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第67回 : みんな速さは必要ない? 9割近くは高速化より低消費電力



 我が家のPCバッグを紹介していただけるメールが届くかなと、多少の期待を持って書いていた先週の記事。やはりいくつかの紹介を頂くことができた。紹介していただいたのはユニクロと無印良品のPCバッグ。いずれもシンプルで軽量、かつ価格も安価だという。

 なお、どちらの製品も各社ホームページからは見つからなかったので、店舗に行なってみるしかなさそうだ。妻の買い物につき合うついでに、恵比寿と池袋の無印良品は覗いてみたのだが、時間が限られていたこともあり、実物を見つけることはできなかったが、発見したらこの連載でも紹介してみたい。

 先週の記事には書かなかったが、ほかにもさまざまなブランドがPCバッグを開発しているようだ。海外ではコーチブランドのPCバッグを見かけたことがある。革製ということで少々重いため個人的には敬遠したが、機能指向ではなくブランド志向で探してみると、意外な掘り出し物があるかもしれない。

 昨日、NTTドコモもゼロ・ハリバートンとの提携で開発したハンドヘルドPCを発表していたが、PCバッグだけではなく持ち歩くデジタル機器は、総じてファッショナブルになってきている。機能面で横並びな製品が多くなるほど、今後もデザインによる差別化が強められることだろう。


●9割の人は高速化を必要としていない?

 さて、先週のバッグプレゼント企画で、簡単なアンケートを採らせていただいた。5個のバッグに対して約1,500名もの応募があったことを、ここで感謝したい。アンケートの結果が気になる人もいることだろう。まずは、その結果を紹介する。

  人数%
□総数:1,479人 
男性1,446人97%
女性32人2%
□年齢
~15歳1人0%
16歳~20歳34人2%
21歳~25歳190人12%
26歳~30歳407人27%
31歳~35歳388人26%
36歳~40歳286人19%
41歳~45歳121人8%
46歳~50歳40人2%
51歳~12人0%
□モバイル機器として持ち歩いている機材はありますか?
ある1,330人89%
ない148人10%
□持ち歩いている方は、どんな機器ですか
携帯電話970人72%
PDA466人35%
ハンドヘルドPC121人9%
ミニノートPC253人19%
B5サブノートPC479人36%
その他161人12%
□移動先で利用するデジタル機器としてノートPCを使いたいと思いますか?
思う1,344人90%
ない134人9%
□次に買うノートPCのプロセッサには省電力や低発熱を期待したいですか、それともさらなる高速化ですか?
省電力、低発熱を期待1,311人88%
高速化を期待168人11%
□外出先でメールチェックする場合、どんな機器を使いたいですか?
携帯電話691人46%
PDA596人40%
ハンドヘルドPC204人13%
ミニノートPC347人23%
B5サブノートPC529人35%
その他40人2%
□プレゼント
WinHEC 2000132人8%
Microsoft439人29%
Phone.com446人30%
IDF2000 Spring52人3%
IDF2000 Fall408人27%

 この中で注目したいのは、9割近く、88%もの人が、ノートPCのプロセッサに対し、高速化よりも低消費電力/低発熱を希望していることだ。背景には、プロセッサの急激な性能の伸びにソフトウェアが追随していない現状があるが、そうした面を考慮したとしても、極端に高いと感じる値である。

 1,500人、しかも全くのPC初心者があまり含まれていないだろうアンケートだけに、そのまま製品の企画に反映できる数字ではないかもしれないが、ノートPCを積極的にモバイルで利用したいと考えているユーザー層(90%が外出先でノートPCを利用したいと考えている)が、低消費電力を求めているという結果を、Intelは重く受け止めてほしいと思う。

 ここで“PCベンダーに受け止めて欲しい”と書かないのは、軽量ノートPCを開発する日本のベンダーは、以前から熱設計電力の上昇について不満を漏らしているからだ。Intelはこれまで、高速なモバイルプロセッサを発表するたびに「冷却技術の向上で、小さなPCにも入るようになっており、特に設計上の問題点は要求として上がっていない」とコメントしている。確かに既存のパッケージであれば(PCベンダー側の苦労はともなうものの)問題ないかもしれない。が、それでは新しいフォームファクタを創出することはできない。

 また後藤弘茂氏が指摘しているように、冷却ファンの存在は故障率アップにつながる。キーボードやマウスを除くと、PCが故障する原因の多くは電源や冷却ファンなのだ。PCを道具として活用するほど、その重要度は高まるわけで、遠方へ出張したときに大切なビジネスデータを収めたノートPCが、冷却ファンの故障でハングアップし、使い物にならないといったトラブルを防ぐためにも熱設計電力を下げねばならない。

 モバイルPentium IIに移行後のIntelは、何度か低消費電力を銘打つプロセッサを出荷しているが、それらはいずれも不発に終わった。その原因が、Intel自身のマーケティング戦略にあるのは明らかだろう。

 もちろん、高速化が全く不要であるとは言わない。しかし、高速化のみがノートPC用プロセッサではないのも、また事実なのだ。


●ビジネスパーソナルではPDA、ノートPCが意外に強い?

 今回のアンケートに答えて頂いた方々は、26~40歳の年齢層に集中している。勝手ながら、PC情報をインターネットで常にウォッチしている人というと、20代が中心だと思っていたのだが、30歳を中心線とした読者が多いようだ。職業などを伺っているわけではないので推測になるが、97%が男性ということから見ても、パーソナルな機器としてモバイル機器を利用しながら、ビジネスにも活用している、いわゆるビジネスパーソナルユーザーが多いと思われる。

 そして、72%(実際にはもう少し多いようにも思えるが)が携帯電話を利用していながら、メールチェックには46%のユーザーしか利用していない。僕自身は、携帯電話にメールを転送するようになってからというもの、ノートPCでメールをほとんど見なくなってしまった(送信する場合には利用する)。逆にPDAやミニノートPC、ハンドヘルドPCは、メールチェックに利用したいデバイスとして、実際のユーザー数を上回っている。B5サブノートPCも、若干ながらメールデバイスとして数字を伸ばした。

 やはり送信時の文字入力を考えると、携帯電話はデバイスとして小さすぎるということか。将来的には、携帯電話で連続音声認識技術によりボイスメールを文字変換して送信できるようになるかもしれないが、受信だけの便利さでは半分程度の人しか本格的なメールデバイスとして、携帯電話を認知していないということか。

 また携帯デバイスユーザーのサブノートPC離れを、昨今強く感じていたのだが(たとえばモバイルと言えば、今は携帯型PCは含まず携帯電話のことを指すことが多い)、このアンケートでは、サブノートPC全体への期待感を感じさせる結果になっている。

 単に小さいPC、軽いPCではなく、コミュニケーションを支援するデバイスとして、PCを基礎とした新しい製品を作る余地は、まだまだあるように思う。Intelが約束している低熱設計電力化や、TransmetaのCrusoeによって材料が揃えば、いよいよPCベンダーが新しい提案をユーザーに示せるようになる。

 こうしたアンケートの結果は、おそらくPCベンダーが行なっている調査にも表われていることだろう。激しい家電業界の競争を生き抜く日本ベンダーの奮起を、来年以降は見たいものだ。

[Text by 本田雅一]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp