会場:Silicon Valley Conference Center
米国カリフォルニア州のサンノゼにあるSilicon Valley Conference Centerで、CPU、メモリ、チップセットといったメーカーを集めたカンファレンスであるPlatform Conferenceが開催された。今回は'99年7月のPlatform 99、1月のPlatform2000に続き第3回目で、参加者や参加メーカーも増え、PCユーザーにとって興味深い話題が豊富なイベントとなっている。
●「Cyrix IIIにより大きな収益をあげられるようになる」とVIA Technologies
Cyrix IIIのロードマップなどを語るVIA Technologiesのプロダクトマーケティングディレクタのエリック・チャン氏 |
既に本誌の取材などでも明らかになっているように、6月のCOMPUTEX TAIPEIで発表された開発コードネーム「Samuel1」(サミュエルワン)コアのCyrix IIIの後継として、今年の終わりに「Samuel2」(サミュエルツー)を導入するという。Samuel2は、Samuel1では搭載されていなかった64KBのL2キャッシュが搭載され、さらにSamuel1ではハーフスピードだったFPU(浮動小数点演算ユニット)を、フルスピード化してFPUのパフォーマンスをあげるというアプローチがとられるという。
製造プロセスルールは、当初は現在のSamuel1と同じ0.18μmで製造されるが、2001年には0.15μmに微細化し、クロックのターゲットとしては650MHzから850MHz以上を目指して開発が続けられているという。さらに、チャン氏は「2001年には1GHzのSamuel2を出荷する」と述べ、0.15μmへと微細化することにより1GHzまで実現可能であるという見通しを明らかにした。なお、Samuel2のエンジニアリングサンプルは、7月の終わりにはリリースされる見通しで、VIAのマーケティングディレクターであるリチャード・ブラウン氏によれば「COMDEX/Fallでは製品サンプルをお渡しすることが可能だろう」と語った。
VIAのCPUコアロードマップ。Samuel1、Samuel2、Matthewと製品展開がされていく | Samuel2のブロックダイアグラム。L2キャッシュが64KB追加されている | Samuel2のFPU。フルスピード化によりどの程度向上するかは明らかではない |
Cyrix IIIは比較的低消費電力であることが知られており、VIAの資料によればモバイルバージョンのCyrix III 600MHzは、1.8V(デスクトップ版は1.9V)の電圧で、最大消費電力が9.7WとモバイルPentium III 600MHzの最大20Wに比べてアドバンテージがあるとされている。確かに、今回のデモでもCyrix III 600MHzはファンを必要とせず、ヒートシンクだけで動作しており、発熱・消費電力が低いことは間違いはない。なお、Intel、AMD、TransmetaなどのSpeedStep、PowerNow!、LongRunといった省電力技術のような機能には対応しないのかという質問に対しては「最大の消費電力が10Wを切る現状では、必要はないと考えているが、将来的に採用することはあり得る」(チャン氏)と述べ、現状では採用に前向きではないことを明らかにした。
さらに、今回VIAはCPUのロードマップを公開した。それによれば、現在667MHzまでラインナップされているが、四半期ごとに新しいクロックの製品が追加され、第4四半期には現状の(Samuel1の)Cyrix III 700MHz、2001年第1四半期にはSamuel2 733MHz(700MHz、667MHzも投入される)、2001年第2四半期にはSamuel2 800MHzが投入されるというシナリオとなっている。なお、Cyrix IIIの工場についても質問が出たが、「TSMCだ」(チャン氏)と答え、初めてCyrix IIIの製造工場がTSMCであることを公の場で明らかにした。
VIAのデスクトップ用CPUロードマップ。四半期ごとに新しいクロックの製品が投入される | VIAのモバイル用CPUロードマップ |
●ブロックダイアグラムらしきものも公開されたMatthew
Matthewのブロックダイアグラム。サウスブリッジとの接続にはV-LINKバスが採用される |
VIAは今回は初めて公式な文章の中で、同社の統合型CPUであるMatthewのスペックなどを明らかにした。そのスペックによればCPUコアには旧Centaur Designチームが開発し、Samuel2にも採用されているC5Bになるという。統合されるチップセットはやはりApollo Pro133A、統合されるグラフィックスアクセラレータはSavage4となっており、基本的にはCOMPUTEX TAIPEIでリチャード・ブラウン氏が語った内容と同じものだ。
今回はターゲットとなるクロックが公開されたほか、サウスブリッジとの接続はVIAが次世代のサウスブリッジでサポートする専用バスのV-LINKバスになること、メモリは当初はPC133 SDRAMでのスタートとなるが、じきにDDR SDRAMをサポートするようになること、モバイル向けにLVDSなどのデジタルインターフェイスもサポートされることなども明らかにした。ターゲットとなるクロックは、チャン氏によれば550MHz以上ということで、やはり最大10W以下の消費電力を目指して開発が進んでいるという。なお、Matthewの開発状況だが、チャン氏によればエンジニアリングサンプルは2001年の前半中に、製品は2001年中をターゲットとしている。
●AMDはモバイルAthlon/Duronの詳細を明らかに
モバイルAthlon/Duronに関する詳細を語るAMD プロダクトマーケティングマネージャのマーティン・ブース氏 |
まず、モバイルDuronは、AMDプロダクトマーケティングマネージャのマーティン・ブース氏によれば「CPUコアはSpitfire(Duronの開発コードネーム)をベースにしたもの」で、デスクトップ版Duronの駆動電圧を下げることにより消費電力を下げた製品であることを明らかにした。さらに、モバイルAthlonに関しては「新しいコアデザインを採用し、低電圧で駆動できるようにしているほか、次世代のPowerNow!テクノロジを採用している」と述べ、モバイルAthlonが単なる「モバイルThunderbird」ではないことを明らかにした。セッション終了後に「モバイルAthlonはCorvette(コルベット、開発コードネーム)か?」という質問をぶつけたところ、「そうだ」という答えが返ってきた。CorvetteはAMDが2000年後半に予定しているMustangコア(Athlonの改良版コア)のモバイル版で、コアに大幅な改良を加えることで駆動電圧を下げ消費電力を少なくするというアプローチを採ると言われている。
また、Corvetteのローコスト版と言われているCamaro(カマロ)についても質問をぶつけてみたが、「そうしたコードネームの製品があるのは事実だが、公式には明らかにはしていないのでどのような製品であるかは言えない」(ブース氏)と述べ、明言を避けた。コードネームなどから考えて、AMDが2001年の前半に計画していると言われている新しいバージョンのモバイルDuronに相当する可能性が高いと言えるだろう。つまり、当初は高コストであろうCorvetteの数が十分とれるようになった後で、L2キャッシュの量を少なくしたMustangコアのモバイル版であるCamaroを「モバイルSpitfire」の代わりに出荷するというストーリーだ。
なお、ブース氏はモバイルAthlon Duronのチップセットとして、ALiのAladdin K7とVIAのKT133が採用されるという見通しも併せて明らかにした。この2つの製品に関しては別途チップセットの記事で解説していきたい。
モバイルDuronについて説明したスライド | 同じくモバイルAthlonについて説明したスライド。次世代PowerNow!の詳細については特に語られなかったが、「よりインテリジェントになる」(ブース氏)とのこと |
(2000年7月19日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]