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Demo 2007 Fallレポート【情報アクセス技術編】

NANDベースで高速化を実現したストレージボードなどを紹介

NANDフラッシュを利用して大容量と高速アクセスを両立させた、Fusion-ioのioDrive。PCI Express x4で接続され、オンボード上に640GBのフラッシュを搭載する

会期:9月25日~26日(現地時間)

会場:Sheraton San Diego Hotel & Marina



 「Enablers and Sea-Changers」と名付けられたセッションでは、情報にアクセスするための手段や技術、製品などのジャンルで、現在の製品の問題を解決に導くものが紹介された。それらを紹介していきたい。

●PCI Express x4ボード上にフラッシュメモリを搭載するストレージ

 Fusion-ioがデモを行なった「ioDrive」は、フラッシュメモリを利用したストレージデバイスである。現在のストレージはDRAMを使用したメモリアクセスとのギャップが大きいが、高速でかつ容量の大きなデバイスというものが存在していない。HDDは大容量化しているし、ストライピングにより高速化も可能だが、シークによる遅延はストライピングでも改善できないためランダムアクセスに関しては速度向上が見込めない。そこで、シークタイムのない半導体ストレージ、とくに集積密度の向上が著しく価格も安くなっているNAND型フラッシュに注目が集まるわけだが、速度面に難がある。それを改善したのがioDriveである。

 デモでは4KBのランダムアクセス読み出し速度で400MB/sec弱を発揮する結果を紹介。そのほか、書き込み/読み込み速度もさることながら、100,000IOPSに達する処理能力を持つことをアピールした。NANDメモリでこれほどの高速転送を行なえる理由として、ボード上にあるコントローラとフラッシュメモリの間のアクセスに8バンクのメモリインタリーブを利用しているからだという。

 また、消費電力がHDDに比べて低い点も強調された。ioDriveの標準的な消費電力は6W程度という。接続はPCI Express x4となるが、電力はスロットからすべて供給される。

 容量については、今回のデモで利用されたものがボード1枚で640GBを持つ。このほか、40/80/160/320GBの計5製品を用意できる。さらに、2008年にはTBを超える容量のボードを開発する予定であるという。

デモで紹介されたベンチマーク結果。4KBのサイズを転送する際の結果で、シーケンシャルアクセスにおいては初回書き込みが600MB/sec前後、読み出しが900MB/sec強。ランダムアクセスは書き込みが300MB/sec前後、読み出し約383MB/secという結果である

●特定ソフトに帯域幅の優先割り当てを行なうソフト

 Propel Softwareがデモを行なった「Personal Bandwidth Management(PBM)」などは、転送レートにセンシティブなアプリケーションに対して、優先的に帯域幅を割り当てるソフトウェアだ。

 例として挙げられたのがSkypeによる音声通話で、帯域幅が不足すると聞き取りづらい音声になってしまうわけだが、Windows Updateなどバックグラウンドで勝手にインターネット接続を行なっているアプリケーションの帯域幅を利用をストップし、そこでSkypeに優先的に帯域を割り当てるわけだ。デモンストレーションでは実際に、PBMを利用した場合と利用していない場合を比較して音声品質の違いを体感することができるというものだった。

 ちなみに、このアプリケーションでは各々のアプリケーションに対して任意に優先度を設定することはできないとのこと。しかしながら、ゲーム、コミュニケーションなどといったモードが用意されており、利用するスタイルに合わせてどんなアプリケーションに帯域幅を割り当てるかを決定できる。

PBMを利用してSkypeに帯域幅を優先的に割り当て、音声品質を上げるデモが行なわれた PBMのトラフィックモニタ。青いバーがインバウンド帯域幅の割合を示しているが、現在Skypeに大幅に割り当てていることがわかる その後Windows Media Playerのストリーミング再生を実行。このときはWMPに帯域幅を優先的に割り当てている

●ネットワーク接続にRAIDの概念を導入

 Talari Networksでは「APN(Adaptive Private Netowork)」という概念のデモを行なった。これは、ストレージで利用されるRAIDのような高速化・冗長性の手法を、企業内の拠点間通信に取り入れようというものだ。

 フレームリレーやATMリンクなどの専用線サービスは安定した拠点間通信を得られる一方でコストが非常に高く、この傾向は昔から一切変わっていないと指摘。一方でブロードバンドの普及によって高速で安価なインターネット回線が安く入手できるようになっているものの、接続性や速度の安定性などに難があり、こちらは“ビジネスクオリティ”ではないとする。

Talari T700を利用した回線イメージ図。この例ではISP Cの回線に問題が発生してISP Dへ切り替えて接続性を維持している。T700を利用することで、安価なインターネット回線を利用してストレージにおけるRAIDのような冗長性を持たせることができる

 そこで、Talariでは、Talari T700というアプライアンスを利用して、ストレージにおけるRAIDのように並列接続をネットワークに取り入れた。専用線、インターネット回線など複数の回線を冗長化したVPNを構築することができる。ブロードバンド回線を利用することで低コストで接続性と速度の向上が見込めるわけだ。

 複数の回線を使っても、なお安価なインターネット回線サービスのほうが専用線サービスよりも回線コストを抑えられるという。そして、Mbps当たりのコストという視点に立てば、さらに差が開く。

 また、複数の回線を並列化した場合、T700では送信するパケットや回線状態に応じて、送信時にもっとも良好な経路(回線)を自動的に選択する機能も持っているという。もちろん複数回線を並列接続することで冗長性は上がり、コストは安いが専用線よりも常時接続性を向上させられるのも大きな売りだとしている。単なるインターネットVPNに留まらず、そこにRAID風な概念を取り入れ、しかもアプライアンスとして提供する点が興味深い。

●仮想化環境をシンクライアントで利用する製品

 Qumranetがデモを行なったのは、Kernel-based Virtual Machine(KVM)を応用した「Solid ICE」と呼ばれるソリューションだ。LinuxをホストOSとするサーバー上にKVMを利用した仮想化環境(WindowsやLinux)を構築。この仮想化環境をサーバーに接続したノートPCなどをシンクライアントとして利用できるよう配信するものである。

 サーバー側のホストOSには、KVMによって構築された仮想環境を用意する「VDS(Virtual Desktop Server)」と、仮想環境配信の管理を行なう「VDC(Virtual Desktop Controller)」をセットアップ。クライアントとの接続には専用プロトコルである「SPICE」を用いる。

 クライアント側で専用クライアントを起動すると、グラフィクカルな画面で利用するOS(つまり仮想環境)を選択でき、サーバー上の仮想環境に構築されたOSでクライアントを起動できる。

 KVMによる仮想環境をシンクライアントへ応用したソリューションで、製品ジャンルはサーバーベースのシンクライアントということになるのだろうが、イメージとしてはサーバー上の仮想環境にリモートアクセスするのに近い感覚と思われる。

 このクライアント上では、動画や3Dグラフィックなどのリッチなコンテンツも利用可能となっており、デモではWindows XPのLunaインターフェースが有効になった状態で、動画を再生するデモが実施されている。

 またサーバー側からは、接続を許可するユーザーや、セキュリティポリシー、提供する仮想環境のテンプレートなどを一元的に提供でき、管理者にとっても運用の負担が減ることをアピールしていた。

クライアントを起動したときの画面。利用する仮想環境を選択するグラフィカルな画面が表示される。利用できない環境は黒くなっている クライアント側で起動している仮想環境。画面ではテキスト入力を試しているがリッチコンテンツの再生も可能で、動画をスムーズに表示する様子などが示された VDCによる仮想環境と利用アカウントの管理画面。割り当てるメモリや利用させるOSなどを設定できる

●そのほかのデモンストレーション

Jasper Wileressがデモを行なったM2M携帯電話ネットワークの管理画面。特定のSIMカードのアクティブ化などをメニューから指定できる

 Jasper Wirelessが行なったデモは、携帯電話同士を直接するM2M(Machine to Machine)ネットワークのサービスに関するもの。同社が開発したSIMをGSM対応携帯に接続するだけで、このサービスを利用できるようになるものだ。携帯電話の利用者拡大に伴い、セルラーサービスが中央管理するよりも、M2Mネットワークを構築したうえで管理・運用するほうが低コストで運用負担も減るとしている。

 SIMカードの管理はWebブラウザベースのコンソールから行なえる。この管理画面はM2Mネットワークに接続されており、発給されたSIMカードがすべて登録されている。そして、そこから特定のSIMカードの有効化や無効化、テスト処理などを操作できる仕組みになっている。

 LogMeInもモバイル関連技術のデモを実施。「LogMeIn Rescue+Mobile」と名付けられた、携帯電話のサポートに関するサービスのデモである。LogMeInでは、すでにWindows PCなどをリモートで操作してサポート作業を行なうソリューションを展開しており、今回のデモはそのモバイル版となる。

 サポートデスクと電話の接続においては、サポートデスク側から提示された認証コードをユーザーが携帯電話へ入力する。この認証が通った場合にのみサポートデスクからユーザーの携帯を操作できるようになる。

 実際の作業はWebブラウザベースのAPIによって提供されており、画面上に端末の画像が表示されてエミュレータのような雰囲気になる。サポートデスクのオペレータは、ユーザーが正しい操作を行なっているかを確認しながら音声で指示を伝えられるほか、端末自体の操作を代わりに行なって解決することもできる。また、画面上にマーキングすることで正しい操作へ導いたり、ソフトウェアアップデートもリモートで実行できるようになっている。

Rescue+Mobileのオペレータ画面。左側のバーがセッション管理。画面上に表示された端末を操作した内容が、そのままユーザー端末に反映される ホワイトボードのように自由線を描くことができ、これもユーザー端末に表示される

 Phreesiaがデモを行なった「PhreesiaPad」は、病院の受付を自動化するためのシステムである。800×600ドットの解像度を搭載したタッチパネル液晶を持つGeodeベースのワイヤレス端末を利用し、ユーザー(患者)自身がクレジットカードや名前などの個人情報、症状、加入している保険の情報などを入力。

 その入力された情報の確認を行なえるWebブラウザベースのシステムを利用して、病院側は受付から請求までのプロセスを一元的に管理できる。患者にとっても、医者に依存することなく一定の対話がプロセスに組み込まれることのメリットが大きいと同社はアピールしていた。

患者が病院利用時にPhreesiaPadを使って受付情報を自ら入力する。タッチパッドによる分かりやすい操作が可能で、クレジットカードリーダも備えている 病院側が利用するWebブラウザベースの管理システム。入力された情報の一覧表示や詳細表示、PDFやプリンタなどへの出力機能を備えている

□Demo 2007 Fallのページ(英文)
http://www.demo.com/conferences/demofall07.php
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(2007年9月27日)

[Reported by 多和田新也]

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