第91回:やっぱり内蔵がいいと思った通信デバイス



 先週、トランシーバ(米国では2 Way Radioと呼ばれる)の話を「余談」として書いたら、ずいぶんたくさんの反響メールをいただいた。意外にも、米国で活用されている人が多いことに驚いた。ちなみに米国のトランシーバで利用されている周波数帯は、日本ではタクシー無線に利用されているそうだ(もちろん、日本での利用はできない)。

 また後から知り合いのトランシーバを買いに行ったときに気づいたのだが、中には周波数チャンネルは切り替えられるものの、コード切り替えがない機種がある。ここで言うコードとは、発信時に出す特定周波数のトーン信号のことで、設定したコードのトーンを聞き分けることで、同じチャンネル内で複数グループの会話を実現する機能。これがないと、同じ周波数帯の音は全部聞こえてしまうため非常に不便なのだ。

 また、コードは設定できるが、コール機能(電子音で呼び出し音を送信する機能)がないものもあった。コール機能は必須というわけではないが、当然ながらあった方が便利。価格との相談になるが、コードもコールも使えて安い製品もあるので、購入を考えている人はよく見てから買うことをおすすめしたい(もっとも、無線機をホビーとして楽しんだ世代には釈迦に説法だろう)。


●無線LANの思わぬ広がり

 先週は家庭への無線LAN導入の勧めを書いたが、どうやら世の中のさまざまなところに、無線LANが導入されていきそうだ。IT系企業で各フロアに無線LANの基地局を配置している会社は、珍しい存在ではなくなりつつあるし、アップルが催すイベントでは無線LANを通じてネットワークサービスを利用できることが多いと聞く。802.11を採用する無線LANであれば、基本的にどんな機種でも相互接続できるのだから、アイデア次第でさまざまな使い方ができる。

 たとえば先週行なわれたIntel Developers Forumのプレスルーム。ほかの記者と話していたのが、無線LANによるインターネットアクセスラインの共有だ。

 こうしたイベントのプレスルームには、電話回線やLANケーブルが用意され、ノートPCを使ってインターネットが簡単に利用できるように配慮されている。LANはたいていの場合、1.5Mbps以上の速度でインターネットに接続されているため、できれば電話回線ではなくLANケーブルで接続したい。従って、最近の取材ではLANインターフェイスが内蔵されたノートPCを持ち歩くのが常識(?)になっている。

 ところが、用意されているLANケーブルは記者の数よりもずっと少ない。ハブの場所を見つけてケーブルを接続してしまうという手もあるが、固定IPアドレスで運用している場合もあり、また万一のことを考えれば迷惑をかけないためにも、用意されたケーブルで利用するのが望ましいと言える。

 その結果、LANケーブル(実際にはLANアクセスの用意された場所)の争奪戦になってしまうのだ。そこで、802.11のアドホックモード(基地局なしで端末同士がP2Pの交信を行なう無線LANのモード)とWindowsのインターネット接続共有(Windowsを簡易ルータにする機能)を組み合わせ、1本のアクセスラインをみんなで共有して、効率よく仕事をしようと話したわけだ。

 将来的には無線LANのベンダーがスポンサーして、無線LANの基地局が導入されるケースも増えてくるだろうが、とりあえずそれまでの間、アドホックモードで何かできそうだというのが一致した意見だった。


●絵に描いた餅では腹は膨れない

 もっとも、話は出ても実際に行なうことはできない。今の時代、コンピュータを生業としている者なら、ほとんどが802.11のカードを持っているようだった(僕が購入したのは遅すぎたぐらい)が、では使おうと思ってもカードそのものを持っていないのだからどうしようもない。

 実はIDFから日本に帰る途中、新しくなったサンフランシスコ国際空港のラウンジで、同じ理由から少しだけ悔しい思いをした。

 私は普段、ノースウエスト航空を利用しているのだが、空港が新しく建て変わってからノースウエスト専用ラウンジがなくなり(あるいは建設中なのかも知れない)、英国航空のラウンジを代わりに利用することになった。

 ラウンジはノースウエスト航空のものより遙かに快適で設備も良く(新しいからではなく、どこの空港でもほぼ状況は同じ)、インテリアのセンスもいい。さすがに欧州の会社だと思ったが、なんと英国航空のラウンジでは802.11bによる無線LAN経由のインターネットアクセスのサポートを計画しているのだという。

 現在のところ、サンフランシスコ国際空港の英国航空ラウンジでは、(おそらく)DSLを用いたインターネットアクセスがサポートされており、机に備え付けられたモデムのLANケーブルをPCに接続し、Webブラウザを起動すると自動的にインターネット接続の画面に移動。そこでクレジットカードの登録を行なうことで、高速インターネットを利用できる。マリオットホテルなどに導入されているものと基本的に同じだ。

 これは便利と眺めていたら、ラウンジの職員がくだんの無線LANの話を教えてくれたのである。なんでも同じ接続業者が、無線LANもサポートするのだとか。

 実は読者からも、同様の情報をいただいている。アメリカン航空のラウンジおよび登場ゲート(米国内に限る)では、すでに無線LANによるインターネットアクセスのサービスが実施されているのだとか。1接続15分まで2ドル50セント、15分以降は1分ごとに10セントの課金で利用できる(ほかに月単位の契約もあり)。

 さらにダラスフォートワース、シアトル、オースチンでは、別の接続業者が同様のサービスを、また香港国際空港でもさらに別の接続業者がサービスを行なっているという。

 接続業者のうちの1社、Mobilestarのホームページを見てみると、数は少ないながらホテル内での無線LANによるインターネットアクセスも行なえる(ただしこの会社の場合、802.11ではなくOpenAirという規格をサポートしたポイントの方が多い)。

 このまま無線アクセスのサービスが広がってくれればいいと思うばかりだが、当然ながら無線LANのカードを持ち歩いていなければ利用することはできない。「あぁ、ここで使えるのか。そりゃ便利だ」と思っても、カードを持っていなければ絵に描いた餅でしかない。

 今回は無線LANがなくとも、プレスルームでのお遊びができなかった程度の影響しかなかったが、そのうちさまざまな場所で「無線LANカードがあればなぁ」と思うことだろう。有線LANは内蔵されているからこそ、そういう思いをしなくて済むし、それをサポートするサービスも多い。

 最近のPCは機能が多すぎとの批判を聞くことも多いが、こと通信デバイスに関しては、できる限り多くのスタンダードを標準で装備してもらいたいものだ。そうしたメーカーの努力があれば、サポートの範囲も広がるものである。カードを持ってきていないからできない、使えないではなく、誰もが通信できるのが当たり前になるように、無線LAN標準装備が当たり前になってほしい。その時期はそれほど遠くはないはずだ。

[Text by 本田雅一]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.