)166MHz2.7GB/sec
PC2400(PC300)150MHz2.4GB/sec
PC2100(PC266)133MHz2.1GB/sec
PC1600(PC200)100MHz1.6GB/sec

 Apacerによれば同社で自社開発したCSP(Chip-Size Package)を採用しているため、333MHz(実際には166MHzのDDR)という高速なクロックが実現できるようになっているという。従来のTSOPではワイヤーを利用してガーバー(モジュール基板)に接続していたのだが、CSPではメモリデバイスの内部からガーバーに直接配線する形式になっており、配線遅延が少なくなり、高クロックを実現することが容易になる。

 現在メモリモジュールメーカーがこうした自社開発のCSPを利用して高クロックを実現することは1つのトレンドのようになっており、日本のメモリモジュールメーカーであるメルコのブースでも自社製CSPを利用したメモリモジュールが展示されているなど、150/166MHzの世代では従来のTSOPに変えてこうしたCSPが主流となる可能性が高い。ただし、そのコンベンショナルなTSOPに変えてCSPを採用することでコストは増えてしまうため、当初はやや高めな価格になる可能性が高い。

 このほか、台湾のメモリモジュールメーカーであるPQI(Power Quotient International)は、Power CSPシリーズというSDRAMメモリモジュールでCSPパッケージを採用し、150/166/183MHzというPC133 SDRAMの133MHzを大幅に超えるクロックでの動作を保証するSDRAMメモリモジュールを展示している(こうした133MHzを超えるメモリモジュールはJEDECなどでは規格化されていないものの、メモリモジュールメーカーでは便宜的にPC150、PC166、PC183などと呼ぶことが多い)。やはりCSPを採用することにより、高クロック化を実現した製品だ。現時点ではこうした150/166/183MHzというメモリバスクロックをサポートするチップセットは存在していないため、基本的にオーバークロックで利用する際に利用することになる。

 しかし、VIAは既にPC2700(333MHzのDDR SDRAMモジュール)を次世代チップセットでサポートすることを表明している。この333MHzのDDR SDRAMの実クロックは166MHzで、仮にVIAの次世代チップセットがSDRAMもサポートすることになった場合、このSDRAMを166MHzで利用することもできるようになるかもしれない。133MHzを超えるSDRAMも次世代チップセットで意味がでてくる可能性もある。期待したいところだ。

PQIのPower CSPシリーズのPC150+、150MHzで動作保証 PQIのPower CSPシリーズのPC166、166MHzで動作保証 PQIのPower CSPシリーズのPC183、183MHzで動作保証


□CeBIT 2001のホームページ(英文)
http://www.cebit.de/homepage_e
□関連記事
【3月23日】CeBIT 2001 Hannoverレポート Intel、AMD編
mPGA478、Intel 815 B-Step、Athlon 1.33GHz搭載マシンなどがデビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010323/cebit01.htm

(2001年3月23日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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