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SiS300を搭載するビデオカードがようやく登場



 今から約10カ月ほど前、'99年の4月に発表された、SiS(Silicon Integrated Systems)の新ビデオチップ「SiS300」。低価格ながらRIVA TNTに匹敵するパフォーマンスが発揮されるということで、一時はかなり注目された。そのSiS300を搭載するビデオカードが、今年2月頭にようやく秋葉原に登場となった。今回は、そのSiS300を搭載するビデオカードを取り上げ、そのパフォーマンスを検証することにしよう。


■SiS300を搭載するビデオカード「WinFast VR300」

 SiS300は、同社のビデオチップ「SiS6326」の後継にあたるチップだ。コアインターフェイスおよびメモリインターフェイスは128bitで、64bitチップであったSiS6326と比較して3Dグラフィックの描画パフォーマンスはおよそ5倍に向上しているとされる。ビデオメモリは最大32MBまで搭載でき、AGP 2X/4Xもサポートしている。また、DVDアクセラレート機能を搭載し、350MHzという高クロックのRAMDACを内蔵している点も特徴だろう。

 SiS300には、「SiS301」というコンパニオンチップが用意されている。SiS301を利用することで、TV出力やデジタル液晶ディスプレイ(DFP)出力が可能となる。もちろん、マルチディスプレイ環境も構築可能だ。

付属品の3Dグラス。WinFast 6300MAXに付属しているものと同じだ。VR300にはこれ以外にソフトウェアDVDプレーヤー「DVD Magic」などが付属する

 このSiS300を搭載するビデオカードとして秋葉原に登場したのが、今回取り上げるLeadtekの「WinFast VR300」(以下VR300)である(国内の販売はバーテックスリンクが担当)。SGRAMを16MB搭載し、最大表示解像度は32bitカラーモードで1,920×1,440ドット(リフレッシュレートは60Hz)となっている。ビデオチップおよびビデオメモリの動作クロックは標準で110MHz。コンパニオンチップのSiS301は搭載されていないため、TV出力やDFP出力には対応していないものの、液晶シャッター方式の3Dグラスを接続する端子が用意されている点は特徴の1つだ。

 この3Dグラスは、前回「高機能統合型チップセットSiS 630の実力を探る」で取り上げた、同じくLeadtekが発売するSiS630チップセットを搭載するマザーボード「WinFast 6300MAX」に付属しているものと全く同じものだ(ちなみにSiS630は、SiS300相当のグラフィックスコアを内蔵する統合チップセットであることは前回お伝えしているとおりだ)。

 3Dグラフィックスのゲームであれば、アプリケーションやAPIに依存することなく、3D立体表示を可能とする。付属のマニュアルには、MotoRacer2やQuake2、TombRaider3など多数の主要ゲームで正常に動作すると記載されている。

 ところで、SiS300はAGP 2X/4Xをサポートすると先ほど書いたが、VR300はAGP 2Xしかサポートしていない。パッケージやマニュアルにも「AGP 2Xサポート」としか書かれていない。チップが対応しているのであれば、ビデオカード側で対応させることは難しいことではないはず。かといって、SiSのホームページをチェックしてみても、SiS300はAGP 4X対応としっかり書かれており、スペックが変更されているわけでもなさそうだ。ただ、AGP 4Xをサポートしていないからといって、大幅なパフォーマンス低下につながるとは言えず、チップのパフォーマンスから考えてもそれほど大きな問題ではないだろう。

ビデオドライバには、ハードウェアやドライバの詳細が表示される。それを見ると、コアとメモリの動作クロックが110MHzと記されている D3Dパフォーマンスの設定項目では、描画パフォーマンスを調節するスライドバーが用意されているが、コアやメモリの動作クロックを調節するものではないようだ 3D立体表示に関する設定項目。機能的には、前回取り上げたWinFast 6300MAXに用意されていたものと同じだ


■RIVA TNTクラスか、やや劣るパフォーマンス

 では、これまでビデオカード扱ったときと同様の条件で行なったベンチマークテストの結果を見ていくことにしよう。ちなみに、ビデオドライバは製品に付属しているものではなく、Leadtekのホームページに掲載されている最新バージョン(1.02.52)を利用した。なお、テスト環境は以下の通り。

【テスト環境】
 CPU      :Pentium III 700MHz
 マザーボード :ABIT BE6
 メモリ    :128MB SDRAM(PC100)
 ハードディスク:Western Digital Caviar AC14300
 OS      :Windows 98 Second Edition

○2D描画パフォーマンス

 2D描画パフォーマンスの測定は、従来通りZiff-Davis,Incの「WinBench 99 Version 1.1」に含まれる「Business Graphics WinMark99」と「High-End Graphics WinMark99」を利用する。1,024×768ドット、リフレッシュレート85Hz、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。

1024x768 16bpp1024x768 32bpp
Business Graphics WinMark 99High-End Graphics WinMark 99Business Graphics WinMark 99High-End Graphics WinMark 99
WinFast VR300238684184602
RAGE MAGNUM249785211755
Viper II262580235659
3DBlaster GeForce Pro295838293830
3DBlaster GeForce294835285827
SPECTRA 5400 PE294835286824
Millennium G400296848287831

 結果を見ると、最新のビデオカードと比較するとかなり見劣りを感じてしまう。SiS300の描画パフォーマンスは、RIVA TNTクラスをターゲットとしているということを考えると、この程度の結果であっても仕方がないだろう。ほぼ同世代のチップであるRAGE128を搭載するRAGE MAGNUMとほぼ同じような成績であり、発表当時としては十分満足できるパフォーマンスであったといえる。しかし、現在ではやはり物足りない結果であるといわざるを得ないだろう。また、ビデオメモリが16MBしか搭載されていないのも、結果の足を引っ張っているはずだ。

○Direct3D描画パフォーマンス

 次に、Direct3Dベースでの3D描画パフォーマンスだ。MadOnion.comの「3DMark2000」と、Ziff-Davis,Incの「3D WinBench 2000」を使用し、1,024×768ドットと1,280×1,024ドットの16bitおよび32bitカラーモードにおけるパフォーマンスを測定した。

【3D WinBench 2000】
1024x768 16bpp1024x768 32bpp1280x1024 16bpp1280x1024 32bpp
WinFast VR30031.014.718.5メモリ不足で動作せず
RAGE MAGNUM26.419.417.911.6
Viper II61.350.141.430.8
3DBlaster GeForce Pro92.370.763.142.5
3DBlaster GeForce78.952.352.531.0
SPECTRA 5400 PE59.741.538.923.5
Millennium G40046.433.231.120.0

 まず3D WinBench 2000の結果だが、こちらも2D同様に最新のビデオカードと比較するとかなり結果が悪いように見えるが、RAGE MAGNUMの結果とだけ比較するとそれほど見劣りはしない。また、32bitカラーモードでの結果が悪くなっているのは、やはりビデオメモリが少ないからだろう。ちなみに、1,280×1,024ドット32bitカラーモードではメモリ不足で測定できなかった。

【3DMark2000】
800×600 16bpp800×600 32bpp1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp
WinFast VR300動作せず

 これに対し、3DMark2000は正常に動作させることができなかった。ソフト自体が全く動作しないというわけではないが、テスト中に必ずマシンがハングアップしてしまう。しかも、特定の場所ではなく、ランダムに発生してしまうのだ。もちろんビデオドライバはSiSのホームページに掲載されている最新バージョンを利用したのだが、マザーボードBIOSの設定を変えてみたり、OSの再インストールなどを何度か行なってみたものの、結局動作が安定することはなかった。前回取り上げたSiS630を搭載するWinFast 6300MAXでは正常に動作していたことを考えると、SiS300を搭載するVR300でも正常に動作して良さそうなものだが、ビデオドライバやシステムなどが違うため、一概に比較はできないだろう。そのため、今回は残念ながらテストを諦めざるを得なかった。

○DirectX 6.1ベース3Dゲームの描画パフォーマンス

 DirectX 6.1ベースの3Dゲームソフトでの描画パフォーマンスは「Turok2:Seeds of Evil」を利用して測定する予定であった。ところが、こちらも3DMark2000同様に、正常に動作しなかったのだ。ベンチマークモードでも通常のゲームモードでも全くゲーム画面が表示されないため、こちらも残念ながらテストを諦めざるを得なかった。

【TUROK2】
800×600 16bpp800×600 32bpp1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp
WinFast VR300動作せず

○OpenGLベース3Dゲームの描画パフォーマンス

 最後にOpenGLベースのゲームソフト、Quake III Arenaの最新デモ版「Quake III Arena Demo 1.09」を利用して測定した描画パフォーマンスだ。
 こちらは何とか正常に動作したものの、そのパフォーマンスはかなり悪い。これまでのテストでほぼ同等の結果となっていたRAGE MAGNUMにすら大きく劣っている。実際にプレイしてみても、快適にプレイできたのは解像度が640×480ドットの場合のみといって良く、それ以上の解像度になると画面描画のもたつきがかなり感じられる。いくらRIVA TNTクラスの描画能力とはいっても、これではあまり満足できるパフォーマンスとはいえない。

【Quake III Arena Demo】
1024x768 16bpp1024x768 32bpp1280x1024 16bpp1280x1024 32bpp
WinFast VR30014.7 7.7 8.6メモリ不足で動作せず
RAGE MAGNUM23.717.814.9 9.7
Viper II56.448.535.928.6
3DBlaster GeForce Pro82.960.752.532.6
3DBlaster GeForce70.140.938.723.0
SPECTRA 5400 PE46.634.228.919.4
Millennium G40039.732.924.918.8


■現状ではおすすめできる製品とはいい難い

 今回のベンチマーク結果を、SiS300搭載カードが登場する本来の時期であった'99年4月頃で考えると、おそらく、かなり良いパフォーマンスが発揮されているという印象を受けていたことだろう。SiS300搭載カードは100ドル程度の価格で登場するといわれていたため、当初の予定どおりに登場していれば、安価でパフォーマンスの高い魅力的な製品として十分な成功を収められたに違いない。

 しかし、当初の予定から相当の時間が過ぎ、その間によりパフォーマンスの高い製品が続々と登場しており、現在ではVR300のパフォーマンスは満足できるものではなくなっている。

 また、ベンチマークソフトが正常に動作しないだけでなく、通常使用時にもいきなりマシンがハングアップしたりと、かなり動作が不安定であった点も問題だ。これはビデオドライバの完成度があまり高くないことによる問題という可能性が高いが、ビデオカードとマザーボードとの相性問題ということも考えられなくはない。どちらにせよ、安定して動作しなかったという点は大きな問題だろう。

 確かに、3Dグラスが付属して11,800円と、新製品としては十分安価な価格で販売されているものの、NVIDIA RIVA TNT2やVantaなどを搭載するビデオカードでも10,000円前後で発売されているものがいくつか存在していることを考えると、価格的な魅力も残念ながらあまりない。

 発売時期を逸したことによって、せっかくの魅力が色褪せてしまった、残念なビデオカードであるといわざるを得ないだろう。

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【2月5日号】LAN3Dグラス付きSiS300搭載ビデオカード「WinFast VR300」登場
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000205/etc_sis300.html
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【2月18日】Akiba PC Hotline! HotHot Review!
高機能統合型チップセットSiS 630の実力を探る
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000218/hotrev48.htm

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(2000年2月25日)

[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp