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マウスが放つ青い光




 Microsoftが先日発表した新マウス。次世代トラッキング技術として“BlueTrackテクノロジ”を採用し、レーザー方式のマウスに比べて、より多くの素材上で使えるという触れ込みだ。評価機を入手できたので、その使い心地を試してみた。

●新たに世に出る2種類のマウス

 この秋から発売されるBlueTrackマウスは「Microsoft Explorer Mouse」と「同mini Mouse」の2製品だ。今回は、miniの方を使ってみた。

 パッケージには本体、レシーバー、単三充電池1本、そして携帯用のポーチが付属する。レシーバーは本体底面に取り付けることができ、持ち運び時に紛失しにくいようにするとともに、装着すると本体の電源が切れる仕組みになっている。ちなみに、単三充電池1本で、約半年間の使用が可能ということだ。

 マウス本体そのものは、いわゆる5ボタンマウスで、本体の左側に「戻る」と「進む」のためのボタンが装備されている。また、ホイールはクリック感のないヌルヌルのチルトホイールで、指の滑りを防止するためギザギザがついている。マイクソフトはArc Mouseでクリック感を復活させたのだが、この新製品では、また、ヌルヌルホイールに戻っている。

 マウスの電源がオンになると、底面の周囲が約10秒間青く光る。この仕掛けはけっこう楽しいかもしれない。持った感じも悪くない。サイズはそれほどコンパクトではなく、背の高さもけっこうある。ズングリが手のひらにスッポリというイメージだ。だが、これにminiという呼称をつけるというのはどうだろう。決して携帯性重視のモバイルマウスとはいえない大きさだ。通常のマウスが大きすぎて手に余る人のためのミニくらいに思っておくべきだろう。また、レシーバーも決して小さくはなく、Arc Mouse付属のものには遠く及ばず、当然、ロジクールのnanoレシーバーよりもずっと大きい。

●青い光がマウスを変える

 BlueTrackは、青色LEDの特性を生かしたテクノロジーで、赤や緑に比べて波長が短い青の光を採用しているのが特徴だ。光学マウスは本体から照射した光で自分が置かれた盤面を照らし、それをセンサーで感知する仕組みで、自分が動いた距離や速度、方向を感知する。

 簡単に言えば、連続してデジカメ写真を撮影し、前の絵と現在の絵を比べ、それがどう違うのかを分析することで、距離や速度、方向を割り出すわけだ。だから、テクスチャのない面ではうまく機能しない。

 青色LEDの光は、波長が短く、空気中の分子にぶつかって四方八方に散乱するため、結果として太い光を出力するという。従来のレーザーに比べ、4倍の太さというからかなり太い。そのため、カーペットの毛足の長さや、小さなホコリに影響されにくく、使える場所のバリエーションが大きく広がった。光沢のある石材やカーペット、木製のテーブルなどで威力を発揮するという。さすがに、ガラスや鏡面などでの使用は無理だが、相当場所を選ばないマウスだといえそうだ。

 これまでは、マウスポインタの動きがぎこちなくて、仕方なくマウスパッドを使っていたような場所でも、直にそこでマウスが使えるようになる可能性がある。従来のPCの設置場所は、たいてい机の上で、横にマウスパッドを敷き、その上でマウスを動かすというのが一般的だったが、PCそのものの使われ方の多様化により、マウスが使われる場所の条件も多岐にわたるようになり厳しくなってきている。今回のテクノロジーは、その環境変化に対応したものといえる。

●次世代技術を堪能する

 こんなふうにセールスポイントを説明されると、確かにすごそうだ。実際に使ってみても、なんとなくポインタの動きがスムーズな気もする。でも、そんなにすごいのかときかれれば、ちょっと微妙だ。

 冒頭の写真は東海道新幹線の中、前座席の背に取り付けられたテーブルの上で使っているところを撮影したものだが、モバイルマウスとしてはかなり大きいし、ノートPCで使うには、レシーバーもちょっと大き目だ。隣に装着したBluetoothのトランシーバーと比べてみるとよくわかる。今、手持ちのマウスが壊れてしまって新しいものを物色しているなら、十分、選択の対象になるとは思うが、わざわざ買い換えるだけの意味があるかというとどうだろう。

 それでもマウスが使える場所のバリエーションを広げたという点では意義がある。今回の製品は6,600円という価格がついているが、この技術がもっと低価格なマウスにまで降りてきて、さらに、モバイルマウスにも採用されるようになってほしいものだ。普段、マウスを使う場所であれば、マウスパッドを使うことで何とかなってしまうが、モバイルマウスはどこで使うかわからないし、念のためにマウスパッドを携帯するというのも考えにくい。本当はモバイル用途のArc Mouseでこそ採用してほしかった技術だ。Microsoftは、このマウスのコンセプトを“Go Anywhere”というキーワードで表現しているのだが、本当にそういう環境が得られればと思う。

 たとえば、このマウス、ズボンのポケットの中に入れておいて、必要なときに、ポケットに手を突っ込んで操作しても、それなりに使える。これは、電車の中で立ったままマウスを使いたいようなときに便利だ。そんな使い方するかよ、といった声が聞こえてきそうだが、これからネットブックなどが普及していけば、そんな使い方を望むユーザーだって現れるに違いない。でも、そういうユーザーは、数万円で購入したネットブックで6,600円もするマウスを使わないだろう。そして、なんとなく不便、不自由を感じながらも、ネットブックを素のままで使い続けるのだ。

 ネットブックはPCの周辺機器のあり方にも、少しずつ影響を与えそうだ。たとえば、価格の点では500円のマウスや、3,000円のプリンタが、いつ登場してもおかしくない。当然、その価格設定では、高機能なプレミアムは望めない。要するに、ネットブックがノートPCの世界を一時的に後退させたように、周辺機器にも同じことが起こるのだ。

 以前から、ネットブックの普及が、コンテンツの世界に影響を与えることを懸念していたが、後退減少は、そこだけにとどまりそうにない。

 そんな中、BlueTrackのような新しい技術で、快適さを追求する製品が世に出てくることは大いに歓迎したい。後退を嘆くだけではなく、そして、そこに埋没してしまうのでもなく、バリエーションが重要であることを確認しておきたい。そのことさえわかっていれば、バリエーションの競合ではなく、バリエーションの協調で豊かな暮らしが実るはずなのだ。

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【10月14日】マイクロソフト、BlueTrack搭載マウス2モデルを国内販売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1014/ms.htm
【9月10日】Microsoft、青色LED採用の光学式ワイヤレスマウス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0910/ms1.htm
【9月11日】マイクロソフト、折りたためる「Arc Mouse」を国内販売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0911/ms.htm

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(2008年10月17日)

[Reported by 山田祥平]


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