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元麻布春男の週刊PCホットライン

2000年に来るモノ来ないモノ


■2000年に来るモノ来ないモノ

 一部で心配されていたY2K問題も、深刻なものは(予想通り?)起こらず、一安心の年初だが、みなさまはいかがお過ごしだろうか。Y2K対策で、会社で年明けを迎えた方には、ご苦労様とねぎらいの言葉をかけておこう。

 さて、前回'99年を振り返った時、筆者は'99年を「来る来ると言われていたものが来なかった年」と表した。とすると2000年は、'99年に来なかったものが、ついにやってくる年になるに違いない。その代表がWindows 2000だ。すでに昨年の段階で製造を開始した旨のプレスリリースが出ているのだから、これ以上確実なものはない。予定通り2月18日には店頭に並ぶことだろう。

 だが、Windows 2000以外の、'99年にやって来なかったものすべてが、確実に2000年に普及するかというと、必ずしもそうとは限らない。たとえば前回取り上げたDirect RDRAMだが、この普及はひとえに市場価格にかかっており、何とも言えない、というのが実情だ。有力対抗馬になるかもしれないDDRも、2000年に間に合うかというと、かなり微妙な気がする。結局2000年もPC100/PC133のSDRAMが主流となる可能性は高い。

 また、2000年と言えば期待されるのがもう1つのOS、Windows “Millennium”だが、こちらは登場するにしても、言われているほど大きなインパクトはないかもしれない。一般にWindows “Millennium”は、Windows 98の次のコンシューマー向けOSと言われているが、どうも最近、その性格がWindows 95に対するWindows 98のような「メジャーバージョンアップ」から、Windows 95 OSR2のようなOEM向けの「マイナーバージョンアップ」(あるいは実験的バージョンアップ)に変わりつつあるように思えてならないからだ。Windows “Millennium”は、次世代のコンシューマーOSというより、Easy PCあるいはレガシーフリーPCのための専用OS(つまり既存のハードウェアをサポートしない)になる可能性がある。

■来てしまうモノ

 ハードウェアの分野で、確実に2000年にやって来るのは(やって来てしまう、と言った方が良いかもしれないが)、フェーズIIのDVDドライブ(ROMおよびRAM)だ。最初に市販されたフェーズIドライブが、ドライブ側に地域コード(Regional Code)を持たなかったのに対し、フェーズIIドライブはドライブ側がハードウェア的に地域コード情報を保持する。フェーズIIドライブの地域コードは、通常ユーザーにより5回程度の変更が可能なものの、それを過ぎると、最後の地域コードに固定され、変更することは認められなくなる(これと別に故障や返品に対応する目的で、メーカー等による地域コードのリセットが4回まで認められる)。

 本来、このフェーズIIドライブへの切り替えは、'99年の1月から実施される予定だったが、1年間延期されていた。今回はいよいよ待ったなしで、実施されるようだ。間違いなく製造をフェーズIIドライブに切りかえるように、という注意書きがDVD CCAのWebサイトに掲載されている

 これによると、'99年12月31日以降、製造・販売が許されるのはフェーズIIドライブのみ。フェーズIドライブの新規製造は、フェーズIドライブを内蔵したノートPCの保守用やアップグレード用(CD-ROMドライブモデルをDVD-ROMドライブモデルに変更する)、あるいは特定の部品の供給に支障が生じた場合などに限定される。

 それが正当であろうと何であろうと、地域コードを持たなかったフェーズIドライブに比べ、地域コードが固定されるフェーズIIドライブは、ユーザーにとって自由度が減少することを意味する。ならば今のうちに店頭在庫のあるフェーズIドライブを確保しておこう、と考えるむきもあるかもしれない。確かにこれは短期的にはある程度有効な可能性があるものの、おそらくそう長くは続かない。

 冒頭で触れたWindows 2000はOS側で地域コードを管理するようになっており、フェーズIドライブだからといって地域コードの管理と無縁ではいられない。おそらくWindows “Millennium”にも同様な地域コード管理のスキームが導入されるだろう。もちろん、ソフトウェアによる管理である以上、OSごと再インストールを行なうことで地域コードをリセットすることは可能だが、それは「正常な」PCの利用形態とは、かなりかけ離れている。かといって、フェーズIドライブと心中して、OSのアップグレードは一切行なわない(地域コード管理を行なわないWindows 98を永久に使い続ける)、というユーザーは少数派だろう。

 より長期的には、インターフェイスの更新により、否応なくフェーズIドライブを捨てる日がくるハズだ。現在主流となっているATA/ATAPIインターフェイスは、まだ当面の間互換性が維持される。年内に登場するであろうUltra DMA/100(現在のUltra DMA/66の最大データ転送速度を100MB/secに引き上げたもの)は、おそらく現在と同じパラレルインターフェイス(80芯の40ピンケーブル)を使うだろうが、その次はインターフェイス(物理層)のシリアル化が想定される。ソフトウェアを含め、PCを構成する様々なコンポーネントの進化は、特定の古いデバイスを維持することを許さないのである。

■もはやプロテクションの時代ではない

 もちろん、筆者は地域コードのような考え方に賛成しているわけではない。たとえば、フェーズIIドライブであろうと、1台のPCに複数台のドライブをインストールすれば、少なくともハードウェア的には複数の地域コードがサポート可能だ(ソフトウェア的にそれが可能かどうかは、話が別だが)。PCの価格低下を考えれば、複数台のPCを持つことも、それほど難しいことではない。地域コードを設けたところで、本気でそれを乗り越えようというユーザーには、大きな障壁とはなり得ない。有効でないプロテクションが百害あって一理無しなのは、コンピュータソフトウェアのディスクプロテクションが過去に証明している。

 そもそも、東京~ロサンジェルス往復の格安チケットの最低価格はすでに3万円台に突入しており、地域を隔てる国境の敷居はかつてなく低い。国境を超えて容易に人、モノ、金が動く時代に、いつまでも地域コードのようなことを言っていてもしょうがないのに、というのが筆者の率直な意見だ。映画館というビジネスは、興行権で守られた「見たければ足を運べ」というものから、快適なシート、家庭ではかなわない大画面や迫力ある音響システム、といった付加価値で勝負する時代になっていると思う(日本の場合は、言語の壁という、もう1つの要素があるのだが)。同様なことは、並行輸入や個人輸入を罪悪視するメーカーや代理店にも言える。並行輸入が気に入らないなら、価格とサービスで並行輸入の存在する余地をなくす、というのが唯一許された王道のハズだ。

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(2000年1月5日)

[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp