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元麻布春男の週刊PCホットライン

Athlon搭載機を実験マシンに導入


■仕事場にAthlonマシンを導入

 最近、筆者の仕事場に新しい実験マシンが増えた。ついにAMDのAthlonベースのシステムを導入したのである。今年の初め、米国でPC量販店を訪れた際、コンシューマー向けPCの上位モデルがみなAthlon搭載機だったことで、そろそろうちにも1台Athlonマシンが要るかな? と考えていたのだが、なかなか踏み切れなかった。そうこうしているうちに、Intelではないと動かないと豪語(?)するSmartVision Proのような周辺機器が登場するにつけ、やっぱり必要だ(自分で本当に動かないか検証する必要がある)と思ったわけだ。といっても、今をときめく? 1GHzのシステムなど、筆者が買えるハズがない。購入したCPUは、もはやローエンドになりつつある600MHzのAthlonだ。

 どのくらいのクロックのCPUを買うか、というのは目的によっても異なるため、一概にどれとは言いがたいが、逆に特別な目的がないのであれば、最もコストパフォーマンスの高いCPUを選びたい。今、Athlonを買うのなら、600MHzか650MHzが最も値ごろ感のあるところだと思う。純粋にコストパフォーマンスだけを考えれば、650MHzという選択が捨てがたいのだが、今回はあえて600MHzを選んでいる。それは600MHzが、IntelのPentium III(FSB 100MHzおよび133MHz、KatmaiとCoppermineで計4種)、Celeron(Coppermine 128)、そしてAMDのAthlonと、3種類のプロセッサ計6種すべてが揃うマジックナンバーであるからだ。比較テストを行うには極めて都合が良い。

■マザーボードはMSIを選択

 問題はマザーボード(あるいはチップセット)を何にするかだ。筆者はSuper 7に比べてSlot Aは、チップセットやマザーボードといったプラットフォームの部分でも進歩した(問題が少なくなった)、と評価している。だが、それでもまだIntel製CPUのプラットフォームに比べれば若干及ばない、というのが率直な印象だ。その最大の理由はAMD自身がマザーボードを手がけていないためだと思う。もはやマザーボードは高価なパーツではないとはいえ、変なものをつかんでトラブルが出ては、何をテストしているのか分からなくなってしまう。少なくとも、そこで浪費される時間は、〆切前にはかなり辛い。

 というわけで、今回のマザーボード選びについて、まず方針を決めたのは、AMD製チップセットのものにする、ということだ。現在Athlonをサポートしたチップセットには、

1) AMD製North Bridge(AMD-751)とAMD製South Bridge(AMD-756)の組合せ
2) AMD-751とVIA製South Bridge(VT82C686A)の組合せ
3) VIA KX133チップセット(VT8371にVT82C686A)
の3種類が考えられるが、このうちの1(AMD-751/756)にしようというわけだ。

 これらのうち、最新なのは言うまでもなくVIAのKX133だ。が、最新が必ずしも良いとばかりは限らない。Windows 2000など、必ずしもメジャーではないOS(わが国ではかなり人気があるが、世界的には、特にハードウェアサポートの点では、Windows 9x系とはかなりの隔たりがある)のサポートにはかなり不安が残る。筆者の仕事の大半はWindows 98 Second Editionベースだが、Windows 2000での動作検証をしなければならない時もある。手堅くいくならAMD製チップセットと考えたのである。

 同じ理由からAMD-751にVT82C686Aの組合せも除外した。VIA製のSouth Bridgeには、外付のスーパーI/Oチップが要らない、AC'97リンクインターフェイスを備える、USBホストコントローラを2つ持つ(ポート数は4)といった特徴がある(AMD-756のUSBは1コントローラ4ポート。IDFでIntelは2コントローラがPC2001の必須になると述べていたのだが、最新のドラフトであるRev 0.7でもそのような記述は見られない)。すべて長所と言って良いのだが、ここでも確実を期したわけだ。

 AMD純正のチップセットを用いたマザーボードはいくつもあるが、今回購入したのは、MicroStarのMS-6195(K7Pro)である。昨年の10月に同社のMS-6167で、Athlon 700が正常にブートしない、というトラブルを味わったにもかかわらず購入に踏み切ったのは、MS-6195が全く同じAMD純正チップセットを用いた2世代目のマザーボードであるからだ。同じチップセットで2回作ったのだから、2回目は問題が減少するだろう、という読みである(マザーボードを買いに行ったヨドバシカメラで、他に選択の余地があまりなかった、ということもあるが)。

■ノートラブルで発進、でも1GHzは?

 というわけで購入したMS-6195とAthlon 600MHzだが、この組合せで問題なく動作した。今回購入したプロセッサは、いわゆるリテールパッケージ版だったのだが、Intelより大きな箱におさめられているマニュアルが立派であることは、自分で買ってみなければわからないことだ。また、MS-6195にはD-LEDと呼ばれる自己テストの進行状況を示すLEDが付けられ、同様なLEDは、Intel製マザーボード、たとえばCC820などにも見られるが、LEDの向きが逆(Intelが外向きであるのに対し、MS-6195は内向き)になっているのが興味深い。一般的なケースに添付されているI/OシールドではIntel方式だと外から見えないことに配慮したのだろう(ちなみに、LEDの数は同じ4個だが、意味はIntelとMSIで異なる)。

 これで話が終りなら、今後のテストで活躍することを祈りつつ、うまく動いてハッピーエンドですむのだが、実はそうではなかった。某誌における1GHzプロセッサの評価の際に、ちょっとだけ1GHzのAthlonを借用して、MS-6195に組み合わせてみたのである。BIOSは、あらかじめAthlon 600MHzを用いて、1GHz対応と称する1.3にアップデートしておいた(MSIのWebサイトにBIOSの更新履歴がちゃんと書かれている点は良いと思う)。

 10月の時(MS-6167にAthlon 700MHzを組み合わせた時)と違って、今回はシステムは起動する。しかも、ちゃんと「Athlon 1000MHz」と認識もされている。だが、Windows 98 Second Editionのインストール途中にどうしてもエラーが発生する。念のためAthlon 600MHzを用いてWindows 98のインストールを正常に行い、CPUだけを1GHzに差し替えて、CPUmark 99(Ziff DavisのWinBench 99の1つ、CPUとメモリ以外にアクセスしない、いわば単純なベンチマーク)を実行しても、途中でエラーになってしまう。

 印象としては、BIOSに1GHzのCPU IDは入っているものの、タイミング等の調整が行なわれていないという感じだ。1GHzのプロセッサは、3月中は限定リリースという条件付であったし、今回の件に情状酌量の余地はあるが、やっぱりプラットフォームとしての信頼感で、Intelに及ばないという気がしてしまうのが、Athlonの辛いところだ。なお、AMDの「Recommended Motherboards」にはMS-6195自身がまだ掲載されていない。また、繰り返しておくがAthlon 600MHzでは何の問題も生じていない。

□MS-6195製品情報
http://www.msi-computer.co.jp/product/product_motherboard/slota/slota_0.html
□AMDのRecommended Motherboards一覧
http://www1.amd.com/athlon/mbl/index/

(2000年4月5日)

[Text by 元麻布春男]


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