最新ソフトウェアDVDプレーヤー事情~ VARODVD 2000、WinDVD 2000、WinDVD Millennium ~ |
■低価格で他にない機能を搭載した「VARODVD 2000」
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だが、VARODVD 2000は単に安いだけのプレーヤーではない。他の多くのプレーヤーがサポートしない機能を多くフィーチャーした、なかなかユニークなプレーヤーである。それが一番良く現われているのが、クローズドキャプション(CC)のサポートだ。ご存知のようにDVDには、多国語に対応した字幕システム(サブタイトル)がある。このサブタイトルはビデオデータとは独立したデータとして記録されており、必要に応じてデコードされビデオデータに合成されて出力される。DVDプレーヤーと名乗る以上、どんなプレーヤーであろうと(つまりは民生用プレーヤーだろうとプレイステーション2であろうと)、サブタイトルの表示や複数の字幕の切り替えに対応している。
これに対しCCは、主に耳の不自由な人のために、ビデオの帰線消去期間を利用した(つまりビデオデータの中に埋めこまれた)、字幕データだ。「クローズ」というのは専用のデコーダ(CCデコーダ)がないと表示できないことを指す(TV番組中のニュース速報のように、すべての受像機に映し出されるテロップはオープンキャプションとも呼ばれる)。米国では法律により、'93年7月以降に販売される全TV受像機がCCデコーダ機能の内蔵を義務付けられたため、広く普及している。
このためか、米国で売られるDVDタイトルの中には、英語の字幕をサブタイトルとしてではなく、CCとして持つものが少なくない。たとえば英語の字幕はCCとしてサポートし、フランス語とスペイン語の字幕をサブタイトルとして持つ、といった具合だ。国内で販売されるタイトルの中にも表示の有無にかかわらず、CCによる英語字幕をサポートしたものが存在する(CCサポートを明示した「ふしぎの国のアリス」、CCサポートの表示はないがCCデータを持つ「ジュマンジ」や「スリー・リバース」など)。
また、このような背景があるせいか、同じ英語字幕であっても、サブタイトルとCCには微妙な違いがある。たとえば遠くで雷の音がしているとか、動物が吼えている、といった情報は、多くの場合サブタイトルでは何も表示されない(視聴者は音で知る)のに対し、CCでは文字で表示される。映画の中で用いられる歌の歌詞も、サブタイトルではいちいち表示しないことが多いのに対し、CCでは表示される場合がある。
CCで英語字幕を表示することにどれだけの利用価値を見出すかは、ユーザーしだいだ。英語を学習したいというユーザーはもちろんのこと、米国で売られているDVDタイトルを見たいけれど音声だけでは聞き取りが不安、というユーザーにも役に立つことだろう(米国で売られるDVDタイトルというと、地域コード1のタイトルと連想しがちだが、中には、たとえ映画でさえ地域コードALLのタイトルがある。筆者の手元にある「The Big Lebowski」は地域コードALLの映画DVDで、英語字幕はCCのみという仕様だ)。
VARODVD 2000は、CCについて、背景を黒(黒バックに白ヌキ文字)と透明(画面に白文字の重ね合わせ)が選べるほか、動画とは別のウィンドウにCCデータを表示し、字幕をダブルクリックするだけでその場面にジャンプしたり、字幕をテキストデータとして保存する機能(CCナビ)まで備えている(これと英日翻訳ソフトを組み合わせれば、とは誰もが考えるところかもしれないが、英日翻訳ソフトには厳しいテストになるだろう)。
もう1つ、VARODVD 2000のみが備えている機能が、音声のWaveファイルによる録音(オーディオキャプチャ)だ。画面をキャプチャできるDVDプレーヤーソフトは、PowerDVDをはじめ他にも存在するが、音声を録音できるプレーヤーは他にない。
こうした機能の充実ぶりに対し、DVDプレーヤーとしてのベーシックな部分では、VARODVD 2000は、それほど目立つ点はない。BobとWeaveの自動認識による切り換えは、このバージョンからサポートされたが(以前のバージョンはユーザーのマニュアル選択)、これは他のソフトでは以前からサポートされていた機能だ。ビデオのハードウェアアクセラレーションサポートについては、対応チップの詳細が良くわからないし、オーディオ機能自体も決して強力ではない。Matrix DVD-ROM対応特別版も、フィルタとしては認識されているものの、Flash Playerによる再生を始めても画面は真っ暗のままである(時間表示は更新されるし、音声も再生されるが)。Windows 2000の場合、DVD-Videoの再生中にマウスを動かすと、画面上にノイズが出ることもあった。
これは筆者の独断だが、ひょっとするとVARODVD 2000は、2本目のプレーヤーソフトを目指しているのかもしれない。第1回目でも述べたように、最近はビデオカードやDVD-ROMドライブに必ずと言って良いほどソフトウェアDVDプレーヤーがバンドルされており、普通に映画を見たりする分には、それで困ることはほとんどない。そういうユーザーに、別途購入してもらうには、他のプレーヤーがサポートしていないユニークな機能を持っている必要がある。他に比べて価格が安いのも、2本目として買いやすさを狙っている、と解釈できなくもない(ただし同一PCに同時に2本以上のプレーヤーソフトをインストールすることは、DirectShowの微妙なバージョンの違いによるコンフリクトなど副作用が懸念されるため推奨できない)。いずれにしても、VARODVD 2000はユニークさが際立つプレーヤーだ。
WinDVDは米国のInter Videoが開発したソフトウェアDVDプレーヤーだ。3Dfx(Voodoo3)やLeadTek製のビデオカードにバンドルされていたが、パッケージとしても購入できる。これまで国内ではカノープスがパッケージ販売を行なっていたが、インフォマジックもパッケージ販売に乗り出してきた。WinDVD 2000はカノープス版の商品名、WinDVD Millenniumはインフォマジック版の商品名である。
したがって、DVDプレーヤーソフトとしての基本は、両者とも変らない。以前から定評ある画質は、この最新版でも健在だが、他社の画質も向上しており、明らかなセールスポイントではなくなりつつある。というより、画質に関してはほぼ行きつくべきところに達しつつある、というのが現在のソフトウェアDVDプレーヤーの状況だとも考えられる。画質の競争から、機能性の競争に変りつつある、と言って良いかもしれない。
その点で分があるのは、WinDVD Millenniumの方だろう。本パッケージには、PS/2キーボードインターフェイスを利用した赤外線ワイヤレスリモコンが付属する。このリモコン、受光部はPS/2キーボードコネクタから電源をとるため、電池やACアダプタを必要としない。また、DVDプレーヤーのコントロールには、キーボードショートカットのキーコードを用いているためOSも選ばない。カードタイプのリモコンは、プロパティのようにDVD再生に直接関係しないファンクションと、マルチアングルのコントロールを除けば、プレーヤーの機能の大半をサポートしている(プレーヤーの起動も可能)。
このリモコンを搭載したことにより、WinDVD Millenniumの標準価格は7,800円と、WinDVD 2000より2,000円高いのだが、実売価格を調べてみると、WinDVD Millenniumの方が安い場合すらある、ということがわかった。また、なぜかWinDVD Millenniumのみが、スクリーンキャプチャ機能をサポートしている。そもそもWinDVD Millenniumの方が後発であるため、新しいビルドをベースにできるという有利さがあるわけだが、これでは前バージョンからWinDVDを販売してきたカノープスの立場が無いようにも思われる。何とも不可思議な状況だ。
それはともかく、WinDVD 2000、WinDVD Millenniumとも、定評のあるプレーヤーの最新版だけに、ソツなくまとめられている、という印象が強い。WinDVD Millenniumのリモコンを除き、特に傑出した機能などは見当たらないが、比較的充実したハードウェアサポート、CCのサポートなど、押さえるべきところはちゃんと押さえられている。個人的にはAIW 128でキャプチャしたMPEG-2ファイルの再生ができないのが残念だが、これを問題にする人は少ないだろう。
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【テスト環境】
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注):店頭価格はヨドバシカメラ新宿マルチメディア館で、6月16日に店頭での表示価格をPC Watch編集部が独自に調査したものです。独自のカードを併用することで、次回の買い物の際、現金同様に使用できる「ポイント」の還元を受けることが出来ます。
なおPC Watch編集部では、この価格で販売されることを保証するものではありません。実際の販売価格は変動いたしますので、購入時に各ショップの店頭にてご確認ください。各ショップの場所等については、各ショップにお尋ねください。
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(2000年6月21日)
[Text by 元麻布春男]