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AcerグループCEO J.T.ワン氏が、京都で講演
~日本市場で3年以内にトップ5を目指すと宣言

AcerグループCEO兼Acer Inc.会長のJ.T.ワン氏

9月4日 実施



 日本でもネットブック「Aspire one」で注目を集めるAcerだが、そのAcerグループを率いるグループCEO兼Acer Inc.会長のJ.T.ワン氏が、ダイワボウが京都で開催したイベント「DISわぁるど in 京都」の講演に登場し、グループの日本市場への取り組みなどについて説明。その中でワン氏は「日本市場で3年以内にトップ5を目指す」と述べ、他の地域に比べるとシェアが小さい日本市場での急成長を目指すことを宣言した。

●日本市場での存在感を増しつつあるAcer

 一昨年ぐらいまで日本におけるAcerは、正直に言ってPCメーカーとして大きな存在感があるメーカーではなかった。それも無理はない、Acerグループの日本法人である日本エイサーによれば、伸びてきた2008年第2四半期の時点でも日本のPC市場におけるAcerのシェアは2.5%程度で、順位で言えば10位に過ぎないのだという。NEC、富士通、ソニー、東芝といったナショナルブランドが強く、さらに日本HP、デル、レノボといった外資系のPCベンダもそれなりにシェアを獲得している日本市場では、やはり目立たない存在というのが実情だった。

 しかし、ここ最近のいくつかの変化で、そうした印象も徐々に変わりつつある。1つには小売店におけるAcerのスペースが確実に増えてきていることだ。昨年頃から大手量販店に以前は無かったAcerの売り場がでてきたことで、おそらく読者も一度は目にされたことがあるのではないだろうか。大手量販店に売り場ができるということは、Acerがそれだけお金をかけているということの裏返しであり、その効果もあって、Acerが本気で日本市場を取りに来たと指摘する流通関係者は増えつつある。

 そしてもう1つは、Aspire oneというネットブックを日本市場にも投入したことだ。Aspire oneは発売後、すぐに売り切れが続出するなど話題を呼んでおり、Acerはネットブック市場において重要なプレーヤーの1つになりつつある。

 これらにより、Acerの存在感というのは、以前に比べれば明らかに増している。そうした中でのワン氏の講演ということもあり、会場には流通関係者などを中心に、多くの観客が集まった。

●Gateway、eMachinesなどの買収により世界市場でトップ3の仲間入り

 最初にワン氏は、グローバル市場におけるAcerグループの現状について説明した。「昨年、Gateway、eMachines、PackardBellを買収したことで、Acerグループの世界市場におけるシェアは第3位となっている」と述べた。さらに、「Aspire oneの世界的な大ヒットにより、第3四半期にはより良い結果がでると期待している」と付け加え、第3四半期にはさらに業績が上向くだろうという見通しを明らかにした。

 こうしたAcerの好調を支える要因となってきたのは、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)市場におけるノートPCのシェアだ。日本ではほとんど知られていないが、AcerはEMEA地域のノートPCのシェアで、HP、Dellを上回ってトップとなっているのだ。ワン氏によればAcerグループ全体の売り上げでも、EMEA地域の比率は大変高いという。「EMEA地域でのHPはアグレッシブに我々を追いかけてきているが、この状況を維持し、さらに他の地域でのシェア向上に取り組んでいきたい」と、現在のAcerグループの課題はEMEA以外の地域でのシェア向上にあるといっても過言ではない。

 そうした戦略を補完する意味で、昨年Acerグループは、米国のPCベンダであるGatewayを買収した。Gatewayは、低価格向けPCのブランドであるeMachines、およびヨーロッパにおけるPCブランドのPackardBellも所有しており、同時にこれらのブランドも手に入れた。つまり、Acerグループには、Acerだけでなく、Gateway、eMachines、PackardBellの4つのブランドが存在することになる。

 ワン氏によれば、今後はこうした複数のブランドは、セグメントごとにカテゴライズして利用していく計画だという。eMachinesはこれまで通りバリューセグメントの製品に、GatewayとPackardBellはメインストリーム向けの製品に、そしてAcerは総合ブランドとして展開していくという。今後は、各ブランド間で別々のシステムとなっている流通経路や部材の統合などを一本化し、“規模の経済”によって経済的効率性を高めることで競争力を向上させたいとワン氏は説明した。

Acerのグローバル市場でのシェアを説明するスライド。2008年第2四半期の統計で第3位だという 地域別で見ると、ノートPCのシェアでNo.1であるEMEA地域が最も貢献している
製品別で見るとノートPCの比率が高いことがわかる。一般的なPCメーカーではデスクトップPCとノートPCの比率は1:1であることが多い。世界的なノートPC市場の拡大がAcerの急成長につながっていることがわかる 昨年のGateway買収で、Acerのほか、Gateway、eMachine、PackardBellと複数のブランドを所有

●ダイレクトSCMで、流通網を効率よく活用

 さらにワン氏は、詰めかけた流通の関係者などを前にして、今後もAcerが成長していくエンジンとして、流通業者を大事にしていくというAcerが2001年に決定した方針を今後も維持していくと強くアピールした。

 ワン氏は「2000年頃にDellが絶好調だった頃には、誰もが既存の流通網を捨て、直販モデルに走った。IBMも、そしてコンパックと合併したHPもそうだった。直販モデルが正しいとしていたのは、何もPCベンダだけではない。新聞も、アナリストも、皆がそれが正しいと大合唱していた。しかし、我々は2001年に、そうではないのだと考えた。既存の流通網をもっと活用すれば、もっと効率よく消費者にPCを届けることができるのだ」と述べた。Acerの売り上げは、ここ8年で8倍にも伸びており、それを実現できたのも、Acerが既存の流通網を最大限に活用できたからだという。

 Acerの流通網の活用は、同社がダイレクトSCM(Supply Chain Management)と呼ぶ、独特のモデルになっている。エンドユーザーや代理店から受けた注文は、Acerの各地のオフィスで受け、それを本社へ送り、製品はODMや工場などから代理店やエンドユーザーに直接製品を届けるという仕組みだ。それにより、無駄を省き、価格競争力を実現できるようにしているのだという。

 「例えば直販でデルが8%の利益が得られるなら、我々は代理店で3%、Acerの取り分で3%、ODMで2%とみんなでシェアすればよい。Win-Winの関係を築き、かつエンドユーザーに喜んでもらえるビジネスモデルだ」(ワン氏)と、Acerだけでなく、流通業者にも、エンドユーザーにもメリットがある仕組みだとアピールした。

 ワン氏は「もはやPCは当たり前の製品で、もうおいしいビジネスではないという人も多いが、私はそうではないと考えている。これからの数年、PCにはまだまだビジネスチャンスがあり、特にノートPCは今後も伸びると考えている」と、PCのビジネスにはまだまだ可能性がある考えを示している。また、「今はもう誰も流通網を活用することに疑問を抱いていない。Dellでさえ、主要国では流通網の構築に取り組んでいる。Acerは今後も流通網を利用したビジネスモデルを展開していく、かつそれは今後も100%の割合で続けていく」と語った。

2000年時点ではDellの直販モデルが大成功を収め、各社ともそちらに向かっていた Acerでは、それに対抗するため、ダイレクトSCMという直販に対抗する既存の流通網を利用した新しいビジネスモデルを構築
ダイレクトSCM導入後、8年間で8倍の成長を実現 今後も既存の流通網を今後も活用していくと宣言

●3年の間に日本市場でもトップ5に入ることを目指す

 最後に、ワン氏は日本におけるAcerグループの目標について触れ、「我々は世界市場で3位になるなど、PCメーカーとしての“規模の経済”を追求できる立場にある。この立場を活用し、日本にエンドユーザーにもそのメリットを享受できるような製品を提供していきたい」と述べた上で、部材の調達コストなどで有利な立場をうまく活用し、より安価で高品質な製品を日本のPCユーザーにも提供していきたいとした。その中で、日本でもマルチブランド展開、さらには世界中で売られているようなグローバルな製品を投入するなどの戦略をとっていくと説明した。

 その具体的な目標として「日本市場で3年以内にトップ5になることを目指す」と宣言した。「現在日本市場にはNEC、富士通、ソニー、東芝という4つのナショナルブランドがある。私の予想だが、今後3年のうちに4つが3つになり、さらにその1~3年後に3つが2つになると考えている。なぜならば、彼らはPCビジネスをコアビジネスではないと位置づけているからだ。しかし、PCをコアビジネスにしない限り、PCベンダは生き残ることは難しいのだ」と語り、ナショナルブランドが強い日本のPC市場でも今後再編が起こり、その過程でAcerにもチャンスがあるという見通しを明らかにした。

 「現時点でAcerは世界で第3位だが、我々はさらに上、つまり2位や1位になることを目指している。PCビジネスの未来はまだまだ大きな可能性がある。我々が日本に本格的に打って出るのが、やや遅かったのは事実だが、今後5~10年の間に我々は日本の流通業者にとって重要なパートナーとなりうるはずだ」と述べ、詰めかけた流通関係者に新しい可能性としてAcerとのパートナーシップを検討して欲しいと呼びかけた。

日本エイサーの成長戦略 日本エイサーの目標は、3年以内に日本市場のトップ5に入ること

□Acerのホームページ(英文)
http://global.acer.com/
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【7月10日】日本エイサー、Atom搭載の8.9型ネットブック「Aspire one」を国内販売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0710/acer.htm
【3月25日】日本エイサー、ノートPC「Gemstone Blue」で国内市場に本格参入
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0325/acer.htm
□ネットブックリンク集(Acer)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm#acer

(2008年9月5日)

[Reported by 笠原一輝]

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