会場:San Francisco Moscone Convention Center
一方、期待されていた17インチのiMacやPowerBookの新製品ライン、Pismoなどのハードウエア関連は発表されなかったが、ジョブズ氏は「ボックスを超える」インターネット戦略「Mac OS X」クライアントバージョン、iMacのように透明で洗練された質感を持つ次世代ユーザーインタフェース「AQUA」など、ミレニアムにふさわしい新たなビジョンを打ち出し、Appleが再びコンピューティングの未来を切り開くという期待を感じさせる講演となった。
■6秒ごとに1台売れてる、Mac
6秒に1台売れている |
また、Appleのコンシューマ向けの新たなビデオ編集ソリューション「iMovie」のプレゼンテーションを行なった。同氏は、発売されて90日しかたっていないにもかかわらず、iMac DVユーザーの10%はiMac DVを使って映画を制作したことがあるとし、「iMovieは、非常に大きくなる。これは、キラーアプリだ」と述べた。
■「ボックスを超える」Appleのネット戦略
カメラマン席も満席。注目度満点 |
同氏によると、ストリーミング機能を付加したQuickTime 4は、昨年5月と比較的新しく発表されたにもかかわらず、今までに2,500万件以上がダウンロードされているという。また、Nielsen NetRatingsの調査によると、昨年11月に使われたストリーミング技術の内訳は、RealNetworksがトップで53%、次にMicrosoft Media Playerの14%を抜いて、QuickTimeが33%で第2位に輝いている。同氏は「しかも、21歳未満のユーザーでは、QuickTimeは30%のシェアを獲得してトップについている」と述べ、QuickTimeがとくにオンラインでモノを買う比率が高い若者に人気が高いことをアピールした。
また、前四半期に3億ドル以上の売上を上げたApple Online Storeのほか、同氏は「Apple.comは、毎週950万人のユーザーが訪れる、非常に価値のあるインターネット資産だ」と述べ、同サイトと2カ月で100万人以上が購入しているMac OS 9を組み合わせると、さまざまなインターネット・サービスが楽しめることになると語った。
インターネット・サービスのデモとして、ジョブズ氏は、ナビゲーションを容易にするためのタブバーを備えた新Apple.comサイトを発表した。このサイトには、「iReview」、「iCards」、「iTools」という3種類の新しいサービスが含まれている。
iReviewは、Amazonの本のレビューと同じように、映画やニュースサイトをレビューやランクづけする。また、iCardsでは、シンプルでお洒落なeカードを作成してくれる。また、iToolsは、不適切なWebサイトへのアクセスを禁止する「KidSafe」、電子メールサービス「Mac.com」、Appleのサーバーにファイルを保存する「iDisk」、ホームページを簡単に作成できる「HomePage」という4種類のツールを提供する。
ジョブズ氏は「通常のフィルタリングソフトでは、キーワードによりサイトのアクセスを制限するので、安全なサイトでも拒否されてしまうことが多い。僕は、子供には遺伝子関連のサイトを見て欲しいが、フィルタリングソフトを使うと、こうしたサイトはセックスという言葉が入っているので、はじかれてしまう。KidSafeは、これとはまったく異なるアプローチを取っている」と語る。このツールは、米国とカナダの教職員により認められた5万件以上の安全なWebサイト以外には、子供がアクセスできないようにするという。このデータベースには毎月1万件の割合で増えている。
Mac.comは、Macユーザーのための電子メールサービスで、Outlook ExpressやEudoraなどの既存のメーラーでも使用できる。「僕はCEOの立場を利用できるからいいけど、いいアドレス名が欲しいんなら、早く登録したほうがいいよ。でも、Steve@mac.comは諦めたほうがいい」とジョークを飛ばした。
iDiskは、MacユーザーがAppleサーバー上のストレージスペースを20MBまで無料で使えるというもの。ユーザーのデスクトップには、地球の形をしたiDiskアイコンが配置され、このアイコンにファイルやアプリケーションをドラッグ&ドロップするだけでファイルを転送できるのだ。また、誰かとファイルを共有したいときには、パブリックフォルダ機能も使えるという。
HomePageは、自分のホームページに掲載したいファイルをAppleサーバーにドラッグするだけで、初心者ユーザーでも簡単に個人のホームページを作成できるサービス。iToolsは、Mac OS 9ユーザーのみで使用可能。
■講演の目玉、「Mac OS X」!
まず、ウィンドウの左上には、カラフルなiMacを彷彿とさせる赤、黄色、緑の半透明のボタンがついている。これらは、ウィンドウを閉じたり、最小化したり、最大化したりするもの。また、スクロールバーも半透明のジェリービーンズのようで美しい。ウィンドウには、かすかな影がついていたり、ファイル保存のダイアログパネルも柔軟なデザインになっている。
また、何度もウィンドウを開く必要がなく、Webページのように1つのウィンドウ内でディレクトリが変わる機能もあり、これらのデモのほとんどはジョブズ氏みずからが行なった。ウィンドウは、Webブラウザ風になっており、いつもアクセスするファイルのボタンや「戻る」ボタンがついていて、今まで訪れたファイルのどの地点でも戻れる。このブラウザ風のウィンドウには、あらゆるファイルのサムネールを見ることができるプレビューモードもついており、なんとQuickTimeムービーまでがプレビューできるのだ。
ジョブズ氏がとくにお気に入りだったのが、新しいインタフェース機能の「Dock」だった。これは、画面下の部分にさまざまなファイルやアプリケーションを保管できる機能で、最大128種類までファイルを保管することができる。ユーザーは、ウィンドウの右上にあるボタンをクリックするだけで、ウィンドウがするすると縮小してDockに収まる。ジョブズ氏は、とくにこの機能がお気に入りのようで、ファイルを何度も繰り返しDockに入れたり出したりした。ファイルがたくさん保管されてくると、Dockのファイルアイコンも自然に小さくなるという、人間的なデザインだ。
また、Mac OS Xには電子メールソフトもついている。シンプルに見えるが、ウィンドウのサイドにカーソルを移動すると、横から受信ボックスウィンドウがひょっこり現れる。また、フォントをプレビューしたり、新たなフォントを1種類ずつオンライン購入できる機能もついている。
ジョブズ氏は、Mac OS X開発のスケジュールに関しては、最終ベータバージョンは春に出荷され、クライアントバージョンのOSは夏に発売されることになり、来年1月にはシステムへのプリインストールが行なわれるとした。
そのほか、ジョブズ氏はAppleのISPパートナーにEarthLinkを選び、2億ドルを投資したことを発表した。この契約は数年にわたるものになり、EarthLinkが接続サービスにより売上を得る代わり、AppleはEarthLinkに加入したMacユーザー1人につきコミッションを得ることになる。
講演の最後に、ジョブズ氏はついに「Interim(暫定)」の文字を取り、正式なCEOになることを宣言した。「でも、iCEOという言葉は気に入ってるので、これからも使わせてもらうよ」とジョークを飛ばしたジョブズ氏に、会場は総立ちで大喝采を送り、興奮に包まれた中で講演は終了した。
□MACWORLD Expo/San Francisco 2000のホームページ
http://www.macworldexpo.com/mwsf2000/index.html
□関連リリース(和訳)
「Macworld Expoにて、Mac OS Xとインターネット戦略を発表」
http://www.apple.co.jp/news/2000/jan/06wrapper.html
「Mac OS Xを発表」
http://www.apple.co.jp/news/2000/jan/06macosx.html
「インターネット戦略を発表」
http://www.apple.co.jp/news/2000/jan/06netstrategy.html
「アップルとアースリンク、Macintoshユーザ向けISPサービス提供で提携」
http://www.apple.co.jp/news/2000/jan/06earthlink.html
「AppleWorks 6を発表」
http://www.apple.co.jp/news/2000/jan/06appleworks.html
「業界リーダーのデベロッパ各社Mac OS Xのサポートで結集」
http://www.apple.co.jp/news/2000/jan/06thirdparty.html
(2000年1月6日)
[Reported by HIROKO NAGANO, CA]