元麻布春男の週刊PCホットライン

ソフトウェアDVDプレーヤーの「2強」を比較する


●この冬アップデートされた「WinDVD-DH」と「PowerDVD VR-X」

 今やPCでDVD-Videoの再生を行なうことは、珍しいことではなくなった。1万円足らずのCPU(Celeronで700MHz以下、Duronなら750MHz以下)であっても、ソフトウェア再生に十分なパワーを持つ上、DVD-ROMドライブの価格も7,000円~15,000円程度と手ごろだ。初期には安定性や画質に問題のあったソフトウェアDVDプレーヤーも完成度が高まり、今ではPCでのDVD-Video再生といえば、ソフトウェア再生を指すと思って間違いない。

WinDVD-DH
PowerDVD VR-X
 そのソフトウェアDVDプレーヤーの分野で、現在2強とでも言うべき存在がInter VideoのWinDVDシリーズと、CyberLinkのPowerDVDシリーズだ。この2本はパッケージソフト市場で競い合うだけでなく、ビデオカードやDVD-ROMドライブ向けのバンドル市場でもしのぎを削っている。この2本が、この冬揃ってアップデートされた。WinDVDはWinDVD-DHに、PowerDVDはPowerDVD VR-Xへと、それぞれバージョンアップしている。

 ソフトウェアDVDプレーヤーというと、まず頭に浮かぶのは「画質」の2文字だが、今回のアップデートの目玉は画質ではない。PC用ソフトウェアDVDプレーヤーの画質は、とりあえず前世代で行きつくところまで到達した、と筆者は思っている。PCでのDVD-Video再生時に画質が問題になるのは、De-Interlaceを必要とする30fpsのタイトル(オリジナルがTV番組などビデオのタイトル)である。WinDVDはシリーズはかねてから定評があったが、PowerDVDシリーズも前作のPowerDVD 2000で追いついた、というのが筆者の評価だ。WinDVD-DH、PowerDVD VR-Xとも、前作を継承しており、ほとんど甲乙つけがたい。

 ただし、PowerDVD VR-Xについては、若干補足しておきたい。PowerDVD VR-Xで30fpsタイトルを高画質で見るには、前作PowerDVD 2000で採用されたソフトウェアBob技術(プログレッシブ・プロセッサ)を用いる必要がある。が、プログレッシブ・プロセッサと、ビデオチップが備えるハードウェアDVDアクセラレーション機能は排他である(どちらか一方を選ばねばならない)ため、画質を優先させる場合はビデオチップのハードウェアアクセラレーションを無効にしなければならない(500MHz以上のクロックのプロセッサなら、ビデオチップのアクセラレーションは必要としない)。

【テストシステム1】
CPUCeleron 700MHz
メモリ128MB PC133 SDRAM(66MHz動作)
マザーボードIntel D815EEA (i815E)
ビデオチップGeForce2 GTS (32MB DDR)
LAN3Com 3C905-TX
DVD-ROM東芝 SD-M1212
HDDIBM DPTA-372050
【テストシステム2】
CPUAthlon 850MHz
メモリ128MB PC133 SDRAM
マザーボードGigaByte GA-7ZX (VIA KT133)
ビデオチップGeForce2 GTS (32MB DDR)
LANMelco LGY-PCI-TXL
DVD-ROM東芝 SD-M1212
HDDIBM DPTA-372050
* すべてDirectX 8.0をインストール
 ところが、筆者がPowerDVD VR-Xをテストシステムにインストールしたところ、インストール直後の初期設定で、アクセラレーションが無効になっている(ビデオチップのハードウェアアクセラレーションを利用するのチェックボックスがクリアされている)にもかかわらず、実際にはハードウェアアクセラレーションが有効になっている、という問題が見られた。この問題は、一旦アクセラレーションを使う設定に変更し、その後でアクセラレーションを無効にすれば回避できるのだが、最初はとまどった。PowerDVD VR-Xで、30fps系のタイトルの画質に不満があるというユーザーは、この点を確認すると良いだろう。

 というわけで、今回のアップデートの目玉を一言で表せば、ドルビーヘッドホン対応に代表されるサウンド面の強化、ということになる。ドルビーヘッドホン機能を最初に搭載したソフトウェアDVDプレーヤーは、夏にリリースされたSoftDVD MAX 2000だが、WinDVD、PowerDVDとも、今回この機能を実装してきた。



●ドルビーヘッドホンやS/PDIFマルチチャネル出力を比較

 ドルビーヘッドホン機能は、5.1chのドルビーデジタルサラウンド音声を、ヘッドホンによるバーチャルサラウンド音場で再現する(5.1chの音声をヘッドホンを前提とした2ch音声にデコードする)もの。いずれのプレーヤーも、このバーチャル再生環境について、ドルビーラボラトリーの認証を得ている。したがって、再生される音も同じかというと、不思議なことにこれが違う。音場感はそれほど異なるとは思わないものの、WinDVDの再生音は筆者には高音が強調されているように感じられた。筆者は比較的長期に渡ってソニーのバーチャルヘッドホンシステムを使ってきたため、これに再生音の似たPowerDVDの方をニュートラルに感じるのかもしれないが、不思議な話である。

