Intel Developer Forum 2008 IDF2008で展示されたミニノート&コンセプトPC
|
本文とは直接直接関係ないが、デュアルコアとなるAtom 330。デュアルコアAtomがネットブックなどに搭載される日も来るのだろう |
会期:8月19日~21日(現地時間)
会場:米San Francisco Moscone Center West
●Lenovoは10月発売予定のネットブック「S10」「S9」を展示
IDF初日に行なわれたモビリティー事業部のダディ・パルムッター氏の基調講演の壇上に、Lenovoの未発表ネットブック「S9」が展示されたのは既報のとおり。
IDFの展示会場であるTechnical Showcaseに設置されたLenovoブースにおいても、そのS9と、すでに米国で発表済みで10月の発売開始が予定されている「S10」が展示されていた。ブーススタッフによれば、S10とS9は液晶ディスプレイ以外の基本スペックはほぼ同様だが、発売する国に応じてストレージの種類やOSを変更して売ることになるという。
上位モデルとなるS10は、10型の液晶ディスプレイを搭載することが特徴で、Windows XP Home Editionをインストールした状態で展示。今回展示しているものは、Atom N270、1GBメモリ、80GB HDD、10型液晶ディスプレイ(1,024×600ドット)といったスペックのもの。チップセットはIntel 945 GSEで、グラフィック機能は内蔵グラフィックが利用されているという。S10には上位モデルとして160GB HDD搭載モデルも用意されるが、今回展示されたのは下位モデルということになる。
一方の8.9型液晶を搭載するS9の詳しいスペックは、先述のとおり液晶ディスプレイ以外のハードウェアスペックがほぼ同じであるということ以外、コメントが得られなかった。展示機にはLinuxがインストールされている。両製品のキーボードはWindowsキーが家のマークになっており、Linuxプリインストールが主力モデルなのかも知れない。
ちなみにS10についてはすでに米国での発売が予告されているが、S9については時期は未定であるものの「おそらく中国で最初に発売される」見通しであるという。日本での発売についても具体的なプランは聞けなかった。
Lenovoの10型液晶搭載ネットブック「S10」。Windows XP Home Edition SP3がインストールされている | キーボードとタッチパッド。当然ながら英語キーボードではあるが、キーピッチがかなり余裕があり打ちやすい | 本体右側面には、ExpressCard/34スロット、音声入出力、USB、LANを装備。ExpressCardの搭載はネットブック製品では珍しい |
本体左側面。USB、SDカードスロット、ミニD-Sub15ピン、電源端子が並ぶ | 本体前面部にインターフェイスはなく、左端にLEDが並んでいる |
天板は黒一色だが、パームレスト部などとの白黒のコントラストはデザイン性を意識したものだろう | 底面は、ネジ留めされた大型のカバーに目にとまる。この下に何があるかは不明だが、メモリモジュールがあれば増設が容易に行なえる可能性もある |
こちらは8.9型液晶の「S9」。本体サイズなどは変わらず、S10の液晶部分にフレームをはめたような作りになっている | S10とはインターフェイスも共通。やはりExpressCard/34スロットを装備している。カラーリングの違いも気になるところである |
●韓国VilivのMenlowベースコンバーチブル型ネットブック
韓国Vilivのブースでは、Atom Zシリーズを利用したコンバーチブル型ネットブック「Viliv S7」が展示された。Atom Zシリーズを搭載することから、基本的にはMenlow、つまりCentrino Atomプラットフォームの製品ということになりネットブックの本来のプラットフォームとは異なるのだが、外観や用途などはネットブックに近いものになりそうな製品だ。
主なスペックは、CPUがAtom Zシリーズの1.3GHz/1.6GHz/1.86GHz、1GBメモリ、30GBまたは60GB HDD、タッチパネル機能付き7型液晶(1,024×600ドット)、IEEE 802.11g/b無線LAN、WiMAX、Bluetooth、GPS、DMB-Tチューナ、指紋リーダといったあたり。重量は830gで、サイズは228×135×25mm(幅×奥行き×高さ)となる。
液晶部分は回転させてタブレット形状にすることができるコンバーチブル型となっている。公称9時間というバッテリ駆動時間も気になるところ。発売は2009年第一四半期が予定されており、価格は700ドル前後になる見込みという。
気になる日本での発売についてだが、DMB-Tチューナを内蔵するのが1つの特徴でもあるため、この受信ができない日本での発売は現時点で考えていないとしており、「日本向けに売るとすればワンセグチューナを付けて売ると良いかもね」とのコメントに留まった。
かなり余談にはなるが、同社のイメージキャラクターはヨン様ことペ・ヨンジュン氏が努めているそうで、日本人である筆者に対して強くアピールしていた。
韓国のViliv(ビリーブ)が展示した「Viliv S7」。7型タッチスクリーンを搭載したコンバーチブル型UMPC | 本体右側面。USB、DVB-Tアンテナ、無線LANアンテナを備える | 本体左側面。SDカードスロット、音声入出力、ミニD-Sub15ピンを備える |
●第3世代Classmate PCはネットブック同然に
Intelが新興国の教育機関向けにリリースしているClassmate PCのプロジェクトは、日本ではなじみが薄いものの、現在も継続しており、2008年には29カ国、39のOEMから提供が予定されている。そして、本体のほうも地道に進化しており、2007年に第1世代モデルが登場し、今年4月のIDF上海では第2世代モデルを披露。6月のCOMPUTEX TAIPEIにおいて、この第2世代モデルにAtom N270が搭載されることが表明された。
そもそも、ネットブックというジャンルは、Classmate PCを参考に生まれたジャンルということが言えなくもない。あの、ASUSTeKのEee PCも、当初は新興国向けに199ドルで発売すると表明されたものである。Atomにしても、そうした世界へアプローチすることも意識されたCPUである。
今では、日本を始めとする成熟市場においてネットブックの人気が高まっているわけだが、極論すれば元祖ネットブックともいえるClassmate PCに関して、このIDF期間中に次世代モデルのコンセプトが示された。今年中の正式発表を予定。10月に台湾で開催される、IDF TAIPEIで、より具体的な情報が提供される予定になっている。価格は200ドル程度に抑えたいとしている。
その大きな特徴は、タッチスクリーンの搭載と、コンバーチブル型となった点になる。これは、子供にとってキーボード操作だけでなく、ペンで操作できることも重要ではないかと考えたからだとしている。
この2つの特徴はリンクしたものといえるわけだが、タッチスクリーンは子供が自然な姿勢で使うことを意識して、手首を載せてペン操作を行なっても、手首部分はタッチスクリーンが感知しないという工夫が盛り込まれた。また、本体内のセンサーによって本体の回転を検知。縦位置、横位置を判断して、自動的に画面がローテーションするようになっている。このほか、Classmate PCの特徴ともいえる背面の取っ手部分も、タブレット型で利用する際の固定に便利だという。
もちろん、ソフトウェア側もタッチスクリーンに合わせたソフトウェアが利用されるほか、無線LANの接続アプリケーションも改善される予定とのこと。ただし、タッチスクリーンドライバのインプリメンテーションこそIntelが行なうものの、Classmate PC上で動作するソフトウェアのインプリメントはローカルのOEM企業が行なう必要がある。裏を返せば、OEMベンダーを持たない日本などでは発売される可能性はゼロに近い、ということになる。
このほか、Classmate PCは第1世代から、子供が扱うことを考慮して堅牢性に優れたボディであることを前提として開発されてきた。例えば、第2世代モデルの実験では、70cm以上の位置からコンクリートへの落下をテストしているそうだ。この次世代製品も、そうした堅牢性は維持される見込みだが、タブレット型で利用している際に液晶が破損する可能性については現在の課題とした。
歴代Classmate PC。左から初代、第2世代、そして今回アナウンスされた次世代モデルとなる | 次世代Classmate PCを紹介する、Intel・エマージングマーケットプラットフォームグループのJeffery Galinovsky氏 | ネットブック製品でも貴重なコンバーチブル型。8.9型(1,024×600ドット)のタッチスクリーンを備える。手首が触れても反応しない工夫が盛り込まれている |
センサーにより縦横を判断。自動的に画面が回転する。画面に映っているような、タッチ操作に合わせたアプリケーションも開発される | 本体右側面。スタイラス、音声入出力、USB、LANを備える | 本体左側面。SDカードスロット、USB、ミニD-Sub15ピンを備える |
●スライド式パネルとマルチタッチが特徴のコンセプトPC
IDFでは毎年のようにIntelからPCのコンセプトモデルが示されるが、2008年版のコンセプトモデルとして示されたのが「UrbanMAX」である。
11.1型液晶がスライドすることで、ノートブック形状からタブレット形状まで可変する機構は過去にAcerなどから製品化されたことがあったが、タブレット形状時におよそ25mmと非常に薄型。
また、液晶はタッチスクリーンとなっているが、スタイラス使用時は電磁誘導方式、指で操作した場合は静電容量方式で動作するようになっている。指でタッチした際に静電容量方式で動作させることのメリットとして、iPhoneなどと同じくマルチタップができるようになっており、指でつまむように操作することで画像を縮小したり、逆に拡大することなどができるようになっている。
スペック面はセッションのスライドを紹介するが、Windows VistaをベースにOrigami Experience 2.0を実装。ハードウェア面では、ULV版のCore 2 Duoと、Intel GS45を組み合わせた構成となる。Intel GS45はあまり存在が知られていないが、Intel GM45の低電圧版という位置付けで、内蔵グラフィックのコアクロックが落とされたモデルとなる。ただし、Blu-rayなどのHDコンテンツ再生支援機能は搭載している。
また、今回のIDFで発表されたばかりのスモールフォームファクター向け小型チップ版のチップセットを使用していたり、SSDを搭載する点も意欲的なスペックだ。
もちろん、これはコンセプトモデルであるため製品化されるものではない。しかし、マルチタップ機能や、Intelの最新プラットフォーム、最新パーツを盛り込んだ、非常に興味深い製品になっている。
セッションスライドで示された、UrbanMAXの主な仕様。ノートPC風からタブレットPC風まで、液晶がスライドすることで形を変える | OSはWindows Vistaだが、Origami Experienceが活用され、タッチスクリーンを生かしたユーザーインターフェイスとなっている |
タッチスクリーン以外の入力デバイスとして、キーボードのスペースキー部分に光学センサーを装備。マウスとして利用できる | iPhoneのようなマルチタップ操作が可能。親指と人差し指を使って、画像の拡大・縮小を行なうデモを見せてくれた |
□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□IDFのホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/
□IDF 2008 レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/idf.htm
□ネットブック/UMPCリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/umpc.htm
(2008年8月25日)
[Reported by 多和田新也]