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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

AMD担当者に聞くモバイルDuron/モバイルAthlonの実像(前編)

 今後数カ月で、モバイルDuronとモバイルAthlonを、相次いでリリースする予定のAMD。同社でモバイル製品を担当するマーティン・ブース氏(Product Marketing Manager, Computation Products Group)に、AMDのモバイル製品の計画をうかがった。

●DuronノートPCは来年頭に、AthlonノートPCは第1四半期終わりに登場

AMD、Product Marketing Manager, Computation Products Group マーティン・ブース氏
[Q]モバイルDuronの投入時期はいつごろか。サンプルはOEMに渡っているようだが、DuronノートPCは今年の年末商戦に間に合うのか。

[A]AMDの計画としては、今年の第4四半期の早い時期にモバイルDuronの出荷を始める。しかし、モバイルDuron搭載システムがアベイラブルになるには、CPU以外にもさまざまな要素が揃わなければならない。OEMベンダーはプラットフォームを準備しなければならないし、チップセットベンダーもレディでないとならない。そのため、搭載ノートPCがいつ販売されるかは、予測が難しい。私の予測では、多くのベンダーが来年の第1四半期の早い時期に出荷を始めると思う。実際、いくつかのベンダーは来年頭に予定している。AMDからのCPU出荷は第4四半期だが、ノートPCが出荷されるまでにはリードタイムがある。

[Q]ノートPCの方が一般的にデスクトップPCよりリードタイムがかかるということか。

[A]いや、フルサイズノートの場合はそういうわけではない。新CPUをOEMに出荷してから、OEMが製造し、流通チャネルに乗ってエンドユーザーの手元に届くまでは、その程度のリードタイムが必要だということだ。

[Q]モバイルAthlonはどうなのか。来年の春モデルで搭載マシンが登場するのか。

[A]モバイルDuronのケースと同じだ。AMDはモバイルAthlonを、年末近辺、おそらく来年頭から出荷し始める計画でいるが、OEM出荷にはリードタイムがある。もっとも、その差は(モバイルDuronと比べると)小さい。おそらく、第1四半期の終わりには、モバイルAthlonノートPCが市場に出ているだろう。ただし、スケジュールはOEMメーカーが決めることなので、断言はできない。確実に言えることは、来年前半にはモバイルDuronもモバイルAthlonも市場で立ち上がるということだ。

[Q]モバイルDuronが出ることでモバイルK6ファミリは生産中止になるのか。それとも継続して提供するのか。

[A]K6ファミリも需要がなくなるまで供給を続ける。デスクトップでは多分年末か来年の早い時期までだが、モバイルではもう少し長い期間供給することになるだろう。ただし、これは地域にもよる。日米では南米やアジアなどより早くK6のライフは終わるだろう。

●Spitfire、Palomino、Morganの3CPUコアをモバイルに投入

[Q]CPUコアで見ると、AMDのモバイルCPUにはモバイルAthlonとして「Palomino(パロミノ)」、モバイルDuronとして「Spitfire(スピットファイア)」と「Morgan(モルガン)」の合計3CPUコアがあるが。これについて説明して欲しい。

[A]AMDは、第4四半期から新たに3つのCPUコアを投入する。「Mustang(ムスタング)」、Palomino、Morganの3つだ。これは、同じ世代のCPUコアで、基本的に同じデザインを使っている。いくつかの違いがあるが、最大の違いはキャッシュメモリの容量だ。サーバー&ワークステーションをターゲットにするMustangは、ラージサイズキャッシュを搭載する。ワークステーション市場への進出は急務なので、まずMustangを投入する。

 次のPalominoはパフォーマンスPC向け、MorganはバリューPC向け、どちらもデスクトップとモバイルの両方に投入する。この2つはキャッシュサイズがMustangより小さいが、モバイルフィーチャを搭載する。モバイルではPalominoをまず投入し、ほぼ1四半期遅れでMorganが続く。時間差があるのは、新しいCPUコアを複数同時に投入するのは大変過ぎるからだ。

 Palominoを先にするのは、Athlonのモバイル版投入の方がプライオリティが高いためだ。われわれは、すでにDuron(Spitfire)をデスクトップとモバイルの両方で持っているが、Athlon(Thunderbird)はデスクトップ版だけだからだ。モバイルDuronでは、SpitfireがあるためMorganをそれほど急ぐ必要はない。

[Q]SpitfireからMorganへと切り替わるのはいつ頃になるのか。

[A]多分、モバイルでは来年の第2四半期にマーケットに登場するだろう。

[Q]SpitfireとMorganの違いは。

[A]MorganはSpitfireより付加価値が高い。同じサーマルエンベロープ(熱設計の枠)の中で、より高い動作周波数が可能だ。また、Palominoコアと同じモバイルフィーチャを備えている。

