Click


VIA Technology Forumレポート

ポストPCは199~499ドルのインフォメーションPC!?
~Apollo Pro266/ProSavage KM133などもデビュー

会期:9月20日、21日

会場:台北国際コンベンションセンター


 VIA Technologiesは9月20日、21日の二日間にわたり開発者向けイベントVIA Technology Forum 2000(VTF2000)を開催している。VTF2000では19日に発表されたばかりのAthlon用統合型チップセットであるProSavage PM133、DDR SDRAMをサポートしたApollo Pro266などが展示されるなど、PCプラットフォームの将来を占う重要なイベントとなりそうだ。20日には同社の社長兼CEOであるウェン・シー・チャン氏による基調講演が行なわれたほか、新チップセットなどの展示が行なわれた。


●ポストPCのあり方はパフォーマンスPC/バリューPCの下のセグメントとなるインフォメーションPC

 VIA Technologies(以下VIA)の社長兼CEOのウェン・シー・チャン氏が基調講演のトップを切って登場した。チャン氏は冒頭で「PC業界は現在変革の時を迎えている」と述べ、インターネットなどの普及に、よりPC業界を取り巻く環境が大きく変動していることを指摘し、PC業界が生き残るために業界全体で考えていく必要があると述べた。さらに、「現在市場はインターネットが原動力となり動いている。PC業界も、よりインターネットに特化した製品を出すなど、インターネットというマーケットを意識したポストPCとでもよぶべき製品展開が必要だ」と述べた。その具体的な方策として、チャン氏は「今後もインターネットに接続していくユーザーは増え続けていく。従ってその市場を押さえていくことが必要。当社は199~499ドルという、従来バリューPCと呼ばれていた市場の下のセグメントとなる“インフォメーションPC”というセグメントを提唱したい」と述べ、インターネットに特化した低価格PCの市場の創設を狙っていくことを明らかにした。

 インフォメーションPCを実現するビルディングブロック(構成要素)として、チャン氏はValue Internet Architecture構想を明らかにした。Value Internet Architectureとは、499ドルでもインターネットにアクセスするのに十分なPCを作るための仕組みであり、チャン氏は「CPU、チップセット、グラフィックスのすべての技術を持つVIAだからできること」と述べた。ただし、「Value Internet Architectureはオープンスタンダードであり、パートナー企業は誰でも参入できる」(チャン氏)ということで、特にVIAだけですべてを用意するという訳ではなさそうだ。チャン氏はValue Internet Architectureは次のような特徴があるという。

・オープンスタンダード
・柔軟性
・コストとパフォーマンス共存
・中国の製造キャパを使い急速な立ち上がり

 そして、今後急速にこの市場を立ち上げて行くべく努力することを約束した。

 VIAはこれまでことあるごとに「PCの低価格化というトレンドは今後も続いていく」と主張してきており、今回のチャン社長兼CEOの基調講演もそれを押し進めたものでしかないのは事実だ。ただ、Intelばりに「インフォーメーションPC」だの、「Value Internet Architecture」(余談だが略語がVIAになるあたりがVIAらしい)だのマーケティング造語がたくさんでてくるあたりに、Intel、AMDに追いつくべくマーケティング戦略の充実を狙っている様子が感じられる。

基調講演に登場したVIA Technologiesのウェン・シー・チャン社長兼CEO。インフォメーションPCの提唱、それを実現するValue Internet Architectureなどについて語った インフォメーションPCのポジショニングを示すスライド。インターネットアプライアンスよりは機能が多いが、メインストリームPCよりは安価というのがインフォメーションPCのポジション VIAの持つビルディングブロックを示すスライド。こうした新しい方向性を打ち出すのに、さまざまな会社の買収が必要だったということなのだろう


●展示会場でインフォメーションPCとetBIOSをデモンストレーション

 さらに、基調講演終了後の展示会場ではインフォメーションPCのモデルも展示されていた。CPUにCyrix III/533MHz、64MBのPC133 SDRAM、チップセットにApollo PLE133といった構成で、499ドルを実現できるという。このPCにはOSとしてWindowsが動作していたが、となりに展示されていたPCではOSが動作していなかった。

 それでは何が動作していたのかと言えば、etBIOSと呼ばれるEEPROMに入っているROMプラグラムだ。このetBIOSにはWebブラウザの機能も用意されており、単にインターネットにさえアクセスできればよいのであれば、BIOSセットアップを起動するような感覚で、Webブラウザを起動し、そのままインターネットにアクセスできるという訳だ。日本IBMが販売しているWebBoyというDOSベースのWebブラウザを、そのままBIOSに搭載したというイメージと思えばわかりやすいだろう。

 確かに、OEM版のWindows 98がいったいいくらで秋葉原で販売されていたかを考えてみれば、199~499ドルのPCを実現するために最も障害になりそうなのがOSであることは間違いない。それを解決する方法として、こうした方向性もないわけではない。しかし、これではもはやPCとは言えない、LinuxをインストールしたPCをインターネット・アプライアンスと称しているのと同じであり、少々首を傾げたくなる構想ではある。

499ドルのインフォメーションPCの例。CPUにCyrix III 533MHz、64MBのPC133 SDRAM、チップセットにApollo PLE133というスペックで、この価格が実現できるという etBIOSと呼ばれるWebブラウザ内蔵のBIOSでインターネットに接続しているところ。開いているWebサイトがIntelなのがなんとも……


●Apollo Pro266/ProSavage KM133も展示会場に登場

 併設されている展示会場では19日に発表されたばかりのVIAのDDR SDRAMサポートのチップセット「Apollo Pro266」、さらにはEV6バス(Athlon/Duron)用の統合型チップセット「ProSavage KM133」などが展示されていた。

 Apollo Pro266はVIAの最新DDR SDRAMサポートのP6バス(Pentium III/Celeron用)チップセットでスペックは以下のようになっている。

VT8633(ノースブリッジ)
・P6バス(システムバス66/100/133MHz)
・PC133/PC-1600/PC-2100
・AGP 4X
・V-LINKサポート(8bit、266MB/秒)

VT8233(サウスブリッジ)
・V-LINKサポート(8bit、266MB/秒)
・6ポートUSB(3コントローラ)
・6PCIバススロット
・デュアルチャネルIDEポート(Ultra ATA/100)
・LPC

 Apollo Pro266の最も大きな特徴はDDR SDRAM(PC-1600/PC-2100)をサポートしていることと、V-LINKと呼ばれる独自バスをサポートしていることだ。これはIntelが810以降の8XXファミリーで導入しているハブ・インターフェイスと同じような独自バスで、266MB/秒と従来のPCIバスの倍のバンド幅が確保される。これにより、PCIバスがノースとサウス間にバンド幅を奪われることがなくなるので、システム全体の性能が向上する。

 また、ProSavage KM133は6月に発表されたP6バス用のProSavage PM133のEV6版であり、サポートされているシステムバスがEV6バスであること以外はProSavage PM133と同じ製品だ。内蔵されているグラフィックスコアはSavage4であり、外部AGP 4Xスロットもサポートされる。

 いずれもサンプル出荷の段階であり、VIAによれば第4四半期中に大量出荷が開始されるという。しかし、マザーボードベンダ関係者によれば、実際にはどちらもまだテープアウトした段階であるようで、これからバグ出しなどのプロセスが待っているということなので、実際には来年の第1四半期中に出荷というあたりが現実的な線だろう。

Apollo Pro266のノースブリッジ。AGP 4X、DDR SDRAMのモジュール(PC-2100/1600)などをサポートしている Apollo Pro266のサウスブリッジVT8233。V-Linkをサポートした初めてのサウスブリッジ ProSavage KM133のノースブリッジVT8365

□VIA Technologiesのホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/
□VTF2000のホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/contact/eventvtf.htm

(2000年9月21日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp