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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

IntelのPentium 4向け次世代チップセットBrookdaleの概要が明らかに


●Brookdaleが登場しTullochがキャンセルに

 Intelは、来年中盤に予定していたPentium 4用チップセット「Tulloch(トゥルッシュ)」をキャンセル、新たに「Brookdale(ブルックデール)」と呼ばれるチップセットを加えたらしい。TullochはRDRAM 1チャネル/2チャネルサポートだったのに対し、BrookdaleはPC 133SDRAMサポートで、DDR SDRAMのサポートもウワサされている。このチップセット計画の変更により、RDRAMの位置は大幅に後退する。RDRAMはワークステーションとハイエンドデスクトップにとどまり、メインストリームデスクトップはSDRAM系メモリが占めることになりそうだ。

 先週、IntelはPentium 4用チップセットに、新たにPC133 SDRAMをサポートする製品を追加したことを明らかにした。あるOEMメーカーによれば、このチップセットのコードネームはBrookdaleで来年第3四半期頃に登場するという。ただし、Brookdaleというコードネームは、ひとつの情報源しか伝えていないため、まだ確実な情報とは言えない。しかし、コードネームはともあれ、新チップセットの特徴は、複数の情報源からの情報によりほぼ推測できる。

 まず、メモリインターフェイスだが、BrookdaleはSDRAMインターフェイスを搭載しており、MTH(Memory Translator Hub)を使わずにSDRAMをサポートできる。このインターフェイスはPC133サポートだが、DDR SDRAMにも対応する可能性はある。

 次にサポートするPentium 4のソケットだが、これは、最初に登場するPentium 4のソケットとは異なる。IntelはPentium 4をまず423ピンの「Socket W」に対応したWillamette(ウイラメット)-423で立ち上げる。しかし、来年中盤のPentium 4からは、新しい479ピンの「Socket N」に切り替える予定だ。この新ソケットは、初代Pentium 4とはパッケージ形状が異なるWillamette-479と0.13μm版のPentium 4(Northwood:ノースウッド)に対応する。

 Brookdaleでは、ICH(I/O Controller Hub)も新しいICH3へと切り替わる。これは、同時期のチップセット全てに共通しており、Pentium III/Celeron用チップセットのAlmador(アマドール)やTimna(ティムナ)も含めてICH3になる。

 Brookdaleは、SDRAM系チップセットだがグラフィックスは統合しないと言われる。これはパフォーマンスが著しく落ちるからだと思われる。原理的にCPUのパフォーマンスが上がれば上がるほどメモリ帯域は必要となる。メモリ帯域がPC133のままだと、グラフィックスとのメモリ帯域の食い合いがさらに顕著になって しまい、性能が大きく落ちることになる。


●Pentium 4でRDRAM 1チャネル構成がなくなる

 複数の情報ソースによると、IntelはこのBrookdaleの投入の代わりに、RDRAM 1チャネル構成のサポートを取りやめたという。あるOEMメーカーは、IntelがRDRAM 1チャネルをサポートするTullochチップセットをキャンセル、その代わりに今秋リリースする最初のPentium 4用チップセット「Intel 850(Tehama:テハマ)」のマイナーチェンジ版を来年中盤に投入すると語っている。これは「Tehama-E」と呼ばれるチップセットで、メモリインターフェイスはi850のまま(RDRAM 2チャネル)だが、479ピンソケットとICH3に対応するという。

 このコラムでは、前回Pentium 4でのIntelのSDRAMサポートの記事の中で、TullochとRDRAM 1チャネル構成は残ると推測していた。しかし、Tullochキャンセルが本当だとすれば、IntelはもっとRDRAMサポートを後退させたことになる。というのは、Tullochがなくなると、Pentium 4チップセットのメモリは当面、RDRAM 2チャネルかPC133 SDRAMの選択になってしまい、比較的低コストにRDRAMをサポートできるRDRAM 1チャネル構成がなくなってしまうからだ。RDRAM 2チャネル構成の場合は、マザーボードのコストと難度が高くなり、RIMMも2枚単位で増設しなければならなくなる。

 また、このことは、IntelのDDR SDRAMサポートのウワサにさらに真実味を加えている。それは、PC133とRDRAM 2チャネルの間に、大きなパフォーマンスギャップが産まれるからだ。以下が、2001年のデスクトップPCで考えられるメモリ種類とメモリ帯域の比較だ。

PC1331GB/sec
DDR2662.1GB/sec
PC800 RDRAM(1チャネル)1.6GB/sec
PC800 RDRAM(2チャネル)3.2GB/sec

 DDR SDRAMとRDRAMはアーキテクチャが異なるため、DDR266とRDRAM 1チャネルの実効帯域はほぼ同じだ。これで見ると、PC133とRDRAM 2チャネルでは帯域は3倍(実効帯域では4倍)もギャップがあることがわかる。明らかに不自然だ。

 実際のところ、3.2GB/secという帯域は、おそらくほとんどのアプリケーションでオーバースペックであり、ハイエンドPCやワークステーションでしか意味がないと見られる。一方、PC133の1GB/secはPentium IIIでは十分であっても、Pentium 4クラスのパフォーマンスになると、アプリケーションによっては帯域が足りなくなる可能性があると思われる。それを考えると、Intelとしてはオーバー1GB/secの帯域を比較的低コストに実現できるメモリアーキテクチャが欲しいはずだ。なのに、Tullochがなくなると、いちばん必要な帯域のところにぽっかりと穴が空いてしまう。そして、そこにピッタリ当てはまるのは、DDR SDRAMなのだ。


●BrookdaleはSDRAM/DDR SDRAM両対応設計?

 では、Intelはこの空隙を埋めるためにDDR SDRAMをサポートするのだろうか。可能性の1つは、BrookdaleをSDRAM/DDR SDRAM両対応で設計することだ。当初はPC133のみサポートだが、内部設計はDDR SDRAMにも対応しておき、検証が終わった段階でDDR SDRAMもサポートするというシナリオだ。SDRAM/DDR SDRAMの両対応チップセットは可能(両対応のマザーボードは不可能)で、実際に他社はほとんどのデスクトップチップセットを両対応にしてくる。Brookdaleの時期を考えれば、両対応インターフェイスにするのが自然だ。DRAMメーカー側も、来年後半からはSDRAMとDDR SDRAMを同じダイ(半導体本体)にする方向へと向かっている。

 ただし、IntelのDDR SDRAMサポートについては、情報が交錯しており、まだどうなるかはわからない。インテルの公式見解は「DDR SDRAMに関しては、サポートの検討を開始している」という、含みは持たせるもののあいまいな表現だ。OEMメーカーに対しても、一部ではサポートを匂わせているが、その逆の説明をしている場合もあるといい、まだ明瞭ではない。

 さらに、Intelが契約でDDR SDRAMサポートを縛られているという報道もあるため、話が複雑になっている。例えば、「Intel pact with Rambus prohibits DDR chip sets for three years」(Semiconductor Business News、2000/07/18)などは、IntelとRambusの契約文書を引用して、IntelがRambusとの契約上、2002年いっぱいまでDDR SDRAMチップセットをリリースできない(DDR SDRAMをデスクトップでサポートした場合はRambusのライセンスが失効する)と伝えている。Intelは、そのためにVIA TechnologiesなどにPentium 4のバスライセンスを与えて、Pentium 4用DDR SDRAMチップセットを製造させるという憶測もある。

 しかし、IntelのDDR SDRAMサポートの行方がどうなるにせよ、1つだけ明確なことがある。それは、IntelがPentium 4でのRDRAM 1チャネル構成を本当にやめたのなら、それはIntelがRDRAMをメインストリームデスクトップのメモリに持ってくることを完全に諦めたことを意味することだ。2チャネル構成オンリーでは、ハイエンドデ スクトップとワークステーションだけにとどまるだろう。

 Intelのこうした姿勢は、当然、DRAMベンダーのRDRAMへの投資にも影響を与えるわけで、Rambusはますます苦しい状態に追い込まれることになる。ただし、RDRAMの需要自体は、今後、小容量で高メモリ帯域が欲しいデジタル家電や通信機器関連で、それなりに拡大する可能性がある。PlayStation 2のようなRDRAMの成功事例もあるわけで、RDRAMが完全に追い込まれたわけではない。

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【7月19日】後藤弘茂のWeekly海外ニュース
IntelのPentium 4チップセットがSDRAMサポートへ転進
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000726/kaigai01.htm

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(2000年8月4日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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