今回から2回に渡って、回路図を見ながらブレッドボードの上に回路を組む練習をしてみましょう。題材は2つのLEDが交互にチカチカする回路「無安定マルチバイブレータ」です。まずはできあがりの様子と回路図を見てください。
回路の詳細を決めるにあたって、加藤ただし著『図解 つくる電子回路』(講談社ブルーバックス)を参考にしました。無安定マルチバイブレータの原理を詳しく知りたい人は、この本を読んでみてください。ブレッドボーディングについても触れられていて、とても参考になる本です。 回路図を読むことで、どんな部品が使われていて、それらの部品がどのように繋がっているかがわかります。ただし、そうした情報は回路図特有の記号であらわされているので、まずその読み方を覚える必要があります。
使っている部品は電池、カーボン抵抗器、電解コンデンサ、トランジスタ、そしてLEDです。それぞれの部品について、R1やTr2のような参照名と、39kΩや22μFといった値(定数)が記入されています。 参照名は部品ひとつひとつを区別できるようにするために必要です。名前の付け方には法則があって、抵抗の場合は、R1、R2、R3……のようにアルファベットのRと数字の組み合わせで表記するのが一般的です。コンデンサはC、トランジスタはTrです(違う文字を使う場合もあります)。 すべての抵抗とコンデンサは、設計者によって値が決められています。抵抗はΩ(オーム)、コンデンサはF(ファラド)が単位です。こうしたΩやFといった記号は省略されることがあります。抵抗の横にただ100と書いてあったら、それは100Ωを意味しています。 大きな値や小さな値を表現する場合、ゼロを並べていると大変なことになるので、k(キロ)やm(ミリ)といった補助単位を付けます。電子工作でよく出てくる補助単位は次のとおりです。
【表1】補助単位
抵抗の値にはk(キロ)やM(メガ)、コンデンサの値にはp(ピコ)、n(ナノ)、μ(マイクロ)が付くことが多いです。 コンピュータ上ではμという文字が使いにくい場合があるので、かわりにu(小文字のU)で代用することがあります。22uFは22μFのことです。 回路図をもういちどよく見ると、トランジスタのそばには「2SC1815」という文字があります。これは製品名です。東芝の2SC1815というトランジスタが指定されています。 ここで少し、今回初登場のトランジスタに触れておきましょう。 トランジスタはさまざまな分野で使われてきた、もっとも基本的な半導体素子です。しかし、同じ半導体の仲間のLEDと違って、トランジスタはなかなかその働きがイメージできないと思います。動作が目に見えないのがその一因かもしれません。 基本的な素子と言いましたが、実はこの先、この連載でトランジスタが登場することはあまりありません。トランジスタの形をしたトランジスタが登場することは、と言った方が正確ですね。トランジスタはICのなかで、もっと使いやすい形で存在しています。ICを通じて間接的にトランジスタを利用することが多いでしょう。 以下にトランジスタの性質をごく簡単にまとめておきます。 ・たくさんの種類があり、用途に応じて使い分けられる 今回の無安定マルチバイブレータ回路では、トランジスタを一種のスイッチとして使っています。トランジスタがLEDをつけたり消したりするわけです。LEDの電流制限抵抗(R3、R4)以外の抵抗とコンデンサはトランジスタの働きをコントロールするために存在します。 さて、回路図に乗っている部品はすべて把握できたでしょうか。これでようやく買い物に進むことができます。使用する部品を表にまとめておきましょう。
【表2】部品リスト
部品リストについて補足します。まず電解コンデンサの「定格」について。この欄には、電解コンデンサにかけてもいい電圧の最大値、いわゆる耐圧が記入されています。抵抗器の耐圧はW(ワット)で表記されていましたが、コンデンサの場合はV(ボルト)です。ここでは10Vとなっています。ただし、お店によっては10Vで22μFの電解コンデンサが見つからないかもしれません。その場合は、16Vや25Vなどのより大きい値を選んでください。 それから、LEDについては仕様が少し曖昧です。LEDを品名(型番)で指定してしまうと、購入できる店がとても限られてしまうのと、順方向電圧(Vf)が2V前後ならば、どれでも使えるので、細かく指定するのはやめておきました。もっとラフに言うと、赤色LEDならまず大丈夫です。ショップの在庫のなかから適当なものを選んでください。 なお、上のリストには電池ボックス、電池、ブレッドボードなどが含まれていません。電池ボックスは乾電池2本用のリード線が出ているタイプを用意してください。
電解コンデンサは値(容量)の異なるものを何種類か用意しておいて、完成後に差し替えると、点滅のスピードを調整できます。10μFや、100μFといった値のものを一緒に注文しておいてもいいかもしれません。 次回は、集めた部品を使ってブレッドボード上に回路を組む手順を説明しますが、待ちきれない方は回路図を手がかりに製作に突入してください。そういう方のために、ひとつだけ説明を追加しておきます。
(2008年8月21日)
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