Intel Developer Forum Conference ,Spring 2001

NVIDIAが“NV20”ことGeForce3をPC向けにも正式に発表

会期:2月26~3月1日
会場:San Jose Convention Center


 グラフィックスチップベンダのNVIDIAは、これまで“NV20”のコードネームで呼ばれてきたGeForce2 GTS/Pro/Ultraの後継となるグラフィックスチップ「GeForce3」の発表会を、San Jose Convention Center近くの会場で行なった。既に日本ではMacworld Conference&Expo /Tokyo 2001[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/mw01.htm ]でMacintosh版の存在が明らかにされていたが、今回正式にPC版のGeForce3のアナウンスが行なわれた。


●nfiniteFXエンジンを搭載しよりリアルさを追求

NVIDIAの共同創始者にしてCEOのジェンスン・フアン氏
 最初に壇上に登場したのはNVIDIAの共同創始者でCEOのジェンスン・フアン氏で、「NVIDIAのグラフィックスチップの進化はムーアの法則の3乗。IntelのCPUが過去3年間でクロックが5倍にしかなっていないのに、NVIDIAのグラフィックスチップはフィルレートの比較で125倍になっており、非常に長足の進化を遂げている」と述べ、「今回発表するGeForce3もそうした傾向を加速する製品」と述べ、今後もNVIDIAがグラフィックスチップ業界をリードしていくと高らかに宣言した。

 今回のGeForce3の最も大きな強化ポイントは、「nfiniteFXエンジン」と呼ばれるバーテックスプロセッサ、ピクセルプロセッサの2つのエンジンが追加されたことだ。バーテックスプロセッサとはバーテックス(頂点)を処理するためのエンジンで、頂点の座標、頂点色、法線ベクトルなどをプログラム側で制御することが可能になっている。このため、人の顔の動きをよりリアルにしたり、物体を引っ張って見たり、人が生きているように息をさせている様子を表現したりとこれまでよりもよりリアルに表現することができるようになる。

サンプルムービー(MPEG-1、3.5MB)
 ピクセルプロセッサは1クロックあたり36オペレーションを同時に実行でき、ハードウェアで影をつけたり、リフレクティブバンプマッピング(物体の凹凸の反射)、ピクセルごとの光源や陰影描画などの機能をプログラム側で制御することが可能になっている。これにより描画対象の表面をより精巧にしたり、絹、皮、人間の肌、人間の髪の毛の動きといったこれまでは表現が難しかったようなものも、よりリアルに表現できるようになる。

 これらの強化についてNVIDIAのプログラムマネジメントディレクタであるトニー・タマシ氏は「これらの強化はDirectX 8の機能そのものであり、またDirectX 8もGeForce3そのものだと言える。既に11月にアナウンスした通り、DirectX 8には当社のバーテックスシェーダ、ピクセルシェーダの技術がライセンスされている。これらの機能を生かすにはGeForce3が必須と言える」と述べ、DirectX 8の環境におけるNVIDIAのアドバンテージを強調した。

NVIDIA プログラムマネジメントディレクタ トニー・タマシ氏 NVIDIAのAAフィルレートの進化はムーアの法則に従って進化しているIntelCPUの3乗の速度で進化しているとNVIDIA NVIDIAチップの進化

GeForce2とGeForce3の違い タマシ氏はGeForce3はDirectX 8そのものと強調


●HRAAとLightspeed Memory Architectureでビデオメモリへの負荷を軽減

 最近ではハイエンドのビデオカードには例外なくDDR SDRAMなどのピーク時のバンド幅が広いビデオメモリが採用されている。これは、ビデオメモリに送り込むデータ量が非常に増えているため、ビデオメモリのバスがボトルネックになってしまい、グラフィックスチップが持つ本来のパフォーマンスを発揮させることが難しくなってきているからだ。

 そこで、GeForce3ではビデオメモリのバスへの負荷を下げるために2つのアプローチがされている。1つには「HRAA(High Resolution Antialiasing)」と呼ばれる機能だ。これまで、いわゆるFSAA(Full Screnn Anti Aliasing、図形などの描画時に境界に発生するジャギーを低減する機能)の機能はドライバレベルで処理が行なわれてきた。これに対してGeForce3ではこれをハードウェアで行なうようになったため、アンチエリアシングの処理能力がGeForce2ファミリーに比べて4倍になっており、ビデオメモリへの負荷は1/2になっているという。さらに、「Quincunx Anti Aliasing」という機能も追加されている。これは従来のアンチエリアシングが各ピクセルの4隅の座標を利用して演算していたのに対して、Quincunx Anti Aliasingでは中心部も加えて5点で演算しするようになっている。これにより性能の低下なく、描画クオリティの改善を期待できる。

Quincunx Anti Aliasingの説明スライド。4隅だけでなく、中心点の座標を利用してアンチエリアシングを行なう プレゼンテーションの途中で示されたベンチマーク結果

 さらに、Lightspeed Memory Architectureという仕組みを導入することにより、さらにビデオメモリへの負荷を軽減することを狙っている。このLightspeed Memory Architectureには3つの機能が用意されている

(1)Crossbar Memory Controller

 メモリを複数ブロックにわけて、さらにメモリコントローラも複数のコントローラを設け、それぞれ複数対複数のアクセスができるようにすることにより、メモリのアクセス効率を向上させる

(2)Loss-Less Z-Compression

 Zバッファのデータを圧縮して処理することにより、メモリへの負荷をへらす

(3)Z-Occlusion Culling

 陰面消去の処理方法の一種で、描画する必要のない影になる部分を描画せずに、処理するポリゴン数を減らすことにより、メモリへの負荷を減らす処理

 これらにより、「GeForce2の世代に比べて400%の効率アップが図られている」(タマシ氏)と説明しており、同社が公開したベンチマークデータによれば、QuakeIII Arenaの結果でGeForce2 Ultraに比べて倍の描画性能を発揮しているという。


●GeForce3はXboxにも採用され、今後も性能改善は続く

Xboxに関する説明。NVIDIAはXboxにノースブリッジであるXGPUとサウスであるMCPXを供給する
 最後に、タマシ氏は「今回発表したGeForce3のテクノロジはマイクロソフトのXboxにも採用される。XboxのノースブリッジであるXGPUにはGeForce3のグラフィックスコアが内蔵され、SMAのアーキテクチャが採用される。さらに、NVIDIAはサウスブリッジであるMCPXも開発しており、これらをXbox用として供給する」と述べ、、「nfiniteFX、HRAA、Lightspeed Memory Architecture、Xboxなどにより今後もNVIDIAは市場をリードし続ける」とまとめた。

MSI Computerが展示していたGeForce3搭載ビデオカード 筆者がヒートシンクをはずして欲しいとリクエストしてみたところ、なんと「NV20」とコードネームで書かれたエンジニアリングサンプルチップがでてきた

 Q&AセッションではNVIDIAが昨年末に知的所有権などを買い取った3dfxについての質問もでた。NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏は「GeForce3には3dfxから取得した技術などは特に生かされていない。しかし、2002年に出荷を予定しているNV30ではそうした技術も生かされることになるだろう」と述べ、NV30の出荷時期と、3dfxの技術も生かされるという見通しを明らかにした。

 なお、以下は取材などを含めて明らかになったGeForce3のスペックだ。

コアクロック200MHz
メモリクロック460MHz(DDR SDRAM、実クロックは230MHz)
トランジスタ5,700万トランジスタ
製造プロセスルール0.15μm、TSMCファブで製造
ビデオメモリピーク時バンド幅7.3GB/sec
HDTV/DVD対応HDTV対応、Motion Compensation
OSWindows 95/98/Me/2000/NT、Linux、Mac OS
APIOpen GL1.2、DirectX 8.0(下位互換性あり)

 なお、今回はNVIDIAのグラフィックスチップの発表では必ず明らかにされるフィルレートやテクセル性能などは明らかにはされていない。このあたりには直前にレンダリングエンジンの仕様が変更されたためという憶測も飛び交っており、実際の性能が明らかになるまでにはもうすこし時間がかかりそうだ。

□Intel Developer Forum Conference ,Spring 2001ホームページ(英文)
http://developer.intel.com/idf/
□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/Pages.nsf/pages/pr_022701
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新GPU「GeForce3」がMacから搭載されることをアナウンス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/mw01.htm

(2001年2月28日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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