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そのホームコンピューティング分野に昨年末加わったのが、キーボードやマウス、ゲームパッドといった入力デバイスだ。現時点でのラインナップは、Wired Peripheralsシリーズとして、一般的なコード接続タイプのWired KeyboardとWired Mouse(いずれもPS/2、USB兼用)、Wireless Peripheralsシリーズとして、無線によるワイヤレス接続のWireless Keyboard、Wireless Mouse、Wireless Gamepad、そしてこれらとホストを中継するBase Stationの4製品。ワイヤレスデバイスの利用にはUSB接続のBase Stationが不可欠であるため、それぞれ単独での販売に加え、Base Station、Wireless Keyboard、Wireless Mouseをセットにしたパッケージも用意される。ここでは、Wired Keyboardと、Wireless Seriesの4製品(3製品のパッケージ+Wireless Gamepad)を試用してみた。
●キーボードはインターフェイスを除けば仕様はほぼ同じ
まずキーボード2種だが、インターフェイスを除けば基本的な構造は同じ。唯一の識別点は、NumLockやScrollLockといったロックキーの状態を示すインジケーターだ。Wired Keyboardのそれが、文字の書かれたプラスチック板の裏のランプ点灯で表現されているのに対し、Wireless Keyboardでは液晶による文字表現となっている。Wireless Keyboardは若干高級感を出してみた、というところだろうか。Wireless Keyboardは底面に単三電池3本を内蔵する。
Wired Keyboard (パームレストを展開) |
Wireless Keyboard (パームレストを収納) |
両キーボードに共通する特徴は、ゲームパッドを思わせる十字型のカーソルキーパッド、その上に用意された4つのプログラマブルキーとその左の丸いボタン、キーボード左上側にある音楽CD再生用ボタン、そしてキーボード下部に折畳式の格納可能なパームレストといった部分だ。米国のPCゲーマーには、伝統的な逆T字型以外のカーソルキーはあまり評判が良くないのだが、MicrosoftのNatural Keyboardもカーソルキーを十字に配しているところを見ると、何か理由があるのかもしれない。
写真では分かりづらいがインジケータは液晶になっている | こちらはプラスチックの上に文字が書かれている |
4つ用意されたプログラマブルキーは、付属のソフトウェア「Intel Wireless Series Control Panel」で簡単に機能を定義(アプリケーションの起動、Webページへのジャンプ等)できる。このIntel Wireless Series Control Panelをワンタッチで呼び出すために用意されているのが、プログラマブルキーの左側にある丸いボタンというわけだ。音楽CD再生用ボタンは特にプログラミング等の必要はない。
もう1つの特徴であるパームレストは、使わない時はキーボードの背面に格納でき、使う時はキーボード脇のボタンでロックを解除してセットできる、というアイデアものだ。実際には1人のユーザーが、状況によってパームレストを使ったり、使わなかったり、ということはあまり考えられないが、複数のユーザーでキーボードを共有する、という事情なら有効かもしれない。ただ、パームレストの中央部を支える脚は、それほど頑丈とはいえず、使用中にパームレストがたわむ感じがするのは残念だ。
●いかにも“メンブレン”なタッチのキーボード
さて、キーボードといえば、欠かせないのがキータッチについての評価だ。が、この点でIntel製キーボード(Intelが販売すると言った方が適切かもしれないが)は、極めて月並みである。キータッチの評価はどうしても個人の好みが出てしまうが、筆者にはストローク感が不足する。「ストローク感」というのは、実際のストローク長だけでなく、キースイッチのバネの強さ、キーを押しきった時の感触などにも影響されるのだが、どうも浅いような気がしてならない。筆者の偏見だが、いかにもメンブレンといった感じの打鍵感だと思う。
このキーボードとペアになるマウスだが、今回はWireless Mouseのみを試用した。内部に単四電池3本を内蔵するが、使っていて重い、と感じることはなかった(ちなみにLogicoolのCordless Mouseは単四電池2本で動作する)。とはいえ、ごく普通のスクロールマウスである。
●液晶によるID表示機能付きゲームパッド
これらに比べればWireless Gamepadには、ちょっとした工夫が目につく。たとえば、中央部に用意された小型の液晶には、そのゲームパッドが何番のIDを持つものかが表示される。Base Stationには、最大8つまでのデバイスが接続可能だと記したが、これは言い換えれば、最大8つのGamepadを接続可能ということになる。8人のユーザーがそれぞれGamepadを持った時、自分がゲーム中のどのプレーヤー/キャラクターになるのか、液晶表示を見れば一目瞭然というわけだ。
もう1つの工夫は、マウスのエミュレーション機能を備えていることだ。ゲームパッドを両手で握ると、マウスを握ることができなくなるが、マウスエミュレーションをサポートすることで、Gamepad上のカーソルキーパッドでマウスを代用できる。この機能は、ボタン1つで簡単にオンオフでき、マウスエミュレーションモードが有効かどうかは、中央部の液晶パネルの表示で分かる仕組みだ。全体にハードコアゲーマー向けというよりは、ファミリー向けのゲームパッドという印象だが、3つのデバイスの中では、最も機能的な特徴があるように感じた。
このBase Stationを用いたワイヤレスシステムの利用に際して、最も注意が必要なのは、必ず専用のソフトウェアを組みこまなければならない、ということだ。つまり、Wireless KeyboardやWireless MouseをOSの組み込みに利用することはできない。また、専用ソフトウェアは、Windows 98とWindows Meのみのサポートであるため、Windows NTやWindows 2000では利用できない(Wired Keyboardに付属のソフトウェアも、Windows NTやWindows 2000ではインストールできないが、ソフトウェアがなくても普通の101キーボードとして利用できる)。このあたりのサポート状況が、「ホームコンピューティング」製品であるゆえんかもしれないが、嬉しくない制約といえるだろう。
●主張やイニシアチブが感じられないIntelの入力デバイス
ここで取り上げたIntelブランドの入力デバイスだが、Intelがなぜこのような事業を行なうのかよく分からない、というのが筆者の率直な意見だ。たとえばMicrosoftのNatural Keyboardには、支持する、しないは別として、エルゴノミクスの点で、独自の主張がある。だが、Wired Keyboardには、そうした主張やイニシアチブは感じられない。一般の消費者に「Intel」というブランドがどのように受け止められているのか、筆者はよく分からないのだが、少なくともキータッチから「高級」とか「高品質」といったメッセージを受け取ることはできなかった。
Wired Keyboardに比べれば、Wireless Keyboardなどワイヤレス製品の方が、まだIntelらしさが感じられる。Bluetoothの旗振り役の1人でもあるIntelは、Bluetoothに限らずワイヤレス技術に以前から意欲を示してきた。しかし、現在並行輸入で入ってきているWireless Peripheralsシリーズは、国内法規による認定を受けていない、いわばグレー製品。それを承知の上で、わざわざ使うほどの魅力は感じられなかった。
なお、通常、筆者はこうした周辺機器のテストを自宅で行なっているが、今回はインプレスのPC Watch編集部でテストを行なった。その理由は、筆者の自宅では、Wireless Peripheralsが全く動作しなかったからだ。一応、筆者の仕事部屋だけでなく、リビングルームでもテストしたのだが、いずれも動作不可。筆者の自宅は、LogicoolのCordless Desktopもトラブルを起こす(ただしこちらは全く動かないわけではない)電波地獄?のようなので、これはあくまでも特別な事例だと思うが、ひょっとするとこうしたリスクもある、ということを覚えておいた方がよいかもしれない。
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【1月27日】【Akiba PC Hotline!】
独特なカーソルキーを持つ無線と有線のIntel製キーボードが同時デビュー
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010127/etc_intelkb.html
(2001年2月14日)
[Text by 元麻布春男]
・今回試用した無線機器は海外市場向けの製品であり、国内で使用した場合、関連の法規に触れるおそれがあります。 ・この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびPC Watch編集部が保証するものではありません。 ・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。 |