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不定期連載 ゼロ・ハリのホームノマドへの道
~真のロードウオーリアが使う「王様のパソコン」(後編)~


 「ケータイ Watch」で連載中の「モバイル一宿一飯」などでおなじみのゼロ・ハリ氏による不定期連載です。今回は、IBMのビジネスユース向けノートPC「ThinkPad X20」をご紹介します。(編集部)


決して妥協の無い理想的な「王様のパソコン」環境を創る
 筆者が今から10年以上前に購入した東芝製の「キング・オブ・ラップトップ」は、一銭の値引きも無しで、当時598,000円だった。4年間のローンは随分と長かった記憶が今もある。その直後に購入したアップルのマッキントッシュ・プラスはそれよりまだ高い698,000円だったのが、購入2カ月後には約半額に定価が下がってしまった。安いのが正義であるかのような昨今にあって、当時と同じくらいの心と財布の余裕があれば、どれだけ「パソコン・ライフ」は素晴らしいモノになるのかを実践するのが今回の「王様のパソコン」なのだ。


12.1インチのX20の液晶と比較しても超大きな「9497スーパーTFT液晶」
 パソコンの周辺機器の選択で最も重要なのは、常に人間の大事な眼とのインターフェイスとなるディスプレイ画面だ。小さな液晶画面は携帯には便利だが、決して快適とは言えない。10.4インチの液晶ならSVGAの800×600ドットがバランス的には良いはずだ。しかし、プレゼンテーション等の製作にはページ全体を見ながら詳細な細部を編集するので、これでは小さすぎる。液晶サイズも業務の目的でサイズが異なるのはごく普通のことだ。持ち歩くことを除外すれば液晶サイズは大きければ大きいほど有り難いが、全ての人が抵抗無く持ち運べて、操作し易いバランスの取れた液晶サイズは12.1インチのXGAだろう。

 しかし、一旦自宅の書斎やパソコン部屋に戻ればリラックスして仕事の続きや、WEBアクセスを行いたいと考えるビジネスピープルも多いだろう。筆者も、過去多くの愛用したモバイルPCに自宅では外部ディスプレイを接続して、あたかもデスクトップPCのように利用してきた。世紀末になってやっとモバイルPCのパワー不足もあまり感じない時代となり、モバイルPC 1台で家の外も中もこなすことが現実のものとなってきた。もはや17インチディスプレイは発売当初の4分の1以下の価格になり、スペースと多少の発熱を気にさえしなければコストパフォーマンスの優れた選択だ。しかし、王様の頭の中には生まれた時からコストパフォーマンスという物の見方は存在しない。「絶対的に良いモノが一番」なのだ。王様が今回、X20の自宅でのデスクトップPCとして活用するパートナーに選択したのは、同じくIBMの18.1インチの広視野角スーパーTFT液晶ディスプレイモデル9497(直販価格:348,000円)だ。

大きな液晶を軽く安全に回転させる為に要所に安全確実な設計が施されている 軽く手を添えて回すだけでスムースに気持ちよく回転する 縦型1,024ドット×1,280ドットのポートレート・ディスプレイの出来上がり! 圧巻だ!

 勿論、カラーコーディネートを考えた場合ThinkPad X20と同様の「ブラックモデル」(9497-AG1)以外の選択は有り得無い。画面のスミからスミまで表示できる、18.1インチの液晶ディスプレイと言えば、実効表示エリアはブラウン管を利用しているごく普通のディスプレイの20インチ以上に匹敵する。しかし、重量は同サイズのCRTディスプレイに比較して約3分の1、設置スペースも26cmの奥行きで2分の1以下だ。パソコンの前とはいえ、書き物や書籍を読むスペースも欲しいのが普通だ。例え価格が20~21インチのフラットディスプレイの約2.5倍前後だと考えても、これだけ明確な差があるなら、別に王様で無くても食指は動くだろう。

筆者のメイン機だったThinkpad 240(右下) SVGA 10.4インチの液晶画面が嘘のように小さく見える タスクバーにある「PIVOTアイコン」で「回転」を選択、ドラッグすれば液晶画面が即座に90度回る PIVOTドライバを導入したX20は画面のプロパティにメニューが追加される

 ThinkPad X20の外部最大出力解像度である1,280ドット×1,024ドットを表示でき、専用のピボット・ドライバを導入することで表示画面を何時でも左90度回転して表示することが可能だ。表示画面の向きに合わせて、9497-AG1の本体液晶表示部の角を軽く持ち、時計回りに90度回転することが出来る。延々とスクロールするタイプのWEBサイトやテキストエディタやワードを利用した文章書きにはA4ページの縦イメージをスクロールすることなく表示できる1,024ドット×1,280ドットのポートレートサイズ・ディスプレイは最高だ。

回転途中の斜めの9497スーパーTFT、正に変幻自在の王様のパソコンだ! ワードでのA4縦文章の作成や複数アプリケーションを開いての作業に抜群の効果を発揮する 「王様のパソコン」はパソコンの枠を越えた何か新しいツールとなり、また新しいクリエイティブなイマジネーションが湧いてくる!

トラックポイントの3つのボタン配置も同じで操作性が統一される。人気のスペースセーバーキーボード、見つけたら即買い!(右側)
 画面は大きく、バラエティに富んだ表示形式が実現できたので後はキーボードだ。ThinkPadのユーザーなら、赤いポッチの「トラックポイント」の操作には慣れているはずだから、躊躇無く、テン・キー無し、トラックポイント付きのブラックカラーの「スペースセーバーキーボード」が正解だ。トラックポイント第3のボタンの形状もX20とそっくりだ。本来はIBMのサーバーPCであるネットフィニティーのキーボードとして発売されたらしいが、最近の秋葉原では売り切れ続出なので見つけたら即買いだろう。個人差もあるが、「トラックポイント」はトラックパッドに比較して、最初の3分は、「これって使える?」、次の3時間で、「なかなか便利だ!」、そして3日間使ったら「もうほかのデバイスには戻れない!!」という習熟度が尻上がりタイプのポインティング・デバイスなのだ。ThinkPad 755c以降の多くのThinkPadを機内の標準装備として常に10数台以上搭載している歴代のスペースシャトルのクルーがそれを証明してきている。モバイルPCには、そういう長い本当の実績に裏付けされた「レジェンド」も必要だ。


 モバイルPCはそれを持ち運ぶ時にもこだわりたいものだ。安くても十数万円以上するモバイルPCを高々数百円のスポンジのケースに入れて持ち運ぶのも悪くは無い。しかし、Windows互換PC系のユーザーには珍しく、ThinkPadのユーザーにはケースにこだわるユーザーが多い。これはそのモバイルPCを本当に真の道具として活用しているユーザーが、その価値を理解しているからだろう。愛用のナイフに専用のケースがあったり、クラフトマンが自分の大事な道具に最適の道具箱や携帯型のケースをあつらえるのと同じ感覚なのだ。最近は、モバイル専用の鞄にThinkPadを入れて移動する機会が少なく、ごく普通のブリーフケースにThinkPadや書類、そのほかの小物を収納して携帯することが多くなった。

 しかし、ThinkPadは頑強だが裸で押し込むと、同時に収納するほかのハードウエアと中でぶつかり、表面や角には小さな傷が絶えなかった。その為、長く大事に使いたい「硯」のようなブラックゴム塗装のThinkPad X20には、本体の薄さや軽さを犠牲にすること無く、ブリーフケースにスッキリと収まる専用インナーケースを「代官山オーソドキシー」に注文した。アイデア初期から、写真アルバムのカバーのような箱形デザインを考えていたので、今回の出来上がりには非常に満足している。外側にはペンホルダーやPCカードなどを収納できる複数の薄いポケットがあり、一部のポケットは入れたモノが深く入りすぎて、見落とすのを防ぐ為に、浅底になっていてとても便利だ。鞄を入れ替える時にも、このインナーケースだけを取り出し、別の鞄に移すことで、忘れ物は最小限度に押さえることが可能になった。これから年末に向かい寒くなるので、デザイナーの判断で、ただの革では無く、手触りの良いダルメシアン柄のハラコをケースの一部に採用している。

希望通り、本体の薄さ軽さを犠牲にしない理想的な仕上がりの代官山「オーソドキシー」謹製インナーケース 頑強なX20なので、インナーケースだけでも本体の保護には十分だ

王様のモバイルセットだ。ギャラクシアンブルーのWorkPadは「PDA工房」謹製のボタンが光って複数のサインを送る限定の逸品
 最近は、巷に溢れ返っているゼロ・ハリーバートン・アタッシェでは無く、国内外で探したが、なかなか見つからなかったヴィトンの黒のブリーフケースを出張先の大阪ヒルトンホテルで見つけ、衝動買いしたものと組み合わせて愛用している。

 ハラコのインナーケースやヴィトンのブリーフにも、ごく自然に似合うモバイルPCは少なくとも世界にもそれ程数は多く無い。ThinkPad X20は、これらと組み合わせても、安っぽく光り過ぎて自己を主張し過ぎることも無く、ここ一番では本当の力を発揮する。「王様のマインド」を持ったビジネスピープルに最適のモバイル・ウエポンなのだ。「真の道具は目立たなくて良い」。これが現代日本のモバイルPCに最も欠如していることなのだ。


□不定期連載 ゼロ・ハリのホームノマドへの道
~真のロードウオーリアが使う「王様のパソコン」(前編)~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001010/nomad04.htm

□日本IBMのホームページ
http://www.ibm.co.jp/
□製品情報
http://www.ibm.co.jp/pc/thinkpad/tpx2008/tpx2008a.html
□関連記事
【8月28日】IBM、チタン複合素材を採用したB5ファイルサイズノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000828/ibm.htm

(2000年10月11日)

[Text by ゼロ・ハリ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp