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グラフィックスチップベンダのNVIDIAは、これまで“NV20”のコードネームで呼ばれてきたGeForce2 GTS/Pro/Ultraの後継となるグラフィックスチップ「GeForce3」の発表会を、San Jose Convention Center近くの会場で行なった。既に日本ではMacworld Conference&Expo /Tokyo 2001[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/mw01.htm ]でMacintosh版の存在が明らかにされていたが、今回正式にPC版のGeForce3のアナウンスが行なわれた。
●nfiniteFXエンジンを搭載しよりリアルさを追求
NVIDIAの共同創始者にしてCEOのジェンスン・フアン氏 |
今回のGeForce3の最も大きな強化ポイントは、「nfiniteFXエンジン」と呼ばれるバーテックスプロセッサ、ピクセルプロセッサの2つのエンジンが追加されたことだ。バーテックスプロセッサとはバーテックス(頂点)を処理するためのエンジンで、頂点の座標、頂点色、法線ベクトルなどをプログラム側で制御することが可能になっている。このため、人の顔の動きをよりリアルにしたり、物体を引っ張って見たり、人が生きているように息をさせている様子を表現したりとこれまでよりもよりリアルに表現することができるようになる。
サンプルムービー(MPEG-1、3.5MB) |
これらの強化についてNVIDIAのプログラムマネジメントディレクタであるトニー・タマシ氏は「これらの強化はDirectX 8の機能そのものであり、またDirectX 8もGeForce3そのものだと言える。既に11月にアナウンスした通り、DirectX 8には当社のバーテックスシェーダ、ピクセルシェーダの技術がライセンスされている。これらの機能を生かすにはGeForce3が必須と言える」と述べ、DirectX 8の環境におけるNVIDIAのアドバンテージを強調した。
NVIDIA プログラムマネジメントディレクタ トニー・タマシ氏 | NVIDIAのAAフィルレートの進化はムーアの法則に従って進化しているIntelCPUの3乗の速度で進化しているとNVIDIA | NVIDIAチップの進化 |
GeForce2とGeForce3の違い | タマシ氏はGeForce3はDirectX 8そのものと強調 |
●HRAAとLightspeed Memory Architectureでビデオメモリへの負荷を軽減
最近ではハイエンドのビデオカードには例外なくDDR SDRAMなどのピーク時のバンド幅が広いビデオメモリが採用されている。これは、ビデオメモリに送り込むデータ量が非常に増えているため、ビデオメモリのバスがボトルネックになってしまい、グラフィックスチップが持つ本来のパフォーマンスを発揮させることが難しくなってきているからだ。
そこで、GeForce3ではビデオメモリのバスへの負荷を下げるために2つのアプローチがされている。1つには「HRAA(High Resolution Antialiasing)」と呼ばれる機能だ。これまで、いわゆるFSAA(Full Screnn Anti Aliasing、図形などの描画時に境界に発生するジャギーを低減する機能)の機能はドライバレベルで処理が行なわれてきた。これに対してGeForce3ではこれをハードウェアで行なうようになったため、アンチエリアシングの処理能力がGeForce2ファミリーに比べて4倍になっており、ビデオメモリへの負荷は1/2になっているという。さらに、「Quincunx Anti Aliasing」という機能も追加されている。これは従来のアンチエリアシングが各ピクセルの4隅の座標を利用して演算していたのに対して、Quincunx Anti Aliasingでは中心部も加えて5点で演算しするようになっている。これにより性能の低下なく、描画クオリティの改善を期待できる。
Quincunx Anti Aliasingの説明スライド。4隅だけでなく、中心点の座標を利用してアンチエリアシングを行なう | プレゼンテーションの途中で示されたベンチマーク結果 |
さらに、Lightspeed Memory Architectureという仕組みを導入することにより、さらにビデオメモリへの負荷を軽減することを狙っている。このLightspeed Memory Architectureには3つの機能が用意されている
(1)Crossbar Memory Controller
メモリを複数ブロックにわけて、さらにメモリコントローラも複数のコントローラを設け、それぞれ複数対複数のアクセスができるようにすることにより、メモリのアクセス効率を向上させる
(2)Loss-Less Z-Compression
Zバッファのデータを圧縮して処理することにより、メモリへの負荷をへらす
(3)Z-Occlusion Culling
陰面消去の処理方法の一種で、描画する必要のない影になる部分を描画せずに、処理するポリゴン数を減らすことにより、メモリへの負荷を減らす処理
これらにより、「GeForce2の世代に比べて400%の効率アップが図られている」(タマシ氏)と説明しており、同社が公開したベンチマークデータによれば、QuakeIII Arenaの結果でGeForce2 Ultraに比べて倍の描画性能を発揮しているという。
●GeForce3はXboxにも採用され、今後も性能改善は続く
Xboxに関する説明。NVIDIAはXboxにノースブリッジであるXGPUとサウスであるMCPXを供給する |
MSI Computerが展示していたGeForce3搭載ビデオカード | 筆者がヒートシンクをはずして欲しいとリクエストしてみたところ、なんと「NV20」とコードネームで書かれたエンジニアリングサンプルチップがでてきた |
Q&AセッションではNVIDIAが昨年末に知的所有権などを買い取った3dfxについての質問もでた。NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏は「GeForce3には3dfxから取得した技術などは特に生かされていない。しかし、2002年に出荷を予定しているNV30ではそうした技術も生かされることになるだろう」と述べ、NV30の出荷時期と、3dfxの技術も生かされるという見通しを明らかにした。
なお、以下は取材などを含めて明らかになったGeForce3のスペックだ。
コアクロック | 200MHz |
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メモリクロック | 460MHz(DDR SDRAM、実クロックは230MHz) |
トランジスタ | 5,700万トランジスタ |
製造プロセスルール | 0.15μm、TSMCファブで製造 |
ビデオメモリピーク時バンド幅 | 7.3GB/sec |
HDTV/DVD対応 | HDTV対応、Motion Compensation |
OS | Windows 95/98/Me/2000/NT、Linux、Mac OS |
API | Open GL1.2、DirectX 8.0(下位互換性あり) |
なお、今回はNVIDIAのグラフィックスチップの発表では必ず明らかにされるフィルレートやテクセル性能などは明らかにはされていない。このあたりには直前にレンダリングエンジンの仕様が変更されたためという憶測も飛び交っており、実際の性能が明らかになるまでにはもうすこし時間がかかりそうだ。
□Intel Developer Forum Conference ,Spring 2001ホームページ(英文)
http://developer.intel.com/idf/
□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/Pages.nsf/pages/pr_022701
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スティーブ・ジョブズ基調講演レポート
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新GPU「GeForce3」がMacから搭載されることをアナウンス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/mw01.htm
(2001年2月28日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]