代表取締役社長執行役員に就任した橋本孝之氏

2008年12月30日 発表

代表権のない会長に就任した大歳卓麻氏(左)と橋本新社長が並んで会見

　日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は、大歳 卓麻代表取締役社長執行役員兼会長が12月31日付けで退任し、2009年1月1日付で取締役専務執行役員 事業開発担当だった橋本孝之氏が代表取締役社長執行役員に就任したことを発表した。

　突然の社長交代発表が行なわれたのは、12月30日の午後4時30分から。大歳氏、橋本氏の2人が出席し、社長交代発表会が開催された。

　冒頭、大歳氏は退任を決めた理由について、「(社長交代を決めた)理由は明白で、新しい時代に向け、新しいリーダー体制でやっていく必要があると考えた」と自らの意思で橋本氏に社長の座を譲る決断をしたことを強調した。

　社長に就任した橋本氏は、'54年生まれの54歳。'78年に日本IBM入社後、中堅企業を担当するゼネラルビジネスを担当。2006年からはサービス事業を担当し、2008年8月からは事業開発を担当して来た。

　橋本氏は「自分の原点は、30年前に担当した名古屋でのゼネラルビジネス。当時の中小企業にはIBMという企業のブランドも、コンピュータに対する理解もまだまだ低く、飛び込みで営業を行ない、お客様の生の声を聞いたことが、現在の自分にとっての基本となっている。未曾有の経済環境の中でのバトンタッチではあるが、私はこの機会をポジティブに捉えている。これまでにも世の中が変化をする際に大きな強みを発揮してきたのがIBMで、グローバル化が加速する中、革新的な経営モデルを実践していきたい」と社長就任の抱負を述べた。

　その上で、プライオリティとして、(1)お客様中心主義、(2)自由闊達な組織、(3)グローバルという3つのキーワードをあげた。

　「お客様中心主義は大歳から引き継いだものだが、これをより一層強化する。最近は、お客様の一部から『IBMの営業は内向きになっているのでは』という指摘を受ける。こうした声を払拭するため、昨年8月に事業開発を起ち上げ、最適な価値創造のために、より一層の事業強化を進めていく。自由闊達な組織作りは、社員が組織の枠を超えて働く環境を作り、ワクワク、生き生きとした社員を増やしていきたい。グローバリゼーションについては、日本法人の役割を単なる翻訳家でなく、価値を付加するインテグレーターとして活動することを目指したい。2009年1月からは『スマートプラネット』という大キャンペーンが展開される。このキャンペーンでは、あらゆるものがデジタル化され、つながっていくことを示す。交通、環境など社会に関わる課題全てを解決するためにどんなことができるのか、グローバルな力を合わせて提示していく。クラウド、スマート・インテリジェント・ネットワークといったキーワードに対し、社員が大きな目標を踏まえながら、ビジョン実現を進めていくのがIBMの他社にはない強みとなるだろう」(橋本社長)。

　会長となった大歳氏はIBMのビジネスが大きな変革期を迎えている具体例として、売り上げの内訳をあげ、自身が社長に就任した'99年には売り上げの43%を占めていたハードウェアの売り上げが2007年には13%にまで減少。それに対しサービスの売り上げ比率は48%から76%と大幅に上昇しており、「今後はさらにお客様にとって価値のあるサービスビジネス、例えばクラウド、環境対策といった新しいものを提供していく必要がある」とさらなるビジネス転換期を迎えているとした。

　もう1つの要因として、「IBMではGIE(グローバル・インテグレーテッド・エンタープライズ)、地球規模での事業統合を行なうお手伝いを進めているが、IBM自身もけたたましい勢いで地球規模の事業統合を進めている。これから先、日本の持っている力をもっと発揮していくためにも、新体制が望ましい」(大歳会長)と日本法人のパワーを発揮していくためにも新経営体制が必要であると述べた。

　発表を休暇に入った12月30日に行なった理由としては、「1月か、4月かという選択だったと思うが、当社の会計年度であり、キリのよい1月1日を選択した」(大歳会長)と説明した。

　関係者によれば、日本IBMが担当した三菱東京UFJ銀行のシステム統合が完了し、銀行の営業も終了したタイミングを待っての交代発表という側面もあったようだ。

　大歳氏は、社長退任後は取締役も退任。会長として、「経済団体活動などに専念する」(大歳会長)という。

□日本IBMのホームページ
http://www.ibm.com/jp/
□ニュースリリース
http://www-06.ibm.com/jp/press/2008/12/3001.html
□関連記事
【'99年11月2日】日本IBM、新社長に大歳卓麻氏が就任
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991102/ibm.htm

(2009年1月5日)

[Reported by 三浦優子]