COMDEX/Fall 2000

NVIDIA、初のノートPC用ハードウェアT&L対応ビデオチップ
GeForce2 GOを発表

会期:11月13日~11月17日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
   Sands Expo and Convention Center


 ビデオチップメーカーのNVIDIAはCOMDEX/Fall 2000が開催されているネバダ州ラスベガスで記者会見を開催、同社としては初めてとなるノートPC用のビデオチップである「GeForce2 GO」を発表した。

 これまでハイエンドデスクトップPC用ビデオチップ市場にフォーカスしてきた同社が、ノートPC用のビデオチップ市場に参入するという噂は以前よりささやかれていたのだが、それが現実のものとなった。果たして、デスクトップPC用ビデオチップの巨人であるNVIDIAの参入はノートPC用のビデオチップにどのような影響を及ぼすのだろうか。


● ノートPC用のビデオチップはCPUの処理能力の1/10でしかない

 現在、ノートPC用ビデオチップ市場は、昨年まで市場を握っていたNeoMagicが撤退したことを受けて、ATI Technologies、旧S3(ビデオチップ部門は切り離され、現在はVIA Technologiesに買収されている)といったビデオチップメーカーが争う市場となっている。

NVIDIAマーケティング担当副社長のDan Vivoli氏
 現在のノートPC向けビデオチップで主流になっているのは、フレームバッファとなるビデオメモリを内蔵したタイプで、ATIのRAGE-Mobility128シリーズや、旧S3のSavage/MXといった製品が多く採用されている。ノートPCでは、デスクトップPCとは異なりスペースや消費電力が重要になるため、こうしたビデオメモリを内蔵したビデオチップの主流だった。

 しかし、これらはビデオチップとしては1世代前のデスクトップPC用のチップに基づいている。例えばRAGE-Mobility128はATIのRAGE128シリーズの描画エンジンを利用しているし、Savage/MXは旧S3のSavage4に基づいており、現在のデスクトップPCのハイエンドであるGeForce2 UltraやRADEON256などと比べると3D描画能力は大幅に劣っていた。


ノートPCのCPUとビデオチップの処理能力の差を示すグラフ
 最初に壇上に登ったNVIDIAの副社長でマーケティング担当のDan Vivoli氏は、今回発表するGeForce2 GOを搭載したノートPCで、ソニーのAIBOについて説明しているホームページなど3D関連のページを開きながら、「既にノートPCでも3Dを利用するシーンは増えつつある」ということを強調した。続けて「しかしながら、ノートPC用のビデオチップの処理能力はCPUの1/10でしかない。今後ノートPCでもCPUとビデオチップの処理能力のバランスがとれているようにする必要がある」とのべ、今後ノートPCでも同社がデスクトップPC向けにリリースしているGeForce2 UltraやGeForce2 MXのような高い3D描画能力を持ったビデオチップが必要になるという見通しを明らかにした。




● スペックはGeForce2 MXとほぼ同等だが、省電力機能やクロックなどで省電力化を果たす

 今回NVIDIAが発表したGeForce2 GOは、これまでのノートPC用ビデオチップの常識を覆すスペックとなっている。

【GeForce2 GO】
スペック
・NVIDIA第2世代256ビットコア(コアクロック143MHz)
 ・ハードウェアT&Lエンジン
 ・4テクセル/クロック
 ・DirectX7/X8対応
 ・32ビットカラー/32ビット Z/Stencilバッファ
 ・AGP 4X(Fast Write対応)
・HDTV/DVDハードウェア補正対応
・NVIDIA Shading Rasterizer
・TwinView、Digital Vibrance Control対応
・32/64/128ビット SDRAM/DDR SDRAM(最大32Mバイト、メモリクロック166MHz)
・LVDS対応

性能
・17.2Mトライアングル/秒
・286Mピクセル/秒
・572Mテクセル/秒
・2.6GB/秒(ピーク時バンド幅、DDR SDRAM利用時)
・2048×1536ドット/60Hz(最大解像度)

 第1の特徴はノートPC用ビデオチップとしては初めてハードウェアT&Lエンジンに対応していることだろう。CPUの代わりにジオメトリ演算を行なうハードウェアT&Lエンジンは、これまでノートPC用のビデオチップに採用された例はなく、GeForce2 GOが初めてということになる。

 また、スペックを見て勘のいい人は気がついたかもしれないが、このスペックは、コアクロックが143MHzになっていること、LVDSをサポートしている点をのぞき、6月にGeForce2シリーズの廉価版として発表されたGeForce2 MXとほぼ同等になっており、GeForce2 MXをクロックを下げることなどにより消費電力を下げ、ノートPCの液晶ディスプレイを接続するのに必須であるLVDSのインターフェイスに対応することでノートPC対応とした製品であることがわかる。

 Dan Vivoli氏によれば「GeForce2 GOでは3つの消費電力を押さえる工夫をしている。1つはパイプラインの動きをダイナミックにコントロールし、使っていない場合には電力を落とす省電力機能。2つ目はノートPC用としては珍しい0.18μmの製造プロセスルールを採用していること。3つ目がハードウェアT&Lエンジンを持つことによりCPUの使用率を下げ、CPU側の消費電力を押さえることでトータルで消費電力を押さえている」という。


●消費電力は大きく当初はハイエンドをターゲットにしていく

GeForce2 GOの消費電力をATIのRAGE Mobility128と比較しているスライド。RAGE-Mobilityはビデオメモリ内蔵だが、GeForce2 GOはビデオメモリの分は含まれていないことに注意
 消費電力に関してだが、熱設計に利用する最大消費電力は2.8Wとなっており、RAGE-Mobility128の2.3Wと比べてかなり大きいと言わざるを得ない。しかも、RAGE-Mobilityがビデオメモリを内蔵しているのに対して、GeForce2 GOではこれ以外に別途ビデオメモリ分の消費電力がかかる。アイドル時に関しても同様で、RAGE-Mobility128が0.8Wであるのに対して、GeForce2 GOは0.9Wとなっている(やはり別途ビデオメモリ分が上乗せされる)。

 確かに、Vivoli氏の言うようにハードウェアT&Lエンジンを利用することで、CPUにかかる負荷を下げることが可能になるため、CPU側の消費電力を下げることはできるだろう。しかし、アイドル時や最大時などの消費電力が、ビデオメモリ統合型であるRAGE-Mobility128よりも大きく、ビデオメモリ分も入れればさらに大きくなることが予想されることを考えると、現在のビデオメモリ統合型のチップが採用されているノートPCの市場を置き換えると考えるのは難しいだろう。


GeForce2 GOを搭載した東芝の試作ノートPC。2001年第1四半期の終わりに出荷される予定
 それでは、NVIDIAはどういう市場を狙っているのだろうか? おそらくそれはデスクトップPCのリプレースメント市場だろう。今回NVIDIAが発表したGeForce2 GOはGeForce2 MXに近い3D描画性能を持っており、これまでのノートPCでは考えられなかったような3D描画能力を持っていると言ってよい。つまり、これまでデスクトップPCでしかできなかったような分野の市場を切り開いていきたいというのがNVIDIAの意向であるようだ。

 今回は、GeForce2 GOのラウンチパートナーとして東芝が紹介され、2001年の第1四半期の終わりにGeForce2 GOを搭載した東芝のノートPCが発売されることが明らかになった。また、NVIDIAの関係者によれば、既に複数の日本のOEMメーカーへの情報開示が進んでいるそうで、感触は悪くないという。ハイエンドノートPCでは消費電力もスペースもあまり問題にはならない場合が多く、今後そうしたノートPCで採用が進む可能性があり、高い3D描画能力を持つノートPCの普及が期待できる。

 なお、記者団からは「メモリ統合型のビデオチップを出す予定は」という質問も飛び出したが「ノーコメント」(Vivoli氏)ということで、現時点ではそうした予定があるかどうかも含めて明らかにはなっていない。


□NVIDIAのホームページ(英文)
http://www.nvidia.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.nvidia.com/News/Pages.nsf/pages/pr_111300a

□COMDEX/Fall 2000のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2000/

(2000年11月14日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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