Macworld Conference&Expo / Tokyo2001

スティーブ・ジョブズ基調講演レポート
花模様のiMacは、CD-RWを搭載してマイナーチェンジ
新GPU「GeForce3」がMacから搭載されることをアナウンス

スーツ姿のジョブズ氏は珍しい

期日:2月21日 10時~
会場:幕張メッセ イベントホール


 今年も幕張メッセには、熱心なMacユーザーが米Apple ComputerのCEO、Steve Jobs氏の基調講演を聴くべく長い行列を作った。冷え込みは昨年ほどではなく、日向にいればなんとか過ごせる程度。長時間を屋外で待つことになる来場者には、少しばかりの幸いである。

 基調講演は、ほぼ予定時刻の10時にスタート。最終的な聴講者数はまだ主催者側から発表されてはいないが、開始直前に会場内を見渡した限り、昨年よりはやや空席が目立つような印象を受ける。ステージは二面の大型スクリーンがあり、その両サイドにThink differentの垂れ幕が掲示されている。向かって右はお馴染みの若きマイルス・デイヴィスだが、左側にはやはり若き頃の手塚治虫の姿があった。



■新色!?「Flower Power」は花模様。一瞬、あっけにとられる会場

やはり遠目にはスノーと見まがうかも知れないが、いずれも柄付き。珍しいジョブズ氏のスーツ姿も、実はネクタイの柄からこのiMacを暗示させる工夫、というのは深読みのしすぎか……
 今回は珍しくスーツ姿で講演を行ったジョブズ氏が、“目玉”として講演の最後に用意していたのは、かねてから噂の新iMacだった。いつもどおり、勿体をつけるかのようにスペックを小出しにしつつも、上位2モデルにはCD-RWを搭載することを紹介。この日バージョンアップした「iTunes 1.1」とともに、サンフランシスコでアナウンスした“デジタル・ハブ”という考え方に即したものであることを強調した。

 iMacの重要なポイントでもあるカラー、デザインという部分では「ちょっと予想できないようなものですよ」と前置きを加えて紹介した「Flower Power」。

 ステージ奥から、せり出してきた時、遠目には一瞬従来モデルのスノーと区別がつかなかったのか、会場はあっけにとられた感があったが、スクリーンに花模様が映し出されると同時に驚きの声があがった。しかしこの声は、これまでのiMacの発表で沸いた歓声とはやや異質なもので、ざわつきやとまどい、失笑もいりまじった複雑なものという印象を受けた。

 ただ、iMacの新しいカラー(柄かも知れないが)が日本で披露されたのは初めてのことで、欧米人の率直な歓声や反応とはやや趣を異にするということもある。ジョブズ氏は意に介さず、この模様は貼り付けられたものではなくプラスチックの成型過程で実現する技術。この技術を完璧にするために、一年半余りも努力してきたと強調した。

 続いて登場した「Blue Dalmatian」では、聴衆も慣れたのか、ステージにせり出してきた際に拍手をする余裕が生まれたようだった。続いて、これも講演では恒例となった新製品のCMを披露。今回は5パターンが用意されていたが、いずれもiTunesのビジュアル効果を前面に出し、それにiMacを組み合わせた抽象的なもの。意外なことに、すでに画面上のキャッチコピーは日本語化されていたが、ジョブズ氏が期待していたような、それぞれのCMに対する聴衆の反応の違いは産まれなかった。

USB×2、FireWire×2、外部ビデオ出力、ネットワーク機能など、インターフェース部分は3モデル共通。コンフィグレーションの違いは、この表に集約されている。ちなみにCPUはPowerPC G3を搭載 最上位モデルで選択できるカラー。ミッドレンジはGraphiteの代わりにIndogoが、ローエンドはIndigoのみが用意されている。現在の為替レートを考えると、米国よりは日本のほうが頑張った価格設定


■NVIDIAとの関係を深めるアップル。GeForce3はMac向けが先行

最初に提供されるのはMacプラットホームであると、NVIDIAとの密接な関係をアピール

 講演のなかで、非Macユーザーにとっても気になる発表が行われている。1月のサンフランシスコで発表されたように、NVIDIAはMacプラットホームへと参入。すでに出荷済みのPowerMac G4では、GeForce2 MXを標準搭載するモデルが存在する。しかし、これに続いて最新のグラフィックチップ「GeForce3」は、Mac向けが先行されることになった。

 ジョブズ氏に招かれ、ステージへと上ったNVIDIAのチーフサイエンティストDavid Kirk氏は、Pixerの15年前の初期CG映像「Luxo Jr.」をモチーフに、そのパフォーマンスを強調。制作当時、クレイのスパコンを使ってフレーム単位で3時間ものレンダリング時間が必要だったという作品の一部を、リアルタイムでレンダリングしながらインタラクティブに動かして見せた。


 続いて登場したのは、Quakeでお馴染みのid Softwareの創業者でリードプログラマでもあるJohn Carmack氏。初めて公開するという同社の次期ゲームタイトルの一部を、GeForce3とOpen GLを使って披露。複数光源を使った陰影処理やハイライトなど、複雑なレンダリングを行っている背景や登場キャラクターを紹介している。

Pixer社の初期作品「Luxo Jr.」をインタラクティブ化して、GeForce3のパフォーマンスをデモ id Software社の次期ゲームタイトルを、GeForce3とOpen GLを使ってデモ。キャラクターの陰影処理などを披露

 GeForce3は、3月下旬にPowerMac G4向けのBTOオプションとして販売が開始される。価格は68,000円。これは単体での価格で、GeForce2 MXやATI Rageといった標準ビデオカードとの置き換えの場合は、それぞれに応じた差額ということになる。

5,700万トランジスタ、76ギガフロップというGeFroce3のスペックを強調するジョブズ氏 GeForce3搭載ビデオカードの販売価格は68,000円。初期段階では、AppleStoreにおけるBTOオプションとして提供 SurerDrive、GeForce3と、初搭載する製品のキースライドとなったアポロによる月面到達の写真


■英語版の登場から一年余、ようやく日本語化されたiTools

 PowerBook G4やSuperDriveを搭載するPowerMac G4、そしてiTunes、iDVDなどサンフランシスコで発表された製品群についても、やや短縮された内容ではあったが、かなりの時間をさいて日本のユーザー向けた紹介が行なわれた。さらに、3月24日に出荷を控えるMac OS Xは昨年と同様に基調講演の冒頭に取り上げて、日本語環境の充実ぶりをふたたび強調している。

日本語化されたiTools。しかし、ある意味マンパワーが必要なiReview(Apple Computerによるオススメサイトの紹介)とKidsSafe(子供に見せるには適さない情報を遮断する機能)のふたつは、国内での提供が実現していない
 もうひとつ日本向けに発表されたのが、2000年1月のサンフランシスコで発表されたiToolsの日本語化だ。すでに英語版のまま国内でもサービスが提供されていたが、一年余りを経て、ようやく日本語化が実現したことになる。

 講演中でのジョブズ氏の弁やニュースリリースによれば、22日付けでサービスが開始されていることになっているが、原稿執筆時点では『スケジュールされたメンテナンス中』というメッセージが英語で表示されるだけで、まだ利用することはできないようだ。基調講演のなかでも、日本語化されたiToolsの画面をスライドで見せただけで、1年前に米国でやってみせたように自ら操作をしてみせることはなかった。


これまでは英文のメッセージしか送れなかったiCardも日本語で使えるようになる。利用できるフォントは、Mac OS Xにも搭載されるヒラギノ書体 約10分でホームページが作れるというiToolsのHomePage作成ツール。これらと、インターネット上のストレージであるiDiskと「@mac.com」のドメインが利用できるメールアドレスが、iToolsから提供される

 講演は予定を30分ほどオーバーし、約2時間という1カ月前のサンフランシスコExpo以上の長丁場ということになった。聴衆の反応といえば、昨年よりはややトーンダウンしたかという印象は否めないが、新iMac、GeForce3、日本語化されたiToolsと盛りだくさんの内容であったことは間違いない。講演終了後には、ジョブズ氏がもう一度ステージに現れて、カメラマンのリクエストに応える場面もあった。

これはお馴染みのドックのデモ。他にも、Public Betaでのフィードバックから採用されたAppleメニューや、ファイルのプルダウンによる一覧などを紹介 ジョブズ氏自らMac OS Xの日本語環境を披露。標準添付されるOpenTypeのヒラギノフォントのさまざまな書体を紹介した Mac OS X用のキラータイトルとしてたびたび登場するAlias|Wavefront社の「Maya」。Mayaを使って作られたムービーでは、日本のユーザーに向けたメッセージも

Photoshopを使ったPentium 4とPowerPC G4の速度比較。733MHzのG4はPentium 4なら2GHzに相当すると熱弁を振るうが、コンシューマにはなかなか理解しにくい部分であるのもまた事実。数字のマジックであると強調する背後に、ロードマップどおりに動作クロックがあがらないG4へのいらだちも見え隠れする 出荷は開始したものの、絶対的な流通量が足りずにバックオーダーを抱えるPowerBook G4。予想以上の人気とはいうが、初期出荷においては、明らかに桁がひとつ足りないほどしか出荷できなかったのも事実。今後は充分な量の出荷を約束するという 例年より暖かいとはいえ、2月の空の下何時間も開演を待つ来場者たち。ここは、VIPや優先入場者の行列で、背後にはこの何倍もの一般来場者の列が存在する。今回の基調講演の内容は、果たしてこうしたユーザーの期待に応えることができたのだろうか。その答えは今後の市場動向が明らかにするはずだ

□Macworld Conference&Expo / Tokyo2001のホームページ
http://www.idg.co.jp/expo/mw/
□アップルのホームページ
http://www.apple.co.jp/
□関連記事
【2001年2月22日】アップル、水玉模様と花柄のCD-RW搭載iMac
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/apple1.htm

(2001年2月22日)

[Reported by 矢作 晃]


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