ブレッドボード・オルゴールキットを作ろう(後編)




 前回作った秋月電子通商の「ブレッドボード・オルゴールキット」を、ケースに入れてみましょう。機械仕掛けのオルゴールのように、フタを開くとメロディが流れ、閉じると止まる、というふうに改造しようというわけです。下の動画が完成した状態です。

【動画】前回作ったオルゴールキットの一部にスイッチを加え、ケースのフタの開閉でオルゴールがオンオフするように改造しました

 改造に必要なものは、ケースとスイッチです。ケースには秋月電子通商の『ポリカーボネート・ケース(蝶番式・中) 112-TS』 を使います。秋月電子通商で120円で購入しました。  スイッチとしては日本開閉器工業の押しボタンスイッチ「AB-15AP」を使います。マルツパーツ館で262円で購入しました。

ブレッドボード・オルゴールキット一式がちょうど収まるサイズのポリカーボネート製ケースです。サイズ(外形)は117×84×28mmで、蝶番式のフタはカチッと留まるようになっています
日本開閉器工業のAB-15APは、単極双投(SPDT)の押しボタンスイッチです
AB-15APの端子間隔は2.54mmですので、ブレッドボードにそのまま挿せます
ブレッドボード・オルゴールキットに付属するブレッドボードも、他のブレッドボードと同様に裏側がシール状になっていますので、ケース内に固定することができます

 今回使うスイッチについて、そのタイプや動作を知っておきましょう。「AB-15AP」は押しボタンスイッチで、タイプとしては単極双投(SPDT;Single Pole Double Throw)となります。3本の端子が出ていて、それぞれを、[1]、[2]、[3]と見ます。ボタンを押下すると[1]と[2]だけが導通し、ボタンを離すと[2]と[3]だけが導通する機構です。[1]と[3]が導通することはありません。

 なお、このスイッチはモーメンタリタイプで、押下状態でロックはされません。押下して手を離してもスイッチの状態がそのまま押下状態を保つものはオルタネイトタイプと呼ばれます。

AB-15APの場合、型番刻印のない面から見て、左から、[1]、[2]、[3]、の端子となります。詳しい仕様は日本開閉器工業の検索ページから調べられます

 このスイッチをブレッドボード上に載せ、フタを閉めたら(ボタンが押されたら)スイッチが切れて、フタを開いたら(ボタンが離されたら)スイッチが入るようにすれば、フタの開閉でオルゴールのオンオフが可能になります。

 ブレッドボード上には、スイッチを次のように組み込んでみました。オルゴールキットの一部配線も変更してあります。具体的には、不要な0Ω抵抗器を取り除いて、スイッチを載せるためのスペースを確保しました。また、タクトスイッチは“どれか1つのみをずっと押した状態にするため”に、取り除いてジャンプワイヤと置き換えました。この繋ぎ方だけ、というわけではありませんので、接続位置や動作のさせ方はお好みでどうぞ。

前回組み立てたブレッドボード・オルゴールキットです。左側の2つの0Ω抵抗器は機能していませんので、取り除きます。タクトスイッチは赤いボタンを押したままの状態となるように、ジャンプワイヤに換えます
0Ω抵抗器を除去して、スイッチを載せるスペースを確保しました。タクトスイッチのあった部分は、一箇所のみ導通したままとなるようにジャンプワイヤで繋ぎました
スイッチはこのように配線しました。この写真では、端子は左から、[1]、[2]、[3]、となります。押すと[1-2]が繋がり、離すと[2-3]がつながりますが、この動作をフタの開閉で行なうわけです

 以上のように配線し、フタを閉めたときにスイッチが押され、フタを開いたときにスイッチが離されるようにすれば完成です。これらのケースや部品を使った場合、実際にはスイッチの軸(押下する白い部分)が少し長く、ケースのフタが閉じなかったので、その軸部分をニッパーで切断して調整しました。

 次に、同様の仕掛けを別の部品で作ってみましょう。使う部品はリードスイッチです。これは磁力でオンオフを行なえるスイッチです。まずは、リードスイッチにより、ケースの開閉でオンオフが行なえるようになった改造例を動画でご覧ください。

【動画】フタに磁石を貼り付け、この磁石がリードスイッチに近づいたり離れたりすることで、オルゴールの電源がオンオフされる仕掛けです

 リードスイッチは、非常に小さい部品で、また部品に対する物理的な接触がなくてもオンオフできるということから、スイッチやセンサーとしてさまざまな機器に組み込まれています。その動作原理は沖センサデバイス製品紹介ページで詳しく知ることができます。

 なお、今回使ったリードスイッチはデンシ電気店で購入しました。ノーマルクローズタイプが420円、ノーマルオープンタイプが315円です。ただし、ノーマルオープンタイプは今回の改造には使っていません。

リードスイッチはガラス管の中に2本のリード片が入った部品です。磁力の影響で2本のリードが着いたり離れたりします。これにより、磁石でスイッチのオンオフを行なえます
ノーマルオープンタイプのリードスイッチです。磁石を近づけない状態では2本のリード線が離れていて(オフ)、磁石を近づけるとリード線が接触(オン)します
ノーマルクローズタイプのリードスイッチです。磁石が近づいていない状態では[COM]と[N.C]が、磁石を近づけると[COM]と[N.O]が導通します
ブレッドボード上へコンパクトにリードスイッチを載せようとして無理なフォーミングをしたため、破損してしまいました。リードスイッチの胴体部分はガラス管なので、両端のリードに無理な力を加えるとこのように壊れてしまいます

 ノーマルクローズタイプとして使える3本足のリードスイッチを、以下のように配線しました。スイッチの配線としては、前述の押しボタンスイッチと同様ですが、3本の足をフォーミングする必要があることと、上記のように壊れやすいことに気をつけてボーディングしてみてください。

リードスイッチから“磁石が遠ざかると回路に電気が流れる”ように配線しました
リードスイッチのリードをフォーミングする際は、指だけでなくペンチなども併用するのが無難です。リードのガラス管側をペンチで固定し、ガラス管に力が加わらないようにゆっくりと曲げます
ケース側に磁石を貼り付けます。磁石とリードスイッチの向き(それぞれの部品の磁極)が適切でないと、両者を近づけてもスイッチが働かないこともあります

 今回は、ケースのフタを開くとオルゴールの電源が入るという仕組みを明解に作るために、単純なスイッチ部品を使ってみました。しかし、他の部品でもケースの開閉に合わせて回路がオンオフする機構を作れます。例えばケースが透明でなければ、明るさに反応して抵抗値などが変化する部品を利用できます。

 アイデアをすぐに試せるのがブレッドボードの良さですので、いろいろな部品を使って、ブレッドボード・オルゴールキットに独自の改造を楽しんでください。

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(2008年9月11日)


船田戦闘機、スタパ齋藤、上杉季明によるユニット。電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行なうが、各活動に共通するテーマは“電気が通ること”としている。電子部品・電子回路の玄人ではなく、それらに対して強い興味を抱いている。ブレッドボーダーズは、そんな立ち位置から電子部品・電子回路に触れていくプロジェクトである。


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