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Intel Developer Forum Fall 2000基調講演レポート

Intelが前人未踏の2GHz動作Pentium 4を公開

基調講演はSan Jose Convention Centerに隣接するSan Jose Civic Auditoriumで行なわれた

会期:8月22日~24日(現地時間)

会場:San Jose Convention Center


 8月22日(現地時間)、Intel Developer Forum Fall 2000が、カリフォルニア州サンノゼにあるSan Jose Convention Centerなどで開幕した。初日となる22日は、Intelの社長兼CEOのCraig Barrett氏、上級副社長でIntelアーキテクチャグループジェネラルマネージャのAlbert Yu氏による基調講演が行なわれた。Barrett氏はインターネットのビルディングブロックを提供する会社になるという戦略を推し進めるいくつかの提案を行なった。さらにその後を受けて登場したYu氏はIntelアーキテクチャのプロセッサについての製品説明を行ない、恒例となったCPUの高速動作のデモを行ない、Pentium 4を前人未踏の2GHzで動作させて見せた。


●「インターネット社会を推進するには業界が手を取り合ってやっていかねばらない」とBarret氏

基調講演を行なうIntelのCraig Barrett社長兼CEO。業界全体をあげてインターネットを支えるビルディングブロックの構築を行なう必要があると強調
 同社の副社長でCTOのPat Gelsinger氏の紹介を受けて登場したCraig Barrett社長兼CEOは、「我々PC業界は協力してインターネットのビルディングブロック、すなわちソリューションを提供していく必要がある」と述べた。インターネット社会を推進するためには「当社のライバル企業も含めて業界全体が協力して事態に当たる必要がある」とし、インターネットを普及しより使いやすいものにしていくには業界全体が協力してソリューションを提供していくべきだという見解を明らかにした。

 さらに、Barrett社長はインターネットのトレンド、e-businessのバックエンドで行なわれている、Peer-to-Peerコンピューティング、インターネットアプリケーションの開発というテーマについて語った。特に、Peer-to-Peerコンピューティングについては時間をさき、ビジネス環境にPeer-to-Peerテクノロジを導入していくということを明らかにした。しかし、詳細は「木曜日のキーノートスピーチで明らかにする」と述べ、今回は明らかにはされなかった。


●「モバイルCPUの消費電力に関しては公平な計測方法が必要」とYu氏

 さらに、Barrett社長に引き続き登場したYu上級副社長は、Itaniumサーバーのデモ、Pentium III Xeon 1GHzなどの紹介に続き、モバイルプロセッサに関する話題へと移った。Yu上級副社長は「Intelはこれまで低消費電力を実現するテクノロジに多くの投資を行なってきた。それで現在はかなりの低消費電力を実現している。しかし、消費電力の数値に関しては、いくつかの数字があり、どの値を採用するかで評価が変わってくる」と述べ、IntelのモバイルCPUが「バッテリーが持たない、低消費電力ではない」と指摘されていることに関して「業界全体で基準を統一すべき」との不満を表明した。

Albert Yu上級副社長はTransmetaへの対抗意識からか、モバイルCPUの消費電力に関して大きくな時間を割いた 消費電力について説明しているスライド。果たしてメッセージは開発者たちに届いたのか?

 Yu氏は「CPUの消費電力はTDP MAX、TDP Typical、Active、AverageとCPUの状態に応じて測ることができるが、このうちユーザーに必要なのはAverageである」と述べ、Average状態で消費電力を計測するとIntelのモバイルCPUも決して他社には遅れをとっていないと強調した。確かに、PCメーカーが熱設計(放熱に関する設計のこと)を行なう場合、CPUの状態に応じて複数の数値を参考にして行なう。

 一般的にはTDP MAXとTDP Typicalを参考に設計するため、消費電力と言えばTDP MAXの数値を参考にされることが多い。しかし、実際にノートパソコンが動作している時には、ここまで条件が悪くなることはまれであり、一般的な状態ではActiveとAverageと呼ばれる状態にあることが多い。

 Yu上級副社長は「実際にはCPUはAverage状態にあることが多く、よりユーザーの使用感に近づけるためには業界全体がAverageの数値を採用して、消費電力を比較するべきだ」と述べ、TransmetaのCrusoeなどTDP MAXやTDP Typicalにおける消費電力が低いCPUが登場して、マスコミなどにもてはやされている現状に対する不満を露わにした。さらには「ノートパソコンの消費電力を決定づけているのはCPUはほんの一部であり、液晶ディスプレイ、ハードディスクなど多くのデバイスが電力を消費している。業界全体でこうしたCPU以外のデバイスの消費電力削減に取り組む必要がある」と述べ、消費電力削減は、業界全体で行なう必要があるということを強調した。


●Pentium 4でついに2GHzを越える!

 Yu副社長は同社のPentium 4についてもふれ、既にメディアなどに対しては明らかにしていたPentium 4のマイクロアーキテクチャを「NetBurstマイクロアーキテクチャ」と呼ぶことや、Pentium 4のダイ写真などを公開した。Yu副社長は「NetBurstマイクロアーキテクチャを採用したPentium 4により、ユーザーはより豊かなインターネットを体験できる」と述べ、Pentium 4がインターネット時代を意識して設計されたCPUであることを強調した。

Pentium 4のダイ写真。それぞれ各部分の役割などが説明されている Pentium 4マシンを利用したデモンストレーションを行なうYu上級副社長

 さらには、壇上ではソニーのDVカメラのアプリケーションを利用したデモンストレーションも行なわれた。Pentium 4と、Pentium IIIを搭載した両方のマシンを用意し、ソニーのDVカメラで撮影した画像をリアルタイムでMPEG-2にエンコードして、それをメールに添付して送信するというデモンストレーションを行なった。そのキャプチャに利用されたソフトウェアはソニーが試作したもので、Pentium 4でサポートされる新しい拡張命令セットであるSSE2(Streaming SIMD Extention 2)に対応している。SSE2に対応したIntel以外の手によるアプリケーションが公の場で公開されるのも今回が初めてだ。実際にPentium IIIのマシンではキャプチャした750フレームのうち530ぐらいしかリアルタイムではキャプチャできず、コマ落ちが目立ったのに対して、Pentium 4のマシンでは950フレームすべてがキャプチャできておりコマ落ちもなくスムーズに再生できていた。

ついに2GHzに到達したシーン。CPUを計測するツールで2002MHzの文字が! 偉業?を達成して握手で祝うYu副社長
Pentium 4の2GHz動作デモ
ASF形式:406KB
MPEG-1形式:5.8MB

 また、既に恒例となっている高クロックで動作させてみせるデモンストレーションも行なわれ、1,950MHzからスタートして最終的には2,002MHzで動作して見せた。'99年2月に行なわれたIDF 1999 Springで1GHzのデモを行なって以来わずか1年半でここまで到達したことになる。なお、基調講演後のQ&Aセッションでは「この2GHz CPUはいつ販売するのだ?」という質問がでたが「もちろん、現時点ではテクノロジデモであり、実際に出荷できるようになるのは早くても2002年以降になるだろう」(Yu氏)とのことで、さすがにすぐにこの2GHzのCPUを入手できるようになるわけではなさそうだ。しかし、あの印象的だったIDF 1999 Springにおける1GHzのデモから、わずか1年半で、もう2GHz。激しい競争がもたらす副産物とはいえ、ものすごい時代に突入したものだ。

□IDF Fall 2000のホームページ(英文)
http://www.intel.com/design/idf/index.htm?iid=update+000818&

(2000年8月23日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp