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「COMDEX/Fall2000」がいよいよ開幕した。このイベントは、開催時期が11月ということもあって、米国での年末商戦向けの新製品のお披露目の場となっている。とはいえ、世界に先駆けてデジタルカメラの新製品が発売される日本から見ると、すでに店頭に並んでいる製品が、ようやく初公開されるといったタイムラグがある。そのため、大手メーカーの場合、このCOMDEXで世界初公開される製品は数少ないのが現状だ。
しかし、COMDEX/Fallは、来年に製品化される予定のものを先行公開する場でもある。また、日本国内未発表の製品も近年は意外に多いため、その意味ではなかなか見応えのあるイベントとなった。
会場が巨大なだけに、初日だけで大手メーカーのブースすべてを回れたわけではないが、メイン会場のラスベガスコンベンションセンターの南ホールを中心に、デジタルカメラ系の見どころを紹介しよう。
●ソニー、メモリースティックDuo採用の腕時計型カメラを参考出品
ここ数年、COMDEX/Fallでも屈指の注目ブースになっているソニー。ブースの目玉は、第二世代AIBOだ。音声認識はもちろん、デジタルカメラ機能を搭載していることもあって、興味深い存在なのだが、あまりの人気にその周辺に近づくことができないほどだ。
また、今回ソニーは、自社ブースとは別に、メモリースティックのライセンシーを集めて、システムや関連機器を一堂に展示したメモリースティック・パビリオンも開設。こちらには恒例となったメモリースティック搭載機のモックアップが数多く展示されていた。
そのなかで唯一、完全なワーキングサンプルとして、腕時計型のデジタルカメラが出展されていた。本機は、メモリースティックDuoを採用したもので、基本的なユニットは、先だって話題となったDuo採用の超小型デジタルカメラのものを流用しているようだ。
撮像素子は、おそらくVGAサイズのCMOS素子。液晶モニターは0.55インチのカラータイプを採用。これは液晶ファインダーとしても、再生モニターとしても利用できる。全体のデザインも美しく好感が持てる。
さすがにデモは行なわれなかったが、この展示機で実際に画像を撮影することができるという。また、カラー液晶とは別に、その下の部分にモノクロ液晶があり、こちらには常時、デジタルで時刻が表示される(実際に動いていた)。電池は時計のベルト部分にリチウムイオンポリマーが入っている
なにしろ、カラー液晶は消費電力が多く、時刻表示のために常時点灯させるのは現実的ではない。このデュアル液晶を見ただけで、実用性を考えて作られていることが容易に理解できるだろう。
もう一つ注目したいのは、これまでイメージ・モックアップだったI/O機能を搭載した拡張モジュールが、実働モデルとなりデモまで行なわれていたことだ。
今回、デモが行なわれたデジタルカメラモジュールは、10万画素のCMOS素子を採用したもので、画像サイズは332×288ピクセルのいわゆるCIFサイズだ。デモではCLIEに装着して撮影していたが、米国でのCLIEはモノクロタイプしかなく、液晶表示は当然モノクロになる。だが、撮影されたものはカラーで、ノートPCで見る限り、メモ用途であれば実用レベル。
アドレス帳に顔写真を追加したり、プリクラ風にシールを作ったり、メールに添付するのであれば十分な品質だった。
また、今回はドライバーソフトの関係でCLIEでのデモだったが、実際にはメモリースティック対応のPCはもちろん、GSM用ユニットとしても利用できる。製品化は2001年中で、製品化の際はデザインや機能も変更されるというが、来年から本格稼働するW-CDMA携帯電話のデジタルカメラユニットとして、サービス開始の5月頃を目安に製品化される可能性が高い。
□ニュースリリース
http://www.world.sony.com/JP/News/Press/200011/00-1114/
「CyberShot DSC-P1」は今回のCOMDEXが北米では初のお披露目となった。だが、ブースを見ていても、日本国内ほどの人気はない。コンパクトさにさほど関心を示さず、むしろ価格により敏感な米国らしい反応といえる。しかし、北米で高いシェアを誇る人気のソニーだけに、さすがにちょっと意外だった。
また、日本国内と同じく、米国版プレイステーション2と連携させて楽しめるピクチャーパラダイスのデモも行なわれていたが、メモリースティック・パビリオンでの展開だったことあって、人気はまずまずという状態だ。
●低価格モデル中心のKodak
北米で人気のKodakは、今回も例年通り、デジタルイメージング系の周辺機器メーカーやソフトハウスとともに、パビリオンスタイルでのブース展開。
デジタルカメラ系では、先のフォトキナでも公開された「DC3200」、「DC3400」、「EZ200」といった、日本国内未発表の低価格系モデルを中心にデモを行なっていたのが印象的だった。もちろん、ブースは終始、なかなかの賑わいを見せており、北米でのKodak人気の高さを実感させる。
また、同じくフォトキナで発表された、ワンショットタイプの1,600万画素デジタルカメラバックも出展。きわめて高価なモデルだけに、フォトキナ同様、今回もショーケース越しだった(写真は特別にケースから出してもらって撮影したもの)。
さすがに、37mm角の巨大な1,600万画素CCDは圧巻で、見ているだけで惚れ惚れするほど。今回は、実際に本機で撮影された大型プリントも展示されていたが、上半身の女性ポートレートながらも、産毛の一本一本まで鮮明に写っているのには感心してしまう。価格は現時点でも未定だが、ユニット単体で、高級乗用車に近いレベルになる可能性もありそうだ。
変わったところでは、APSコンパクトカメラに撮像素子と液晶モニターを内蔵し、撮った瞬間を確認できるコンパクトカメラ「ADVANTIX Preview」も出品されていた。このモデルは、APSフィルムで撮影すると同時にレンズ脇からデジタル撮影し、液晶上でその具合を確認できるもの。それを見ながら、APSの磁気データ部分にプリント枚数などを追記したり、プリントしないといった指示ができる。
もっとも、本機はAPSとデジタルのハイブリッド機ではなく、デジタルデータは保存することができないので、どれほどの利用価値があるのか疑問もある。
●カシオ、キヤノン、三洋、リコーも独自スタイルで展開
メイン会場である南ホールには、数多くのデジタルカメラ系メーカーのブースが出展され、目立った新製品はないものの、各社とも独自の展開を図っている。
価格は「QV-3000EX plus」が実質899ドル、「QV-3EX plus」が999ドル、「QV-2300UX plus」は699ドルとなっており、いずれもカメラとmicrodriveを個別に購入するよりも割安な価格設定になっている。大量に撮影できるというわかりやすいメリットがあるため、アメリカでは人気が高いという。
また、北米では「PowerShot G1」の人気が日本よりも遙かに高い。このクラスではニコン「COOLPIX990」と人気を二分する勢いという。
逆に、「IXY DIGITAL」は日本ほどの人気はなく、やはりコンパクトさに日本ほどの価値を見いださない、アメリカ市場の特性を感じることができた。
三洋電機は今回、iDフォトを前面にアピール。ブースには巨大な「ID-1000Z」の模型が展示されており、注目を浴びていた。現地価格で1,500ドル前後と高価だが、撮影枚数の多さと本格的な動画撮影から、なかなかの人気を集めていた。
リコーは、今回のCOMDEXで北米初公開となる「RDC-i700」が高い人気を獲得。開催初日の昼頃にはカタログがなくなってしまうほど。とくに、GSMでの携帯データ通信機能がとても新鮮に受け取られている。日本人には大きすぎる印象のボディも、こちらでは大きく感じられないのが不思議だ。
□COMDEX/Fall 2000のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2000/
(2000年11月15日)
[Reported by 山田久美夫]