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DEMOfall08レポート

【ハードウェア編】
トップバッターはプラスチック製電子ペーパーや700MB/secのSSDなど

DEMOfall08の会場

会期:9月7日~9日(現地時間)
会場:米国Sheraton San Diego Hotel & Marina



 新製品/サービスの展覧会である「DEMOfall08」が米国時間の9月7日~9日の会期で開幕した。DEMOは年に2回開催されるイベントで、出展社はこれまでにないアイデアや技術を利用した新製品をその場で初めて発表する。今回はWeb関連のものを中心に、厳しい事前審査にパスした72社が独自の製品を披露する。

 6分間の時間を与えられ、各社はPowerPointやFLASHなどを使わず、その場でデモすることで製品を紹介する。直近の開催では、Web 2.0系の製品/サービスが多いが、本稿では初日の最初のセッションで披露されたハードウェアを紹介する。

●プラスチックでできたタッチセンサー内蔵電子ペーパー

 Plastic Logicは、「Plastic Logic Reader」という電子ペーパーを発表した。電子ペーパーを使った製品は、松下電器産業やソニー、Amazon.comなど、いくつかのメーカーがすでに製品化している。Plastic Logicの製品がそれらの製品と異なるのは、ディスプレイにプラスチックを使用している点だ。

 Plastic Logic Readerは、ケンブリッジ大学が開発した柔らかいプラスチック製の基板上にトランジスタを実装する技術をベースとしている。この技術のメリットには、ディスプレイ部分をフィルムのように曲げられるほど非常に薄くできることや、衝撃に強くできることなどがある。

 今回披露された試作品は、本体のサイズが約215×280mm程度で厚さは数mm。ちょうどLEDバックライトを使ったノートPCの薄型の液晶のような姿形をしている。重量は公開されていないが、「ポンド(約450g)レベルではなく、オンス(約28g)レベル」と表現する通り、非常に軽い。

このように従来はかさばっていた大量の紙の資料を すべてこの薄い1枚の電子ペーパーに集約できる

 この製品のもう1つの特徴は、タッチセンサーも内蔵している点。試作機には電源と思しきボタンが1つあるだけで、それ以外の操作は指でジェスチャーすることで行なう。また、表示した文書の重要な箇所を指でなぞって下線を引いたり、丸で囲ったりできるほか、ソフトキーボードを表示させて、テキストで付箋を残す機能なども搭載している。ちなみに、ディスプレイ部分は折り曲げることができるが、このタッチ操作の観点や、指で本体下部を持った時にぴんとまっすぐ立つ方が便利という判断から、筐体の素材は曲がらない素材のものが使われている。

 もう1つ、この製品が前述のような既存製品と異なるのは、ビジネスユーザーをターゲットにしている点。コンシューマ向け製品の多くは、おもに小説や漫画などのコンテンツを読むのを目的にしているが、Plastic Logic Readerは、ビジネスマンが本来なら大量の紙に印刷すべきオフィスドキュメントを本製品に転送し、どこでも手軽に閲覧できることを製品のテーマにしている。

 実際、本製品にはWord/Excel/PowerPoint/PDFといった、主要なオフィスドキュメントのビューワ機能を搭載している。解像度も960×1,280ドットと十分高いので、複数のページを縮小表示しても文字を認識できる。まだ、試作機のため詳細なスペックは明らかにされていないが、表示はモノクロで、書き換え時間は780ms、バッテリは数日持ち、屋外でも視認できるのに十分な輝度を持っているという。

 同社は、ドイツのドレスデンにある世界初のプラスチック液晶基板の量産工場で、今月にも量産を開始する。製品の出荷は2009年上半期を予定しており、価格はその頃発表される。

Plastic Logic Reader。厚さ数mmで、重量は数十g。USB経由でデータを保存できる タッチセンサーを内蔵しており、操作は画面を触って行なう。たとえば、右下をこすると次のページを表示するといった具合にジェスチャー機能もある
ディスプレイ部分だけは紙並に薄く、曲げることも可能 液晶は強い衝撃を与えると割れてしまうが、Plastic Logic Readerは、びくともしない
メニュー画面。ドキュメントを種類ごとにソートできる。画面から推測すると電子コンテンツの購入にも対応しているようだ 解像度が高いので、ドキュメントのプレビューをサムネール表示させても内容を確認できる 手書きや、ソフトキーボードによるメモ書きを添えることも可能

●ネットワーク対応のSSDカード

 Fusion-ioは、ネットワーク機能を搭載した、企業向けSSDカード「ioSAN」を発表した。同社は2007年のDEMOにも登場し、PCI Expressベースの超高速SSD「ioDrive」を発表した。ioSANは、ioDriveをベースに、カード上にネットワークコントローラを搭載し、ネットワーク上の別のマシンからも直接SSDにアクセスできるようになった。

 ioSANのバスインターフェイスはPCI Express x4。SSDの容量は80/160/320GBの3種類があり、80GBと160GBは、読み込み700MB/sec、書き込み600MB/secのSLCを、320GBは読み込み700MB/sec、書き込み500MB/secのMLCを採用している。

 ユニークな特徴として、フラッシュメモリの部分は脱着できるようになっている。主基板には2つのコネクタがあり、2枚のメモリカードを挿すことで、最大640GBまで搭載できる。

 もう1つの新機能として、このコネクタにRAID対応HDDインターフェイスカードを装着できるようになった(この場合メモリカードは1枚のみ装着可能)。これにより、性能が必要なデータはSSD上に置き、容量や信頼性が必要なデータはHDDアレイ上に置くこともできる。

SSDとSAN(Storage Area Network)機能を合体させたioSAN 高速/大容量がウリだが、SSD部分を着脱して、構成を変更できるのも大きな特徴 カードのアップ。これは80GBのSSDをつけたところ。SSD×2を装着したり、HDD RAIDコントローラを取り付けることもできる

 ネットワークインターフェイスは、10GbpsのInfiniBandで、QDRにより40Gbpsにまで対応できる。

 完全に企業向けの製品で、価格は受注数量次第だが、イメージとしてはカード1枚あたり3,000~15,000ドル程度という。

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【2007年9月27日】NANDベースで高速化を実現したストレージボードなどを紹介
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●電子ペンでExcelデータを手書き入力

 Adapxは、電子ペンとExcelを組み合わせた帳票集計ソリューション「Capturx forms for Excel」(以下、Capturx)を発表した。これは、紙の帳票に記入された内容をPCに取り込んだ後、文字認識を行なって、テキストデータとして保存するもの。

 紙の利点は、誰にでも簡単に扱えること。しかし、手書きされた用紙が大量になってくると、それを管理するのは大変になってくる。最近では、PDAやノートPC、タブレットPCを使って、出先でデータを手書き入力するソリューションも増えているが、これらには機材のコストや、堅牢性やスタッフの教育にかかる手間などの問題がある。この両者の良いところ取りをしようとするのがCapturxだ。

 CapturxのソフトウェアはExcelのアドインとして機能する。まず、Excelで普通に帳票を作成したら、「Capturx Enabled」ボタンを押して、各入力フォームのセルをクリックしていく。その際に、チェックボックス、数字、名前、メールアドレスといった具合に、フォームの内容の属性も選択する。後は、普通にプリンタで印刷すると準備完了となる。

 Capturxの技術の肝はAnoto式の微細なドットを印刷できる点にある。これによって、付属の電子ペンで印刷された帳票に記入すると、普通に紙に文字が書かれるのと同時に、ペンにどのフォームにどのような文字が記載されたのかが記録される。後は、ペンをUSBクレードルでPCに繋げば、入力内容が自動的にデジタルデータとしてExcelに読み込まれる。

 各フォームは属性があらかじめ指定されているので、読み込まれたデータは容易に集計や検索ができる。手書きの文字もイメージとして取り込まれ、認識結果と並べて表示することもできる。

まず普通にExcelで帳票を作成 アドインのCapturx Enabledボタンを押し、フォームの属性を選びながらセルをクリックしていく
印刷された用紙にはAnoto式の細かなドットが印刷される ペンに内蔵されたカメラがこれを撮影することで筆跡を記録 ペンをUSBでPCに繋ぐと、記載されたデータがPCに転送される

●RFIDをつかったガイドシステム

 Alcatel-Lucentは、RFIDを使ったNFC(Near Field Communication)ソリューション「tikitag」を発表した。10月1日よりベータ版スタータパッケージをAmazon.comなどで販売予定。価格は49.95ドルで、USBのNFCリーダ、10個のNFCタグ、専用コミュニティサイトへのアクセス権が含まれる。

 基本的利用方法としては、tikitagを何かしらの製品に内蔵させておくと、リーダに触れさせることで、製品の関連情報をブラウザで表示できる。リーダには、一部の携帯電話も使えるので、屋外の広告にRFIDを埋め込んでおき、携帯電話を近づけると、製品情報や割引クーポンなどを表示させるといったことも可能。

 tikitagの応用範囲は広いため、この試験販売を通じて、どのような製品やサービスが可能かを探る。

tikitagのUSBリーダ。使い方はFeliCaポート用パソリと同じ 例えば、RFIDを読み取って、動画、写真、SNSなどその製品に関するWeb上の情報を表示したりできる

□DEMOfall08のホームページ(英文)
http://www.demo.com/

(2008年9月10日)

[Reported by wakasugi@impress.co.jp]

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