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VIA Technology Forumロードマップ編

VIAが省電力技術や第2世代統合型CPUのプランを公開

会期:9月20日、21日

会場:台北国際コンベンションセンター


 VIA Technology Forum(VTF2000)はVIA Technologiesは同社が台北で開催したVIA Technology Forum(VTF2000)の会場において、同社のチップセットロードマップなどについての詳細を明らかにした。その中でVIAはモバイルCPUに対する新しい省電力技術や同社の統合型CPUであるMatthewの第2世代にあたる「Matthew2」の説明を行なった。


●Cyrix IIIの新たな機能として追加される省電力技術のLongHaulテクノロジ

VIA TechnologiesのモバイルCyrix IIIが対応するLongHaulテクノロジを設定するユーティリティ
 9月20日に、VIAはCyrix IIIのモバイル版であるモバイルCyrix IIIに関するプレスリリースを出した。それによれば、モバイルCyrix IIIには500/533/600MHzがラインナップされているという。価格は500MHzで55ドル(日本円で約6,000円、1,000個ロット時)となっており、モバイル向けのCPUとしては比較的安価なソリューションであるといえる。

 ただし、パッケージはデスクトップPCと同じCPGAのみとなっており、PGA370(いわゆるSocket 370)のCPUソケットでのみ利用できる。実はこのモバイルCyrix IIIはデスクトップPCのCyrix IIIとほぼ同じものだと言ってよい。VIAがOEMメーカーに対して語っているところによれば、デスクトップPC用のCyrix IIIのコア電圧が1.9Vであるのに対して、モバイルCyrix IIIでは1.6Vになっているという。これが現時点でのモバイル版とデスクトップ版の大きな違いになっている。

 もともと、Cyrix IIIはダイサイズが73平方mmと小さいため、消費電力もかなり低く押さえられており、モバイル向けに向いているCPUだと言われていた。VIAはOEMメーカーに対して、Cyrix III 500MHz/1.6Vの最大消費電力(IntelでいうところのTDP:Thermal Design Power)は7.9Wであり、同じバリューPC向けのCPUであるIntelのモバイルCeleron 500MHz(非低電圧版)の16.8Wと比べて約半分になっている。VIAではこの低消費電力という点を今後の売りの1つにしたいと考えているようで、今回のモバイルCyrix IIIの発表に至ったというわけだ。

 しかも、今回VIAはもう1つ隠し球を用意していた。それがLongHaulテクノロジだ。現在モバイル向けCPUでは、IntelのSpeedStepテクノロジ、AMDのPowerNow!テクノロジ、TransmetaのLongRunテクノロジといった、省電力のための機能が1つのトレンドとなっている。逆に言えば、そうした機能を搭載していなければモバイル向けCPUとしては見向きもされないという状況になりつつある。実際にそうした機能が意味があるかどうかは別の議論ではあるが、マーケティング的な観点からは絶対に必要な機能となっているのだ。

 そこで、VIAもLongHaulテクノロジと呼ばれる省電力機能を用意してきた。LongHaulでは、以下の3つのモードが用意されている。

ACアダプタの有無モード
ハイパフォーマンスモード
パフォーマンスモード
パワーセービングモード

 ACアダプタがある場合には、ハイパフォーマンスモードと呼ばれる最高クロック/電圧で動作する。ACアダプタがない場合にはユーザーは2つのモードを選ぶことができる。1つはパフォーマンスモードで、CPUの負荷率に応じてクロック/電圧などが可変する。もう1つがパワーセービングモードで、CPUは常に最低クロック/電圧で動作する。なお、これらの設定はWindowsベースの設定ユーティリティで行なえるという。

 ただ、VIAはLongHaulテクノロジに関する実際のインプリメント方法などはVTFでは明らかにはしなかった。また、筆者が参加したモバイル向けのセッションでは「電圧変動は将来のオプション」とCyrix IIIの開発を担当するCentaur TechnologyのC.J.Holthaus氏が発言するなど、VIAの内部でもこのあたりの位置づけは少々曖昧であるようだ。こうしたことから考えて、最初の世代のモバイルCyrix IIIでは単にクロックの変動にとどまる可能性もある。そういう意味では、CPU自体がそうした機能を持っているというよりも、AMDのようにBIOSレベルでこうした機能を実現していると考えるのが正しいのかもしれない。なお、Holthaus氏は「ウルトラポータブル(日本で言うサブノート/ミニノート)にもCyrix IIIを採用してもらうために、4W以下と省電力でBGAパッケージとなったCyrix IIIを提供したい」と述べ、今後フットスペースの小さいパッケージの開発も視野に入れていくことを明言した。


●VIAは統合型CPUのMatthew2のプランを明らかに

Matthew2の詳細を説明するスライド。デスクトップだけでなく、モバイル向けにも投入される
 今回のVTF2000ではVIAが統合型CPUとして計画しているMatthew(マシュー)の詳細がさらに明らかになった。VIAが明らかにした資料によれば、Matthewのスペックは以下のようになっている。

VIA Matthew
・694X相当のノースブリッジ
・PC133 SDRAM
・Savage4相当グラフィックスコア
・サウスブリッジはVT8231
  デュアルチャネルのIDE(Ultra ATA/100)
  USBポート×6
  イーサネット(MII)
  LPC
・消費電力は5W以下
・製造プロセスルールは0.15μm

 これはこれまでにも既に明らかになっている内容であり、特に新しい内容ではない。しかし、今回のVTFではそのMatthewの次のバージョンである「Matthew2」(マシューツー)と呼ばれる、Matthewの次世代バージョンが存在することが明らかになった。VIAが公表した資料によればMatthew2の詳細は以下のようになっている。

VIA Matthew2
・Apollo Pro266相当のノースブリッジ
・DDR SDRAM(PC-1600/2100)サポート
・Savage4相当グラフィックスコア
・V-LINKサポート
・サウスブリッジはVT8233(V-LINKサウス)
  デュアルチャネルのIDE(Ultra ATA/100)
  USBポート×6
  イーサネット(MII)
  LPC

 要するに第1世代のMatthewはPC133 SDRAMをサポートし、第2世代のMatthew2ではDDR SDRAMをサポートするというのがVIAの戦略だ。

 実はこの構想はデスクトップPCのセッションではなく、モバイルのセッションで語られたものだ。従って、VIAはMatthewをデスクトップPC、インターネットアプライアンスだけでなく、モバイル向けにも投入する意志があると考えるのが妥当だろう。確かに、DDR SDRAMは2.5VとSDRAMの3.3Vに比べて電圧が低く、消費電力の点からもモバイルで利用するメリットがある。Intelも2001年の第2四半期にモバイルTimna+というTimnaの次世代版Timna+のモバイル版を投入する計画があり、今回のMatthew2はそれに対抗する意味がある製品だと言える。なお、Matthewのエンジニアリングサンプルは11月に、Matthew2のエンジニアリングサンプルは2001年の第1四半期が予定されている。


●チップセットでは大きな変動はなし

 今回のVTF2000では、VIAのチップセットロードマップに関しても、いくらかのアップデートがあった。しかし、そのアップデートは既に明らかになっていた製品の名前が変わっただけと、実質的には大きな変動はない。

■デスクトップPC向けノースブリッジ

VIAのデスクトップPC向けチップセットロードマップ

 基本的には既に発表されていた内容であり、VTF2000の直前に発表になったDDR SDRAMをサポートしたP6バス(Pentium III Celeron)用チップセットであるApollo Pro266と、そのEV6バス(Athlon Duron)用チップセットであるApollo KT266の2製品の製品名が明らかになったぐらいだ。あとは、現在JEDECで規格化が検討されている333MHzのDDR SDRAM(モジュールの名前はPC-2600になる)への対応を検討していることが唯一目新しい内容といえる。

 なお、7月に行なわれたPlatform ConferenceではVIAがPentium 4用のチップセットのプランを持っていることが明らかになったが、今回のVTF2000では影も形もなくなっていた。おそらく、Intelとのトラブルを嫌ってのことだと思われるが、やはりPentium 4のバスライセンスの問題がセンシティブな問題であることを伺わせている。

■モバイル向けノースブリッジ

VIAのモバイルPentium III Celeron向けチップセットロードマップ VIAのモバイルAthlon Duron向けチップセットロードマップ

 モバイル向けでは若干のアップデートがあった。これまでVIAはAMDのモバイルAthlon/Duron用にApollo KT133のモバイル版、およびProSavage KM133のモバイル版を投入することを明らかにしていた。基本的にはその線は変わらないものの、KT133のモバイル版はKT133A、ProSavage KM133のモバイル版の製品名はKN133であることが明らかにされた。さらにP6バス(Pentium III/Celeron)用のチップセットとしてProSavage PM133のモバイル版であるProSavage PN133、Apollo Pro266のモバイル版などが追加されたことを明らかにした。

 基本的にはこれまでと同じ内容ではあるが、製品名がPM133、KM133からPN133、KN133へと変更されたことが目新しい。また、Apollo Pro266のモバイルへの対応も、これまでは明らかになっていなかったのだが、今回新たに明らかになった事実といえる。

■サウスブリッジ

VIAのサウスブリッジロードマップ。2001年の第2四半期からエンジニアリングサンプルの出荷が開始されるVT8235ではUSB 2.0に対応する

 VIAのサウスブリッジに関するプランはPCIバス用とV-LINK用の2つに分かれている。PCIバス用としては、既にWinHEC2000などで展示されて話題となったVT8231と、今回のVTF2000で初めて公開されたVT82C686Bの2つがある。

 両者の大きな違いはVT8231がイーサネットコントローラを内蔵しているのに対して、VT82C686Bはそれを内蔵していないという点だ。そのほかのスペック(Ultra ATA/100をサポートしていること)などは基本的に同じになっている。ただし、VT82C686Bが従来のVT82C686Aとピン互換で、VT82C686Aを搭載したマザーボードを持っているメーカーであれば、そのまま載せ換えてすぐにUltra ATA/100に対応したマザーボードを作ることができる。したがって、今後VT82C686Bを搭載したマザーボードを出してくるメーカーは増えるだろう。

 さらに、VIAがV-LINKバス用のチップセットとして用意しているのがVT8233だ。VT8233はVT8231と同じような機能を持ちながら、V-LINK対応となっており、Apollo Pro266やApollo KT266などのV-LINKに対応したチップセットと一緒に利用する。さらに、VIAは2001年の第2四半期にVT8235というVT8233の次世代サウスを出荷する。VT8235はUSB 2.0に対応したサウスブリッジになる予定で、ソフトウェアによりxDSLのサポートなども追加される予定となっている。

□VIA Technologiesのホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/
□VTF2000のホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/contact/eventvtf.htm

(2000年9月22日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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