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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

【号外】IntelがPentium III 1GHzを来週3月8日に発表へ

●Intelが急きょCoppermine 1GHzを繰り上げ

 米Intelは、1GHzプロセッサの出荷を大幅に前倒しした。OEMメーカーによると、同社はPentium III(Coppermine:カッパーマイン)の1GHz版を、来週出荷すると通知して来たという。発表予定日は米国3月8日(日本時間3月9日)になると、複数のOEMメーカーが伝えている。また、当面は限定数量の出荷で、限られたメーカーしか入手できないという。

 すでに、Intelは、先々週行われた同社の技術カンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」で、Pentium III 1GHzをデモ、さらに限定生産を開始すると発表していた。IDFのキーノートスピーチに立ったIntelのアルバート・ユー上級副社長は、「1GHzチップはサンプル出荷を始めており、ボリューム出荷は第3四半期だが、限定生産は近いうち(shortly)になる」と説明している。IDFでは、米IBM、米Dell Computer、米Hewlett Packard(HP)の3社に、1GHz版の、量産品にかなり近いサンプルが渡っていることも発表された。なお、このPentium III 1GHzは、特殊な冷却を使うものではなく、ファンによる通常の冷却によるものになる。

●限定生産とすることで混乱なく前倒しを可能に

 今回の、あまりに早い1GHz出荷は、“限定生産”という点にポイントがある。PC業界関係者によると、Intelは1GHz品のボリューム出荷は第3四半期になるというスケジュールを崩しておらず、1GHzの前の900MHzと850/866MHzの量産出荷スケジュールにも変更がないという。つまり、顧客に十分行き渡る量を提供するボリューム出荷のスケジュールは据え置いたままで、限定生産という断りを入れて1GHz品を少量先行投入するという荒技に出たわけだ。

 この戦術は、IntelとOEMメーカーの両方にとって利点がある。Intelは、限定生産と銘打つことによって、1GHz品が十分な量採れるようになるのを待つことなく発表することができる。もっと具体的に言えば、AMDがAthlon 1GHzを発表する機先を制し、1GHz一番乗りの冠を取ることができる。1GHz発表は、IntelとAMDのどちらが先かという象徴的な意味しかないと割り切ったアプローチだ。

 一方、OEMメーカーも、Intelの製品前倒しで、メインの製品ラインナップを崩される心配がない。1GHzマシンは、あくまでも数量限定のスペシャルモデルとしてリリースすればいいからだ。

 Intelは、昨年末に800MHzを前倒し発表したが、その結果、PC業界に混乱を引き起こしてしまった。OEMメーカーにも直前にアナウンスするという急な発表だった上に、発表後しばらくの間、十分な量を提供できなかったからだ。そのため、OEMメーカーからはかなりの不平が出たと言われている。今回の1GHzを限定生産と銘打ち、量産スケジュールは据え置きにするのは、800MHzの時の反省からだと思われる。

●限られる生産量と搭載マシン

 もちろん、Intelの生産態勢としても、1GHzはごく限られた量しか採れないはずだ。1GHz版は特殊なチップではなく、Coppermineのウエーハから選別されたものになると思われる。つまり、Intelが生産するCoppermineチップのうち、ごく少数だが1GHzで動作するものが採れつつあるという状況だと見られる。

 Intelは、新しいBステップのCoppermineへ切り替えつつあり、それにより高クロック品が採れるようになっている。現時点は、800MHzの次になると思われる850/866MHzクラスをハイエンド向けに出荷できるボリュームへ持って行こうとしている最中だ。その、新Coppermineのうち、例えば、0.1%でも1GHz動作品が採れるとしたら、限定供給できる程度の数にはなる。第1四半期中に、Coppermineをあと1,000万個生産するとしたら、そこから1万個の1GHz品が採れることになるからだ。

 1GHz Pentium IIIの限定生産が、はたして数千個を意味するのか数万個を意味するのか、まだわからない。だが、通常のIntelのハイエンドCPUの出荷量より、桁違いに少ない量なのは確かだろう。後になればなるほど、出荷できる数量は増えるだろうが、当初はきわめて限られた数になるはずだ。

 そのため、Intelは、今回の1GHzは、一部大手メーカーにしか出荷しないと言われている。Pentium III 1GHz搭載マシンを発表するPCメーカーがどこになるのかは、まだ不明だ。発表メーカーの中に、すでにサンプル供給を受けているIBM、Dell、HPの3社が入ることは確実だが、それ以外にもIntelから供給を受けるメーカーが出てくる可能性はある。しかし、Intelは、どのメーカーにどれだけ供給するかの配分に苦慮することになるだろう。また、PCメーカーが1GHzマシンを出せるかどうかは、Intelとの関係を反映したものになる。

 Intelが限定生産とし、ごくわずかの量しか供給しないため、各メーカーの1GHzマシンはスペシャルモデルとなる可能性が高い。Pentium III 1GHzが、常識的なプライス(1000ドル以下)で販売されたとしても、PCメーカーはリッチな構成でハイエンドマシンとしてある程度以上の価格をつけてくるだろう。

●Intelの限定生産でAMDの対応は?

 先週のコラムでは、Intelの1GHz出荷を5月ごろと見積もった。しかし、Intelという会社のパラノイア(偏執症)度は、そんな常識的な予想をはるかに上回るものだった。こうしたベンチャー並のアグレッシブさが、Intelのおそるべき点だ。

 Intelが1GHz発表を決めたことで、次の焦点はAMDがどう出るかに移る。AMDは、現在、6月頃から次世代の2次キャッシュ統合版Athlon(Thunderbird:サンダーバード)の1GHz版を投入する計画でいる。しかし、Intelが限定生産で先行発表してくるために、対抗して現行のAthlon(K75)で、1GHz版を限定出荷として前倒しするといった手を打ってくる可能性もある。あるいは、1GHz品のボリューム出荷をぎりぎり5月か4月に前倒しし、ボリューム出荷は自社の方が早いと反論してくる可能性もある。このあたりの展開は、来週、明らかになるだろう


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(2000年3月3日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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