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E3 2000開幕直前レポート

PlayStation 2を米国でも発表
PSとPS2で普及率98%を目指す

期日:5月10日(現地時間)

会場:Los Angeles Center Studios


PSの生みの親、SCEIの久夛良木 健社長。会場に同氏が登場したときから報道陣が押し寄せていたが、カンファレンス終了後にはにこやかに報道陣の質問に答えていた
 米国で、ついに待望のPlayStation 2(PS2)に関する詳細が明らかにされた。E3開幕前日の5月10日(現地時間)に行なわれたPS2のプレスカンファレンスでは、北米のPS2リリースに関してその詳細が初めて明らかになった。Sony Computer Entertainment America(SCEA)は、PS2の北米での発売日を10月26日、価格を299ドルとし、北米バージョンのハードウェアは改良と変更が施されていることを発表した。実質的な「次世代PS2」である。報道陣が大量に押し寄せ、予定より大幅に遅れて始まった同カンファレンスで、SCEAはこのマシンを単なるゲームコンソールとして捉えるのではなく、将来的にはデジタルエンターテイメントの中核部分を担う未来のプラットフォームとして位置づけたうえで、世界制覇をかけた同社のブロードバンド戦略を明らかにした。


●ゲーム業界はハリウッドに匹敵!?

いよいよ米国で発売されるPS2。価格は5年前に発売されたPSの発売価格と同様の299ドル。会場からは拍手が沸き上がった
 SCEAのKazuo Hirai社長兼COOは同カンファレンスで「'99年、ゲーム産業は70億ドルの巨大市場に成長し、75億ドル市場の映画産業を凌ぐ勢いで伸びている」とビデオゲーム市場の急成長ぶりを語った。その中でもPlayStation(PS)の成長率はゲーム市場全体の伸び率を上回る勢いであり、PSが実質的にはゲーム市場を引っ張るけん引力になっていると述べた。世界で7,200万台、米国で2,700万台が普及しているPSは、若者の間でトップブランドの3位に入っているという。

 同氏は、日本でのPS2リリース時の模様を紹介するため店の前に徹夜する日本の若者達のビデオを見せながら、ビデオゲーム市場の急成長がPS2のリリースによりさらに加速されると語った。発売時期は10月26日、また価格は5年前に発売されたPSの発売価格と同様の299ドルに設定すると発表があった瞬間、会場からは一斉に拍手が起こった。


●HDDとブロードバンドインターフェイスを搭載

 PS2のシステムは、基本的には日本のものと同様であり、CPUである「Emotion Engine」、グラフィック部分を司る「Graphics Synthesizing」を搭載しており、USBやi.Link(IEEE-1394)ポートも搭載する。北米バージョンが日本版と異なる最大の点は、後方部分のPCカードインターフェイスが外され、その場所に新たに3.5インチHDDや、Ethernetアダプタなどのブロードバンド対応の拡張ベイが装備されていることだ。ブロードバンド部分には、LAN、DSL、ケーブルモデム、そしてワイヤレス接続などが検討されているが、詳細は未定としている。HDDとネットワーク対応で、デジタルコンテンツのダウンロードや保存が行なえ、ソニーのブロードバンド戦略は一歩前進する。

 また、DVD-Videoプレーヤーがアップグレードされ、DVD-Video再生用のソフトウエアはドライバとしてメモリーカードから起動するものではなく、マシンのファームウェアに置かれる。これにより、日本では標準装備されていた8MBメモリーカードは米国ではオプションとなる。ただし「Dual Shock 2」コントローラは、日本と同様に標準装備される。また、オプションの「Dual Shock 2」コントローラ、マルチタップ、8MBメモリカードはそれぞれ34ドルで発売される。

 発表会場にも登場したソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の久夛良木 健氏によると、「北米バージョンのPS2に採用されたEEは日本のものよりも小さくなっている。これは、0.18ミクロンの製造プロセスへと移行することにより可能になった。したがって、空いたスペースに3.5インチのHDD、またブロードバンド接続機能を組み込むことができる。これは、いわば“第二世代”のマシンだと言える」と述べた。同氏は同時に、米国バージョンのスロットはソニーのカスタム製品であることを明かにした。PCカードは規格化されてアプリケーションも多いので「(PCカードインターフェイスを搭載した日本版の方が)いろんなことができる」とも語った。

PS2の後方部分の拡張ベイを説明するSCEAのKazuo Hirai社長兼COO。左手に持っているのがPS2本体で、右手に持っているのが3.5インチHDD
(Photo by Akira Yahagi)
米国バージョンのPS2。後方部分のPCカードスロットが外され、その場所に新たに3.5インチのHDDとEthernetアダプタなどのブロードバンド対応の拡張ベイが装備されている
(Photo by Akira Yahagi)
スライドによるPS2の説明


●ブロードバンド革命の火蓋を切るPS2

今年中に北米で100万台を販売するという目標を掲げるSCEA。発売日の前に売りきれを予想する向きも。
 PS2をデジタルエンターテイメント分野での中心的なプラットフォームとして位置付けるのに、この3.5インチのHDDとブロードバンド接続機能は非常に重要な役割を占める。DVD-ROMドライブ、HDD、またブロードバンド接続により、PS2ユーザーはネットワーク上からゲームソフトを購入して直接PS2にダウンロードできるようになる以外にも、ゲームのデモをダウンロードしたり、ビジネスとして成立すればゲームのレンタル、映画、音楽コンテンツのサンプルなどをダウンロードできるからだ。さらに、人気ゲームタイトルのアドオンをダウンロードすることで、既存のゲームをより魅力的にすることも可能だ。SCEAのサードパーティ調査開発部門のPhil Harrison副社長によると、追加のマテリアル(シナリオやダンジョン、キャラクタなど)がダウンロード可能になることで、毎回異なるエピソードを受信して、ゲームをもっと面白くすることができるという。また、ゲームデモのダウンロードなどでソフトウエアのマーケティングテストを行ない、その結果によってインターネットを通してソフトウエアを配信したり販売したりもできるとも語った。

 ソニーが何度も繰り返し強調する「ブロードバンド革命での主導権を握る」という目標において、HDDやブロードバンド接続機能の追加は不可欠である。また、それと同時にISPやネットワーク企業などの提携パートナーと手を組むことが重要である。しかし、これらのパートナー企業に関しては現在交渉を進めている段階ということで明らかにはせず、実現にはまだまだ時間がかかりそうだ。PS2をデジタルエンターテイメントの未来のプラットフォームとして位置付けるためには、早急にパートナー企業と提携して様々な接続サービスやコンテンツサービスを提供してPS2を普及させることが重要だろう。


●270タイトルがPS2向けに開発中

PS2ゲームタイトルのリリーススケジュール。今年中には51タイトル、2001年1~3月には56タイトル、4月以降は80タイトルをリリースする予定。今後もこの数字は増えるとSCEAのサードパーティ調査開発部門のPhil Harrison副社長は語る
 PS2のゲームタイトルのラインナップに関しても、ソニーは自信たっぷりに「歴史上、最大規模のタイトルのラインナップを発売時にそろえる」と断言した。Harrison氏は「現在、208社の開発企業がPS2のライセンス協定に合意している。100種類以上の開発ツールやミドルウェアが開発されており、270タイトルのソフトウエアが同プラットフォーム向けに開発されている」と語った。SCEAは、今年中に51タイトルのゲームを用意するという。また、来年3月までにはすべてのジャンルで107ものゲームタイトルを準備するとしている。

 ここでゲーム大手パブリッシャーであるElectronic Arts(EA)の創設者、Don Mattrick氏が登場し「EAは現在、20のゲームタイトルをPS2用に開発中である」と語った。これらには「Madden(フットボールゲーム)」、「Snowboard Supercross(Big SSX)」、「NASCAR 2001」、「NBA Live」、「Tiger Woods」、「NHL 2001」、「The World Is Not Enough(007の同名タイトルをゲーム化)」、「FIFA 2001」、などが含まれる。同氏は、これらのゲームのデモを行ない、パワフルな3Dグラフィクスの威力を見せつけた。ただ、同社の得意なスポーツゲーム(EA Sports)はそれなりの完成度だったが、「The World Is Not Enough」に関してはキャラクターの動きはもちろん、ポリゴンも荒く、突貫工事で作り上げられた印象だった。

 ソニーは、PS2ゲームタイトルの価格は、PSのゲームタイトルと同様に49ドルとしている。


●73%の家庭にPS2を普及させる!

「ブロードバンド革命」を目指して、テレビと同じようにPSを普及させるという並々ならぬ意気込みを見せるSCEA
 カンファレンス終了後の質疑応答の中で、「MicrosoftのX-Boxに対抗して、ブロードバンド接続機能をつけたのではないか」との質問がなされた。これに対してソニーは「'99年9月のプレスリリースを読んでもらえればわかるように、我々はその時期すでにブロードバンド構想を明確に打ち出していた。Microsoftが真似したのでは?」と自信たっぷりに語った。Sega of Americaもまた、Dreamcastにモデムを付属し、マシンの無料提供によりインターネット接続料金を取るというサービスモデルに移行しており、今後はデジタルインタラクティブ市場の競争が激化しそうな気配を見せている。

 その中で、イメージと普及台数において圧倒的に優位なソニーは絶対的な自信を見せ、2001年3月までに、日本で400万台、北米で300万台、欧州で300万台、合計1,000万台のPS2を販売する目標であると豪語した。Hirai氏は「現在、98%の米国家庭にテレビは浸透している。一方、PSは25%である。我々はテレビと同じようにPS2を普及させる。したがって、あと73%の家庭にPS2を普及させるのだ。PS2はビデオゲームエンターテイメントの未来のみではなく、エンターテイメントそれ自体の未来を握るカギである」と強気な発言で締めくくった。

□Sony Computer Entertainment America(SCEA)のホームページ(英文)
http://www.playstation.com/playstation.asp
□ニュースリリース(和文)
http://www.scei.co.jp/corp/pdf/000511.pdf
□ニュースリリース(英文)
http://www.playstation.com/messageBoards/index.asp?name=psx2
□Electronic Entertainment Expo(E3)のホームページ(英文)
http://www.e3expo.com/

(2000年5月11日)

[Reported by HIROKO NAGANO / Photo by funatsu@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp