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第70回 : 3つのeはザウルスを救うか



 3日に開幕したCEATEC JAPAN 2000 (一般公開は5日から) に、シャープの新型ザウルスが登場した。と聞いても、ザウルスファン以外は「今度はどうよ?」程度にしか思わないかもしれない。しかし、頑なに守り続けてきたザウルスのコンセプトに変化を感じる、なかなか興味深いものになっている。あくまで参考出展で、液晶部分もシールを貼り付けただけのモックアップだが、年末までには発売される見込みだ。価格は未定だが、Pocket PCやCLIEなどの価格を意識しないわけにはいかないのではと予想している。

CEATEC JAPAN 2000で公開されたザウルスのモックアップ

● 携帯電話の次に使ってほしいデバイス

 ザウルスは元々PCとの連携ではなく、単体で完結することが可能な独立したビジネスツールだった。その後、通信機能の搭載やインターネットへの対応、コンシューマを意識したコンテンツプレーヤー指向の改良など、時代に即して様々な機能が統合されたものの、一貫して自己完結型のデバイスであり続けた。

 それは“e”をテーマに開発された新型機 (ここでは仮にeZaurusとでも呼んでおこう) でも同じ。同じなのだが、加えてPalmやPocket PCのような、PCコンパニオン的な使い方も提案できるものになっているという。まぁ、コンセプト的なものはeZaurusの特設ホームページで見てもらえばわかるはずだ。
 シャープ広報は「現在、携帯電話を使ってメールやWebコンテンツを遊んだり、情報入手の手段として活用している。でも携帯電話ではやっぱり不便な面もあるので、解決策としてeZaurusを使ってほしい」とアピール。ビジネスツールとして出発したザウルスシリーズだが、ここ最近の流れに沿ってコンシューマ市場重視の戦略を採っている。

 携帯電話の上に位置するコミュニケーションツールにするため、eZaurusでは新たにCF スロットをTYPE2に変更した。これでNTTドコモのP-in Compactをはじめとする周辺機器選択の幅が広がる。シャープはBluetooth、デジタルカメラ、TVチューナ、スピーカー、スキャナ、GPS、ズームマイクなどのCF TYPE IIカードを参考出展しており、製品化が行なわれる際は、eZaurusでも利用可能になるというから楽しみだ。
 MPEG-4ムービーとMP3オーディオの再生を標準でサポートしているのも特徴。マルチメディアデータ保存用にSDメモリカードスロットも、CF TYPE2とは別に用意されている。リモコン付きイヤーレシーバーも、MDプレーヤーメーカーとしても高いシェアを持つシャープだけに、なかなか使いやすそうなものが同時に展示されていた。

 忘れてはならないのが、液晶パネル。今回も定評のある反射型液晶パネルにフロントライトの組み合わせだ。プロセッサの速度も、本体の重さも、バッテリー容量もわからないが、期待通りならバッテリー駆動時間は相当なものになるに違いない。しかも、クオーターVGA。320×240の画面は日本語表示にも最適だろう。


● ライバルはPalmではなくPocket PC

 Palmの売り上げは相変わらず堅調のようだが、その市場を奪うという構図は今ひとつかみ合わない。ミニPC的な要素も持ち合わせるeZaurusのライバルは、やはりPCの縮小版的なイメージを持つPocket PCになるだろう。
 もっとも、操作性に関するコンセプトは、Pocket PCとはかなり異なるものになりそうだ。Pocket PCの操作性は、Palmを後追いしながらGUIでPC的な使い方も可能にするアプローチ。ボタン類も、直接アプリケーションを呼び出すために使われる。
 しかしeZaurusにはメールチェックやWebブラウズには便利そうな、メールチェックボタンや順送り、逆戻りボタンなどが配置されているが、アプリケーションをワンボタンで呼び出すといった使い方には馴染みそうにない。ソフトウェアが動いていないモックアップなだけに、最終的にどうなるかはわからないが、操作性に関しては明らかに異なるコンセプト (従来型Zaurusの操作性を継承か?) を感じる。

 シャープはeZaurusに関して、メールチェックやWebアクセスなどによるe-Businessソリューション、MP3やMPEG-4に対応するentertainment度の高さ、CF TYPE2とSDカードスロットと多様な拡張カードを用意する拡張性という、3つの“e”をキーワードに掲げ、本当に何でもできることをアピールしていく構えだ。個人的には、何より親指タイプができるスライド式のキーボードが、どれだけの効率性をもたらしてくれるのかも興味深い。

 ただ、発売時期で先行するPocket PCに対し、モックアップの展示だけでユーザーの引き止めができるかどうかは疑問も残る。Zaurusの予定表はよくできているが、従来は少しレスポンスに問題もあった。またPalmには数多くのアドオンソフトが存在し、それがまたPalmのアドバンテージになっている。
 シャープはナムコとの提携でZaurus用の「パックマン」をリリースすると発表するなど、以前よりは周辺ソフトの開発は進んでいる。Zaurus用Code Warriorの発売も近いということだし、うまく開発者を引きつけることができればソフトの増加も見込めるだろう (少々、遅きに失した感もあるが)。
 もっとも、最終的にはCF TYPE2スロットの装備が、売り上げを左右することになるかもしれない。P-in Compactを利用することで、より快適な外出先でのメールチェックを実現できるはずだ。

□Zaurus e conceptのページ
http://ezaurus.com/
□「パックマン」移植のニュース
http://www.namco.co.jp/home/pr/2000/sep/press-06.html
□関連記事
【10月3日】シャープ、スライド式キーボード搭載ザウルス(ケータイWatch)
http://k-tai.impress.co.jp/news/2000/10/03/zaurus.htm

[Text by 本田雅一]


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