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基調講演レポートの続編をお届けする。Appleの業績不振の理由として、Wintelと比べてクロック周波数が低いメガヘルツギャップ、そしてCD-RWの波に乗り遅れたことをジョブズ氏自身が反省点として挙げていた。また、Appleに限らずPC業界全体の今後の方向性も不安視されている。ジョブズ氏はそれらについてAppleからの解答を提示した。
●焼くためのパワー
Power Mac G4の最高クロック周波数は長い間500MHzのままだったが、今回ようやくより高速なモデルが登場。最高クロック周波数は733MHzとなった。466、533、667、733MHzの4モデルが用意される。下位2機種は本日より、高速なモデルは2月中の出荷開始とされる。
なお、昨年夏より出荷されていたデュアルCPUモデルは、今回は用意されない。デュアル路線を放棄したわけではなく、安定したCPU確保のために当面は、シングルCPUモデルを中心とする方針に切り替えたとのことだ。533MHzモデルのみBTOでデュアルCPUモデルとすることができる。
ロジックボードは新しいものになり、バスクロック周波数は133MHzに上がっているほか、ビデオカードも上位3機種はATIからNVIDIA GeForce 2 MXになるなど、各部で速度向上がはかられている。基調講演では恒例になった最高速のIntel製CPU Pentium 4 1.5GHzとのPhotoshop競争も行なわれ、PowerPC G4 733MHzが勝利を収めた。
またPower Mac G4ラインは今回CD-RWが標準装備となる事も発表された。さらに733MHzモデルではCDとDVDの読込/書込が可能なパイオニア製のSuperDriveが用意される。ちなみにCD-RWメディアの扱いはMac OS上のFinderではフロッピーと同様で、特殊なソフトは必要ない。このあたりはMacintoshらしい点だ。
ジョブズはこの新しいPower Mac G4紹介時に“Power To Burn ---CDs, DVDs and Pentiums”というコピーを挙げている。新しいドライブでディスクを、強力なCPUパワーでPentiumを焼いてしまうというのである。
新しいPower Mac G4には4種類のラインアップが用意される。期待される500MHz以上のPowerPC G4搭載機がようやく発表された | 733MHz機に搭載されるパイオニアが提供するSuper DriveはCDとDVDの両方のメディアの読み書きが可能になる | 残念ながら高速なPower Mac G4は2月中の販売開始 |
●デジタル家電ハブとしてのMac
PC業界は衰退すると言われているけど本当だろうか? 実は新しい方向へ進化する段階なのではないのか? ジョブズ氏は今までのPC発展が、まずはOffice製品やDTP関連といった生産性向上という段階、そして次にインターネットという段階を経て、次を探している状況なのではないかと話す。
彼の提案する次の方向性とは、デジタル・ライフスタイルのためのデジタル家電のハブとして機能するというアイデアだ。我々の身の回りはPalm等のPDA、MP3プレーヤーやCDプレーヤー、DVカメラやDVDプレーヤなど、多くのデジタル機器に囲まれはじめている。それらを積極的に利用するためにMacが必要なのだと主張する。
そして、この構想の最初の成功例がiMovieなのだ。DVビデオカメラとMac、iMovieを組み合わせてのビデオ作り、さらにはそのビデオをネット発信するためのiToolsサービスが組み合わさって1つのソリューションになっている。この講演ではiMovieに続く2つのソフトウェアが発表された。
●MP3ソフトiTunes、DVD制作ソフトiDVD
ジョブズ氏は、DVに続く次のデジタル・ライフスタイル用ソリューションとして提供される分野はデジタル音楽であるという。本日よりApple製MP3ソフトが無償でダウンロードできるようになった。iTunesと呼ばれるこのソフトはエンコーディングやMP3再生のほか、音楽CDを焼いたり携帯MP3プレーヤーに音楽ファイルを転送するといった事が可能だ。この分野では他にも多くの製品があるが、iTunesの一番の特徴は操作が簡単であることだという。実際にジョブズ氏がiTunesを使って、さまざまなデジタル音楽の楽しみ方を実演した。なお、iTunesがサポートするCD-RWドライブは現在Apple純正のみで、今後60~90日にサポート範囲が追加される予定であるという。
また自分のオリジナルDVD制作のためのソフトiDVDも発表された。これは、iMovieやFinal Cut Pro、Premiereなどで作成したDVファイルを素材としてDVDを作成する。ムービー追加はデスクトップからファイルをドラッグ&ドロップするだけ。また、DVDのメニュー画面の作成も極めて簡単になっており、プリセットのテーマを選択すれば、見栄えのするものがかなりお手軽に作れる。DVD制作ソフトというとプロ向けという観点があったのだが、ジョブズ氏は教育向けや広告代理店のプレゼンテーション用途などの多様な使い道があると語った。MPEG-2エンコーディングは全てソフトウエアで実行されるが、普通ビデオ再生時間の25倍処理にかかるのに対し、G4を活用した同ソフトでは2倍で済むという。iDVDはDVD書き込み可能なSuper Drive搭載機にバンドルされる。
●ハードとソフトを1社で提供できる強み
今回の場合だと新Power Mac G4で用意されるCD-RWやSuper Driveといったハード環境、そしてiTunesやiDVDを組み合わせることにより、簡単にAppleは1パッケージのソリューションを提供できる。このようなビジネスが可能であることが、ソフトとハードを一緒に提供できるAppleの強みであるとジョブズは力説する。いずれにしても、デジタル・ライフスタイルという新しい方向性の成否は、Appleに限らず停滞が懸念されるPC業界全体の関心事だろう。
デジタル家電製品にはPCが必要なのか? 複雑なソフトの活用、大きなモニタ、ストレージ、ネット接続……理由は限り無くある | MP3デジタル音楽用ソフトiTunesの画面。シンプルで、1ウィンドウで完結するユーザーインターフェースを実現 | DVD制作ソフトiDVDの画面。インタラクティブなDVDメニュー画面作成やムービーの設定などがiMovie級の手軽さで実現される |
(2001年1月10日)
[Reported by Pierre Fujiki]