Click



後藤弘茂のWeekly海外ニュース

いよいよDDR SDRAM本番--でも2001年中は限られた市場に

●DDR SDRAMサポートが進展

 DDR SDRAMがついに表舞台に立った。ここ2週間の間に、AMDはDDR SDRAM対応チップセット「AMD-760」を発表、IntelもOEMメーカーに向けてDDR SDRAMサポートを通知した。2大CPUメーカーのDDR SDRAMサポートの進展で、DDR SDRAMへ向かうメインメモリの流れは完全に決定したと言っていい。もっともIntelのDDR SDRAMサポートは早くても来年第4四半期で、AMDに対しては1年遅れとなる。

 DRAM業界の鼻息も荒い。DDR SDRAMの旗振りの1社であるMicron Technologyの日本法人は、AMDの発表会でDDR SDRAMをSDRAMと同価格にすると宣言。また、DDR SDRAM関連のイベントではこれまでほぼプレゼンテーションを行なわなかった東芝までがAMDの発表会に登場、DDR SDRAMへ向かうという市場予測と製品計画を説明した。オールDRAM業界が一致してDDR SDRAMへとなだれ込むというムードだ。

 では、これで来年にはデスクトップPCのメモリは一気にDDR SDRAMへと移行するのだろうか?

 そうはならない。2001年中は、まだDDR SDRAMはある程度限られたシェアで、主流はPC133 SDRAMだろう。これはDDR SDRAMが普及しないということではなく、いきなり垂直に立ち上げることはできないというだけの話だ。それは、コストとアベイラビリティの問題からだ。

●DDR SDRAMは30%の価格プレミア

 複数のメモリ業界関係者によると、現在、DDR SDRAMはSDRAMに対してプレミアがついており、30%程度の価格差があるという。強気の予想ではこれが来年の前半に10%にまで縮小、最終的にはほぼゼロに近い価格差になるという。DDR SDRAMが安くなるという最大の根拠は、DRAMベンダーが最終的にSDRAMとDDR SDRAMを共通のダイ(半導体本体)で製造するようになることだ。同じダイからSDRAMとDDR SDRAMを選別して製造するなら、テストにかかるコストを除けば基本的な製造コストは同じになる。生産量ももちろん一気に拡大する。

 だが、実際にはすぐに全DRAMベンダーがSDRAM/DDR SDRAM共通ダイへと移行できるわけではない。設計のハードルは高くなる上に、DDR SDRAMに必要な回路搭載によるダイ面積の増加も考慮しなければならないという。また、DDR SDRAMが十分採れるかどうかも問題だ。実際にSDRAM/DDR SDRAM共通ダイで設計したものの、DDR SDRAMが採れずにSDRAMとして製品化している例もあるという。

 また、ある業界関係者はSDRAM/DDR SDRAM共通ダイ化は「どのメーカーも共通ダイにするのは0.13μmから、0.15μmが踊り場で、0.18μmで共通ダイにしている先鋭的なメーカーはそれほど多くない」と言う。0.15μmが本格的に立ち上がるのは今年末から来年、0.13μmはその先の2002年が本番。とすれば、DDR SDRAMへの移行スケジュールも見えてくる。2001年はまだある程度限られた量で、2002年が本格普及というステップだ。

●DDR SDRAM対応グラフィックス統合チップセットがポイント

 もっとも、2001のDDR SDRAMの量が限られていると言っても、順調に出てくればPCのハイエンドのニーズを満たすには十分だろう。特に、Intelからは来年第4四半期までDDR SDRAMソリューションが提供されない(サーバーはDDR SDRAM)ので、DDR SDRAMは当面はAthlonのハイエンドシステムが主流になる。この段階、つまり今年末から来年前半のハイエンドPC浸透フェイズなら、DDR SDRAM自体に価格プレミアが多少あったとしても、それは普及の障害にならないだろう。

 DDR SDRAMの次のブレイクポイントは、意外なことに比較的低価格のシステムになるかもしれない。というのは、DDR SDRAMをサポートするグラフィックス統合チップセットが来年中盤までにどんどん登場してくるからだ。例えば、NVIDIAもGeForce系コアを統合したDDR SDRAM対応チップセット「NV Crush」を投入する見込みだ。グラフィックス統合チップセットの性能の最大のボトルネックはメモリ帯域で、DDR SDRAMサポートで一気にこのネックは取り払われる。単体グラフィックスを使うシステムにDDR SDRAMを搭載するよりも、グラフィックス統合システムにDDR SDRAMを搭載した方が性能向上がはるかに明確だ。そのため、DDR SDRAMのコストと供給量が十分なラインに達すれば、ミッドレンジから下のデスクトップでもDDR SDRAMが浸透し始める可能性が高い。

●製造プロセスの微細化とともにDDR266Aが主流に

 DDR SDRAMは2つのスピードグレードで立ち上がる。また、SDRAM同様にCASレイテンシも異なるタイプがある。最初に立ち上がって来るのは下の3タイプだ。

DDR200 クロック100MHz/CL2
DDR266(B) クロック133MHz/CL2.5
DDR266(A) クロック133MHz/CL2

 ただし、最初はDDR266Aの生産量は限られる。これは、製造プロセスが微細化しないとDDR266Aが十分採れないためだ。例えば、Samsungによると、128Mビット品のDDR SDRAMチップのうちこの夏の段階で20-30%がDDR266A、20-30%がDDR266B、残りがDDR200という製品ミックスだったという。しかし、0.17μmプロセスへ移行することで来年第2四半期までにはDDR266Aの生産量が増え、DDR266が全体の90%を占めるようになるという。

 各社のDDR SDRAM製造プロセスは、現在、0.19~0.22μmから0.17~0.18μmへと移行して来たところで、次のステップで各社が0.15μmや0.13μmへ移行するとDDR266A以上の製品になり、さらに上のDDR333も採れるようになり始めると見られる。製品ミックスはメーカーによって異なるが、DDR SDRAMは最初はDDR200が多く、来年を通してDDR266の比率が高まり、さらに来年後半から2002年にはDDR266の中でもDDR266Aが主流になってゆくという流れになるのは確実だ。

 ここで不可解なのはIntelの動きだ。業界筋の情報によると、IntelのDDR SDRAM対応チップセット「Brookdale-DDR」はDDR200しかサポートしないという。これが本当だとすると、Brookdale-DDRはDDR266が主流になる時期にDDR200までの対応で登場することになる。もっとも、IntelはPentium 4システムでは2チャネルRDRAMのソリューションも提供し続けるわけで、RDRAMとの差を明確にするためにDDR200に限定するのかもしれない。あるいは、Intelが当面はDDR200までしか十分な互換性を保てないと判断した可能性もある。このあたりは、断片的な情報しかないので、まだ判断はできない。

●まだハードルは残る

 勢いがつき始めたDDR SDRAMだが、まだ前途にはハードルがいくつか残されている。

 ハードルのひとつはRambus問題だ。つまり、RambusによるSDRAM/DDR SDRAM技術に対する知的所有権の主張とライセンス料の徴収の問題が、立ちふさがっている。Rambusによると、同社のSDRAM/DDR SDRAMライセンス料はDDR SDRAMを販売できなくするほど多額ではないという。だが、RambusとSDRAM/DDR SDRAMの知的所有権問題で法廷闘争に入ったDRAMベンダーにもこれが当てはめられるかどうかはわからない。DDR SDRAM推進の主要メンバーであるMicron、Hyundai、infinionの3社がRambusと戦う構えを取っていることは不安材料だ。

 この問題はDRAMベンダーに限られない。Rambusはチップセットベンダーにも、DDR SDRAMインターフェイスに関するライセンス契約を求めていると言われる。そのため、この問題がどう決着するのかは、まだ見えない。もっとも、慎重なIntelがDDR SDRAMサポートを顧客にアナウンスし始めたということは、その問題の解決のメドがついたという可能性もある。

 もうひとつのハードルは互換性の確保だ。RDRAMのケースと異なり、チップセットとメモリデバイスのメーカー数が多いので、組み合わせが多くハードルは高い。SDRAMの最初の頃と比べると、各ベンダーの互換性に対する意識はずっと高い。しかし、チップセットベンダーがそれぞれどれだけ積極的にバリデーションに動くかによって、かなり結果が違ってくるだろう。

 また、マザーボードも、Unbuffered DIMMなら2DIMMスロットがおとなしいデザインだが、Unbufferedで3DIMMやSDRAM/DDR SDRAM両対応(両方のDIMMスロットがある)のマザーボードも出てくる。それだけ面白いのだが、最初はやや混乱があるかもしれない。


バックナンバー

(2000年11月2日)

[Reported by 後藤 弘茂]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp