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PowerBook G4のレポートに引き続き、アップルブースの模様を紹介する。大手出展者が集まるサウスホールのほぼ中央という恒例の場所にブースは構えられている。Moscone Centerの入り口にはiDVDとiTunesの垂れ幕が掲げられたが、PowerBook G4とPower Mac G4の垂れ幕はこのブースでしか見ることができない。
■外観は同一だが、内部がかなり変わっているPower Mac G4
新しいPower Mac G4については外観が従来モデルと同一ということもあって、主にスペック部分に興味が集まるものと思われる。133MHzバスの採用、nVIDIAのMac市場参入によるGeForce2 MXの搭載と、PCとの共通性がかなり高くなってきた。展示会場内にはCreative Mediaも出展し、G3/G4対応のSound Blaster Live!をデモンストレーションしている。
Power Mac G4のデモンストレーションは今回発表されたiDVDを中心に行なわれているが、展示されているのはCD-RW搭載のモデルが多いことと、実作業に時間がかかることもあってDVD-Rを実際に焼いてみせているわけではない。
同時に発表されているApple Pro Speakerは、G4 Cubeに付属していたHarman/kardon製のスピーカーをミニプラグ出力としたもの。ただし、マルチオーディオ出力機能をサポートするアンプがPower Mac G4本体内に搭載されているため、音質面での向上が期待できる。日本での販売価格は7,500円と発表された。しかし展示では周囲の音に影響を受けるスピーカーではなく、ヘッドホンをつないでiTunesのデモを聞かせているマシンも多く見られた。
■パブリックベータ版は、ユーザーの声を届けることに成功したが……
Mac OS Xの紹介はブース中央のシアターと、お馴染みの円形のエリアをひとつ使って行われている。展示されているMac OS Xは、基調講演でも披露された最新のもの。ビルドナンバーを確認すると「4K17」と出る(写真撮影不可)。日本語対応したパブリックベータ版以降のビルドなので、プリファレンスを変更することで、日本語でメニュー表示させることも可能だ。
このエリアに集まる来場者の多くは、やはりパブリックベータ版を試用しているユーザーが多く、説明員への問いかけも主にパブリックベータ版における不満点や、現在のビルドにおける変更点などを確認するような内容が多い。特にAQUAインターフェースについては、切り捨てられかかった多くのOS 9ライクな操作性がこうしたユーザーからのフィードバックで復活、採用に至ったと考えるのが妥当だ。いかに素性が異なるOSとはいえ、ユーザーの多くは既存のOSからの移行が前提となることは間違いない。
残念ながら、一般のユーザーが改良されたAQUAインターフェースを利用する機会は3月24日のパッケージ版リリースまで待つことになる。それまでは、パブリックベータ版からのフィードバックが続けられるはずだ。パブリックベータ版のリリースは、ユーザーの声をApple Computerに届けることにある程度の成果をあげた。
しかしながら、結局のところMac OS Xはパッケージ版の販売からスタートすることになる。もちろん、既存のユーザーあるいは既存のMacが存在する以上パッケージ版の発売は不可欠だ。しかし、昨年9月のパブリックベータ版のリリースに際して、Apple Computrerは「当初(注:本来の意味の当初ではないが)夏に予定していたパッケージ版のリリース予定を、パブリックベータ版へと置き換えた格好。いわば、ハードウェアへのプリインストールをもって正式な出荷にあてるので、2001年早々というMac OS Xのスケジュールには遅れがない」とコメントしていた。しかし、今回の基調講演ではプリインストールは7月と予告されている。結局、パブリックベータ版をはさんでひとつ先送りとなった格好と言えなくはないだろうか。あくまで予定である以上、スケジュールに変更が起きるのは仕方がないのだから、こうした状況におけるコメントは玉虫色にしないほうが良いと、いつもながら思うのだが……。
圧倒的な要望に応えて採用されたアップルメニュー。「特別」メニューの要素が加わるなど機能的に変わっている部分も多い | Dockに格納されたフォルダやハードディスクの中身をポップアップで表示。ここで階層表示をさせることもできる | Finder上のツールバーをカスタマイズする。ツールバーを廃して、OS 9ライクなシンプルなウィンドウにすることもできる |
■iMovie、iTunes、そしてiDVDとコンシューマ向けソフトの内製は進む
iMovieに続く、コンシューマ向けのキラーアプリケーションとして発表されたのが「iTunes」だ。基調講演でジョブズ氏が繰り返した『Digital Hub』としてのPCの価値を高めるソフトである。現在、市場で販売されている同様のMP3ジュークボックスソフトは、1万円弱から数千円といったところ。これが本体バンドル、あるいは無償ダウンロードで手に入るようになるわけだから驚く。
簡単なDVDオーサリングソフト「iDVD」にしても、将来的にはDVD-RドライブやDVD-RWなどの標準搭載が進み、ほとんどの機種にバンドルされることになるだろう。そうした流れはすでにiMovieが証明している。次々と、コンシューマ向けのソフトを内製としていることは、Apple Computerにしてみればハードウェアの魅力と市場での競争力を高める重要な要素だが、サードパーティにとってみればその市場への可能性も奪われかねない。Mac OSに限らず、それぞれのOSというプラットフォームを維持するために、サードパーティの存在は欠かせない。今後、コンシューマ向けソフトの内製化に際しては、さまざまなバランス感覚も必要になるだろう。
ブース内では「iTunes」がPowerBook G4、「iDVD」がPower Mac G4と、ともに新ハードウェアの中心的なアプリケーションとしてデモが繰り返されている。
プレゼンテーションシアターでデモされるMP3ジュークボックスソフト「iTunes」。日本語版は1月下旬からダウンロードができるようになる | 「SuperDrive」を搭載するPower Mac G4にバンドルされるiDVD。コンシューマ向けに簡単な操作でDVDオーサリングができるように工夫されている | こちらはプロ向けのDVDオーサリングソフト「DVD Studio Pro」 |
□MACWORLD Expo/San Francisco 2001ホームページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□Apple Computerのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□Apple ComputerによるMACWORLD Expo/San Francisco 2001情報(英文)
http://www.apple.com/hotnews/
□関連記事
【1月10日】アップル、ドルビーデジタル対応DVDオーサリングソフトなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010110/apple3.htm
(2001年1月11日)
[Reported by by 矢作 晃]