 一方、S/PDIFによるマルチチャネル出力だが、ここではCT5880(GA-7ZXのオンボードサウンド。SoundBlaster PCI Digital相当)、SoundBlaster Live! Value(カードの品番はCT4830。これにデジタルI/OブラケットのCT4710を組み合わせた)、YMF744ベースのサウンドカード(Labway X-Wave 6000)の3種の環境をテストした。OSはWindows 98 SEとWindows Meの2種類で、前者にはWindows 95の流れをくむVxDベースのドライバを、Windows MeにはMicrosoftが推奨するWDMベースのドライバを組み合わせている。誤解のないよう断っておくと、Windows MeにVxDドライバを組みこむことは可能だし、Windows 98 SEにWDMのドライバを組みこむこともできる(Windows 98にWDMドライバは不可)。単に、テスト環境のバリエーション設定でこのような組み合わせにしただけである。

 その結果は以下の通り。PowerDVD VR-XだけがCT5880でのドルビーデジタル出力をサポートしていることが違いで、後は差はない。むしろ差が大きいのは、サウンドカードのドライバだ。Windows MeでS/PDIFによるマルチチャネル出力がサポートされていないのは、プレーヤーやOSの責任ではなく、ドライバ側の問題である(CT5880、YMF744)。SB Live! ValueのみがWindows Meでマルチチャネル出力がサポートされているが、これはWebサイトで公開されている最新のLiveWare 3.0によるもの。S/PDIF出力をサポートしたWDMドライバを筆者は初めて見た(難点はドライバの総容量が25MB近いことだ)。ただし、このS/PDIFをサポートしたLiveWare 3.0はWindows Me専用で、Windows 2000では利用できない。期待をこめてWindows 2000用のLiveWare 3.0も試してみたが、やはりS/PDIFはサポートされていなかった(念のために断っておくが、ここでいうS/PDIFサポートはマルチチャネル出力のことであって、Wave OutをリダイレクトしてS/PDIFから出力することは、どの環境でも可能である)。

Windows 98
サウンドカードCT5880SB Live! ValueYMF744
ドライババージョン4.12.01.11914.06.7114.07.00.2013
WinDVD-DH
ドルビーデジタル×
DTS×
PowerDVD VR-X
ドルビーデジタル
DTS×


Windows Me
サウンドカードCT5880SB Live! ValueYMF744
ドライババージョン5.12.01.40364.12.01.08015.12.01.2228
WinDVD-DH
ドルビーデジタル××
DTS××
PowerDVD VR-X
ドルビーデジタル××
DTS××


CT5880: GigaByte GA-7ZXのオンボードサウンド(SoundBlaster PCI Digital相当)
SB Live! Value: カード品番CT4830に,Digital I/Oブラケット(CT4710)の組合せ
YMF744: Labway X-Wave 6000

 逆に、今回YMF744で用いたVxDドライバ(4.07.00.2013)は、YMF744ベースのカードに添付されているドライバCD-ROMのほとんどに含まれているバージョンのもので、現在Webにある最新のリファレンスドライバ(4.07.1040)より古い(4.07.00.2013が1999年10月29日付であるのに対し、4.07.1040は2000年1月26日付)。しかし、ドライバを4.07.1040にすると、S/PDIF出力は調子が悪くなった。このあたり、どうも微妙だ。

 他にPowerDVD VR-Xでは、まれに、DTSは問題ないのにドルビーデジタルのS/PDIF出力ができない、という経験をした(プレーヤーからS/PDIFは見えている)。しかし、確認のために再インストールすると問題が再現しないため、問題の所在がプレーヤー側にあるのかどうか、良く分からない。また、PowerDVD 2000では、サウンド出力にS/PDIFを選ぶと、リニアPCMの再生ができない(サウンド出力をWave Out等に変更しなければならない)、という問題があったが、PowerDVD VR-Xでは、この制限はなくなっている。WinDVD-DHには、このような制限はなく、ドルビーデジタルの出力が得られない、ということもなかった。


●機能では「Power DVD VR-X」に、安定性は「WinDVD-DH」

 サウンド以外の改良点というと、クローズドキャプションのサポートが共通したフィーチャー。PowerDVD VR-Xには、民生用のDVD-RAMレコーダーやDVD-RWレコーダーのビデオレコーディングフォーマット対応、複数言語字幕の同時表示、といった機能もある。多機能なPower DVD VR-Xに、動作の安定したWinDVD-DHというのが、今回2つのプレーヤーを触った印象だ。

 いずれにしても思うのは、両方のプレーヤーとも、必要な機能はほぼすべて網羅しており、ほぼ完成の域に達している、ということである。PowerDVD VR-Xには若干荒削りな点が見られたとはいえ、ベーシックな再生には何の問題もない。逆に言えば、次のバージョンにやり残したものなどあるのだろうか、というのが率直なところである。プレーヤーとしてはこれで収束してしまうのか、筆者には思いもおよばないような新機能が残されているのか、2001年を見守りたいと思う。


□「WinDVD-DH」製品情報
http://www.canopus.co.jp/catalog/wincinema/windvddh_index.htm
□「PowerDVD VR-X」製品情報
http://www2.cli.co.jp/rc/index2.htm

(2000年12月27日)

[Text by 元麻布春男]


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