●どの価格ポイントでも競争力のある選択肢を提供するのがAMDの戦略

[Q]Intelは、来年頭にモバイルPentium IIIの1GHz版を出してくる。モバイルAthlonはこれと戦えるクロックになるのか。

[A]Intelはデスクトップですら1GHzが潤沢に供給されていない。だから、(モバイルの1GHz版も)出荷を注意して見ている必要がある。モバイルAthlonのクロックの詳細については、製品発表時に話したい。しかし、デスクトップでは、AthlonはPentium IIIに対して、DuronはCeleronに対して、性能面ではより競争力のあるソリューションだ。だから、モバイルAthlonもモバイルDuronも、アトラクティブなロードマップになると信じている。

[Q]現在、デスクトップでAthlonはPentium IIIに対して、同じクロックでの価格がはるかに安い。モバイルAthlonでも価格をアドバンテージにするのか。

[A]まだ価格についてはアナウンスしていない。しかし、AMDのデスクトップCPUの戦略は、より高いパフォーマンスをコンペティティブな価格で提供することだ。OEMメーカーやエンドユーザーに対して、どの価格ポイントでも競争力のある選択肢を提供する。その戦略に従うなら、モバイルでも似たようになると仮定できるかもしれない。

[Q]モバイルAthlonでは、次世代PowerNOW!テクノロジをサポートすると説明している。これは、何が拡張されるのか。

[A]まだ内容は言えない。去年、PowerNOW!を導入してからさまざまな経験をしてきた。その結果、どういう機能が有効か、ソフトウェアをどう最適化できるかがわかってきた。今言えるのは、その経験を反映することだけだ。

[Q]SpitfireベースのモバイルDuronはPowerNOW!をサポートしているのか。Morganで加わるモバイルフィーチャとはPowerNOW!を指すと受け取っていいのか。

[A]詳細は言えない。K6-2+と同じではない、とだけは言える。

●新CPUコアはFab25とFab30のどちらでも製造可能

[Q]PalominoとMorganの製造工場はどうなるのか。Fab25とFab30の両方で生産するのか、それともPalominoはFab30、MorganはFab25になるのか。

[A]Fab25とFab30のどちらも、AMDのどの製品も製造する能力を持っている。それだけフレキシブルに製造できるということだ。ただ、実際にはどちらかのFabで最初に製造を始めて、しばらくしてもう片方のFabで製造を始めるなどタイムラグがある。製品によって、そのラグが長かったり短かったりといった違いはある。一般論として言うなら、Fab30は同じプロセスルールでも銅配線テクノロジを使っているので、ハイパフォーマンス製品を製造する。しかし、現在でもFab25で多くのAthlonを製造しているため、そう言い切ることもできない。

[Q]PalominoのL2キャッシュ容量は、現在のThunderbirdと同じか、それとも大きくなるのか。また、Morganはどうなのか。

[A]まだ言えない。Palominoのデスクトップ版が出る時に詳細を説明しよう。デスクトップでは、Palominoだけでなく、今後数カ月で多くの発展が見られるから楽しみにして欲しい。FSB(フロントサイドバス)は266MHzが登場、DDR SDRAMサポートのチップセットとマザーボードも市場に登場する。また、2CPU構成をサポートするマザーボードとチップセットも登場する。

[Q]AMDのモバイルCPUはいずれも462ピンPGAパッケージでピン互換になるとPlatform Conferenceでは説明した。BGAパッケージ版は出す予定はないのか。

[A]今のロードマップにはないというのがベストアンサーだろう。パッケージングテクノロジについては、来年何か話をできるかもしれない。

[Q]Intelは、モバイルCPUにグラフィックスを統合したCPU「Timna」を投入してくる。これに対抗するような製品計画はないのか。

[A]まだ出ていないIntelの製品には答えられない。しかし、一般論としては、OEMやエンドユーザーが求めているのは、価格と性能とフィーチャのベストコンビネーションだ。それを、IntelがTimnaで提供できるのかは、彼らに聞くべきだろう。AMDに関して言うなら、チップセットで、来年にかけて非常に競争力のある製品がどんどん出てくる。グラフィックス統合チップセットで、コストエフェクティブでいい性能を提供できるようになる。競争力は十分あると考えている。

[Q]ノートPCでは、DDR SDRAMはどうなのか。

[A]サードパーティのチップセットベンダーは、モバイル向けのAthlonチップセットでDDR SDRAMサポートをアナウンスしている。DRAMベンダーが言うとおり、DDR SDRAMはハイパフォーマンスと低消費電力の両方を提供するので、ノートPCベンダーには魅力的だろう。私の推測では、DDR SDRAMはまずデスクトップPCに来て、それからモバイルに来ると考えている。最初のモバイルAthlonノートPCでは、多分、普通のSDRAMが使われるだろう。しかし、チップセット自体は、DDR SDRAMをサポートできるものになる。そのため、DDR SDRAMが市場でレディになったら、採用され始めるだろう。ただし、我々は、特定の方向へ(PCベンダー)を誘導することはしない。DDR SDRAMは、あくまでもOEMの選択肢だ。PCメーカーが、市場へもたらす時期を決めるだろう。


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(2000年9月26日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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