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NECエレ、半導体ものづくり推進センターの見学会を開催

半導体ものづくり推進センター センター長の中嶋正博氏

9月25日 開催



 NECエレクトロニクス株式会社は25日、NEC相模原事業場内の「半導体ものづくり推進センター」の見学会を報道関係者向けに開催した。

「半導体ものづくり推進センター」は、NECエレクトロニクス・グループの半導体生産における従業員の技術力向上を目的に2007年10月に設立された。主に海外工場の従業員を対象に、後工程生産設備(パッケージ組み立て装置)の維持・修復に関する技術の向上を狙ったトレーニングを実施してきた。

 見学会に先立ち、センター長の中嶋正博氏が設立の背景と役割、これまでの歩みなどを説明した。

 NECエレは、生産工程の前工程(ウェハ拡散ライン)を日本国内の数カ所に集中し、後工程(パッケージ組み立てライン)を海外に移転することで競争力の強化を進めている。海外生産の拡大に伴い、人材の増強と指導者層の早期育成が急務となったことから、人材育成を全社的に推進する組織「半導体ものづくり推進センター」を2007年10月に設立した。

半導体ものづくり推進センターを設立した背景。前工程の国内集中と後工程の海外移転が大きな理由である 前工程の国内集中状況。山形工場は先端SoC(Sytem on a Chip)の生産拠点として300mmウェハの処理能力を増強。九州の川尻工場はフラッシュマイコンと車載マイコンの生産拠点として8インチ(200mm)ラインの能力を高める。山口工場は汎用マイコンとASICの生産拠点として6インチ(150mm)ラインの処理能力を強化。滋賀工場は表示デバイスとパワーデバイスの生産拠点として8インチの処理能力を増やしている 後工程の海外移転状況。中国とマレーシアを中心に後工程の処理能力を増強中である。中国は汎用マイコン、マレーシアはパワー・デバイスと汎用マイコン、シンガポールは車載マイコン(欧米向け)を担う。日本国内はSoC向けの最先端パッケージなどに特化する
後工程における海外生産比率。数量ベース。2008年の時点で5割を超える 海外工場の競争力強化策。コスト競争力だけでなく、日本国内と同等の生産性と品質(車載半導体品質)を達成することが必須だとする 海外人材支援の強化。エンジニア、テクニシャン、マネージャーの育成が当面の課題だとしている。ここでエンジニアとは生産技術の開発、テクニシャンとは生産設備の保全を主な役目とする。NECエレの国内拠点ではテクニシャンのことを設備保全者またはプロセス保全者と呼んでいる

 同センターは、テクニシャン(設備保全者)の実務を教えるスキルを備えた「トレーナ」の育成を2007年12月に始め、次にテクニシャン(設備保全者)に必要な知識を教える「テクニカル講師」の育成を今年(2008年)2月に始めた。海外現地生産法人が選んだ候補者が来日し、同センターなどで教育する。5月には、同センターで育成された中国人トレーナがテクニシャンを教育するためのトレーニングルームが中国・北京のグループ会社に設けられた。9月末までに中国、マレーシア、シンガポールなどの海外現地生産拠点から、累計で40名を超える研修生を受け入れてきた。

 なおテクニシャンの場合、スキルレベルに応じてレベル1からレベル4までの4段階に区分けしている。レベル1が初級者、レベル2がその次の段階、レベル3が1人前のテクニシャン、レベル4がトレーナである。同センターではレベル2の人材を海外現地法人から受け入れ、レベル4に育成して送り返している。

「半導体ものづくり推進センター」設立の目的 「半導体ものづくり推進センター」の概要 NECエレのグループ各社における人材育成の仕組み
トレーナ育成教育のプログラム。半導体ものづくり推進センターにおける実習が1カ月、国内工場におけるOJT(On the Job Training)が1カ月である テクニカル講師育成教育のプログラム。電気教育が2.5カ月、機械教育が2.5カ月、実習が1カ月の合計6カ月におよぶ。6カ月を続けて業務を休むことは難しいため、実際には何回かに区切って来日し、教育しているという テクニシャン(設備保全者)のスキルレベル。初級はレベル1である。1人前のテクニシャンと見なされるのがレベル3。テクニシャンを育成できるトレーナはレベル4となる

 実際の教育にはツールがきわめて重要である。熟練のテクニシャン(設備保全者)が有するノウハウや知識などを技術者が観察、分析した結果を標準的な手順書やビデオ教材などにまとめた。また不具合を確認する訓練用ハードウェア、調整の訓練用ハードウェアなどを開発し、教育に活用している。

●生産装置の実物を使って学ぶ

 説明会の後は続いて、トレーニング・ルームの見学会が実施された。報道関係者は専用の上履に履き替えてトレーニング・ルームまで歩いた。説明会の会議室は2階にあったが、トレーニング・ルームは別の建屋の4階にある。歩いて5分ほどかかった。

 トレーニング・ルームの広さは床面積が400平方メートル。講義を受けられる教室が2つ(A教室とB教室)と、訓練用ハードウェアを置いたスペース、後工程用生産装置の実物を配置したスペース、作業机などで構成される。生産装置は13台が置かれているという。

トレーニング・ルームのレイアウト。なお「プレイルーム」とあるのは礼拝室のこと ビデオ教材の画面イメージと標準的な作業手順書。金型の定期メンテナンス作業の例 トレーニング・ルームの入り口。どのようなトレーニングを実施しているかが分かる
トレーニング・ルームの入り口。晴れてトレーナの称号を得た従業員の名札が並んでいた B教室ではアナログ回路の講義中だった。通訳を介して英語で授業が実施されていた 作業台では金型メンテナンス作業のトレーニング中だった。研修生は中国の現地法人から来日しており、通訳を介して中国語(北京語)でやり取りがなされていた。研修生が非常に熱心にメモを取る姿が印象的だった
ネジの締め付け訓練用ハードウェア。締め付け強度が表示される 保全実務の訓練用ハードウェア。不具合の状態を確認できる 複合調整の訓練用ハードウェア。電気、機械、空気圧の調整によってピンポン玉(オレンジ色の玉)を素早く移送できるようになる
複合調整の訓練用ハードウェア。電気、機械、空気圧の調整によってピンポン玉(オレンジ色の玉)を素早く移送できるようになる このほかにも数多くの訓練用ハードウェアが棚に置かれていた
ボール・ボンダ。BGAパッケージの組み立てに使われる ダイ・ボンダ。QFPやTSOPなどのリードフレームにダイ(半導体ベアチップ)を搭載する装置 ワイヤ・ボンダ。リードフレームのリードとダイ・パッドの間をワイヤで結線する装置

 見学会の後に設けられた質疑応答の時間には、中国の研修生1名とマレーシアの研修生1名、それからそれぞれの講師も出席した。中国の研修生からは、金型の専門知識を来日して初めて学んだこと、例えば金型を部品に分解した後でフタをかぶせて破損を防ぐといった危険防止策を知ったことなどがコメントされた。マレーシアの研修生からは、通訳者が技術的な知識を備えていないためにコミュニケーションに苦労していること、実験を通じて知識の吸収に務めているなどの意見が出された。英語の問題には日本側の講師も苦労しているようで、講師の英語力の向上が課題として挙げられていた。

 NECエレに限らず、日本国内の半導体メーカーでは後工程を海外に移転する動きが強まっている。ただし、日本国内と同様のスキルを備えた人材の育成には、かなりの苦労が必要であることがうかがえた。同社の今後の努力に期待したい。

□NECエレクトロニクスのホームページ
http://www.necel.com/index_j.html
□半導体ものづくり推進センターに関するリリース
http://www.necel.com/news/ja/archive/0809/2501.html
□関連記事
【2004年2月3日】NECエレ、国内パッケージ工場を再編
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0203/nec.htm

(2008年9月26日)

[Reported by 福田昭]

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