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元麻布春男の週刊PCホットライン

デジタルカメラを買い換えられなかったわけ


●マクロへの不満で買い換えを思い立つ

富士写真フイルム
FinePix 1700z
 筆者にとってデジタルカメラは、「半分仕事、半分遊び」の製品だ。プロフェッショナルカメラマンでない、つまり写真でお金を頂く立場でない筆者にとって、デジタルカメラが100%仕事の道具であるハズがない。が、原稿に添えるオマケというか、原稿を補完するものとして、写真を撮る機会が多いのもまた事実だ。このコラムにも、筆者が撮った写真が幾度となく使われている。

 現在、筆者が使っているのは富士写真フイルムのFinePix 1700zだ。150万画素光学3倍ズームのこのカメラ、A4サイズでプリントするには、ちょっと厳しい気がするが、ハデ目な色調も嫌いではないし、個人的に画質について大きな不満があるわけではない(もちろん欲を言えばキリがない)。初期にはスマートメディアのデータ消失問題に悩んだこともあったが、今ではそれも解消した。そのカギはメディアとPCカードアダプタ、カードリーダーなどコントローラを含む機器を同じメーカーで揃えることだと思う。少なくとも筆者の場合はこれで問題が起きなくなった。

 筆者がこのカメラで一番不満に思っているのは、マクロモードの実用性にある。筆者がデジタルカメラを使うシチュエーションの1つは、プレゼンテーションのスライドを撮ったり、展示されているカード類に使われているチップのアップを撮ったり、といったいわばメモ代わりの使い方だ。チップのアップを撮るのは、型番を手書きで控えるのが面倒だからにほかならないのだが、これがFinePix 1700zではなかなか難しい。ちゃんと型番が読める写真が撮れたかどうか、撮影したデータをPCに転送して確認するまで、自信が持てないのである(同社製カメラのマクロモードの実用性という点では、FinePix 4700zではまだ不満だったが、FinePix 40iではかなり良くなっている、というのがちょっとさわってみた筆者の感想だ)。つまり、撮れないわけではないのだが、撮れたかどうか確信が持てなければ、やたらと無駄にシャッターを押すしかなく、そこにフラストレーションがたまる。

 すでにCCDの解像度でいうと、FinePix 1700zの150万画素から2世代ほど進化したことに加え、ヨドバシカメラのポイントが6万円分ほど貯まったこともあり、そろそろ新しいデジタルカメラに買いかえようか、と考えたのが10月も下旬のことだ。

●マクロモード、光学ファインダー、ほどよい大きさが条件

 機種選定に際しては、マクロモードがちゃんとしていること、という条件は当然のこととして、価格が高すぎないということも重要な要件の1つであった。いくらポイントで6万円のゲタを履いているとはいえ、「プロ」ではない(またカメラ道楽でもない)筆者にとって10万円を超えるカメラはリアルではない。また、オリンパスのE-10やキヤノンのD30といったカメラは、高嶺の花であるだけでなく、筆者にとってあまりにもカメラが立派過ぎる。

 次に重視したのはファインダーが光学式である、ということだ。屋内でフラッシュを伴った撮影が少なくない筆者にとって、液晶ディスプレイはバッテリーの「持ち」の点で不利になる。また、液晶のビューファインダーは(ビデオカメラ等で普及した方式であるとはいえ)、筆者には目が疲れるように感じる(ちなみに筆者はこうした職業にありながら、今でも裸眼視力で1.2以上をキープしている)。

 もちろん、光学式ファインダーならなんでも良いというわけではない。むしろ多くのデジタルカメラが採用している光学式ファインダーは、一応、ズームに連動しているとはいえ、視野率やパララックス補正といった点で、極めて不満だ。FinePix 1700zのファインダーも、他と比べて特には悪くないのかもしれないが、マクロ撮影時等、頭の中で補正することが欠かせない。これもフラストレーションの一因である(FinePix 1700zでは液晶ディスプレイの視野率も筆者にとって決して満足のいくものではない)。欲しいのはデキの良い光学式ファインダーだ(それを追求すると一眼レフタイプ、ということになるのだが)。

 以上の条件にさらに付け加えておきたいのが、小さ過ぎないこと、ということである。キヤノンのIXY Digitalが売れたことと無縁ではないのだろうが、京セラのFinecam 3300、ソニーのDSC-P1など、このところ話題になっているカメラはあまりにも小型だ(ここまで極端ではないが、ニコンのCOOLPIX 880も筆者にとっては小さすぎる)。立派すぎるカメラも困るが、小さすぎるカメラもやっぱり困る。レンズが暗くなる、マクロで不利といったこと以上に、筆者の手になじまない(決して手が小さい方ではないが、並外れて大きい手でもないと思う)。

●第一候補はペンタックスEI-2000なのだが……

ペンタックス EI-2000
 これらの条件を踏まえた上で、筆者が第1候補にしたのは、ペンタックスのEI-2000だった。レンズ交換ができないとはいえ、一眼レフタイプである以上、当然のことながらパララックスが存在しない。また一眼レフタイプであればPLフィルタを使うのも容易だ。CCDは200万画素級だが、2/3インチ型とたっぷりしたサイズである。レンズの鏡胴を回して行なうズーミングも、使いやすそうに見えた。曲面を使ったボディは手にも馴染む。

 逆に、EI-2000を見て最初に気づくのは、そのサイズだ。コンパクトカメラタイプばかりのこの価格帯にあって、一眼レフタイプのEI-2000は明らかに大きい。筆者の好みに対しても大き過ぎるかな、という印象はあるものの、小さいカメラばかりがもてはやされる風潮に対する反発もあり、大きさには目をつぶる気になった。

 もう1つの問題は、このカメラがデジタルカメラ用のOSであるDigitaを採用していることだ。以前、このOSがコダックのデジタルカメラに搭載されて初登場した際には、その緩慢な動作により、決して評判は良くなかった。EI-2000では、HP製のプリンタに対しワイヤレスでデータを送信することもあり、Digitaが必要ということになったようだが、おそらくキビキビとした動作は望めないだろう。この点にも、ある程度目をつぶる覚悟が必要だと考えたものの、一体それが我慢の範囲にあるのかどうか、買う前に知りたいと思った。そして、これが筆者にとってEI-2000の最大の問題を浮かび上がらせることとなった。

 とにかく、EI-2000のレスポンスがどうなのか、確認するためにも実機にさわりたい。カメラの購入にポイントを充当する以上、その店でさわるのが一番だ。ところが、新宿西口のヨドバシカメラに、EI-2000はなかった。正確には、展示されてはいるのだが、ファインダーを覗いても真っ暗で、電源も入らないものしかない。このカメラはレンズシャッター式の一眼レフなので、電源を入れるまではレンズシャッターが開かずファインダーを確認することができないのだ。隣の量販店にあった展示品も同様の状態だった。

 これではラチがあかないと考えた筆者は、新宿三井ビルにあるペンタックスフォーラムまで出かけた。このショールーム兼サービスセンターならEI-2000の実機にさわれるに違いない、と考えたのである。ところが、ここにもさわれるEI-2000はなかった。よく探すと入り口近くのガラスケースの中に、1台鎮座していることがわかったものの、リトラクタブルな内蔵フラッシュが展開状態になっており、さわれる雰囲気がない。そこでは、カタログすらなかったのだ。結局、カタログはヨドバシカメラで入手したが、ペラ1枚、両面印刷の寂しいもので、とてもフラッグシップ機のものとは思えない。

 この一連の出来事で筆者が学んだことは、どうやらメーカーはEI-2000にあまりさわって欲しくないらしい、ということだ。新宿西口地区以外にはさわれるEI-2000があったのかもしれないが、一大消費地である新宿西口や自社ショールームを無視するのは理解に苦しむ。カタログが充実していないこと、そのカタログを見ても本機が備えるホットシューがサポートするオートストロボの種類がわからないことなど、これではメーカーにやる気がないと思われても仕方なかろう。何より、メーカーが一生懸命売ろう、サポートしようという意思のない製品を買っても、ユーザーが幸せになれるハズがない。これこそEI-2000の最大の問題だ。EI-2000はHPへのOEMで損をしなければ良い、という位置付けのカメラだとしたら、あまりにもったいないとも思う。

●ほかの候補も探したが

 こうして後ろ髪をひかれつつも、EI-2000を断念した筆者は、別の候補を探した。そこで引っかかってきたのがキヤノンのPowerShot G1だ。キヤノンにとってG1は決してフラッグシップ機ではないが(上位にレンズ交換式の一眼レフがある)、全8ページのカタログはメーカーのやる気を感じる。スペック的にも、若干マクロが弱いことを除けばほとんどの点でトップクラスであり、欠点の少ないカメラだ。本体がちょっと大ぶりな点も、D30と同じ大容量のバッテリのせいと思えば諦めもつく。

 しかし、結論を言えば、筆者はG1を購入しなかった。手にとってみて、物欲が刺激されなかったのである。こと物欲刺激度ということに関する限り、筆者にとってG1はEI-2000を上回れなかった。たとえば、もし会社等で、スタッフが共用で使う仕事用のカメラを10万円以下の予算で買え、と言われたら、おそらく筆者はG1を選ぶだろう。実際に使ったことはないが、スペックからいって、間違いないような気がする。が、個人のポケットマネーで買うカメラと考えた時、筆者にはどうもピンとこなかった(もちろんピンとくる人、きた人もたくさんいることだろうと思う)。これが、冒頭で述べた「半分仕事、半分遊び」の難しさかもしれない。

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(2000年11月8日)

[Text by 元麻布春男]


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