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「COMDEX/Fall」開幕前夜に、デジタルイメージング関連メーカー約50社が、プレス向けに「DigitalFocus 2000」というイベントを開催した。Kodak、ニコン、オリンパスなど大手メーカーの製品も展示されたが、これらは開幕後の本会場での展示とあわせて紹介することとし、ここでは日本国内では見ることのできない製品や技術を中心にレポートしよう。
● Minds@Work、PCなしにデータ保存ができる6GBポータブルストレージを出品
メモリーカードスロットはポピュラーなPCカード Type2なので、変換アダプタを使えば、CFカード/スマートメディア/メモリースティックなどにも対応できる。内蔵HDDは、東芝製の2.5インチ6GBタイプ。保証外になるが交換もできそうだ。USB接続によるパソコンへのデータ転送も可能。
価格は499ドル。液晶モニターもAV出力もなく、保存した画像データのチェックができないことなどを考えるとやや不安もあり、この価格なら中古のLibrettoを探した方が安心……とも思う。また、CF Type2対応のデジタルカメラであれば、1GB microdriveを使えば、ほぼ1日分の撮影ができるため、実用性といった点ではやや疑問も残るが、ユニークな発想の製品として注目される。
なお、現時点で日本国内への正式販売の予定はないが、Web通販で購入することは可能という。
●FlashPoint、Digita OS用の携帯電話通信用アプリケーションをデモ
このシステムは、Digita OSを搭載したデジタルカメラに、専用アプリケーションをインストールし稼働させるもので、現在は米国の大手携帯通信メーカーであるSprint PCSと提携し、米国の携帯電話であるGSMを使ったシステムをテスト運用中。来年には、Sprint PCSのシステムを使った本格的なデータ転送サービスが開始されるという。
アプリケーション側では、GSMだけでなく日本のPHSやiモード携帯電話にも対応可能だという。
確かにシステム的にはユニークで業務用途に向いているが、Digita OS搭載機であることが大前提である点がネック。また、「リコー RDC-i700」のような通信機能に特化したモデルに比べると、液晶の大きさや操作感、PCとの連携といった面で不利な点も多い。
今後、デジタルカメラから直接ネット上にアップロードする時代がそう遠くない時期に訪れる可能性が高いが、通信速度の高速化といった周辺のインフラがきちんと整わないとなかなか厳しいものがありそうだ。
● CONEXANT、130万画素CMOS素子搭載デジタルカメラシステムをデモ
CONEXANTは今回、130万画素のCMOSセンサーを使ったデジタルカメラシステムを出品。同社のデジタルカメラ用プロセッサを中心としたリファレンスデザインシステムを使った、実写デモも行なわれていた。
同社は、画像処理ソフトの「Image Expert」やデジタルカメラ用プロセッサをデザインしていたSerra imageingを傘下におさめており、CMOSイメージセンサーについても高い技術を持っているメーカーだ。
実際に撮影した画像データを見る限り、同画素のCCDほど高いイメージクォリティーではなくノイズも多い。それでも、小さなプリント用途には耐えるレベルの解像度を実現。消費電力の少なさもあって、今後飛躍的に成長する、携帯電話やPDA用のデジタルカメラユニットとして、なかなか有望といった印象を受けた。
● Applied Science Fiction & DIGITAL-NOW、現像液を使わずにフィルム画像をデジタル化する新技術を紹介
最後に、ユニークな新テクノロジーについて紹介しよう。それは、デジタルカメラを使わずに、通常のカメラからデジタル画像を得るテクノロジー。最大の特徴はなんといっても、通常のフィルムで撮影し、現像液を使うことなくデジタルデータを得るという点だ。
正確にいえば、ゲル状の現像材をフィルムに塗布して、一種の現像効果を発生させる。そして、それをフィルムの両面と透過光を使ってスキャン。それにより、カラーフィルムの各色の潜像を検出。そのデータを独自のアルゴリズムを使って合成処理することで、カラーの鮮明なデジタルデータを得るものだ。
なぜ、普通に現像してスキャンせずに、そんなに面倒な行程を経るのだろう。
現在の現像液を使うシステムでは、廃液処理や配管工事などの関係で、メンテナンスフリーに近い自動販売スタイルのキヨスクタイプ(店頭設置型)自動プリントマシンを作ることはきわめて困難だ。しかし、このような技術を使えば、現像液を大量に使わなくても、デジタルデータさえ得られる。そこからカラープリントができるので、キヨスク型のフィルムプリンターを作ることができるわけだ。
この技術は先だってのフォトキナでも注目を浴びていたものだが、時を同じくして、「Applied Science Fiction」と「Digital Now」の2社が、この技術を今年発表したわけだ。
Digital Now | Applied Science Fiction |
さすがに、今回のDigitalFocusでは、実際のデモは行なわれていなかった。これは機器がまだ試作段階であることもあるが、特許などの絡みもあって、詳細を公開できない状態にあるというのが、本当のところのようだ。
「Applied Science Fiction」と「Digital Now」はそれぞれ同じようなシステムでこの技術を実現しているが、最大の違いは前者は処理後のフィルムをスキャン後に廃棄するのに対して、後者は後処理により、通常の状態に近いフィルムネガを作ることが可能な点だ。ただ、前者はこの技術以外にも、最近のフィルムスキャナーで話題になっているスキャン時に付着したホコリの自動補正技術である「Digital ICE」の特許を持っているメーカー。それ以外にもスキャニング関係でのさまざまな特許を所有していることもあって、最終的なイメージクォリティーの点では一歩リードする感じだ。
実際のところ、この技術を使っても、キヨスク型マシンでは、1時間に100本単位の高速処理ができるわけではないため、少量処理にならざるを得ない。また、先進国においては、デジタルカメラの普及と低価格化がさらに進むことを考えると、本当の意味での実用といった点にも若干の疑問が残る。だが、きわめてユニークなシステムのため、今後の展開が大いに注目されるところだ。
□COMDEX/Fall 2000のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2000/
(2000年11月14日)
[Reported by 山田久美夫]